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 今年(2023年)の初め、NHKEテレで放映された「趣味どきっ!」という番組は、
 「読書の森へ 本の道しるべ」と題した、8人の著名人による読書ガイドでした。
 そのうちの一人が、料理愛好家の平野レミさんで、
 番組で、2019年に亡くなった夫・和田誠さんの多くの著作で一番好きだと語っていたのが、
 この『わたくし大画報』でした。
 この本はおそらく和田誠さんの著作の中でも結構初期のもので、
 1982年に出版されています。
 初出は小説誌で、1974年から2年季刊連載された「家庭大画報」と、
 1979年から隔月連載された「渋谷大画報」での構成になっています。

  

 タイトルは違いますが、ともにエッセイで、
 仕事のことや和田さん得意の映画や芝居のことなどが、
 和田さんのイラストとともに自由に描かれていることは同じです。
 そして、おそらくここが平野レミさんの大好きな点だと思いますが、
 家庭で起こったあれこれが軽妙に描かれていて、
 今読むと思い出のアルバムのようになっています。

 「家庭大画報」では初めての出産、続く「渋谷大画報」では子供は2人に増えて、
 まさに新米パパママの奮闘ぶりがほほえましい。
 こんな小さな子供たちも今はすっかり大人(おじさん?)になり、
 新しい家庭を持っているのだから、
 他人の家のこととはいえ、なんだかちょっとうれしくなります。
 レミさんがこの本が大好きな理由、それは大好きな家族が描かれているからでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  川上弘美さんの『東京日記7 館内すべてお雛さま。』は、
  書名に「7」とあるように、
  シリーズ7冊めの作品です。
  最初に刊行されたのは、2005年ですから、
  もう18年も前になります。
  このブログでもちゃんと全巻紹介しています。
  このシリーズを読んで
  タメになるとか感動するとかないのですが、
  なんでしょうね、
  つい読みたくなります。
  それって、おいしい水みたいかな。
  味ってあまりないのに、
  とってもおいしく感じる時ありますよね。
  あんな感じの作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  コロナ禍であっても彼女は彼女                   

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、インフルエンザと同様の「5類」に変更されたのは、2023年5月。
 だからといって、ウイルスが消えた訳ではないのに、なんだか気分が違う。
 コロナが騒がれだしたのが、2020年はじめだから、実に3年という長い期間、私たちの生活はあっちにいったりこっちに追いやられたしたことになる。
 日記をつけている習慣の人にとっては、貴重な3年の記録として残っているのではないだろうか。

 では、この人の場合はどうだろう。
 「WEB平凡」で長期連載となっている川上弘美さんの『東京日記』の7巻目が出た。
 連載期間は2019年3月から2022年1月までで、世界中がコロナ禍で暗澹としている時期である。
 「新型コロナが日本にもしだいに広がりつつあり、外出や集会の自粛が要請される毎日」と書かれているのは、「三月某日 晴」とあるが、おそらく2020年の3月のことだろう。
 続く、「四月某日 晴」、「新型コロナ感染による緊急事態宣言が発出される。」とある。
 この時期、世の中はかなり神経質になっているが、川上さんの文章はあまりそう感じない。
 それが、この『東京日記』の良さであり、面白さといえる。
 何しろ、こんな大事な時期の日記ながら、書名は『館内すべてお雛さま。』なんですから。

 それで、一冊の本としてまとめあげられた「2023年初春」、川上さんは「あとがき」にこう書いている。
 「それほどに「日常」は強いものであるという驚きがありますが、反対にいえば、「日常」がまだ続いていることのありがたさも、身にしみます。」
 なんだかんだあっても、やはり川上弘美さんも緊張していたのかもしれない。
  
(2023/05/30 投稿)

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 昨日荒井真紀さんの『トマト』という絵本を紹介しましたが、
 その表紙に描かれていたのは
 実のなりかたとか大きさからいうと
 大玉トマトだと思います。
 トマトもその種類によって実のつきかたが違います。
 これは今育てているミニトマト

  20230527_152244_convert_20230528082456.jpg

 中玉トマトもこれとよく似たつきかたをしますが、
 少し大きめに育つように摘果したりします。

 土曜日(5月27日)見つけて、面白いと思ったのが
 モロッコインゲンの莢のつきかた。
 まるで音符が並んでいるようです。

  20230527_140740_convert_20230528082215.jpg

 そのモロッコインゲンを収穫しました。

  20230527_155319_convert_20230528082552.jpg

 収穫の目安は莢の長さが14、5㎝とか。
 まずまずの大きさです。

 この日、ニンニクのあとにラッカセイの種を蒔きました。

  20230527_141916_convert_20230528082358.jpg

 左手前の4つの蒔き穴にあるのがラッカセイ
 そのうえに葉が見えるのが、サトイモ
 台所に転がっていたサトイモを植えたのですが、
 ここまで大きくなりました。

 ソラマメのあとの区画は次の栽培のための畝作り。
 手前の畝がこの日作ったもの。

  20230527_152630_convert_20230528082525.jpg

 黒マルチを貼ってあるところに
 モロヘイヤを栽培する予定。
 左、白く見えているのは太陽熱消毒をしています。
 このあと、ニンジンを育てます。

 畑では夏野菜の収穫はまだですが、
 今は野菜たちの花が楽しめます。
 これはキュウリ

  20230527_140140_convert_20230528082137.jpg

 これはピーマン

  20230526_093227_convert_20230528081929.jpg

 ナスの花も写したかったのですが、
 ナスは恥ずかしがり屋で下を向いたまま。
 まあ、野菜にも個性があるのでしょう。

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 家庭菜園を始めて、今年(2023年)で9年めになります。
 夏野菜の栽培に欠かせないのが、トマトです。
 トマトは実の大きさで、大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトと分かれますが、
 これまでその全部を育ててきました。
 どのトマトもそうですが、栽培は苗から始めてきました。
 なので、荒井真紀さんの『トマト』という絵本を開いて、
 種から(この絵本には実物大の種も描かれています)育てているのを見て、
 感心しました。
 時々、畑のすみっこで一年前に実からこぼれ落ちたのでしょう、
 種から芽を出したトマトを見かけることもあるので育つことは知っていましたが、
 実際に栽培したい時は苗からの方がやりやすいでしょう。

  

 この絵本ではトマトの花がどんなふうに咲いて、
 その中の様子も、荒井さんの細かくて丁寧な絵で表現されています。
 もし実際にトマトを育てているなら、
 この絵本を持ってじっくり観察すると面白いでしょう。
 荒井さんの素晴らしいのはそれだけではありません。
 収穫したトマトから種を全部取り出してみるほどの観察好きなのです。
 ちなみに、荒井さんが取り出した種は、272個だったそうです。

 トマトにはたくさんの種類があって、おしまいにそれらも
 名前とともに描かれています。
 「ももたろう」とか「アイコ」なんかは有名です。
 園芸店に行けば、たくさんの種類のトマトの苗が売られています。
 それらの苗がどんな実をつけるのか、
 この絵本で確かめることもできます。

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 現在放送中のNHK大河ドラマ「どうする家康」で、
 織田信長を演じているのは岡田准一さん。
 かなり信長のイメージに近い配役のように思います。
 大河ドラマではこれまでも多くの俳優が信長を演じてきて、
 最近では「麒麟がくる」の染谷将太さんが演じて人気となりました。
 ただ染谷さんの場合、丸顔ですからそのあたりがどうもイメージとは違います。
 昭和の人間ならイチオシが「太閤記」(1965年)の高橋幸治さん。
 あまりに人気が出すぎて「信長を殺さないで」という投書が来たそうです。
 殺さないでといわれても、
 歴史を曲げるわけにもいきません。
 最近では昨年(2022年)秋に、岐阜の信長まつりのパレードに出て
 50万人近い人が熱狂したとして話題になったのが、
 木村拓哉さん。
 確かに木村さんの容姿のイメージは信長に近い。
 木村さんが信長まつりに参加したのは
 映画の宣伝の意味もあったのでしょう。
 その映画が「レジェンド&バタフライ」。
 今年の初め公開された映画ですが、
 早くもアマゾンプライムで配信されたので
 さっそく視聴しました。
 今日は、映画「レジェンド&バタフライ」の話です。

   

 映画「レジェンド&バタフライ」は2023年公開の
 大友啓史監督作品。
 大友監督といえば「るろうに剣心」シリーズの監督として有名です。
 なので、戦闘シーンはお手のもの。
 脚本は古沢良太さん。
 古沢さんといえば、「どうする家康」の脚本も書いていて
 信長や家康の時代にかなり勉強したのじゃないかな。

 この映画は信長の物語というより
 信長とその正室・濃姫の夫婦の物語です。
 信長を演じたのは木村拓哉さん。
 濃姫は綾瀬はるかさんが演じています。
 男まさりの濃姫を綾瀬さんが巧みに演じていて、
 最初は通わなかった心がやがてつながっていく、
 そのあたりの心の綾の演技はさすが。
 終盤にかなりファンタジー色が強くなって、
 歴史劇というよりつくりものめきますが、
 これはそういう映画なんだという割り切りがあれば
 愉しめる作品になっています。

 ちなみにこの映画で徳川家康を演じているのは
 斎藤工さん。
 全然気づきませんでした。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は『星新一ショートショートセレクション』の3冊め、
  『ねむりウサギ』の紹介です。
  子供の頃どんな本を読んでいたのか
  あまりよく覚えていないのですが、
  子供の頃に星新一さんの作品に出会っていたら
  ずいぶん違った大人になっていたかもしれません。
  宇宙とか科学とかロボットに興味を持った
  そんな大人に育ったかもしれない、なんて
  今頃になってこうして星新一さんの作品を
  続けて読んでいると空想したりします。
  今となっては、
  ウサギのように眠ってしまうのがオチでしょうが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  発想はやわらかに                   

 『星新一ショートショートセレクション③』(理論社)。
 表題作である「ねむりウサギ」をはじめとして、16篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
 装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
 表紙のねむっているウサギもかわいいが、作品の中の挿画に描かれた駆けているウサギもいい。和田さんって、さりげなく描いているようで、本当はとってもうまいのだろうな。
 気になる方はぜひ本文で確かめて下さい。

 さて、その「ねむりウサギ」ですが、あの有名な「ウサギとカメ」の話がベースになっています。
 足の速いウサギが足の遅いカメに駆けっこ競争で負けてしまう、というお話、確かイソップ童話にある一篇。
 あのお話でうさぎが途中居眠りしてしまって負けるのですが、それ以外にウサギがカメに負けることなんかあるのかな。
 そこで、星新一さんは考えました。ウサギがカメに負けてしまうケースを。
 まずは、ウサギがコースを間違えること。(うむ)
 次は競争前日にお酒を飲み過ぎてしまい(うむむ)、さらに負けが続いて神経質になって前夜眠れなくて(うむむむ)と、続いていく。
 こうやって考えていく面白さを、星さんのショートショートは教えてくれているように感じます。

 その他、黄金の惑星を見つけた宇宙飛行士のおかしな結末を描いた「黄金の惑星」など宇宙モノのショートショートが面白い。
  
(2023/05/26 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  最近アニメの「名探偵コナン」にはまっていて、
  劇場版アニメを立て続けに観ています。
  そこに登場するコナン少年を助ける博士の名前が阿笠(あがさ)博士。
  いうまでもなく、アガサ・クリスティーから採られています。
  今日は本家アガサ・クリスティーの作品から、
  ポアロものの『邪悪の家』の紹介です。
  この作品のことを
  いつもの霜月蒼さんは『アガサ・クリスティー完全攻略』で、
  「安心のミステリ仕掛け」と書いています。
  謎解きをポアロとともに愉しむには
  うってつけの一作かもしれません。
  評価は★★★☆
  私なら★四つにしたいところ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  謎解きを愉しめる作品                   

 この作品は1932年に発表されたもので、ポアロものの長編小説として6作めにあたる。
 原題は「Peril at End House」で、「End House」はこの物語の舞台となる館のこと。
 「Peril」には「危険」という意味があるから、さしずめその館に起こる危機というが原題。それを『邪悪の家』とすると、やや雰囲気が違うが、作品の中にこの館を指して「邪悪の家」という人がいるから仕方がない。

 この作品の語り手は、ポアロもので馴染みのあるヘイスティングズ。
 ポアロからは「きみの直観はいつもまちがっている」とからかわれているが、そのなんともいえないペーソスな雰囲気はポアロものには欠かせない人物。
 ポアロものといわれる作品にはヘイスティングズが登場しないものもあるが、彼がいると作品がより面白くなるのは間違いない。

 この作品では、保養地で休暇中のポアロたちが偶然命を狙われている若い女性と知り合うことから始まる。
 休暇中とはいえ、ポアロがこの保養地に来たことが新聞の記事にもなるほどで、すでにポアロが名の知れた名探偵であることがわかる。
 そして、今回の事件の犯人は、そのことを巧みに利用している。
 殺人が起きるのは、ポアロがこの女性の助けようとした矢先のこと。女性の従妹が殺されてしまう。
 作品中には、ポアロが事件を解くカギとなる項目が列挙されていて、謎解きを愉しむには面白い作品となっています。
 犯人の動機はともかく、この人怪しいよなと思える人は結構早くからわかるのではないでしょうか。
  
(2023/05/25 投稿)

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 砂原浩太朗さんは、2021年に発表した『高瀬庄左衛門御留書』で高い評価を得、
 翌年には『黛家の兄弟』で第35回山本周五郎賞を受賞した、
 今もっとも注目されている時代小説作家といっていい。
 砂原さんの魅力はその抑制された文章と静謐な世界観にあるといっていい。
 まだ作品数が多くないので、これから先どのような作品をものにするのか、
 期待値も大きい。

  

 そんな砂原さんが2021年の終わりから雑誌「オール讀物」に不定期連載したのが、
 この『藩邸差配役日日控』である。
 評判となった『高瀬庄左衛門御留書』が漢字のみを連ねたタイトルだったから、
 その験担ぎということもあったのだろうか、
 今回も漢字だけを連ねたタイトルになっている。
 5つの短編で出来上がっているから、連作集ではあるが、 、
 やはり大きな線が一本つながっているので、長編として読んでもいい。

 主人公の里村五郎兵衛は、神宮寺藩の江戸藩邸の差配役の頭である。
 差配役というのは、
 藩邸の管理を中心に殿の身辺から邸の雑役に至るまで目を配る要の役目で、
 現代でいえば会社の総務・秘書室みたいな役目だろうか。
 里村には二人の娘がいるが、妻を若くして亡くしている。
 作品の大きな線というのは、里村の家族に関係することだが、
 それは最後の作品「秋江賦」で明らかになる。

 砂原さんへの期待が大きいせいだが、
 この作品はどちらかといえば平凡に見えるかもしれない。
 あるいは、作品の尺が足りないせいかもしれない。
 主人公を取り巻く人たちへの踏み込みが足りなくて、
 それが作品を平凡にしているように思える。
 もっとも、まだ期待の作家であることには違いないが。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  詩人の石垣りんさんのエッセイ集『朝のあかり』。
  中公文庫のオリジナルです。
  解説を書いているのは梯久美子さん。
  書評でこの文庫には年譜がないのが残念と書きましたが、
  その反対にとても感心したことがあります。
  それは巻末に
  それぞれのエッセイの「初出一覧」が載っていること。
  石垣りんさんのことは
  若い時にはあまり知りませんでしたが、
  私が十代の1970年代の時にも新聞にエッセイを載せていたりしています。
  知っている人には
  よく知られた存在だったのですね。
  今回の書評のタイトルは
  石垣りんさんの代表詩「表札」の最後の一行から。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  石垣りん/それでよい。                   

 詩人石垣りんのエッセイ集『朝のあかり』は、彼女の生前に刊行された3冊のエッセイ集の中から選ばれた71篇を収めた読むに値いする文庫オリジナルですが、唯一残念なのが、年譜がないことでしょう。
 仕方がないので、岩波文庫の『石垣りん詩集』に載っている「石垣りん自筆年譜」を参考にしながら、エッセイとともにその84年の人生をたどるのがいい。

 石垣りんは昭和9年(1934年)、14歳で日本興業銀行に事務見習いとして就職。
 その時の幼い姿や18円の初任給に喜ぶ姿など、たびたびエッセイに綴っています。
 現代の感覚でいえば、14歳で仕事に出るのは過酷な環境だったのかと思ってしまうが、そうではないと、石垣は書き残している。
 「家は、子供を働きに出さなければならないほど生活に困っておりませんでしたが、(中略)私は早く社会に出て、働き、そこで得たお金によって、自分のしたい、と思うことをしたいと、思いました。」
 石垣はその頃から書き溜めた文章を色々な雑誌に投稿する少女で、彼女は働くことで書く自由を求めたといえます。
 しかし、もちろん働くことは楽ではなく、まして当時の社会では女性の地位も低く、そこにやるせない感情もありました。
 彼女の代表作ともいえる「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」などの詩は、そういうところから生まれたといっていいでしょう。

 石垣が会社を定年退職するのは昭和50年(1975年)、55歳の時でした。
 その少し前、50歳の時に川辺の1DKのアパートで一人暮らしを始めます。
 そこから先、亡くなるまでの小さな生活ぶりの様子は、エッセイにもうかがうことができます。
 そんな石垣りんにとって、人生とは何であったのでしょう。
 少し長めのエッセイ「詩を書くことと、生きること」にこう記しています。
 「長いあいだ言葉の中で生きてきて、このごろ驚くのは、その素晴らしさです。」
 「私のふるさとは、戦争の道具になったり、利権の対象になる土地ではなく、日本の言葉だと、はっきり言うつもりです。」

 時代がどんなに変わろうが、石垣りんが問いかけたことは不変です。
 だからこそ、このエッセイ集は読むに値いする一冊なのです。
  
(2023/05/23 投稿)

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 昨日5月21日は
 二十四節気のひとつ、小満でした。
 草木がしだいに枝葉を広げていく、そんな時期です。
 そして、田植えが始まる頃でもあります。
 近所の田んぼでも先週半ば頃に田植えが終わりました。

  20230521_144425_convert_20230521181923.jpg

    忽ちに一枚の田を植ゑにけり        高浜 虚子

 昔の人はそんな光景を見ながら
 季節を感じていたのでしょうね。

 夏野菜の苗の植え付けが終わった畑では
 大事な作業が待っています。
 それがわき芽とり
 気がつけばどれがわき芽かわからなくなりますから
 小まめに確認が必要になります。
 では、問題です。
 これはトマトの苗ですが、どれがわき芽かわかりますか。

  20230512_092902_convert_20230521181744.jpg

 とってもわかりやすいわき芽を残しているので
 簡単にわかると思います。

 こちらは成長したトウモロコシに防虫ネットをかけたところ。

  20230521_154719_convert_20230521181955.jpg

 背の高いネットに中にトウモロコシがあります。
 その横にあるのがモロッコインゲン
 よく見るとかわいい莢がつきだしてきました。

  20230519_092437_convert_20230521181824.jpg

 これはキュウリ

  20230519_104716_convert_20230521181854.jpg

 かわいい実をつけていますが、
 これはとってしまいます。
 これからどんどん実をつけてもらうための処置です。

 野菜にはそろそろ採り頃ですよというサインがあります。
 例えば、ソラマメなら空を向いていた莢が下を向くのがそうですし、
 タマネギなら葉が倒れてきた時、
 ニンニクなら葉が枯れてきた時などです。
 そのサインを受け、
 昨日(5月21日)ニンニクと葉の倒れたタマネギ
 収穫をしました。

  20230521_165712_convert_20230521182047.jpg

 ニンニクは満足いく収穫、
 タマネギはこれから続々と採れそうです。

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 ごみだから、なんでも、どこでも、ポイポイ捨てていいわけではありません。
 ごみ捨てにもルールがあります。
 よく耳にするのが、「ごみの分別」のルールです。
 「燃えるごみ」とか「資源ごみ」とか「不燃ごみ」とか
 きちんと分けて捨てなければいけません。
 もし、分けなければどうなるか。
 答えは、正高もとこさん作の絵本『ごみしゅうしゅうしゃのぽいすけくん』の中にあります。
 ぽいすけくんの仲間のぱっくんのおなかが燃え出す騒動が
 描かれています。
 「燃えるごみ」にまざってスプレー缶が捨てられていたのです。
 ぽいすけくんはびっくりします。
 そして、ちょっとこわくなりました。
 そうしたら、カラスにいたずらされているごみ置き場とか、
 海岸に捨てられたたくさんのごみとかが気になりだしました。
 ぽいすけくんは、だんだん元気がなくなっていきました。

   

 この絵本にはごみ収集車だけでなく、
 小型トラックとか消防車、救急車といった働く車が
 いっぱい出てきます。
 それらの絵を描いたのは鎌田歩さん。
 子供たちが大好きな車たちがとても暖かなタッチで
 描かれています。

 元気のなくなったぽいすけくんでしたが、
 子供たちの応援で少しずつ元気になってきます。
 ほら、今日も聞こえます、ぽいすけくんの元気な歌声が。
 「うおー ぱかぱかぱか おーん」

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 先々週の土曜日、つまり5月6日、
 ティム・バートン監督の「チャーリーとチョコレート工場」を紹介しました。
 原作がロアルド・ダールの児童小説『チョコレート工場の秘密』で、
 映画化はティム・バートン作品が2度目にあたります。
 一度目の映画化作品はタイトルが「夢のチョコレート工場」で、
 実はあまり知られていません。
 それもそのはずで、
 この映画は日本では公開されていなくて、DVD化で流通しているだけ。
 ただこちらの方が面白いという人もいて、
 「機会があれば観てみたい」と
 先々週に書きました。
 その機会がありました。
 近くのTSUTAYAのレンタルショップに
 このDVDの在庫がありました。
 今日は、貴重な映画「夢のチョコレート工場」の話です。

  

 映画「夢のチョコレート工場」は1971年公開のアメリカ映画。
 ただし、日本での公開はなかったようです。
 この映画の原題が「Willy Wonka& the Chocolate Factory」で、
 2005年公開されたティム・バートン作品の原題が
 「Charlie and the Chocolate Factory」で
 チャーリー(Charlie)は主人公の少年の名前、
 ウィリー・ウォンカ(Willy Wonka」はチョコレート工場の工場主の名前。
 なので、二つの作品は少し視点が違います。
 ティム・バートン作品の方が少年の純粋さとか家族愛とか
 テーマが鮮明で、
 「夢のチョコレート工場」は児童文学の余白を大切にしている
 そんな作品に仕上がっています。

 この作品のウィリー・ウォンカを演じているのは
 ジーン・ワイルダーで、
 さすがにジョニー・デップと比べられると負けてしまいます。
 彼、ひょうきんでどことなく癖があって、
 どことなく最近人気のムロツヨシさんに似ています。

 チョコレート工場の奇抜でファンタスティックな仕掛けは
 それはもう2005年公開されたティム・バートン作品の方が
 華やかで完成度も高い。
 でも、それって1971年と2005年の差で
 比べてしまうのがよくない。
 むしろ、1971年でいろんなことで頑張ったんじゃないと
 いいたくなる。
 手作り感満載で、そこから子供たちが夢を作り出していくとしたら
 「夢のチョコレート工場」は
 児童向け映画として評価してもいいかな。

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 購読している朝日新聞の文字が5月1日から大きくなりました。
 12年ぶりだそうです。
 年を重ねてくると、活字が小さいのはつらいですから
 大きくなるのはありがたい。
 若い頃に買った文庫本などを開くと、文字が小さいのに驚くことがあります。
 その点、新装版になれば活字が少しは大きいですから
 ついそちらで読みたくなります。

  

 漫画家東海林さだおさんは1937年生まれですから、
 この本のタイトル『ショージ君、85歳。老いてなお、ケシカランことばかり』に、
 年齢詐称の疑いはありません。
 でも、それは2023年1月刊行だからいえることで、
 2024年になっても、2025年になっても、「ショージ君、85歳」でいくのか、
 それって年齢詐称じゃないか、ケシカラン!
 と、きっとパンツにも腹を立てる東海林さんなら怒り出しそうだけど。

 この本にはかつて東海林さんが食べ物エッセイやもろもろのエッセイで書いた
 「老い」をテーマにした作品を集めたアンソロジーで
 ありがたいことに活字が大きいのです。
 なんだか新刊の顔して、実は昔のエッセイではないかとつい怒りたくなりましたが、
 活字が大きいから
 許しちゃいます。
 この方が絶対読みやすい。
 それに、巻末に東海林さんのインタビュー「85歳のヨタ話」もあったりするので
 全然許しちゃいます。

 このインタビューの中で、
 85歳の東海林さんはこんなことを言っている。
 「どれだけ好奇心を持っていられるかの差で、年をとってからは、生き方自体に大きな差が出てくる。
 「好奇心とユーモア、すごく大事だと思うな、人生を楽しく過ごすためにはね。
 名言です。

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プレゼント 書評こぼれ話

  第168回芥川賞は、
  井戸川射子さんの『この世の喜びよ』と
  今日紹介する佐藤厚志さんの『荒地の家族』の
  二作同時受賞でしたが、
  二つの作品のあまりにも作風の違いに
  逆に文学の奥深さを感じます。
  『荒地の家族』は小説としてよくまとまった作品です。
  受賞インタビューで
  佐藤厚志さんが「書く」ということを意識するようになったのは
  大江健三郎さんの『新しい文学のために』を
  読んだことがきっかけと話されていて、
  しばらく前に亡くなった大江健三郎さんの心構えが
  こうして花を咲かせたのだなと
  思いました。
  1月の発表からようやく読めた
  芥川賞受賞作でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あの日のことを忘れない                   

 第168回芥川賞受賞作。(2023年)
 作者の佐藤厚志さんが仙台で書店員でもあるということは、受賞後の報道から知られている。
 前作『象の皮膚』は、2011年3月に起こった東日本大震災直後の書店での様など実にリアルに描かれていて読み応えがあった。
 今回の受賞作も東日本大震災で大きな被害のあった仙台の海沿いの街で暮らす男とその周辺の人たちを描いて、深い感動を持たらしてくれる。
 戦争にしろ天災にしろ大きな厄災があった時、死んでいく者と生き残る者が生まれる。
 そのことはやむをえないが、生き残った者となった時、その人にはどうして自分が生き残ったのかという悔悟が生まれることほどつらいことはない。
 作品の中にこんな一節がある。
 「生者は時に闇をかき分けてでも失った人を感じたくて、すがるように光を追いかけて手を伸ばす。」
 この作品こそ、佐藤厚志さんが伸ばした手かもしれない。

 芥川賞選考委員の一人、吉田修一氏は「読後、胸に熱いものが込み上げてきた」と書いているし、それは多くの人の読書後の感想であるかもしれない。
 その一方で、島田雅彦委員の「美談はしばしば、現実のネガティブな部分も隠してしまう」という言葉をおろそかにすべきではない。
 それでも、佐藤さんには大きな厄災を経験した当事者として、臆せずあの日とあの日に続く有り様を書いてほしいと思う。
 あの日のことは忘れてはいけないのだから。
  
(2023/05/18 投稿)

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 上野・不忍池周辺の「上野池之端」は、
 現在でもなかなか風情がある土地だが、
 江戸時代にはすでにいくつもの料理茶屋が軒を並べていたそうだ。
 そんな中に、この時代小説の舞台となる、
 料理茶屋とは名ばかりの三流店の「鱗や」がある。
 この「鱗や」に信州の片田舎の村から奉公に出てきたのが
 まだ14歳になったばかりに、お末。
 この少女と「鱗や」の若旦那が主になって、「鱗や」の立て直しを図っていく。
 そんな物語と思いきや、
 作者西條奈加が仕掛けたのは、もっと大きなミステリー。
 「鱗や」が何故三流店まで落ちぶれたか、そこに人の恨みが重なって、
 大きな事件へと発展してゆくのだが。

  

 この『上野池之端 鱗や繁昌記』は料理屋が舞台にだけあって、
 おいしそうな料理の数々も描かれている。
 「食べる前の期待と、後の満足。このふたつが釣り合って、初めて満たされる。
 これは、物語の中に挟まれた、料理の味わいを表現した一文だが、
 小説そのものにも当てはまる。
 この作品が発表された2014年、
 これと前後して西條さんは『まるまるの毬』を発表していて、
 そちらを先に読んだ私は、
 この作品を読むのは、まさに読む前の期待にあふれていた。
 そして、後の満足も味わえて、
 うれしい読書体験となった。

 『まるまるの毬』同様、シリーズにもできそうな作品ながら、
 これはこれで大団円を迎えているから、よしとしよう。

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 2012年に出版され、200万部を超えるベストセラーとなった
 『置かれた場所で咲きなさい』の著者渡辺和子さんは、
 カトリックの修道者でした。
 1927年父(渡辺錠太郎)の赴任地であった旭川で生まれています。
 その父が警視総監になり、和子さんが9歳の時に父が銃弾に倒れる姿を目の当たりします。
 二・二六事件の際です。
 そういう激烈な体験をした和子さんですから、
 事件から70年以上経ってもこの本の執筆に父との思い出を書き留めています。
 その章のタイトルが「九年間に一生分の愛を注いでくれた父」。
 そして、その章の最後にこう綴っています。
 「この父の子として生まれたことに、いつも感謝しております。」

  

 この本は修道者であった渡辺和子さんが私たちに遺してくれた人生訓です。
 (渡辺さんはこの本を著したあと、2016年に89歳で亡くなられています)
 そして、そのおおもとにあるのは、「感謝」ともいえます。
 日々あることへの「感謝」です。
 タイトルの「置かれた場所で咲きなさい」には、こんな添え書きがあります。
 「境遇を選ぶことはできないが、生き方を選ぶことはできる。
 こういう勇気に包まれた言葉にあふれた一冊ですから、
 多くの読者を得たというのもわかります。

 「言葉は、いつまでも生きものであってほしい。
 渡辺さんのこの本のことは売れた本ということで知っていましたが、
 今回読もうと思ったのは、梯久美子さんの『この父ありて』の中で
 渡辺和子さんが取り上げれていたおかげです。
 あの本を読まなければ、こんな素敵な本にも出会えませんでした。
 それも「感謝」です。

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 NHKの朝の連続テレビ小説(通称 朝ドラ)「らんまん」では
 毎週の週のサブタイトルに植物の名前がついています。
 先週のサブタイトルが「ドクダミ」。
 この時期、道端で見かけることの多い草です。

  20230512_131944_convert_20230513095921.jpg

 別名「十薬」。
 朝ドラの中でもありましたが、薬効が多いところからこの名がつきました。

    どくだみの花の白さに夜風あり       高橋 淡路女

 今日は珍しい実の写真から。
 これは何の実でしょうか?

  20230512_085747_convert_20230513095643.jpg

 これは、ジャガイモの実です。
 この実って何かの野菜の実に似ていませんか。
 そう、トマト
 こちらが今できてきたミニトマトの実。

  20230512_090146_convert_20230513095810.jpg

 ね、似てるでしょ。
 実はジャガイモトマトもナス科の野菜なんです。
 しかも、原産地が南米アンデスですから
 似ているはずです。
 親戚みたいなもの。
 でも、残念ながら、ジャガイモの実は食べられません。
 ためしに切ってみると、こんな感じ。

  20230512_143053_convert_20230513100028.jpg

 ここに種にできます。
 もう少し大きくなればもっとトマトに似るのではないかな。

 モロッコインゲンにも花が咲きました。

  20230512_090101_convert_20230513095733.jpg

 初めて育てる野菜にはどんな花が咲くのか、
 楽しみです。
 モロッコインゲンは上品な白。小さくかわいい。

 冬越し野菜のスナップエンドウはもうおしまい。
 金曜日に片付けました。
 ソラマメもそろそろおわり。
 おわりに近づくと、実は大きくなりません。

  20230512_142624_convert_20230513095955.jpg

 そばにあるのは、
 密植栽培で小さく育てたタマネギ。
 ペコロス
 こういう栽培方法もあります。

 ジャガイモの実にしろ
 ペコロスにしろ、
 家庭菜園ならではの楽しみです。

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 絵本『アグネスさんとわたし』の作者ジュリー・フレットさんは
 カナダのバンクーバー在住の、作家で画家。
 お父さんがカナダの先住民族クリーということもあって、
 作品を通してクリー語の保存につとめているという。
 この絵本の主人公の女の子キャセレナもクリー族の少女という設定で
 彼女が話す言葉にクリー語が使われています。
 訳ではそのあたりがよくわかりませんが。

  

 では、この絵本がそういう先住民族の問題に特化しているかといえば
 そんなことはありません。
 むしろ、タイトルが示す通り、
 アグネスさんというおばあさんと少女の交流の物語といえます。
 丘の上の新しい家に引っ越してきた少女キャセレナ。
 その家の近くに、あたり一面スノードロップという花が咲いている野原があって、
 そこの家に住んでいるのがアグネスさん。
 土でものをつくるのが大好きなアグネスさんと仲良くなったキャセレナは
 毎日のように遊びに行くようになります。

 冬がきて、年老いたアグネスさんはよわってしまいます。
 そんな彼女にキャセレナはたくさんの絵を描いて励まします。
 たくさんの絵を見て、アグネスさんはこういいます。
 「わたしの心にむけた、詩みたいね」って。

 ジュリー・フレットさんの絵本そのものが
 読む人の心に向けた詩なのかもしれません。
 そんなことを感じさせてくれる、絵本です。

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 ここ数日、昭和の本や作品の紹介が続いたので
 映画もそんな時代を舞台にした作品の話をしましょう。
 時代は1955年。
 元号でいえば昭和30年。
 すらすらと西暦から元号に置き換えできます。
 何といっても、
 私が生まれた年ですから。
 昭和30年といえば、戦争が終わってまだ10年という頃ですから
 日本もまだまだ貧しかった時代。
 子供の頃はまだ水洗トイレでなかったし、
 トイレットペーパーなんて置いてなかった。
 その頃、アメリカでは若い人も車に乗ったりダンスに興じたりしてたのですから
 戦争に勝てるはずもありません。
 そんな時代に戻ってしまうという
 ご機嫌な映画なんです。
 今日は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の話です。

  

 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は1985年公開のアメリカ映画。
 監督はこの映画をきっかけに一躍有名になったロバート・ゼメキス
 後に「フォレスト・ガンプ/一期一会」でアカデミー賞を受賞します。
 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はあまりに有名で、
 もう何度も観返している作品です。
 名作の定義はいろいろあるでしょうが、
 多分何度観返してもやっぱり楽しめる映画こそ名作だとすれば、
 この作品はまさに名作といえます。

 舞台は1985年のアメリカ。
 主人公の高校生マーティ(マイケル・J・フォックス)が
 親友のブラウン博士が作ったタイムマシン(デロリアン)で
 1955年にタイムスリップしてしまいます。
 その時代、マーティの両親がまだ高校生の頃で、
 まだ恋愛未満の関係。
 しかも、この時代の父は冴えない高校生。
 一方の母は素敵な女子高校生(リー・トンプソンが演じています)。
 この二人が結ばれないとマーティの存在そのものが消えてしまいます。
 そこで、マーティは恋のキューピット役に。
 しかも、マーティは1985年に戻らないといけないし。
 1955年にタイムマシンを動かせるエネルギーなんて
 落雷以外にない。
 マーティがやってきた1955年に大きな落雷がこの街に落ちることがわかっていて、
 それを利用することに。

 恋の成就と未来への生還。
 二重のハラハラドキドキの連続。
 この作品あまりにうまく出来ていて、
 その後「PART2」「PART3」と作られます。
 どの作品にも仕掛けがあって楽しめますが、
 やはり本編が一番いいかな。

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 向田邦子さんが生まれたのは、昭和4年(1929年)4月で、
 台湾での飛行機事故で亡くなったのが昭和56年(1981年)8月だから、
 まさに昭和の人であったといえる。
 それに向田さんが活躍したテレビもまた
 昭和になって生まれた産物でもあった。

  

 だからだろうか、
 向田さんのたくさんのエッセイには昭和の匂いがする。
 この「食いしん坊エッセイ傑作選」と付けられた
 『メロンと寸劇』に収められたエッセイのどれひとつをとっても
 あの昭和という時代の、今では不思議な明るさを感じることができる。
 例えば、最近値上がりがニュースとなっている卵だが、
 この本に収録されている「卵とわたし」というエッセイを読むと、
 なんだかホッとさせられる。
 そんな中の一節。
 「卵はそのときどきの暮しの、小さな喜怒哀楽の隣りに、
 いつもひっそりと脇役をつとめていたような気がする。

 この本には代表作ともいえる「父の詫び状」や「眠る盃」など
 何度読んでも、うまいと感心するエッセイが収められている。
 また向田さんの代表作ともいえる「寺内貫太郎」シリーズの二作目から
 第3回めのシナリオも入っていて、
 そういう組み合わせがうれしい一冊になっている。

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 昭和の時代に「官能小説御三家」と称された三人の作家がいる。
 宇野鴻一郎富島健夫、そして、この『流行作家』という自伝風小説を書いた
 川上宗薫だ。
 彼らは官能小説でまさに流行作家となった訳だが、
 彼らにはある共通するキーワードがある。
 それが、「芥川賞」。
 宇野鴻一郎は1962年の『鯨神』で第46回芥川賞を受賞したのはよく知られているが、
 富島健夫も芥川賞候補作家だし、
 川上宗薫にいたっては芥川賞候補に5回もなったが、いずれも落選。
 その後、三人は官能作家になったのだが、やはり文章力は優れていたのだろう。

  

 川上宗薫がこの『流行作家』を上梓したのは
 1973年6月。
 すでに官能小説家として一世を風靡していた頃。
 自伝風小説と書いたが、自身が巻き起こした
 水上勉との喧嘩騒動のことも書かれていたり(人物名は変えてある)、
 この作品の執筆当時どれだけの原稿を書いていたかなども
 赤裸々に綴られている。
 これらは興味を持って読まれただろうが、
 きっと一方では眉をひそめる人も多かったのではないだろうか。

 川上は1985年、61歳の時ガンで亡くなるが、
 この作品の終わり近くにその予兆ともいえる病気のことが綴られていて
 暗い予感を感じさせる。
 この作品をはじめ、今では川上宗薫の作品を読む人も少ない。
 この作品を知ったのも、小谷野敦さんの『直木賞をとれなかった名作たち』で
 紹介されていたからだが、
 この作品ではやはり直木賞はとれなかっただろう。

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 NHK大河ドラマの第62作めとなる「どうする家康」は、
 5月にはいって徳川家康の人生における最大の危機ともいえる、
 武田信玄との三方原の合戦が描かれている前半の山場。
 徳川家康ほどの有名人であっても、
 やはりその人生の節目節目に自身の行く末を決める場面があるものだ。
 そんな10の場面を軸にして
 家康の生涯を描いたのが本多隆成さんの『徳川家康の決断』。
 副題の方が、この新書の内容をよく表していて、
 「桶狭間から関ケ原、大坂の陣までの10の選択」とある。

  

 すでに何冊も家康について書いてこられた本多さんが挙げている
 「10の選択」とは、
 桶狭間の合戦、三河一向一揆、三方原の合戦、嫡男信康の処断、本能寺の変、
 小牧・長久手の合戦、石川数正の出奔、小田原攻めと関東転封、
 関ケ原の合戦、大坂の陣、となる。
 こうして並べていくと、
 巷間よくいわれる「鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす」という句そのままの
 忍従の人生であったように思える。

 家康が自ら大きく動き出すのは、宿敵豊臣秀吉の死後とみていい。
 秀吉亡きあとの家康の振る舞いは強引とも見えるが、
 それは人生の終末を悟ったゆえの行いとみれば、
 実に人生をまっとうした武将であったともいえる。

 この新書、入門書というにしては
 最近の研究成果も解説されていて、
 すでに十分語り尽くされているかと思っていた家康でも
 まだまだ解明されることが残っているということに
 感慨を覚えた。

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 NHKの連続テレビ小説(通称 朝ドラ)「らんまん」
 植物学者牧野富太郎博士をモデルにした作品ですが、
 高知篇から活躍の舞台が東京へと移っていくところです。
 ちなみに「らんまん」という言葉、
 漢字で書くと「爛漫」、
 意味は「花の咲き乱れるさま」と『広辞苑』に出ています。
 「らんまん」なのは朝ドラのタイトルだけではありません。
 本屋さんに行くと、牧野富太郎博士の関連本が
 それこそ、らんまん。
 そんな中、先日発売になった「絵本のある暮らし[月刊モエ]MOE」6月号も
 表紙にドーンと

   らんまんな人生をドラマと楽しむ  牧野富太郎

 とあります。
 さっそく「[月刊モエ]MOE」6月号(930円)を歩いてみましょう。

  

 この号の巻頭大特集は「牧野富太郎 I LOVE💛植物」です。
 何しろ、「草木が好きであることが私の一生涯の幸福であった」と
 語ったくらいの牧野博士ですから。
 まず登場するのが、朝ドラ「らんまん」で主人公の槙野万太郎を演じている
 神木隆之介さんのインタビュー。
 のっけから読ませます。
 牧野富太郎という人物についてよく知らないという人には、
 「キーワードで知りたい牧野富太郎のAtoZ」が役に立ちます。
 例えば、「B」の項目では朝ドラに出てきた「バイカオウレン」という花のことだったり、
 「D」では「Drawing 植物図」といったように
 各項目ごとに図版がついてよくわかります。
 「植物図」に関していえば、
 牧野博士の偉業のひとつが「正確で緻密な植物図を描く」ですから
 見ごたえがあります。

 「花あればこそ我もあり 牧野富太郎伝」という記事では
 簡単な略歴を紹介しています。 
 94歳まで生きた牧野博士の波乱万丈な人生を辿ることができます。

 さらに特集では牧野博士をめぐる旅の誘いとして
 牧野植物園のある「高知の旅」と
 先日私も訪れた東京・練馬の「牧野記念庭園」が紹介されています。

 さらにうれしいことにこの号には
 「牧野富太郎の植物図クリアファイル」が付録として付いています。
 しかも、このクリアファイルの裏面は
 牧野博士が少年時代につくった15の勉強心得が載っています。
 例えば、こんなふう。

   一 忍耐を要す  忍耐強くあること
   二 精密を要す  正確であること
   三 草木の博覧を要す 草や木をたくさん観察すること

 といったように、15ヵ条になっています。

 知れば知るほど面白い、牧野富太郎博士。
 今月号の「[月刊モエ]MOE」は、絶対お買い得です。

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 今年は桜の開花も随分早かったですが
 いろんな草花の開花が例年より早いように思えます。
 この時期で薔薇が見事に咲きそろいました。

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   薔薇園の薔薇整然と雑然と        須佐 薫子

 近隣のバラまつりは今月20日頃。
 それまでもつのかな。

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 早くも30℃近くまで気温のあがった土曜日(5月6日)、
 菜園で子供たち向けのイベント「ハタケdeかみしばい」がありました。

  20230506_143946_convert_20230507081326.jpg

 今回は残念ながら参加してくれた子供たちが少なかったのですが
 いつ開催するといいのかとか
 どういう本を読んであげたらいいのかとか
 試行錯誤しながらも続くといいですね。

 この時期は春に蒔いた種が芽を出し、
 育ち始める頃です。
 防虫ネットの中で育っているのはエダマメ

  20230506_130040_convert_20230507081116.jpg

 手前にジャガイモの葉が見えています。
 こちらも防虫ネット越しの写真ですが、
 トウモロコシ

  20230506_131240_convert_20230507081230.jpg

 その横はモロッコインゲン

 マクワウリの芽も出ました。

  20230506_131209_convert_20230507081146.jpg

 その奥にあるのはミニトマトの苗。
 マクワウリは今回初めての栽培で、
 当初の計画では春のはじめに種を蒔いて育苗するつもりが、
 うまく育たず、
 結局畝に種を蒔いたもの。
 この時期でこんな小さな芽では遅いかも。
 どこまで育つか、じっくり見ていきましょう。

 キュウリの苗には早くもネットを張りました。
 その横は中玉トマト

  20230505_145413_convert_20230507081030.jpg

 夏野菜の成長が楽しみです。

   初夏の一日一日と庭のさま       星野 立子

 私ならさしずめ、
 初夏の一日一日と畑のさま、ですね。

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 なかやみわさんといえば、
 『そらまめくんのベッド』でよく知られる絵本作家です。
 作者の名前は知らなくても、
 かわいいそらまめくんのキャラクターを見るだけで、
 子供たちから「そらまめくんだ!」と歓声があがるほどの人気です。

   

 そんなそらまめくんから新しい絵本が2023年3月に誕生しました。
 それが『そらまめくんのいっしょにあそぼ』です。
 この絵本には、そらまめくんのほかに
 さやえんどう、えだまめ、ピーナッツ、グリーンピースと
 豆科のお友達が次々と登場してきます。
 そして、よく見てほしいのですが、
 お友達の中でそらまめくんが一番大きいのです。
 実は、そらまめというのは豆類の中で最も大きい種類なんです。
 つまりなかやみわさんの絵は、
 かわいいだけでなく、ちゃんとよく観察されて描かれているのです。

 そらまめくんの頭にある
 一見髪の毛のように見える黒い筋は
 「胚(はい)」とよばれるところで
 ここから根が伸びていきます。
 そらまめというのは、
 栽培していく過程でうす紫に黒い模様がはいった花が咲いたり、
 さやが空にむかって大きくなっていったりと
 色々と楽しませてくれる野菜でもあります。

 私たちにとっての「いっしょにあそぼ」は、
 そういう栽培のことだともいえます。

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 今日は二十四節気のひとつ、立夏
 今年の大型連休は天候にも恵まれ、
 暦を先取りしたような暑さになりました。

   少年のうぶ毛輝く聖五月      山内 遊糸

 五月はまさにこの句のように、生命感にあふれた月です。
 風のように駆ける少年のよう。
 昨日がこどもの日でもあったので、
 映画の話もそんな作品にしようと考えて
 そういえばあの映画はまだ観てなかったと気がついて
 さっそくアマゾンプライムで観た映画があります。
 今日はその、映画「チャーリーとチョコレート工場」の話です。

  

 映画「チャーリーとチョコレート工場」は2005年に公開された
 アメリカのファンタジー映画です。
 監督がティム・バートンで主演がジョニー・デップという人気コンビで
 日本でもヒットした作品です。
 原作はロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』という児童文学。
 ロアルド・ダールはイギリスの作家で
 たくさんの児童文学を残していて、日本でも多くの本が出版されています。
 実はこの原作を映画化したのは、
 このティム・バートンの作品で2回めで
 最初は1971年公開の「夢のチョコレート工場」という作品だったとか。
 私が参加している読書会のメンバーの一人によると
 1971年版の作品の方が面白かったそうですから
 機会があれば観てみたいと思います。

 映画タイトルにある「チャーリー」というのは
 ジョニー・デップ演じるチョコレート工場の工場主に招待された
 5人の子供のうちの一人の少年の名前です。
 もちろん、主人公はジョニー・デップの怪しい工場主ですが、
 この少年がいることで
 映画のテーマである「家族愛」が鮮明になっています。

 もちろん、この映画の楽しみ方はそういう堅苦しいことではなく
 奇抜な技術と怪しい小人たちに満ちたチョコレート工場を
 チャーリーたちと一緒にたどることで
 そういう世界観をすんなり受け入れられることこそが
 こどもの領分のように思います。
 こんなことは現実(リアル)じゃないと言ってしまったら、
 世界はちっとも面白くありません。
 こんな映画を観て、
 純粋なこどもの心を持ち続けられたら、いいですね。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日はこどもの日
  立夏は明日ですが、
  「こどもの日」や「こいのぼり」は夏の季語に
  分類されています。

    鯉幟ゆらりと白き腹を見せ        深見 けん二

  そこで今日は
  『ナゲキバト』というアメリカの児童書を紹介します。
  書いたのは、ラリー・バークダルさん。
  この本は私が参加している読書会のメンバーから
  とてもいい作品と教えてもらったもので、
  書評には書きませんでしたが
  びっくりするラストが展開されています。
  子供たちよりまず
  大人の人に読んでもらいたい作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  おとなにも読んでもらいたい児童文学                   

 おとなにはおとなゆえの果たすべき責任があります。
 そのひとつは、おとなとして生きる上で正しく判断することでしょう。
 そして、そのことを子供たちに伝え、教えること。
 アメリカの作家ラリー・バークダルが書いた『ナゲキバト』という物語を読んで、そんなことを思いました。
 この物語は1996年にアメリカで自費出版の形で刊行され、大きな話題となった作品です。
 日本でもすぐさま翻訳され、2006年には「新装改訂版」として刊行されています。

 タイトルの「ナゲキバト」は鳩の仲間です。
 物語の主人公であるハニバルという少年が散弾銃で誤ってナゲキバトの母鳥を殺してしまうエピソードから採られたタイトルです。
 この母鳥のそばには二羽の雛がいました。
 ハニバルは9歳の時に事故で両親を亡くして、祖父に育てられていますが、この時祖父は父鳥だけでは二羽を育てられないからということで、ハニバル少年に二羽のうちの一羽を殺すように言います。
 少年は涙ながらに一羽の雛を殺します。
 このエピソードが、後半大きな物語となっていきます。

 それは祖父が語ってくれた物語、ある兄弟と父親との話です。
 優秀な兄と出来の悪い弟。
 出来が悪くても兄はいつも弟をたすけるのですが、ついに弟の不始末により兄弟二人ともが火事に巻き込まれます。
 決死の覚悟で火の中に飛び込んだ父親が助けられるのは、どちらか一人。
 優秀な兄か、出来の悪い弟か。
 これは児童文学に入る物語でしょうが、実はここで問われているのは、おとなである私たちです。
 おとなが正しい判断をしないと、子供たちは道を間違える。
 祖父が話した物語で、父親が助けたのは出来の悪い弟でした。
 何故なら、生きのびて生きるという意味を学ぶ必要があったのは、弟の方だったから。

 この物語には、さまざまな教訓、教えが散りばめられています。
 そのことを学ぶのは子供ですが、おとなにも問いかけられた物語であるということを忘れてはなりません。
  
(2023/05/05 投稿)

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 今日5月4日は
 自然に親しみ、その恩恵に感謝し、
 豊かな心を育むことを趣旨とした祝日、みどりの日

    体内の水の流れやみどりの日       和田 悟朗

 緑も鮮やかな公園のベンチで詩集を開くのも素敵かも。
 今日は昨日のつづき、のような一冊を紹介します。
 井戸川射子(いどがわいこ)さんの『する、されるユートピア』と詩集。
 井戸川さんは昨日紹介した『この世の喜びよ』で
 第168回芥川賞を受賞しましたが、
 それに先立つ2019年にこの詩集で
 第24回中原中也賞を受賞しています。

  

 芥川賞受賞作から先に読んだので
 この詩集を読むと、
 なるほど井戸川さんという作家の根っこはこういう世界なんだなと
 感じることがありました。
 それは芥川賞受賞時の「受賞のことば」の冒頭にある、
 「言葉を、すごく上手に使いたい」によく表れているように感じます。
 この詩集の中の詩の多くは
 まるでこれからフィクションとして生まれ出るような
 予感があります。
 その点では詩でありながら、幼い小説のように読めます。

 「受賞のことば」は、もしかしたこの詩集の先にあるもので、
 だからこそ井戸川さんはこう書いているのかもしれません。
 「あなたの前に、言葉として登場できて嬉しい。」と。

 この詩集と、芥川賞受賞作。
 そして、それらをつなぐ、作者自身の言葉のあれこれ。
 それらを砂の城のようにこしらえても
 波がさらっていくようで、こわい。
 しかし、井戸川さんの言葉がずっと強靭であろうとしています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は憲法記念日の祝日。

    憲法記念日天気あやしくなりにけり      大庭 雄三

  大型連休のまんなかあたりだから、
  行楽地に向かう人も多いのでしょうね。
  一方、家でゆっくりするという人は
  芥川賞受賞作でも読んでみてはどうでしょう。
  1月に発表された
  第168回芥川賞は2作同時受賞でしたが、
  今日はそのうちにひとつ、
  井戸川射子さんの『この世の喜びよ』を
  紹介します。
  井戸川射子さんは現役の高校の国語の先生。
  受賞後のインンタビューで
  生徒に読書感想文の課題を出さないようにしていると
  話されてましたが、
  こういう国語の先生なら大歓迎という生徒も多いだろうな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  言葉の世界への誘い                   

 第168回芥川賞受賞作。(2023年)
 正直、私にはとても難解、読みづらい作品だった。
 その原因は、物語性がとても希薄だということだと思います。
 「あなた」として呼びかけられたいる主人公の女性にはすでに成人した娘が二人いる。
 働いている大きなショッピングセンターでいつも一人でいる少女と交流し、「あなた」は少女のことを心のどこかで自分と同じ孤独を感じている。
 と書けば、物語は確かにあるのだが、それよりもまずは言葉が先にある、そんな作品だ。
 それらを評して、選考委員の小川洋子氏は「何も書かないままに、何か書くという矛盾が、難なく成り立っている」と書き、川上弘美氏は「大きな事件は何も起こらず、したがって何事も解決されず、解決もないのでカタルシスもなく」と書いた上で、それでも「心惹かれる」と高く評価している。

 もし、この小説を読み解くとしたら、補助線がいるかもしれない。
 そして、その補助線は芥川賞選考委員の川上弘美氏のこんな言葉ではないだろうか。
 「作品の持つメッセージ性や物語性などよりも、言葉が組み合わされることによって生まれる何か。音楽を聴いた時のような喜び。絵画を見た時のような驚き。意味ではなく感情や感覚。」
 そう、やはり作者井戸川射子(いどがわいこ)さんは詩人なのだろう。
 言葉の魅力に浸りたい人にはたまらない作品なのかもしれない。
  
(2023/05/03 投稿)

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レビュープラス
 汗ばむような陽気となった
 4月のおわりの28日、
 東京・大泉学園にある「牧野記念庭園」に行ってきました。

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 ここは、今NHKの連続テレビ小説(通称 朝ドラ)「らんまん」のモデルとなっている
 植物学者・牧野富太郎博士が
 大正15年から亡くなるまでの30余年を過ごした住居と庭の跡地で、
 昭和33年に庭園として開園したものです。
 練馬区立ということで
 うれしいことに入園料が無料。
 朝ドラ効果もあって、
 平日でもかなりの人が訪れていました。

 入ると、さっそく牧野博士がお出迎え。

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 正門そばに博士の胸像もあります。

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 その下に茂っているのがスエコザサ
 牧野博士が昭和2年に仙台で発見した植物で、
 奥さんだったスエさんへの愛情からその名を命名したといいます。

 庭園はこの季節、ケヤキやサクラの大木の緑がうっそうとして
 なんとも気持ちのいい風が吹いています。

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 足元には牧野博士が愛した草木がちゃんとその名称とともに植わっていて、
 植物が好きな人にはたまらない空間になっています。

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 庭園内にある企画展示室では
 「牧野富太郎 草木とともに」という企画展が開催されていました。(~10月9日)

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 ここでは牧野博士の自筆の植物画などを見ることができます。
 その細密な絵に圧倒されます。

 これは企画展示室そばの石碑。

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 碑に刻まれているのは、

    花あればこそ 吾も在り

 その先にあるのが、「ようじょう書屋」という
 牧野博士の書斎を復元した施設。

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 そこにおかれた本・本・本・・・。
 牧野博士はここで執筆や植物の描画にいそしんだといいます。

 牧野富太郎博士は昭和32年、
 94歳で亡くなっています。
 没後文化勲章が授与されて、その偉業がこうして
 庭園となって遺されています。
 朝ドラで人気の今、
 この機会に訪れてみるのもいいところです。

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