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 昭和の時代に「官能小説御三家」と称された三人の作家がいる。
 宇野鴻一郎富島健夫、そして、この『流行作家』という自伝風小説を書いた
 川上宗薫だ。
 彼らは官能小説でまさに流行作家となった訳だが、
 彼らにはある共通するキーワードがある。
 それが、「芥川賞」。
 宇野鴻一郎は1962年の『鯨神』で第46回芥川賞を受賞したのはよく知られているが、
 富島健夫も芥川賞候補作家だし、
 川上宗薫にいたっては芥川賞候補に5回もなったが、いずれも落選。
 その後、三人は官能作家になったのだが、やはり文章力は優れていたのだろう。

  

 川上宗薫がこの『流行作家』を上梓したのは
 1973年6月。
 すでに官能小説家として一世を風靡していた頃。
 自伝風小説と書いたが、自身が巻き起こした
 水上勉との喧嘩騒動のことも書かれていたり(人物名は変えてある)、
 この作品の執筆当時どれだけの原稿を書いていたかなども
 赤裸々に綴られている。
 これらは興味を持って読まれただろうが、
 きっと一方では眉をひそめる人も多かったのではないだろうか。

 川上は1985年、61歳の時ガンで亡くなるが、
 この作品の終わり近くにその予兆ともいえる病気のことが綴られていて
 暗い予感を感じさせる。
 この作品をはじめ、今では川上宗薫の作品を読む人も少ない。
 この作品を知ったのも、小谷野敦さんの『直木賞をとれなかった名作たち』で
 紹介されていたからだが、
 この作品ではやはり直木賞はとれなかっただろう。

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