05/17/2023 上野池之端 鱗や繁昌記(西條 奈加) - これは人情時代小説であり、ミステリーでもある

現在でもなかなか風情がある土地だが、
江戸時代にはすでにいくつもの料理茶屋が軒を並べていたそうだ。
そんな中に、この時代小説の舞台となる、
料理茶屋とは名ばかりの三流店の「鱗や」がある。
この「鱗や」に信州の片田舎の村から奉公に出てきたのが
まだ14歳になったばかりに、お末。
この少女と「鱗や」の若旦那が主になって、「鱗や」の立て直しを図っていく。
そんな物語と思いきや、
作者西條奈加が仕掛けたのは、もっと大きなミステリー。
「鱗や」が何故三流店まで落ちぶれたか、そこに人の恨みが重なって、
大きな事件へと発展してゆくのだが。

おいしそうな料理の数々も描かれている。
「食べる前の期待と、後の満足。このふたつが釣り合って、初めて満たされる。」
これは、物語の中に挟まれた、料理の味わいを表現した一文だが、
小説そのものにも当てはまる。
この作品が発表された2014年、
これと前後して西條さんは『まるまるの毬』を発表していて、
そちらを先に読んだ私は、
この作品を読むのは、まさに読む前の期待にあふれていた。
そして、後の満足も味わえて、
うれしい読書体験となった。

これはこれで大団円を迎えているから、よしとしよう。

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