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 上野・不忍池周辺の「上野池之端」は、
 現在でもなかなか風情がある土地だが、
 江戸時代にはすでにいくつもの料理茶屋が軒を並べていたそうだ。
 そんな中に、この時代小説の舞台となる、
 料理茶屋とは名ばかりの三流店の「鱗や」がある。
 この「鱗や」に信州の片田舎の村から奉公に出てきたのが
 まだ14歳になったばかりに、お末。
 この少女と「鱗や」の若旦那が主になって、「鱗や」の立て直しを図っていく。
 そんな物語と思いきや、
 作者西條奈加が仕掛けたのは、もっと大きなミステリー。
 「鱗や」が何故三流店まで落ちぶれたか、そこに人の恨みが重なって、
 大きな事件へと発展してゆくのだが。

  

 この『上野池之端 鱗や繁昌記』は料理屋が舞台にだけあって、
 おいしそうな料理の数々も描かれている。
 「食べる前の期待と、後の満足。このふたつが釣り合って、初めて満たされる。
 これは、物語の中に挟まれた、料理の味わいを表現した一文だが、
 小説そのものにも当てはまる。
 この作品が発表された2014年、
 これと前後して西條さんは『まるまるの毬』を発表していて、
 そちらを先に読んだ私は、
 この作品を読むのは、まさに読む前の期待にあふれていた。
 そして、後の満足も味わえて、
 うれしい読書体験となった。

 『まるまるの毬』同様、シリーズにもできそうな作品ながら、
 これはこれで大団円を迎えているから、よしとしよう。

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