
植物学者牧野富太郎がモデルとなった作品です。
その影響もあって、最近街を歩いていても
つい道端の草が気になって仕方がありません。
しかも、春のこの時期、草も花をつけるシーズンでもあります。
例えば、先日見つけたこの草花、
ヘラオオバコの花は下から上へと咲き進む、面白い草です。


牧野富太郎の関連本は今本屋さんでたくさん並んでいます。
谷本雄治さんが文を書き、大野八生さんが絵を描いた
絵本『牧野富太郎ものがたり 草木とみた夢』もそんな一冊かと思いましたが、
2019年3月の刊行ですから、朝ドラと関係なく、
牧野富太郎の偉業を子供たちに伝えようとした伝記絵本です。

物語は始まります。
ページの下段に「1862(文久2)年、土佐国高岡郡佐川村に生まれた。」と
ところどころにきちんと詳しい記述もあって、
物語を読みながら、もう少し詳しい情報が欲しいと思う人にも
細やかな編集がなされています。
この誕生から植物に夢中になっていく青年期、
やがて自身多くの新種を見つけ、たくさんの書物を刊行していく姿が
きちんと描かれています。

描かれています。
残念ながら、ほとんどその名前はわかりませんでしたが。
でも、もしかして、この絵本を読んだ子供のうちの何人かは
牧野のようになりたいと一歩を踏み出すかもしれません。

94歳で亡くなるまでの生涯にあつめた標本は約40万枚。
そして、彼に学名をつけられた草木はおよそ1650といいます。
「ただ植物が好きなんです」、牧野の言葉はまっすぐです。

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04/29/2023 金田一さん、事件ですよ - 映画「犬神家の一族」(1976年版)の話

先週22日にNHKBSプレミアムで放送されたのが
横溝正史原作の『犬神家の一族』。
先週が前編で、
後編が今日29日に放送されます。
名探偵金田一耕助を演じるのは吉岡秀隆さん。
吉岡さんはNHK版の金田一耕助をこれまでにも演じています。
犬神家の長女松子役は大竹しのぶさん。
前編を見ましたが、貫禄の演技でした。
事件の重要な役どころとなる珠世を
古川琴音さんが演じています。
彼女、大河ドラマにも起用されていて、NHK好みの女優かも。
ドラマ自体NHKが力をいれているのはわかりますが、
でも、やっぱりあの映画、
1976年に公開された市川崑監督作品と比べてしまいます。
今日はそちら、映画「犬神家の一族」の話です。

市川崑監督作品です。
角川映画としての第1作でもあり、映画は大ヒット。
ヒットだけでなく、作品の評価も高く、
その年のキネマ旬報ベストテンで第5位に選出されています。
当時のキャッチコピーが
金田一さん、事件ですよ
これを筆頭にTVCM、文庫キャンペーン、サウンドトラックと
いわゆるメディアミックスの先駆けとなった作品です。

映画やドラマでたくさんの俳優が金田一耕助を演じましたが、
あまりにも石坂浩二さんの印象が強くて、
今回のNHK版の吉岡秀隆さんでもかないません。
その他、松子役は高峰三枝子さんで、
こちらも大竹しのぶさんの熱演も
高峰三枝子さんには及ばない。
さらに、珠世役は島田陽子さんで
やっぱり珠世ってこういう美人が似合います。
古川琴音さんのキャラとはちょっと違う。
と、やはりあまりにも有名な作品と比べると
不利になってしまいます。
それくらい、映像も音楽も俳優陣もうまくかみ合った
必見の映画です。

「犬神家の一族」をちゃんと観るのが初めてで、
この話ってこういう物語だったんだと
映画が大ヒットしてから半世紀近くなって
ようやくわかりました。
映画を観たおかげで結末はわかっていますが、
やっぱり今夜のNHK版もしっかり見ます。

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04/28/2023 サザエさん 2023春(長谷川 町子) - 大型連休をゆっくり過ごしたい人に

8連休なんていう人もいたりするのでしょうか。
この春の連休を「ゴールデンウィーク」もしくは「黄金週間」と言い出したのは
映画会社による宣伝用語だったというのは有名な話。
昭和26年(1951年)のこの時期に封切られた映画がヒットして
正月やお盆以上に観客動員ができたところから、
翌年あたりからこの春の連休をそう呼びだしたそうです。
つまり、明日からの大型連休は
昭和の休日そのもの。
それに、明日29日は昭和世代にとって、
「昭和の日」ではなく「(昭和)天皇誕生日」の祝日の気分が残っているのでは。

週刊朝日の臨時増刊の「サザエさん 2023春」号。
特集が「昭和の休日」ですから、
まさに今読まないでどうする、そんな一冊です。
この雑誌は
「戦後から高度成長に至る昭和の日本人の心を明るく照らし続けた」
漫画家・長谷川町子さんの作品を
「サザエさん」を中心にして特別編集され、
年4回発行されていたものです。
以前から、買おうかどうしょうか迷っているうちに
買いそびれていたのですが、
今回は特集が「昭和の休日」ということで
手にいれることにしました。

ノリスケさんの結婚秘話のマンガとかも収録されていて
一気に読んでしまいました。
「サザエさん」のほか「エプロンおばさん」の傑作集もあって
この一冊でなんと171本の作品が楽しめます。

どこも混雑してるだろうし、
家でゆっくりしたいという人には
451円のお手軽な楽しみになること間違いなしの一冊です。

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04/27/2023 文豪、社長になる(門井 慶喜) - 本名は「ひろし」です

大正12年、1923年のことだから、
今年(2023年)は創刊100年になる。
そんなこともあってだろうか、
直木賞作家の門井慶喜さんが書いた長編小説が
『文豪、社長になる』だ。
5つの章で構成されていて、発表年月でいえば、
第二章の直木三十五との交流を描いた「貧乏神」が2021年秋で最初で、
続いて菊池寛がいかに「きくちかん」となっていったかを描いた
第一章の「寛(ひろし)と寛(かん)」が2022年夏になる。
いずれも、文藝春秋の娯楽誌「オール讀物」に掲載された。

冒頭の夏目漱石の死の場面から引き込まれれる。
小宮豊隆や久米正雄といった門人の中にあって、少し距離がある菊池寛。
いまだ名を成さず、新聞記者でしかない。
そんな菊池を援けたのが、芥川龍之介だった。
芥川は終生、菊池を本名である「ひろし」と呼び続ける。
「寛」を「かん」と読むのは通称だが、広く呼ばれていくことで、
彼は人気作家から雑誌創刊へと大きく変身していく。

公職追放される菊池寛。
彼が作った「文藝春秋」は彼の手を離れ、この国を代表する
総合誌になっていく。
その最後の章に登場する石井桃子や、女子高生だった向田邦子など
史実を巧みにいかした創作として
とても面白くできている。

昭和23年(1948年)に亡くなるが、まだ59歳という壮年であった。

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04/26/2023 エッジウェア卿の死(アガサ・クリスティー):書評「私たちはヘイスティングズだ」

早川書房のクリスティー文庫には
33冊のポアロものの長編小説があります。
今日紹介する『エッジウェア卿の死』は
そのうち7冊目の作品にあたります。
このあとに有名な『オリエント急行の殺人』がありますから、
まだ初期作品群の中の一冊といっていいかも。
でも、なかなか面白い作品で
いつもの霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』でも
★★★★の高得点。
私も同じくらいの評価。
この作品はできたら映像で見ると
余計面白いかも。
だって、重要人物である女優のまねがうまい
役者って設定が映像向きでしょ。
じゃあ、読もう。

この作品は1933年に発表された、名探偵エルキュール・ポアロものとしては初期から中期にかかるあたりになるだろうか。
原題は「Lord Edgware Dies」で、「Lord」は「(イギリスでは)侯爵・伯爵・子爵・男爵などの称号。卿」とあるから、邦題はそのままの訳になる。
物語は、有名な女優が夫と離婚したがっていて、ある夜彼女が夫のもとを訪ねたあと夫が死んでいた。誰もがこの女優の犯行と考えるが、殺人があった時には彼女にはしっかりしたアリバイがあった。
では、誰が夫を殺したのか。
この殺人事件が起こる前に、女優の物まねをする役者が登場している。
とすれば、この役者が犯人にちがいない。しかも、この役者は事件のあと自殺めいた死体になって発見されている。
こんな事件をポアロが推理していくのだが、この頃の彼にはあまり優秀とはいえないポアロの無二の親友がいる。
ヘイスティングズだ。
彼はポアロものの8本の長編と多くの短編に登場するポアロものには欠かせない人物だ。
この作品でも、ヘイスティングズがポアロの解決した事件を語る、そんな形式で書かれている。
つまり、ヘイスティングズが語ることで、ポアロが事件をどのように解決していったかがわかるし、ヘイスティングズの素人推理が つまりは読者の推理と似ているところがまた面白い。
ヘイスティングズこそ、読者の代表として事件の解決に参加しているといえる。
で、結局犯人であるが、収まるところに収まったというところだろうか。
(2023/04/26 投稿)

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04/25/2023 百貨店の戦後史(夫馬 信一) - 思い出のなかにある地方百貨店

タイトルはそっけないが、実に刺激的で、労作といっていい。
内容は副題の「全国老舗デパートの黄金時代」とあるように、
かつて地方都市の繫栄の一翼を担った地方百貨店12店舗の栄枯盛衰が描かれている。
ただ一店、プロローグで東京・渋谷の東急百貨店東横店が入っているが、
残りの11店舗は地方都市の百貨店だ。
ちなみにその店舗の一部を書いておくと、
棒二森屋(函館)、中合福島店(福島)、大沼山形本店(山形)、前三百貨店(前橋)、
伊万里玉屋(伊万里)、丸正(和歌山)、松菱本店(浜松市)、などである。

氏が小売業に従事したことも流通の専門家でもないことがわかる。
航空貨物や物流関係の経歴をもつ氏が何故地方百貨店の著作を書くに至ったか、
それは百貨店の屋上にあった遊園地の取材がきっかけだったという。
昭和世代の人が持っている百貨店の思い出といえば、
屋上にあった遊園地であり、大衆食堂だろう。
この本の中でも、今では貴重となった当時の屋上遊園地の写真が
たくさん収められている。

経済の波に晒され、浮き沈むしていく姿は
地方都市のそれと同じくしている。
そして、時にこれら百貨店を水害であったり火災が追い打ちをかけていく。
百貨店は大きな商業施設であるが、
そんな姿はまるで私たち人間の一生にも見えてくる。
今はなくなったこれらの百貨店が再生することはないだろうが、
そこにあった思い出はいつまでも残るだろう。

本書に登場する中合福島店と棒二森屋は
私が仕事でかかわった百貨店でした。
50代初めの頃で、すでに10年以上も以前のことになります。
今は2つの店舗もすでに閉店していますが、
その当時も街のこれらの百貨店に寄せる思いが強かったことを
あらためて思い出します。

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04/24/2023 ジャガイモの花、咲きました - わたしの菜園日記(4月23日)

ツツジ。

つつじ燃ゆ土から色を吹き上げて 上野 章子
漢字で書くと、躑躅。
これはなかなか書けない漢字です。


なんでしょう?
これはジャガイモの花。
品種でいうと、トウヤの方。
ジャガイモはこれまでにも何回か育てましたが、
今回のようにちゃんと花をつけたのは初めてかも。
その「じやがいもの花」は夏の季語でもあります。
じやがいもの花の三角四角かな 波多野 爽波
今回は期待値大です。

いよいよ夏野菜の栽培が本格化します。
それに先立って、ホームセンターで苗を購入して
4月23日に植えつけを始めました。

こちらの写真の前の畝の右側に植えたのが
ミニトマト。
今年はオレンジ色のミニトマトに挑戦です。
その左側、不織布をかぶせているところには
マクワウリの種を蒔きました。
春先から家で育苗していたのですが
うまくいかず、
仕方ないので直接露地栽培に切り替えました。
さて、うまくいくかどうか。


まわりにはペコロス栽培をしていたタマネギの苗を植え付けました。
キュウリにはネギ系の野菜がコンパニオンプランツとして有効。
周辺の畝には週末夏野菜の苗を植えつけます。


収穫のサインです。
今週末あたりには収穫できそう。


まさに大盛りの収穫。
莢のなかで豆がどんな風についているのか
ひとつだけ開いてみました。
今年のスナップエンドウは出来がよくて
大満足しています。

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04/23/2023 としょかんライオン(ミシェル・ヌードセン):再録書評「みんなの図書館」

今日4月23日は
こども読書の日。
子どもの読書活動についての関心と理解を深め、
積極的に読書活動を行う意欲を高めるために制定されました。
そして、今日から5月13日までの3週間は
こどもの読書週間になります。
今年の標語は、
ひらいてとじた 笑顔がふえた
この標語はたくさんの応募の中から選ばれたもの。

ポスターのイラストはザ・キャビンカンパニーさん。
今日はそんな日にぴったりの絵本の
再録書評です。
ミシェル・ヌードセンさんの『としょかんライオン』。
この書評を書いたのは
なんと13年前の2010年の4月23日なんです。
これには書いた私も驚きでした。
じゃあ、読もう。

私が子どもの頃は、子どもの定義があるでしょうが十歳前後だとしたらかれこれ五十年以上前の頃ですが、図書館はとても怖い場所だったような記憶があります。
薄暗くって、本の黴くさい匂いが漂っていて、時々きっとこちらをにらみつける気の強そうな司書さんがいたりして。
ところが、今はすっかり雰囲気が変わりました。明るい採光、きれいな本。笑顔あふれる司書のおねえさん。
なんと幸せところでしょう。一日いても飽きません。
それに、やさしくて気立てのいいライオンがいたら、もっといい。
だって、そこは、みんなの図書館なんですから。
現代の図書館だって、たぶんまだまだ不満はある人はいると思います。
勝手きままに走り回る子どもたち、それに注意もしないお母さんやお父さん。閲覧机を占領する学生たち。こっそり図書館の資料を切り取る人たち。愛想のない司書たち。読みたい本が所蔵されていなかったり、ベストセラーばかりがあったり。
それに、やさしくて気立てのいいライオンもいません。
みんなの図書館なのに、どうしてでしょう。
私は、それでも図書館が好きです。
子どもの頃にように、もう怖くもありません。とぼしい予算のなかで図書館のみなさんがいろんな工夫をしてくれています。
それに、図書館にいると、やさしくて気立てのいいライオンだけでなくて、海から顔をのぞかせるクジラにも、野原を走るオオカミにも、昔のとっても偉い人にも、未来のかわいい少女にも出会うことができます。
だって、そこは図書館なんですから。
この絵本を読んで、そんなことを思いました。
(2010/04/23 投稿)

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04/22/2023 ただいま おかえり - 映画「幸福の黄色いハンカチ」の話

そのうちの一つが
NHKで毎週金曜夜10時から放送されている
「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」というドキュメンタリー番組です。
毎回一つのテーマを
それに関わった人たちの証言や映像を3つの視点から読み解いていくもの。
先週4月14日の放送は
「高倉健と『幸福の黄色いハンカチ』」というテーマで
俳優高倉健の生きざまに迫るという内容でした。
この番組を見たあと、
持っていた、DVDを取り出して、久しぶりにこの映画を観ました。
今日は映画「幸福の黄色いハンカチ」の話です。

山田洋次監督作品です。
この年のキネマ旬報ベストテン1位だけでなく、
第1回日本アカデミー賞で作品賞だけでなく
多くの賞を総なめにした名作です。
主演の高倉健さんはこの作品で第1回日本アカデミー賞主演男優賞を受賞しています。
NHKの「アナザーストーリーズ」では
高倉健さんが使っていた台本がでてきます。
その台本にある、倍賞千恵子さんのセリフ「おかえり」に
赤い傍線が引かれていることがわかります。
この映画で共演した新人だった武田鉄矢さんは
撮影時に高倉健さんからこの映画のテーマは
「ただいま」なんだと教えられたといいます。
「ただいま」「おかえり」
日常何気なく使われている言葉ながら
とても深い愛情がこもったものだということが
この映画のラスト、
たくさんの黄色いハンカチが教えてくれます。

高倉健さん演じる主人公が殺人罪で服役し、
網走の刑務所から夕張の元住んでいた家に戻るまでの
ロードムービー。
武田鉄矢さん演じる軽薄な若者と
彼の車に同乗している桃井かおりさん演じる女性。
この二人ともが
第1回日本アカデミー賞の助演男優女優賞を受賞していますが
特に桃井かおりさんが素晴らしい。
映画の中盤から終盤にかけて
どんどん美しくなっていくのがわかります。

久しぶりに観返すと
やっぱり泣けますね。

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04/21/2023 亥子(いのこ)ころころ(西條 奈加) - 家族の味それもまたさまざま

江戸・麹町にある「南星屋」を舞台にした連作時代小説の第2弾。
この菓子店は一風変わっていて、
主の治兵衛が武家の出ながら訳あって家を出たあと、菓子職人になり、
諸国をめぐって見覚えた菓子を日々提供している。
前作『まるまるの毬(いが)』では、
治兵衛の出生に関わる秘密が孫娘の縁談を破談するという展開に描きつつ、
この家族のありようを描いた作品になっていた。

「南星屋」の前で行き倒れとなっていた男、雲平が新しく登場してくる。
雲平が幼い頃から弟のように可愛がっていた菓子職人の行方が分からなく、
その男が行方知らずとなった理由を
治兵衛たちが探っていくという話が大きな軸となっている。
そうはいっても、決してミステリではない。
新しい男の登場で揺れる家族の物語といった方がいい。

「凪いで見える暮らしにも、時々にさざ波は立つ。
どんな家族でも、無地一色で済むはずはなく、さまざまな模様が刻まれる。
(中略)それでも織り上がった一反は、この世にひとつしかない大切な一品となる。」
このあたりが、作者西條奈加さんの真骨頂だろう。

さてこれはどんな味なのかと
見えない菓子に手を伸ばしたくなる作品ではあることは間違いない。

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04/20/2023 歴史をうがつ眼(松本 清張) - 思索を愉しむ

もう30年以上前のことになる。
それでも、この『歴史をうがつ眼』のように
単行本初収録作品などを収録した本が刊行されるのだから
その偉業は計り知れない。

「思考と提出―私を語る」と講演録「日本の文化」、
歴史学者青木和夫との対談「歴史をうがつ眼」の三作品と
既収録となる司馬遼太郎との対談「日本の歴史と日本人」が収められている。
司馬遼太郎といえば2023年生誕100年を迎えた大作家で
まさにこの二人の対談は昭和の二大巨人の貴重な記録といっていい。
しかも、結構丁々発止のやりとりをしている。
司馬が「松本さん」と呼べば、清張は「司馬君」と呼ぶ。
清張の方が司馬より14歳年上だから、共に巨人とはいえ
自然とそうなるのであろう。

広辞苑で調べるといくつかの意味が出てくるが、
ここで「普通には知られていない所をあばく」というのが適切だろう。
巻頭の「思考と提出」の中でこう書いている。
「「歴史」はやはり推理の愉しさがなくてはならない。
少ない史料と史料の間の空白をつなぐ思索の愉しさはいうにいわれない。」
これこそ、「うがつ」の本質だろう。


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話題本として注目を集めたので
この『図書館にまいこんだこどもの大質問』(こどもの大質問編集部 編)も
二匹目のドジョウをねらった本かと思って手にとったが
随分と違った。
図書館のレファレンスに寄せられた質問という点では同じだが、
『100万回死んだねこ』の場合はうろ覚えのタイトルの問い合わせから
正しい本を探し出すというものだったが、
この本では「魔法がつかえるようになりたい」とか
「電車の洗い方を知りたい」といったような本当に子供たちのピュアな質問に
図書館員の皆さんが一生懸命に答えをさがすさまが描かれている。
時には他の図書館員に訊ねたり、はては他の図書館と連携までしていく。
愉快な質問に対して、その答えがどんなものかというのも
この本の楽しみ方だろうが、
司書や図書館員の皆さんの奮闘ぶりに拍手を送りたくなる一冊である。

「こどもの大質問に回答した司書さんって、どんな人?」に寄せた
神戸女子大学特任教授の坂下直子さんの回答文がいい。
坂下さん自身がどういうきっかけで司書になり、
自身が務めた学校図書館で見てきた子どもたちの姿を通じて、
司書のありかたそのものを教えてくれるものです。
坂下さんは「その子の興味のわく分野で頭角をあらわせばいい」といい、
学校図書館は「だれにとっても居心地のいい場所であること」が大事と
書かれています。
司書を目指す人に読んでもらいたい一文です。

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04/18/2023 エプロン手帖(平野 レミ) - 料理をおいしくするコツって気になりますよね

次々と加筆や新しい装幀で蘇っている。
この『エプロン手帖』もそうで、
もともとは1995年に刊行されたもので、
そこにいくつかのエッセイが加えられて、2023年2月に出版されました。
表紙のイラストは、もちろん夫の故・和田誠さん。

今では二人の息子も素敵な奥さんと一緒ですが、
この頃はまだ高校生と中学生の成長期。
そんな中、レミさんは51の食材にまつわるエッセイを
写真付きで読売新聞の日曜版に連載していて、
この本はそれをまとめたもの。
なので、この本で紹介されている料理の数はかなり多い。
例えば、いわしを食材にしたエッセイの中だけで、
「刺身」「塩焼き」「蒲焼き」「梅味てんぷら」といった料理が紹介され、
うち「蒲焼き」が写真付きでレシピが載っている。

これがいい。
レミさん曰く、料理をおいしくするコツは、
「気分よく食べること」、「美しい食器」と書いてあって、
料理が好きな人には納得の文章でしょう。
この本でも写真が載っている料理につけられたコメントにも
器やお皿のことが書かれていて、
レミさんのこだわりが伝わってきます。

これもまたこの本をおいしくしています。

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04/17/2023 マメ科の野菜でいっぱい - わたしの菜園日記

ツツジとサツキの区分けがつきません。

この写真の花はおそらくサツキと思うのですが
自信があるわけではありません。
少し葉が小さいのでそう思ったのですが
違うかもしれません。
まあ、サツキもツツジ科ツツジ属なので
大きな違いはないでしょうが、
植物学者の牧野富太郎さんからは叱られるでしょうね。

畑の畝に張った黒マルチにも
やっぱり黄砂らしきものがついていました。

この写真を撮った翌日の土曜日(4月15日)は
一日雨になったので
野菜の葉についていた黄砂は流されたのではないかな。

あちらにもこちらにも
かわいい莢がつきました。

俳句の世界では「豆の花」は春の季語で、
「豌豆」とか「蚕豆」といった実の部分は夏の季語になっています。
そのソラマメもだいぶ大きくなってきました。
今はまだ空に向かって成長中。



左に見えているのは
ジャガイモの葉。
そして、モロッコインゲンにはネットを張って
ツルがつかまりやすいようにしました。

インゲンにはツルありとツルなしがあって、
今回栽培しているのはツルありです。
ぐんぐん大きくなってくれたらいいな。

この時期、豆ごはんもおいしいですが、
「豆御飯」も夏の季語。
あをあをと雨の一日の豆御飯 関森 勝夫

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04/16/2023 海のアトリエ(堀川 理万子) - ゆるやかであることっていいなぁ

時々考えてしまうことがある。
堀川理万子さんの『海のアトリエ』という絵本を知ったのは、
NHKEテレで2022年12月から2023年1月にかけて放送されていた
「趣味どきっ! 読書の森へ 本の道しるべ」であった。
この番組では8人の本好きの人が
本について語るというもので、
堀川さんはそんな8人の中の一人だった。

1965年東京生まれ。画家として絵画作品による個展を定期的に開きながら、
絵本作家、イラストレーターとしても活躍してる人。
ただし、私はこの番組を見るまで
堀川さんのことも『海のアトリエ』のことも知らなかった。
『海のアトリエ』。
2021年5月に出た絵本。
絵本といってしまうと、どうしても幼児向けの出版物と思われがちだが、
この絵本はもっと幅広い読者に向けて描かれている。
この作品で、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、講談社絵本賞、小学館児童出版文化賞を受賞。
堀川さんの代表作といっていい。

そんな彼女を1週間だけ預かることになった画家の女性との交流を描いている。
画家のアトリエがあったのは海の近く。
そこで少女はなんとも緩やかな生活を送ることになる。
もちろん、女性のアトリエにはたくさんも本もある。
海岸で髪を風になびかせている少女と画家の姿に、
もしかしたら私たちが忘れているとても大切なものがあるように思えた。

大きな偶然の営みかもしれない。
けれど、その偶然こそ大切なものに
この絵本と出会えて、思えた。

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04/15/2023 いのちみじかし 恋せよ乙女 - 映画「生きる」の話

映画「生きる LIVING」が現在公開されて話題になっています。
先日のアカデミー賞でも脚色賞にノミネートされていました。
脚色賞の対象になったのは
原作あるいはもととなる作品があったから。
それが黒澤明監督の映画「生きる」。
つまり、今回の作品は黒澤映画のリメイク版なのです。
ありがたいことに映画公開に合わせて
日本映画専門チャンネルで
黒澤明監督の「生きる」が4Kリマスター版で放映されました。
映像がくっきりと蘇っていて、
もしかしたらレンタル店で扱っているDVD版よりきれいではないかと思ったくらい。
今日は黒澤明監督の映画「生きる」の話です。

この年のキネマ旬報ベストテン1位を受賞。
あまりにも名作で
ラストの雪の中でブランコをこぐ主人公役の志村喬さんの映像は
観た人も多いはず。
今回あらためて観てみると
このラストシーンで歌われた「いのちみじかし 恋せよ乙女」という
「ゴンドラの唄」は映画の中盤でも歌われていて
その際の涙を流しながら歌う主人公とラストで歌う彼との
比較そのものが
この映画の大きな構成そのものになっていることがわかります。
つまり、前半は生きる絶望、
後半は生きる喜び。
この二つの相反する感情を志村喬さんが見事に演じわけています。

後半は彼の死後彼がまるで生き返ったように見事な仕事を成し遂げたあとの
通夜の席での人々の言い争い。
どの場面であっても、
映画を観ている私たちは
主人公が胃がんであることも
病や家族との関係で悩んでいることも
そんな中で人生最後に成し遂げておこうと決意し実行していく姿は
わかっている。
つまり、観客である私たちそのものが
この男の人生をみつめる「神」のような視点であることになります。

黒澤明と橋本忍、小國英雄の共同脚本。
主演の志村喬だけでなく、
はつらつとした若さを体現した小田切みき、
主人公の長男役の金子信雄など
役者もまた素晴らしい。


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04/14/2023 憧れの住む東京へ(岡崎 武志):書評「君の住む美し都」

今日は岡崎武志さんの
『憧れの住む東京へ』という人物エッセイを
紹介します。
著者の岡崎武志さんが東京に出てきたのは
30歳を超えてから。
私は岡崎さんより少しばかり年上ですが
私が東京に出てきたのは18歳の
大学の入学時。
岡崎さんと同じ大阪出身で、
関西にもいい大学はたくさんあったのに
東京の大学を目指したのは
そこに「憧れ」の人がいたからで、
岡崎さんもこの本の中で
「憧れの住む東京へ」の「憧れ」には人も含まれていて、
と書いているから。
私の場合も決して下世話な話ではない。
もっともその「憧れ」は
ずっと「憧れ」のままではあったが。
じゃあ、読もう。

書評家でライターの岡崎武志さんが東京に「上京」してきたのは、1990年春ですでに30歳を超えていた。
「上京者」としてはかなり遅い。
しかも、岡崎さんの場合、大阪からの「上京」だから、決して漱石の『三四郎』のような田舎からのものではない。
それでも、東京に行きたい、と思ったのだから、かなり強い憧れがあったのだろう。
それゆえだろうか、岡崎さんは「上京者」にこだわり、すでに『上京する文學』『ここが私の東京』と「上京」するさまを描いた著作を出版している。
そして、この『憧れの住む東京へ』が「上京者」シリーズの3作目となる。
ここで紹介されている「上京者」は、赤瀬川原平、洲之内徹、浅川マキ、田中小実昌、山之口獏、耕治人の6人。
イメージ的には「上京者」には思えないが、おそらく岡崎さんが好きな作家や詩人や歌手の原点を探れば、やはり東京に憧れ、「上京」してきた人たちだ。
この中で、浅川マキを紹介している章で、岡崎さんが浅川マキと最初に出会ったのは真崎守が描いた『はみだし野郎の子守歌』だったと書いている。
実は私も同じで、1957年生まれの岡崎さんは私より少し年下だが、ほぼ同世代ということもあって、岡崎さんの著作や文章が好きなのはそのせいでもある。
岡崎さんの場合、人が好きになると徹底的にこだわる性格のようで、田中小実昌がバスでのお出かけが好きだと知ると、自身も東京を走る路線バスに乗車したりする。
そういう余裕もまた、岡崎武志さんの魅力といえる。
(2023/04/14 投稿)

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レビュープラス

テレビ放送70周年ということで
昨日黒柳徹子さんの『トットチャンネル』を紹介しました。
3月のはじめに
これからシリーズを順番に読んでいこうと決めた
星新一さんのショートショートの2巻めとなる
『星新一ショートショートセレクション② 宇宙のネロ』を
読んでみたら、
その表題作の「宇宙のネロ」が
まさにテレビの未来を予見したような作品だったのには
驚きました。
星新一さんがこの作品を書いてからどれくらい経つのか知りませんが、
きっと星さんの眼には
テレビ界の未来が見えていたのかも。
挿絵は、もちろん和田誠さん。
じゃあ、読もう。

『星新一ショートショートセレクション②』(理論社)。
表題作である「宇宙のネロ」をはじめとして、17篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
星さんの作品は子供にも人気が高いのは、「ショートショート」ということで読みやすいということもあるだろうが、子供たちにも空想しやすいからだろう。
和田さんの挿絵は、そんな子供たちの空想をじゃましない。
だから、和田さんは挿絵担当だが、まるで星さんとの共著みたいといってもおかしくはない。
表題作の「宇宙のネロ」がいつ書かれた作品かわからないが、その書き出しにこんなセリフが出てくる。
「このごろのテレビ番組の、つまらないこと。」
そんな退屈な世の中に地球外からやってきた宇宙船が、「娯楽」を求めて攻撃してくるという物語。
そこで人類は連日「娯楽」番組を放送し続け、それはどんどん過激になっていくという、まるでテレビ界の世界を皮肉った作品で、テレビ放送70周年を迎えた今読んでも面白い。
一番面白かった、つまりオチが効いているのは、「オアシス」という作品。
わずか3ページの作品ながら、思わず「うまい!」と叫びそうになった。
瞬間芸のような作品だ。
(2023/04/13 投稿)

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04/12/2023 トットチャンネル(黒柳 徹子) - テレビ放送70周年を祝して

昭和28年(1953年)2月1日。
つまり、今年(2023年)はテレビ放送70周年になるので、
NHKでは色々なイベントが組まれていたりする。
世代を論じる時に、
テレビがあったかどうかという区分もあったりするが、
放送開始の際にはまだテレビの台数は千台にも満たず、
その価格もとてつもなく高かった。
つまり、ほとんど誰もがテレビを持っていなかったし、
そもそもテレビとは何かということもほとんどの人は知らなかった。

読んでみようと思ったのが、
テレビを語るうえで欠かせない存在となった
黒柳徹子さんの『トットチャンネル』。
この本が出たのは昭和59年(1984年)だから、
放送開始から30年経った頃。
それから文庫化されているが、
今読んでも面白いのはやはり黒柳さんの文章の卓越さをいっていい。

NHK専属テレビ女優第1号の何人かの一人で
この作品ではそうなるまでの受験の様子から描かれている。
面白いのは、
草創期ゆえに起こる事件(!)の数々。
刑事ドラマで犯人に手錠をかけたもののそれを外す鍵が見つからず、
犯人とつながったままドラマが続いた話といった具合に
何度大笑いをしたことか。
でも、そういう事件(!)があればこそ、
今もテレビで面白いのに違いない。

テレビのありようにも変化がみられる。
そんな時にこそ、テレビ草創期の人たちの姿が貴重に思える。

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04/11/2023 朝星夜星(朝井 まかて):書評「この夫婦のことはもっと知られてもいい」

今日は朝井まかてさんの最新刊
『朝星夜星(あさぼしよぼし)』という長編小説を紹介します。
本当に朝井まかてさんは
どこまで上手くなるのか、
毎回感心し続けていますが、
この作品もうまい。
できれば、朝ドラなんかでやれば面白いのにと
つい思ってしまうのは
朝井まかてさんの作品に登場する人物の造型が
うまいからかもしれません。
で、ついこの主人公にはどんな役者がいいかなんて
描いてしまいそう。
これからも朝井まかてさんの作品を
楽しみにしています。
じゃあ、読もう。

朝井まかてさんの『朝星夜星』(2023年2月刊)の主人公「草野丈吉」は実在の人物である。
「人名辞典」によれば、「幕末・明治時代の料理人」とあって、長崎出島のオランダ商館で西洋料理を習得、その後長崎で我が国初の西洋料理店を開くと出ている。
明治維新後には店名を「自由亭」とし、大阪や京都にも出店、西洋料理の普及に努めたとある。
丈吉は明治19年、47歳で亡くなっている。
彼とその妻ゆきを主人公にした朝井さんのこの作品は、幕末から明治を駆けぬけた志士や政治家たちを料理で支えてきた、長編歴史小説だ。
タイトルの「朝星夜星」は、結婚間もない頃ゆきに言った丈吉のこんな言葉からとられている。
「おれらの甲斐はほんのつかのま、食べとる人の仕合わせそうな様子に尽きる。その一瞬の賑わいが嬉しゅうて、料理人は朝は朝星、夜は夜星をいただくまで立ち働くったい」
この言葉通り、読み書きの出来なかった丈吉ながら、ひたすら西洋料理に邁進していく。
そんな夫に料理が満足にできなかった妻ゆきは、その大らかな人柄と体躯で、夫とその家族を支えていく。
この夫婦に手を差し伸べる人たちもまたすごい。
陸奥宗光、五代友厚、岩崎弥太郎、といった明治の時代を作った人たちが、丈吉の西洋料理に舌鼓をうち、丈吉夫婦が提供するホテルとレストランが日本と西洋を結ぶ架け橋と信じて支援していく。
物語はゆきが丈吉に見初められ、結婚して、三人の子供たちの子育てや娘の破談など、実にドラマチックに進んでいく。
丈吉の早すぎる死のあと、最後には夫婦がこしらえてホテルを手放すところまで描かれていて、さすが、朝井さんの筆は飽かせない。
(2023/04/11 投稿)

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04/10/2023 たんぽぽの不思議な俳句 - わたしの菜園日記

さすがに桜は散って葉桜になりつつあります。
そのかわり、畑ではたくさんのたんぽぽを見ることができます。

たんぽぽといえば、この俳句。
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ 坪内 稔典
不思議な句ですが
妙に心に残る作品でもあります。

週末の土曜日曜で
夏野菜栽培のための畝づくりをしました。

写真でいえば、
ジャガイモの葉が見えているのが4番畝で、
その奥2つを土日でこしらえました。
一番奥が1番畝で
今スナップエンドウとソラマメを栽培しています。


俳句の季語「豆の花」は多くの場合
ソラマメの花とエンドウの花をさします。
そら豆の花の黒き目数知れず 中村 草田男
この俳句の鑑賞にはやはり実際ソラマメの花を
知っているとわかりやすい。
この日はスナップエンドウの初収穫でもできました。



先週と比べるとだいぶ成長したのがわかります。
芽かきをして土寄せをしました。


写真の真ん中にあるのが芽の出たサトイモ。
右上に見えるのはニンニクで
左側ペコロスとして収穫しようとしているタマネギ。
実はこのサトイモ、
タネイモを購入したのではなくて
昨シーズン頂いた食用のサトイモなんです。
置いておいたら芽が出てきたので
タネイモとして植え付けたのですが、
果たしてうまく収穫までいけるかな。

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04/09/2023 だいじょうぶ!いちねんせい(大木 あきこ) - 入学おめでとう!ピカピカの一年生さん

明日10日のようです。
入学式とか入社式というのは一生の間に何度かありますが、
やはり小学校の入学式が一番うれしくて
晴れ晴れとした行事ではないでしょうか。
「入学児手つなぎはなしまたつなぐ」(右城暮石)
新しい一年生によく見かける光景でもあります。

まず表紙の女の子の表情に魅かれます。
桜の花を見上げるその顔には
未来がいっぱい詰まっているように見えます。
この女の子は、一年生になったばかりのゆなちゃん。
この日から勉強が始まります。

一番前の席でどきどきしているのが、ゆなちゃん。
担任の先生がやってきて、
まずはじめに「自己紹介」です。
ゆなちゃん、うまく話せるかな。
そのあとは「学校たんけん」。
みんなと一緒に学校のいろんな場所を見ていきます。
ところが、途中でゆなちゃん、みんなとはぐれてしまいます。
さあ、どうなるのでしょう?

私のようにもう半世紀以上も前に一年生だった人もいれば、
去年一年生だったばかりの子供もいるでしょう。
来年一年生になる子も、そのお母さんも読んでいるかも。
どんな読者であれ、
あのなんだかどきどきする気持ち、
わかるんじゃないかな。
そんな絵本です。

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04/08/2023 追悼・坂本龍一さん 偉大なる個性でした - 映画「戦場のメリークリスマス」の話

71歳の早すぎる死でした。
坂本さんの音楽、例えばテクノポップと呼ばれたものなどは
私にはちょっと苦手な世界でしたが、
何かの折りに坂本さんのお父さんが
中上健次や高橋和巳といった作家を世に出した
河出書房の伝説の編集者だった坂本一亀氏だということを知って、
妙に感心したことを覚えています。
坂本龍一さんが亡くなって多くの方が
追悼の言葉を話されていましたが、
やはり印象に残ったのは北野武さんの言葉。
『戦場のメリークリスマス』の大島渚監督が亡くなって
デビッド・ボウイが亡くなって、坂本龍一さんが亡くなって
仲間がみんないなくなってしまい、
『戦場のメリークリスマス』は俺だけになってしまいました。
坂本龍一さんへの追悼の思いで
この映画「戦場のメリークリスマス」をアマゾンプライムで
視聴しました。
今日は映画「戦場のメリークリスマス」の話です。

大島渚監督作品。
この年のカンヌ国際映画祭でグランプリの有力候補と言われながら、
以前紹介した今村昌平監督の「楢山節考」が受賞。
ただ今この2本を観た場合、
私なら「戦場のメリークリスマス」を選ぶ。
何しろこの映画、美しいのです。
物語が第二次世界大戦中の日本軍の捕虜収容所の話で
女性の出演者もいないながら
とても美しい映画という印象を持ちました。
もちろん、その一つの要因として
今でも有名な坂本龍一さんの映画音楽があることは間違いありません。

捕虜となったデヴィット・ボウイの英軍兵士に魅かれる
難しい役どころを演じています。
そして、この映画で誰もが注目したのが
北野武さん。
もしかしたら、この映画の出演がなければ
後の北野映画はなかったかもしれません。

個性に勝るものはないと思えます。
坂本龍一さんの死は
大きな個性がひとつ消えたということなのでしょう。
坂本龍一さんの
ご冥福をお祈りします。

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04/07/2023 82年生まれ、キム・ジヨン(チョ・ナムジュ/訳 斎藤 真理子) - 顔のない女性の顔

表紙の装幀が変わることがよくあるが、
韓国で130万部を超えるベストセラーになり、
日本でも単行本で20万部を超えるヒット作となった、
チョ・ナムジュの『82年生まれ、キム・ジヨン』の場合、
表紙の装画を変えることなく文庫化された。
イラストを描いたのは榎本マリコさんで、
その「顔のない女性の顔」がこの物語を端的に言い当てているといえる。
つまり、この物語は
韓国で82年に生まれたキム・ジヨンという女性が
どのようにして育てられ、
どのような社会環境で生き、どんな家庭をつくっていったかを描いたものだが、
それは同時に現代を生きる女性一般に共通する
悩みであったり怒りであったり悲しみであったりを
表現している。
「顔のない女性の顔」に、もしかしたら読者であるあなた自身が
はまり込んでしまう可能性がある。
そうすれば、タイトルだって「〇〇年生まれ、〇〇 〇〇」であっていい。

韓国の女性だからではない。
おそらく日本の女性もまた同じような男性との格差に悔しい思いをしてきただろう。
男性だって、そんな数多くの現象を
時にリアルで、時に社会的な事件として目にしてきたはずだ。
だから、この物語を読んで「よしっ!」と立ち上がるのは女性だけではない。
男性たちが立ち上がるためには、
まずこの物語を読むことから始めたい。
男性たちなら、表紙の女性にどんな顔の女性をはめ込むだろうか。

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04/06/2023 好色(水上 勉) - 考えれば、この小説かなりホラー!?

文壇ゴシップ満載の面白い本だったが、
中でも水上勉と川上宗薫との確執の記事には思わず前かがみになった。
何しろ一方は社会派作家水上勉で、もう片方は昭和の官能小説の大家川上宗薫で
この二人にかつて交流があったことすら知らなかった。
ある時川上が水上を揶揄する文章を発表、
それに怒った水上が川上をモデルとした『好色』なる作品を書くことになる。
書かれている内容に衝撃を受けた川上の妻が自殺まで考えたという。
一体、水上勉の『好色』とはどんな作品なのか。

同じ年の10月単行本化されている。
主人公の私とその友人鬼頭宗市の奇妙な関係を描いた作品で、
鬼頭は牧師の息子であったり教師をしていたり、
あるいは有名な文学賞に何度も落選(実際川上宗薫は芥川賞に5回落選している)など、
明らかに川上をモデルにしているのがわかる。
しかも、この鬼頭は妻をほっておいて
何人もの女性と交流を持つ「好色」な男で、
自分の教え子にまで触手をのばしている。

こういう作品を書かせ、文芸誌に掲載させた編集者というのも
おぞましいものだ。
それにしても、やはり人に恨みをかうと怖いことになる
見本のような小説である。

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04/05/2023 この春から「英会話タイムトライアル」にチャレンジ!

万物が溌剌としている意から来た言葉。
春という季節はいのちの息吹を感じます。
この春社会人になった人、
進学した人、進級した人、
定年になった人などさまざまですが、
それでも誰もが新しい日々に胸躍らせているのではないかな。
名を呼べば視線まつすぐ入学児 鷹羽 狩行

NHKの英語講座に挑戦しました。
選んだのは「中学生の基礎英語 レベル1」。
「中学1年生」あたりのレベルのラジオ講座です。
実はこの講座を1年間やり遂げたのですが、
どうも途中から聞き流していて、
気がつけば講座内のスキットさえ聞き取れなくなりました。
やっぱりやるなら
じっくりまじめにしないといけません。

人生の中では一歩前進、と
自分をなぐさめています。
そして、今年は無謀にも
「中学生の基礎映画 レベル1」よりも
難易度レベルをひとつかふたつ上げて
ラジオ講座「英会話タイムトライアル」に挑戦します。
この番組は、
日常会話をテンポよくスムーズに話せるようにトレーニングする番組。
月曜から金曜まで毎日ありますが、
こちらは「中学生の基礎英語」より5分短い、
10分の講座。
講座時間の短さで選んだでしょ、なんて言われないように
頑張りたい(と思います)。

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いよいよ昨日から
NHKの連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)の第108作目となる
「らんまん」が始まりました。
今回の作品は植物学者牧野富太郎がモデルとなっています。
主人公の万太郎を演じるのは神木隆之介さん。
朝ドラで男性が主演を演じるのは2020年の「エール」以来だとか。
朝ドラはここ何作か現代を描いた作品が多かったので
今回は朝ドラの直球勝負というところかな。
とても楽しみにしています。
そこで、今日はドラマが始まったのを祝して
牧野富太郎の生涯を描いた傑作
朝井まかてさんの『ボタニカ』を
再録書評で紹介します。
朝ドラをもっと楽しみたい人、
必読の一作です。
じゃあ、読もう。

植物学者牧野富太郎のことは、その生涯や業績は知らなくても、名前だけが知っているという人は多いかもしれない。
理科の授業であったか、日本史のそれであったか、よくは覚えていないが、子供向けの伝記もたくさん出版されているようだから、有名人であることは間違いない。
本作品は朝井まかてによる牧野の生涯を描いた長編小説である。
タイトルの「ボタニカ」は「植物」を指す言葉だが、この作品の中で若い頃の牧野がその意味を尋ねられて「種」と答える場面がある。
牧野のこの国の植物学や教育の現場で果たした役割もまた「種」であったのだろうと、この長い物語を読み終わって感じた。
それにしても牧野のような生き方が誰もができるわけではない。
土佐(高知県)の酒づくりの大店の息子でありながら、その財産をすべて自身の学問に使い果たし、故郷に妻がいながらも学問の地には女と別の所帯を持つ。
いくら学問ができたとはいえ、こういう人物を親戚に持つと大変だろうが、故郷の本妻(やがて離縁するが)も東京での女(やがて本妻となるが)も牧野を支え続ける。
あるいは、小学校中退という学歴しかなく研究を続けた大学で冷や飯を食い続けるが、その一方で彼の支援し続ける人もいた。
「人生は、誰と出逢うかだ。」、本作の終盤近くに、朝井はこう書いた。
それにしても、朝井の筆のなんと自由闊達なことか。
特に最後の10数行の文章は、作者の心の高ぶりがそのまま伝わってくる、詩のような名文だ。
牧野風に書くならば、草木の澄み切った露のような。
(2022/03/03 投稿)

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04/03/2023 桜も見納め - わたしの菜園日記

畑の横を流れる鴻沼川にも桜の花びらを浮かべて
花筏がみられるようになりました。

一片のまた加はりし花筏 上野 章子
それでも今が見頃の桜もあって
急いでそんな風景を何枚か載せておきます。



3月31日の金曜日の午前に
畑の利用者の皆さんが何人か集まって
花見会と称した懇親会がありました。
畑から見た桜の光景もまさに満開。

なんでもない話ながら、
なんとも楽しい時間なのがうれしい。
栽培や収穫だけでなく、
こういう交流があるのが
この菜園のいいところ。

野菜たちも人に見られることで
とてもよく育つのではないかという話。
植物にも話しかけるといいという話をよく耳にしますが
野菜もそうかもしれません。
なので、今がんばっている私の野菜を紹介しておきます。
こちらが早くも莢が付き始めてきたスナップエンドウ。

葉の緑の中にあるとなかなか見つけにくい莢ですが
来週には収穫ができそう。
がんばってくれて、ありがとう。


今回、トウヤとダンシャクの2種類を育てていますが、
葉の色も形状も違うのがまた面白い。
写真の下がトウヤで、上がダンシャク。
がんばってくれて、ありがとう。


想像以上に太くて大きな芽に
驚いています。
がんばってくれて、ありがとう。
左上で芽をだしているのがトウモロコシ。
この畝には桜の花びらが舞い落ちて
それもまた春らしい畑の表情です。

冬野菜の片付けをしました。
そろそろ夏野菜のための畝づくりも始めます。

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04/02/2023 うみ(ピレット・ラウド/訳 内田 也哉子) - 海には母が隠れています

でも、エストニアってどのあたりにある国か知っていますか。
この絵本をきっかけに調べてみました。
エストニアは北ヨーロッパにあって、バルト三国のうち最も北に位置する国です。
国の広さは日本の九州より少し広く、人口は130万人強。
美しい景色と自然が広がる国だそうです。
この絵本も見ていると、なんだかこの国が持っている自然の豊かさみたいなものを
感じます。

おふろに入れたり、物語を読んできかせたりする、
母のような存在です。
漢字の「海」には「母」という文字が入っているように、
海に母の存在を感じるのは、どこの国にもある
世界共通の思いなのかもしれません。
そんな大きな海ですが、
あまりにも魚たちがわがままなので、どこかに行ってしまいます。
それでも、魚たちは遊ぶことに夢中になっていて、
海がいないことにも平気です。
でも、海がいないと物語を聞くことができません。
海は魚たちのところに戻ってくるのでしょうか?

通じる世界観を感じます。
訳者は樹木希林さんの娘、内田也哉子さん。
内田さん自身、母親でもあるので、
つながるものを感じたのではないでしょうか。

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04/01/2023 映画でお花見 - 映画「あん」の話

今日1日は嘘をついても許される日、エープリルフール。
四月馬鹿ともいいます。
騙す人ある幸せや四月馬鹿 市川 栄次
東京の桜も今日明日が見納めでしょうか。
今年は開花が早かったですが、
そのあと天気がぐずついて
楽しむ機会を逸したという人も多かったかもしれません。
ならば、映画で花見などいかがでしょうか。
見事な桜が見れる映画でオススメなのが
2015年に公開された「あん」。
今日は映画「あん」の話です。

河瀨直美監督作品です。
原作はドリアン助川さん。
物語はどら焼き屋の雇われ店長だった青年(永瀬正敏)のところに
徳江さん(樹木希林)という初老の女性がやってくるところから始まる。
徳江さんのあん作りは本格的で、
そのおいしさに店はたちまち繁盛していきます。
しかし、実は徳江さんがかつてハンセン病患者だったことが噂となり
お客は遠のいしまいます。
青年と徳江さんを慕っていた少女(内田伽羅・樹木希林の孫娘)は
徳江さんのいる施設に足を運んでみることにしました。

なんといっても桜と小豆からできるあんがとてもきれい。
桜がきれいというのはその通りですが、
あんも見ているだけできれいなんですね。
おいしいものはきれいなんだと実感できます。
この映画を私はDVDで何回か観ていますが、
きっと映画館の大きなスクリーンで観たら、
桜もあんももっと圧倒されたでしょうね。

東京・東村山市にある国立療養所多磨全生園や久米川駅南口の桜並木、中央図書館などで
撮影されたそうです。
今年の桜もそろそろ見納め。
でも、映画「あん」の桜はいつでもきれいに咲いています。

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