
今日は『星新一ショートショートセレクション④』の
「奇妙な旅行」を紹介するのですが、
書評に表紙のイラストと裏表紙のイラストの話を書きました。
絵はもちろん和田誠さんなんですが、
文章ではわかりにくいですよね。
表紙は書影で見れますが、
裏表紙はなかなか見ることができません。
今日はおまけで
どんなイラストだったのかをお見せします。

ね、わかりましたでしょ。
文章ではなかなか伝えにくいことも
ビジュアルだと伝わりやすいことも
たくさんあります。
わかりやすい文章が書ければいいのですが。
じゃあ、読もう。

『星新一ショートショートセレクション④』(理論社)。
表題作である「奇妙な旅行」をはじめとして、17篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
この本の装幀は、表紙だけでなく、裏表紙にも和田さんのイラストが入っていて、この巻の場合表紙に旅行鞄をもった男が描かれているので、これは「奇妙な旅行」の物語から描かれたものだとわかったが、裏表紙のイラストは鎧兜をまとった武将が描かれていて、はて?これはどういうことかと戸惑っていたが、「奇妙な旅行」を読んで、そういうことかと納得がいった。
旅行する男と昔の武将の関係は「奇妙な旅行」を読めば判明する。
ショートショートといえども、起承転結はある。
そして、面白さのバロメータは起から結にいたる、落差の大きさだろう。
それは「奇妙な旅行」のイラストのギャップでもわかる。
あるいは、冒頭の「宇宙の英雄」でもそうで、ある星から助けを求める信号を受け取った勇気ある宇宙飛行士がさまざまな苦難にあいつつ、その星に来てみれば、その星が求めていた助けの正体は意外にも・・・?!という展開もまた、起から結のギャップの面白さといえる。
それはショートショートに限らない。
ドラマでも小説でも同じことだ。
星新一さんの作品の面白さはそんなところにもある。
(2023/06/30 投稿)

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06/29/2023 街とその不確かな壁(村上 春樹):書評「ねじれた世界の果てに」

発売前から話題になるのはいつものことですが、
今回は特にコロナの時代の作品としても注目され、
しかも封印された過去の中編小説の書き直しということで
村上春樹さんのファン待望の長編小説
『街とその不確かな壁』を
今日は紹介します。
長い書評になりましたが、
ふっと浮かんだ書評タイトルがもしかしたら
一番この作品に合っているようにも思えます。
じゃあ、読もう。

村上春樹さんの6年ぶりとなる長編小説『街とその不確かな壁』は決してわかりやすい作品ではない。
村上さんとしては珍しく付けられた「あとがき」にこの作品が書かれた経緯のようなものが示されているが、村上さんの研究者でもない一般読者にとって、それすらわかりやすい説明とは言い難い。
そこには村上さんがデビューして間もない1980年に「街と、その不確かな壁」という中編小説を発表したが、その後この作品は村上さん自身が納得せず封印されたことが記されている。その作品を書き直したのが、今回刊行された作品の「第一部」に該当するらしい。
するらしい、と書いたのは、中編小説が封印されていて一般読者には比べようがないからだ。
つまり、これは村上さんの小説家としてのこだわりなのだろうか。
それとも小説家村上春樹の核心を解く何ごとかが、この作品には埋められているのだろうか。
「街」は17歳の「ぼく」と絶対的な愛の相手であった16歳の少女とが作り出した、どこかにある空間だ。
物語の「第一部」では17歳の時の物語と「街」に入り込んだ「私」の物語が交互に示される。しかし、「街」そのものをすんなり読み解けるものではない。
つづく「第二部」ではその後の「私」が語られる。そこで出会うのは幽霊であったし、謎の少年であったりする。彼らは何故か「私」がかつて「街」にいたことを知っている。
では、何故「私」は「街」から出られたのか、その謎は「第三部」で明かされていく。
わかりにくい作品を読み解くヒントになるのだろうか、終盤近く、ガルシア=マルケスの『コレラの時代の愛』という作品が引用され、その作品についてこんな会話が交わされる。
「彼の語る物語の中では、現実と非現実とが、生きているものと死んだものとが、ひとつに入り混じっている。まるで日常的な当たり前の出来事みたいに」
村上さんのこの作品もまたそんな世界観を表しているのかもしれない。
それにしても、わかりやすい作品ではない。やれやれ。
(2023/06/29 投稿)

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06/28/2023 ハダカだから(谷川 俊太郎/下田 昌克) - 官能を味わう、読んで、見て

というと、90歳をすでに越えていることになる。
それでいて、いまだ多くの詩を書き、絵本のつくり、現役というのだから
すごいというしかない。
しかも、この『ハダカだから』という官能的な詩をいまだに書いているのだから
普通の人ではないことが間違いない。

雑誌「Coyote」に連載されたというから、
決して若い時の作品ではない。
それでいて、悩ましく、赤裸々。(これにもハダカがはいっている)
例えば、こんな詩。
「ハダカだから/だからどうなの/どうってことないよ/ハダカだから」。
これなどはまだおとなしい。
「撫デタ そうっと/舐メタ ゆっくり/掴ンダ ぎゅうっと/からだハ 愛シイおもちゃdeath」
さすがというか、怖くなるほどの官能。

こちらを優先して読むのもアリかも。
ちなみに下田さんは1967年生まれだから、まだまだお若い。
官能現役世代といっていいけど、
谷川さんの現役感にタジタジだったかもしれない。

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06/27/2023 雲をつかむ死(アガサ・クリスティー):書評「飛行機はこわい」

初めて飛行機に乗ったのはいつだったろうか。
あまり覚えていないが、
結構怖かったように思う。
昭和50年あたりの頃だろうか。
その頃はまだ飛行機が嫌で、
遠くの出張先にも電車で行くという頑固者がいたりした。
今日紹介する
アガサ・クリスティーの『雲をつかむ死』は
そんな飛行機の中での殺人事件。
いつもの霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』では
★★★のまずまずの評価。
この時代に飛行機を舞台にした新進性を評価して
もう少し点をあげていいかも。
じゃあ、読もう。

この作品はアガサ・クリスティーが1935年に発表した、ポアロものの長編小説。
原題が「Death in the Clouds」で、邦題の「雲をつかむ死」はそれに近い。
私ならもっとわかりやすく「機上の死」としたかもしれない。
というのも、今回の事件は旅客機の中で起こるのだから。
驚くのは、この作品が書かれた1935年といえば、日本でいえば昭和10年で戦争前の不穏な時期。
そんな時代に庶民に飛行機といっても乗って人などわずかしかいなかったと思われるが、なんとアガサはその機上で殺人事件を起こしてしまう(もちろん創作ですよ)のだから、すごいというしかない。
もし、その当時この作品を読んだ普通の読者なら、なかなかその舞台設定も客室乗務員の動きなど理解できなかったのではないだろうか。
本国イギリスの読者の反応も知りたいところだ。
機上内で起こった殺人事件だから、犯人は限られた人数に絞られている。
そんな中、若い女性と歯科医の青年のロマンスの予兆があったりして、これはまたポアロもの恋のキューピットぶりが見られるかと思っていたが、これはとんでもない間違い。
まんまとアガサにいっぱい食わされることになる。
ただ念のために書いておくと、別のロマンスがちゃんと用意されていて、ポアロの恋のキューピットは健在である。
(2023/06/27 投稿)

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06/26/2023 ニンジン、リベンジ - わたしの菜園日記

毎年梅雨に入る前にその風景になごみますが、
その田もいつの間にか
しっかり苗が伸びてきました。

「田草取(たぐさとり)」というこの時期ならではの季語があります。
田植後の雑草を取り除くことです。
田草取立ち上らねば忘れられ 野見山 ひふみ

苗ひとつひとつが一糸乱れることなく並んでいます。
奇麗に並んでいるというと、
ミニトマトの実もそうです。

どうしてこんなにきちんと並べるのか
とっても不思議な気持ちになります。

ニンジンです。
何度蒔いてもうまく育ちませんでした。
今年もニンジンの栽培時期がやってきて
去年のリメンジに挑戦です。
まず、ニンジンの種を蒔いたあと、水を切らさないように
雨の予報が出ていた木曜日の前日
水曜(6月21日)に急遽種まきをしました。
その前日から種を水につけて発芽を促しておきます。
その次に保湿のための籾殻を敷こうと思ったのですが。
籾殻が手にはいりませn。
そこで、畑の周辺にあった草の枯れた実を代用にしました。
草の名前はわかりませんが、
なんとなく籾殻ぽく見えたので。
それで半畝に4筋、種を蒔きました。

左から前日から水につけた種に枯れた草の実を敷いた筋、
次が前日から水につけた種で土を被せただけの筋、
その次が種のまま枯れた草の実を敷いた筋、
四番目が種のまま土を被せただけの筋。
つまり、これは発芽の実験でもあります。


ちょっとほかの豆科のものと形状がちがうようです。
そして、これはラッカセイ。

これも独特の形です。
まあラッカセイは豆科でも地中で成長する豆ですから
変わっているのは仕方ないかな、やっぱり。

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「こびとのくつや」という童話がありました。
貧しい靴屋のおじいさんが眠っている間に
小人たちが素敵な靴を作ってくれるというお話。
大人になってからも
そんな小人が私にも現れないだろうかと思ったものです。

あの小人たちのように夜のあいだでも一生懸命働く人がたくさん出てきました。
ポリー・フェイバーさんが文を書いて、
ハリエット・ホブディさんが絵を描いた、
イギリスの絵本『よるのあいだに・・・』には
夜でも働いているたくさんの人が出てきます。
夜の間に事務所の掃除をする人、
警備員の人は夜でもしっかり見守っています。
警察官や緊急救命士の人には夜でも休めません。
スーパーの補充も夜の仕事、
パン屋さんはまだ暗いうちからおいしいパンを仕込みます。

子どもたちが眠っていても、働いているたくさんの人がいることを
教えてあげましょう。

「わたし」のママは夜になったらでかけていきます。
ママのお仕事は、最後に明かされますが、
実はどのページにもママが働いているヒントが隠されています。
一度読んだあと、もう一度最初に戻って
ママのお仕事をさがしてみて下さい。
とってもうまく描かれていますよ。

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06/24/2023 岸井ゆきのさんの演技に釘付け - 映画「ケイコ 目を澄ませて」の話

「耳を澄ます」という言葉があります。
スタジオジブリに「耳をすませば」という作品もありました。
「耳」ではなく、「目」を使って「目を澄まして」と
タイトルについた映画が昨年(2022年)公開され、
とても話題になりました。
その映画が早くもアマゾンプライムで配信されたので
早速観ました。
今日は、その映画「ケイコ 目を澄ませて」の話です。


三宅唱監督作品です。
年が明けて発表された第96回キネマ旬報ベストテン(2022年度)で
日本映画第1位となった作品で
主演の岸井ゆきのさんは主演女優賞を受賞。
さらに彼女は日本アカデミー賞で最優秀女優賞も受賞しました。
それだけ、岸井ゆきのさんの演技が素晴らしかったという証。

この映画の主人公であるケイコは
先天性の聴覚障害をもっていて耳が聞こえないからです。
しかも、彼女はそういう障害を抱えながら
プロボクサーとして活動をしているのです。
ゴングの音もセコンドの声も聞こえない。
だから、彼女は「目を澄ます」のです。
そんな主人公を岸井ゆきのさんは見事に演じきっています。
時には苛立ち、時には涙し、時には笑う、
ケイコ。
岸井さんがケイコそのままで演技を超越しています。
ボクシングの練習風景など
これが演技かと思えるほどで、
なんだか見事なダンスを鑑賞したような気分になります。

三浦友和さんが熱演しています。
聞こえない彼女に、それでも熱く語りかけるジムの会長。
もしかしたら、私たちの交流とは
言葉とか音ではなく
本当に心と心の伝達のように思えたりします。

それが実際のプロボクサーだった小笠原恵子さん。
彼女が書いた『負けないで!』がこの映画の原作になっています。

楽しみです。

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06/23/2023 川端康成の話をしようじゃないか(佐伯 一麦/小川 洋子) - まず何から読もうかな

もちろん知ってます。
日本人で初めてノーベル文学賞を受賞しました(1968年)。
その4年後の1972年にガス自殺しました。72歳でした。
代表作はなんといっても『伊豆の踊子』じゃないかな。何度も映画化されてるし。
それに『雪国』。冒頭の文章なんか誰もが知っているのじゃないかな。
でも、私の川端康成はそこまで。
作品名は知っていても、ほとんど読んだことがない。
だから、『川端康成の話をしようじゃないか』と言われても、黙っているしかない。
そんな私でも、佐伯一麦さんと小川洋子さんの対談形式の
「川端康成の話」は面白かった。

「いまだに読み継がれている作家って、おれは幸せですよ。」と語っていて、
そうか、川端康成はそんな稀有な作家なんだと
あらためて見直しました。
では何を読むか、この対談では『伊豆の踊子』や『雪国』よりも
『掌の小説』のことが多く語られていて、わざわざ一章まるごと
この作品の話になっているから、このあたりがいいかな。
それに『みずうみ』(これは佐伯さんのオススメ)とか、
『眠れる美女』『片腕』(この2作は小川さんのオススメ)だろうか。

できればほとんどの作品を読んでいるに越したことはないですが、
少なくとも代表作といわれるものは読んでおきたい。
川端康成、今さらながらですが、読んでみようかな。

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06/22/2023 本売る日々(青山 文平) - 本好きにはうれしい時代小説

青山文平さんによる時代小説で、
表題作である「本売る日々」と「鬼に喰われた女(ひと)」、
それに「初めての開板」の三篇からなる連作短編集だ。

ちょうど町人文化が発展した頃。
主人公の私(平助)は本屋の主。
店を構えていても、月に一度は「城下の店を出て、在へ行商に回る」、そんな商い。
この本の表紙挿画(村田涼平さんの作品)は、
梅雨空の下、田植えをしているそばの道を大きな荷を背負って歩く
主人公らしき男が描かれていて、
これもまた感じがいい。

主人公の私の今のありようが簡潔に描かれ、短編集の骨格を描きつつ、
村の年老いた名主が孫ほど年の離れた娘を後妻に迎えたその心情を
巧みにとらえている。
単に人情話に終わるのではなく、
この時代の書物の幾篇かをうまく物語に埋め込んでいく。
そのあたりの手触りが、本好きにはうれしい。

「ヤマ」と名付けられた猫もまた作品の中で重要な存在となる。
そういえば、表紙挿画にも本屋のあとを猫が一匹歩いている。

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06/21/2023 パンダの丸かじり((東海林 さだお):書評「文庫解説文の書評 - 座布団一枚!」

今日は二十四節気のひとつ、夏至。
一年中で一番昼が長い日。
この時期、食べたくなるのが冷麦。
冷麦を水に放つや広がれる 篠原 温亭
なんといってものど越しがいい。
ギンギンに冷えたビールもいいけれど、
ここは冷酒でいただきましょう。
青笹の一片沈む冷し酒 綾部 仁喜
こんなおいしいこぼれ話を綴ったのも
今日紹介するのは
東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズの
文春文庫版の最新刊『パンダの丸かじり』だから。
おいしいエッセイを読みながら、
おいしいものを食するのも
なんとも贅沢。
じゃあ、読もう。

おなじみ東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズの文春文庫版の最新巻。
2020年に単行本となったシリーズ43作目。
このシリーズを文春文庫版で読む楽しみでもある文庫本についている「解説」。
毎回誰が書くのか、ワクワクします。
あれ? この感じ、何かに似てます。
そうそう、あれ。
日曜夕方の人気番組「笑点」の大喜利メンバーの新規加入の時。
それまでレギュラーだった六代目三遊亭円楽さんが突然逝去されて、しばらく空きとなっていたレギュラーの座。
そこに誰が座るのか、多くのファンが喧々諤々しているところに現れたのが
春風亭一之輔さんでした。
あ、今会場ざわつきましたね。
そりゃそうだ。
春風亭一之輔さんといえば、今や「最もチケットの取れない落語家」として、人気実力ともにダントツのお人。
そんなお人が毎週これから見られるなんて、と泣きわめいた人も多かったとか。(想像)
その春風亭一之輔さん、
今度は東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズの「解説」にも登場。
春風亭一之輔さんが「解説」を書いたということで、文庫売上げが倍増したとは、さすがに聞きませんが。
その一之輔さん、東海林さんのエッセイについて、こう書いてます。
「うまくも何ともない、ワケのわからない食べ物でも、先生が書けば思わず食べたくなる。」
思わず、座布団あげたくなりました。
(2023/06/21 投稿)

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06/20/2023 教養としての俳句(青木 亮人) - 俳句のテクニック教本ではないのでご注意を

「単なる学殖・多識とは異なり、一定の文化理想を体得し、
それによって個人が身につけた創造的な理解力や知識。」と、
この説明文そのものが教養的文章のようだ。
NHK出版の「学びのきほん」シリーズの一冊である、
青木亮人(まこと)氏の『教養としての俳句』には、こうある。
「俳句を教養として学び、味わうこと」を目的としたこの本では、
「俳句を通じて私たちの生き方がどのように変わり、いかに深まるのか」を
解説している。
よって、ここには季語の話はあるが、切れ字とか句つながりといったような
俳句を詠む上のテクニックは書かれていない。
そのあたりを注意して、本書を手にするのがいい。

「俳句とその歴史を知ろう」「「写生」って何?」「「季語」を味わう」、
そして「俳句と、生きているということ」となる。
こうしてみると、やはり最後の章に重きをおいた一冊ということがわかります。
そして、それは「季語」を味わうということと密接につながっているのも理解できる。
俳句とは、日常にあるがままをどう詠み、どう鑑賞するかということで、
俳句を日常の生活に組み入れることで生活そのものが豊かになるとすれば、
『広辞苑』のいう「文化理想の体得」になるのではないだろうか。

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06/19/2023 シカクマメ始めました - わたしの菜園日記


街角で見かけると、
やはり豪華な花だと思います。
百合の花朝から暮るるけしきかな 小林 一茶
なんとなく現代的な花のように思えますが
一茶の生きた江戸時代にも咲いていたのですね。

半分にもならない小さな黄色い花をつけたのは
マクワウリ。

種から育ててようやく花をつけるくらいになりました。

新たに栽培を始めたのが、マメ科の野菜。

写真の下の方で芽を出し始めたのがシカクマメ。
これは初めて栽培する野菜です。
かわいい花が咲くとか、それも楽しみです。
真ん中に写っているのがサツマイモ。
これも初めて栽培するので
これからどんな風に茂っていくのか興味あるところ。
その上、サトイモの横で芽を出したのが
ラッカセイ。
ラッカセイはこれまでも何度か栽培していますが、
ここ数年は作っていなかったので、
久しぶりの栽培です。
初めて栽培する野菜は
その成長の様子や花の姿など
おなじみの野菜とは違う楽しみがあります。

畑に行くのもできるだけ朝早く行くようにしたりします。
これは週なかばで収穫したキュウリとピーマン。

キュウリは採り時が難しく、
あっというまに大きくなってしまいます。
写真のキュウリも一本は大きくなりました。
まだ小さいかなと悩んだら、
できたらそれから2日ほどで収穫した方がいいですね。

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06/18/2023 まるのおうさま(文 谷川 俊太郎/絵 粟津 潔) - 70年代の絵のタッチを楽しむ

意識しているかどうかはともかく、
詩人谷川俊太郎さんの言葉に接してきているような気がする。
詩集で、教科書で、新聞で、雑誌で、
そして絵本で。
谷川さんは60年代から現在に至るまで200冊以上の絵本に
携わってきました。
つまりは、とても多くの画家やイラストレーターの人たちと一緒になって
つくってきたことになります。

そのイベントを記念して復刊された絵本の一冊が
この『まるのおうさま』です。
絵を描いているのは、粟津潔さん。
もともとは1971年に「かがくのとも」の作品として生まれて、
その後2019年に絵本として刊行されています。
そして、2023年4月に復刊されました。

たくさんの「まる」が出てきますが、どれひとつ同じではない。
そんな絵が続きます。
粟津さんについては少し注釈が必要かもしれない。
粟津さんはグラフィックデザイナーで、2009年に亡くなっています。
最近の絵本で粟津さんのようなタッチの作品を見ることは少ないですから
案外面白い感覚かもしれません。
この絵本では谷川さんの文もいいけれど、
粟津さんの絵の迫力がまさっているかもしれません。


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06/17/2023 ミシェル・ウィリアムズに夢中 - 映画「マリリン 7日間の恋」の話

映画雑誌といえば「スクリーン」がその代表格で
その後「ロードショー」が1972年に創刊されました。
この両誌は外国のスター俳優のグラビアを中心にしていて
いずれもその表紙は旬のスターたちで彩られていました。
私はといえば、この2誌では飽き足らず
「キネマ旬報」を購読するようになります。
スターよりも作品。
そんな生意気ざかりの映画青年でした。
それでも年を重ねてくると
あらためてスターの魅力にはまり込むということもでてきました。
最近夢中になっているのが、
ミシェル・ウィリアムズさん。
スティーヴン・スピルバーグ監督の「フェイブルマンズ」を観て、
その演技にぞっこんになりました。
そのあと彼女が主演した映画を立て続けに観ました。
「ブルーバレンタイン」(2010年・アカデミー賞主演女優賞ノミネート)
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016年・アケデミー賞助演女優賞ノミネート)
そのいずれもが作品もよくて、
彼女いい作品に出てるなと感心しました。
そして、今日はこれもアケデミー賞主演女優賞にノミネートされた
映画「マリリン 7日間の恋」の話です。

日本では2012年に公開されたイギリス映画です。
マリリンというのは、もちろんあのマリリン・モンローのことで、
1957年にマリリンが出演した「王子と踊子」の制作時の裏話が描かれています。
実話ということですから、
興味がわくのも当然です。
主役のマリリンを演じているのが、ミシェル・ウィリアムズさん。
彼女はこの演技で第84回主演女優賞にノミネートされますが、
受賞には至りませんでした。
でも、この作品の彼女を観ていると、
ここまで演じてどうして主演女優賞がとれないのと
思ってしまいます。
スターでありながら、誰にも愛されない。
そんな女性の悲しみをミシェル・ウィリアムズさんは好演しています。
時にそれはまるでマリリン・モンロー自身が演じているのかと
思ってしまいそうになるくらい。
マリリンに夢中になる青年をエディ・レッドメインさんが演じています。
マリリンに夢中になった青年に裏切られる娘にエマ・ワトソンさんが出ていたり、
「007」でもおなじみの名優ジュディ・デンチさんも出ていたりと、
映画としてもいい作品です。

どうしてあんなに切ない表情をつくれるのかな。
もうしばらく、彼女の出演作を追いかけるつもりです。

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06/16/2023 深夜特急6 南ヨーロッパ・ロンドン(沢木 耕太郎) - 恐れずに。しかし、気をつけて。

はじまりがあれば、終わりはある。
沢木耕太郎さんの長い旅行記もこの文庫版『深夜特急』第6巻が最終巻。
第13章「使者として」と一対をなすような
つまりそこで描かれた妻ある男性の愛人に対して、
ここではその妻の姿を描く第16章「ローマの休日」、
ポルトガルの岬でついに「旅の終り」をつかまえることになる第17章「果ての岬」、
そして旅の終わりとなるパリからロンドンの行程を描く
第18章「飛光よ、飛光よ」で構成されている。

いかに旅を終えようかと模索し、悩む。
それだけでなく、旅の意義と向き合うことになる。
それは、自分自身との対話といっていい。
この旅で得たものもあれば、喪ったものもある。
それこそが年を重ねるということだろう。
そもそもこの旅行記に『深夜特急』とつけたのは、
刑務所から脱獄することの隠語「ミッドナイト・エクスプレス」からだが、
当時26歳だった沢木さんは
何から脱獄しようとしたのだろうか。
そして、旅を終えたあと、
沢木さんは自由を得たのだろうか、それとも
ふたたび収監されたのだろうか。

沢木さんは最後にこう記した。
「恐れずに。しかし、気をつけて。」と。
すでに70代後半にさしかかった沢木さんは
今ならこう言うそうだ。
「気をつけて。だけど、恐れずに。」と。

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06/15/2023 深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海 (沢木 耕太郎) - 映画のように愛して

この旅の目的のひとつでもある役割を果たす
トルコの旅を描いた第13章「使者として」、
そこからギリシャで過ごす第14章「客人志願」、
そして地中海からの手紙形式で綴られた第15章「絹と酒」から
構成されている。

1992年10月に刊行されている。
単行本「第一便」および「第二便」が出たのが1986年5月だから、
「第三便」の出版まで実に6年の歳月がかかったことになる。
「第二便」の帯には「第三便は今秋(つまり1986年)刊行予定」とあるから
出版社としては、かなり想定外だったに違いない。
その理由について、沢木さんは多くを語っていない。
「この六年が、この「第三便」には必要だったのだという気さえする。」とだけ。

私がこの『深夜特急』の「第一便」を読んだのが三十代のはじめ。
だから、「第三便」が出ると耳にした時、どんなにうれしかったことか。
実際それを本屋さんで手にした喜びを今は思い出すことはないが、
きっと頬ずりしたのではないだろうか。

それがこの長い旅の目的だったが、
実は沢木さんにはもうひとつの目的があった。
それはトルコ・アンカラで女性にあって美術展のカタログを渡すこと。
沢木さんはただ頼まれた「使者」に過ぎないのだが、
どうして沢木さんの旅にはこんな短かい恋愛小説のような挿話が似合うのだろう。
それを大いに膨らませるのではなく、
ひとつの風景として描いていることこそが、
『深夜特急』の魅力といえる。

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06/14/2023 電車のなかで本を読む(島田 潤一郎) - タイトルに魅かれて

島田潤一郎さんの『電車のなかで本を読む』の場合、
実は「ジャケ買い」以前の、タイトル買いといっていいくらいに
タイトルだけで読みたい、手にとりたいと思った一冊だ。
もちろん、この本の装幀もとっても素敵だが。

では何をしているかというと、スマホを見ている人が多い。
情報を入手する媒体が変化したのだから、そのことを一概に悪くいうこともないとは思う。
ただ私は「電車のなかで本を読む」タイプだから、
その言葉にもひかれる。

島田潤一郎さんによる読書コラムをまとめたもので、
もともとは高知新聞社発行のフリーペーパーに連載されていたという。
一つひとつのコラムが一冊の本の紹介がもとになっているが、
本の書評というより「本を読むヒント」集として読む方がいい。
一冊読み終わる頃には、
やっぱり本はいいな、電車の中はスマホよりやっぱり本だなと
思えるようになっているのではないだろうか。

この本の「おわりに」というあとがきにこんな文章があるからかも。
「ぼくはすべての人が本を読む必要なんてないというふうに考えますし、
ほんとうに豊かなものは、言葉のない世界にあるのではないか、とも思います。」
こんなことが書かれた本って、やっぱり読んでみたくなりませんか。

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06/13/2023 人間失格(太宰 治) - 青春期の読書は追体験できないのだろうか

太宰治です。
十代の頃夢中になって読んだ作家の一人で、
新潮文庫、角川文庫、太宰の作品が出るたびに読んでいました。
今も私の本棚にはちくま文庫版の『太宰治全集』全10巻が残っています。

この日は太宰が愛人山崎富栄と玉川上水に身を投げたとされる日で
『歳時記』ではこの日をもって桜桃忌としています。
東京をびしよ濡れにして桜桃忌 蟇目 良雨
ただ、その遺体が見つかった6月19日を桜桃忌ということもあり、
この日が太宰の39歳の誕生日ということもあって
最近ではこちらを指すことの方が多いのではないでしょうか。

随分長い間読んでこなかったのは、
若い時に読んだ感動が薄れるのではないかと少し怖れていたのかもしれません。
昔多いに感銘を受けた作品ほど再読しにくいのは
そういうこともあってでしょう。
でも、そろそろいいか、と自分の中で解禁した感じです。

よく覚えています。
だからといって、作品の細部まで覚えているかというとそうでもない。
今回再読して、あまりいい作品とは感じませんでした。
というのも、作品の途中途中で文体が変わるのはどうしたことでしょう。
最後には精神病棟にいれられる主人公ですが、
それは太宰の生涯の前期あたりの姿と重なります。
つまり、太宰は死を前にして思い出すことといえば、
あの頃までの自身だった、あとは付け足しだったのかもしれない。
そんなことを思いました。

私もきっとこう思ったはず。
私もまた、人間失格だと。
それはそれで青春の読書の形だったと、今は思いますが。

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06/12/2023 ジャガイモたくさん採れました - わたしの菜園日記(6月6日)

関東地方も梅雨入りしました。
水郷の水の暗さも梅雨に入る 井沢 正江
この時期、畑に行くのも天候に左右されるので
天気予報は欠かさず見ています。
特に週末の土日の天気は気になります。
昨日の日曜日も雨でしたから、
結局畑には行けませんでした。

ジャガイモの収穫。
収穫のサインである葉が枯れてきたので
おそらくもういつでも大丈夫。
あとは天候。
ジャガイモの収穫は晴れの日が2、3日続いた頃がいいとかいいます。
濡れた土から掘り起こすと
腐ってしまうことがあるとか。
雨の日の収穫はもってのほか。
天気予報をにらみながら収穫したのは、
梅雨入り前の6日。
今年のジャガイモは葉の茂りもよかったし、
花のつきもあったり、
期待していただけあって、
とてもよくできたかな。

写真右がトウヤで、左がダンシャク。
それぞれ1.6㎏(トウヤ)、1.5㎏(ダンシャク)の上出来でした。
それにこの日を逃したら
天候が崩れていったのでなかなか収穫もできなかったのではないかな。

まずはトウモロコシ。

茎の先に咲いているのが雄花で、
まんなかあたりでヒゲを出しているのが雌花。
こう雨が続くとうまく大きくなるか心配になります。
これはキュウリ。

そして、ナス。

どちらの実もこのあと収穫しました。


私が持っている『歳時記』には季語として載っていませんが
ちゃんと句にした俳人もいます。
粧ひをなかばのラベンダーの丘 鷹羽 狩行
雨の日もこんな色合いの花を愛でるのも
またいいものです。

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その証拠に、あの「うんこドリル」が大ヒットしていうじゃないですか。
でも、それって、あの渦をまいた形状に秘密があるのかな。
もし、ネズミの「うんち」のように豆粒状のものだったらどうだろう。
あ、いま「うんち」って書きました。
「うんこ」はかわいいけれど、「うんち」はなんだかそうじゃない?

フランスの子供たちも「うんち」が好きなのかな?
文を書いたのは、マリー・パブレンコさん。
絵はカミーユ・ガロッシュさんが描いています。
森の中で動物たちが自分の「うんち」が世界一だと自慢? していくお話。
まずは、ネズミ。
その次は、リス。続いて、イタチ。・・・
どんどん動物たちは大きくなって、
オオカミやオジカまで「うんち」自慢が続きます。

おしまいに人間の猟師が現れて、動物たちを撃とうとします。
ところが、危機一髪の動物たちを助けるのは
彼らの「うんち」。
さあ、どうなるでしょう。


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06/10/2023 鬼はどっちだ? - 映画「あちらにいる鬼」の話

井上荒野さんの小説『あちらにいる鬼』は随分と話題となりました。
単行本刊行時の帯には
瀬戸内寂聴さん自ら
「作者の父井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった」と
綴っています。
そんな衝撃作が映画化されたのが2022年秋。
その作品が早くも日本映画専門チャンネルで放送されました。
最近のCSとか動画配信の早いことといったら、どうでしょう。
少し前ならロードショーから半年ほどしてDVD化、
それから遅れること半年から1年でテレビ放映だったのが、
DVD化も動画配信もどんどん早くなっています。
手軽に映画を楽しめるのはうれしいですが、
少し寂しいような、そんな複雑な感じです。
今日は早くもCS放送された
映画「あちらにいる鬼」の話です。

廣木隆一監督作品。
脚本は日本映画界の大御所荒井晴彦さん。
主人公、井上光晴をモデルとした篤郎を豊川悦司さん、
彼と不倫の関係になる瀬戸内寂聴をモデルとしたみはるを寺島しのぶさんが
演じています。
寺島さんはこの作品の終盤、
本当に剃髪をしていて、
その様はまさに鬼気迫る感じです。
剃髪のあと、近くの宿にいた篤郎に会いにいく、みはる。
それを演じる寺島さんに寂聴さんの姿が二重写しに見えるほどでした。

篤郎の妻笙子を演じているのが広末涼子さん。
広末さんがいいんですね。
夫の自由奔放さを静かに受けとめる難しい役を演じています。
広末さんが若い頃は
可愛さが先行して演技は未熟でしたが、
年を重ねてとてもいい女優さんになりました。

週刊文春に広末さんの不倫疑惑が報じられました。
夫の不倫に耐える妻を演じた広末涼子さんが不倫?!
鬼はどっちにいるのでしょうね。
でも。こういったことをきっかけにして
演技にきわどさを出せばいいのにと
思わないでもありません。
いつまでもアイドルではなく、
濡れ場もこなす大人の女優になればいいんです。
期待してますよ、広末涼子さん。

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06/09/2023 深夜特急4 シルクロード (沢木 耕太郎) - 年をとったら年寄りらしくせよ。

いよいよシルクロードの旅が始まる。
第10章「峠を越える」ではパキスタンのバスの凄まじい運転を体験し、
続く第11章「柘榴と葡萄」はアフガニスタンのカブールで過ごした
ヒッピー宿での暮らし、
そして第12章「ペルシャの風」ではイランで自身の旅を見つめ直す姿が
描かれている。

いつも意気揚々としているわけではない。
時に自分の行動にげんなりし、疲れきりぐったりすることもある。
そんな中、第12章のカブールの街角で見かけた
アリとフォアマンのヘビー級の試合。
調べるとこの試合が行われたのが1974年10月30日。
この時、沢木さんのイランの街角の電気店のテレビの前にいた。
私はどこにいたのだろう。
長い旅のささやかなシーンではあるが、
その試合が奇跡的なアリの逆転勝利ということもあって
とても鮮やかに描かれている。
沢木さんの作品の魅力はこういう一滴の水のような清涼さといえる。

沢木さんはこんな言葉を引用し、書き留める。
「若いうちは若者らしく、年をとったら年寄りらしくせよ。」
その言葉に引きずられながらもあらがう、
ここにはそんな青年の姿がある。

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06/08/2023 深夜特急3 インド・ネパール (沢木 耕太郎) - あの頃巷にヒッピーたちがたくさんいた

インド・カルカッタの喧噪を描いた第7章「神の子らの家」と、
冷たい雨に閉じ込められたカトマンズでの時間を
手紙を綴るようにして書かれた第8章「雨が私を眠らせる」、
そして、ふたたびインドに戻って死者の火葬を見ることになる
第9章「死の匂い」で構成されている。

「カトマンズの恋人」という映画を観たことがある。
調べると1969年公開のフランス映画で、
当時人気のあったルノー・ヴェルレーが主演している。
ヒッピーと呼ばれた若者が大勢カトマンズを目指していた時代で
映画もそういう若者を描いていたと記憶する。
沢木耕太郎さんが旅行記『深夜特急』のもととなる
ユーラシアへの長い旅に出たのが1973年だから、
まさにその頃のインドやカトマンズにはヒッピーや
貧しい旅行をする若者たちがたくさんいたのだろう。
だから、『深夜特急』の中には、
そんな若者の姿がたくさん描かれている。
しかも、彼らはけっして溌剌としている訳ではない。
ある者は疲れ暗い眼をし、ある者はただじっと蹲っている。
彼らの姿は反面沢木さんの姿でもあったのだろう。

だからこそいつまでも読み継がれる「青春の一冊」になっているように思える。

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06/07/2023 ロンドン・アイの謎(シヴォーン・ダウド) - ロンドンの名所を舞台にしたミステリ

「YA作品」が並ぶコーナーがあったりする。
「YA」、すなわちヤングアダルトで、文学上では児童文学と文学一般の間、
12歳から18歳までの読者を対象に書かれた文学を指すことが多い。
もちろん、作品に年齢的な枷を設ける必要はないから、一応の目安とすべきだろう。
YA作品にも当然いい作品があって、YAだからといって一般読者を遠ざけるべきではない。
シヴォーン・ダウドさんの『ロンドン・アイの謎』もおそらく書籍区分としては、
YA作品に分類されるのだろうが、
大人が読んでも面白いミステリといっていい。

よく映画などでテムズ川そばに映っているから見たことがある人も多いと思う。
写真でみると、大きなカプセルがついていて、これには25人が搭乗できるという。
この物語は、このカプセルに乗ったはずの少年が忽然と消えてしまうところから始まる。
観覧車は一周するのに30分、その間に人が消えてしまうことなんてあるだろうか。
その謎に挑むのが、この物語の主人公である12歳のテッド。
テッドはすこし「ほかの人とはちがう」(作品では「症候群」としか書かれていない)が、
気象学の知識は専門家並み。
そんな彼が姉のカットとともに、事件の謎を解いていく。
イギリスの児童文学の歴史とミステリの変遷が、うまく融合した作品といっていい。

乳がんで47歳で逝去したのは残念というしかない。

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06/06/2023 そうかもしれない(耕 治人) - 「命終三部作」と呼ばれて短編集

1906年生まれ、1988年に亡くなった詩人であり小説家。
その最晩年に発表した三部作が没後評判になり、
「命終三部作」と呼ばれるようになる。
それがこの『そうかもしれない』に収められた3つの短編である。

そして表題作でもある「そうかもしれない」(1988年)。
何故これらが「命終三部作」と呼ばれるようになったのか。
これらはともに80歳を超えた夫婦の物語で、
妻の認知症発症と介護施設への入院、そして自身のがんの発症と入院の姿が
淡々と描かれていく。
実際最後の作品となった「そうかもしれない」発表と時を同じくして
耕さんは亡くなっているのだから、「命終」と呼ばれる所以でもある。

施設から妻が見舞う場面がある。
夫のことがわからない妻。付き添いの人から「ご主人ですよ」と言われ、
妻が口にしたのが「そうかもしれない」という言葉だった。
夫は「打たれたように」黙るしかない。
そして、妻と一緒になってからの五十年という時を思うのだった。

おそらく「命終」と耳にしても興味すらわかなかっただろう。
しかし、それから私も高齢者と呼ばれるようになり、
ここに書かれた物語が遠いものではなくなったせいだろうか、
とても心に沁みわたった。
物語にもきっと「読み時」があって、
だから今私はこの作品に出会ったのだと思える。

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06/05/2023 タマネギが大豊作 - わたしの菜園日記(6月4日)

各地に大きな被害がでました。
埼玉でも金曜から土曜の朝にかけて大雨でした。
そうなると、心配なのが
菜園の横を流れる鴻沼川。
何年か前に台風で氾濫して菜園まで水が流れ込んだことがあります。
土曜(6月3日)の朝、雨が小降りになったので
様子を見てきました。
鴻沼川はさすがに水嵩があがっていました。

菜園の一部のエリアも畝だけが水に浮かんでいるような感じ。

私の畑はなんとか大丈夫でホッとはしましたが。

実はインゲンには私たちがよく目にする「丸ざや種」と
モロッコインゲンのような「平ざや種」があります。
どんなふうに「平ざや」かとわかりやすくわかるように
こんなふうに並べてみました。

こうしてみると、モロッコインゲンが「平ざや種」というのが
よくわかります。

タマネギの収穫をしました。

20個以上収穫したので
大豊作になりました。
タマネギは夏の季語でもあって、
『歳時記』にこんな句を見つけました。
玉葱のくび玉葱で括りたる 早川 志津子
タマネギの保存方法をうまく句に詠んでいます。

アジサイの花。

あぢさゐのどの花となく雫かな 岩井 英雅
アジサイの花を見ると
雨の日もいいかなと思ってしまうのは不思議。
でも、先日のような大雨はご遠慮しますが。

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06/04/2023 とき(文 谷川 俊太郎/絵 太田 大八) - いそがなくてもいい、ゆっくりと絵本を読もう

ちなみに、それはNHKの人気番組「ブラタモリ」でしたが、
その中で屋久杉のことが説明されていて、
屋久杉の年輪のさまを見ることができました。
そこには細い年輪がびっしりとあって、
屋久杉がじっくりと時間をかけて成長していたのがよくわかりました。
屋久島にある杉が千年単位の時間をかけて今にあることに
驚くしかありません。
じっくりと、あせることなく、時間を生きている杉たち。

屋久島の杉はもしかしたら
この絵本の最初にある「おおむかしの もっと むかし」あたりに
芽ぶいたものかもしれないと思ったりします。
私たちはもちろんそんな時代のことは知らないけれど、
屋久杉はずっと見てきたのでしょう。
「むかし」も「おとうさんの こどものころ」も、
「おととし おばあちゃんが なくなった」ときも、ずっと。

最初に生まれたのは1973年。半世紀も前になります。
そして、今年(2023年)4月には第7刷として、また新しくなりました。
誰にも等しくある「時(とき)」。
大切なのは、それを大切に使うかどうか。
時間をかけて大きくなった屋久杉は堅牢で確かな命となって
島の暮らしを支えてきたそうです。

そんな日に太田大八さんの絵も素敵なこの絵本を開くのもいいかもしれません。

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06/03/2023 スピルバーグ監督の自伝的映画は切ない作品でした - 映画「フェイブルマンズ」の話

作品賞など7部門でノミネートされた話題作。
なんといっても、
あのスティーブン・スピルバーグ監督初の自伝的作品というから
興味がわきます。
日本では今年(2023年)3月に公開された
映画「フェイブルマンズ」が早くもDVDになったので
早速TSUTAYAでレンタルして観ました。
今日は映画「フェイブルマンズ」の話です。

スピルバーグ監督といえば多くの映画ファンを魅了してきた名監督。
日本で彼が注目を集めたのが「激突!」(1971年)で
すごい若手監督が現れたと騒がしました。
そのあと1975年に公開された「ジョーズ」でその才能が開花。
あとは「未知との遭遇」「E.T.」など
綺羅星のような作品を連発していきます。
それだけではなく若い監督たちの作品をプロデュースしていくなど
この人なしに映画史は語れません。

映画ファンはたまらない。
人生の出来事、そのひとつひとつが映画になった。
日本で公開時のキャッチコピーが示すように、
スピルバーグ監督自身を投影したと思われる
主人公サミー・フェイブルマン少年が映画にはまって、
やがて自らカメラをまわすようになる姿などが
見事に映像化されています。
タイトルの「フェイブルマンズ」は
主人公のサミー少年だけでなくその両親の話でもあることからで
翻訳すれでさしずめ「フェイブルマン家の人たち」となるかな。

自身が撮影したフィルムで見つけるサミー少年。
この母親を演じているのがミシェル・ウィリアムズで、
彼女はこの作品でアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされました。
優しい夫がありながら、
それでも別の男性に魅かれていくそんな女性を見ていると
ミシェル・ウィリアムズの名演技もあって
切ないという感情に押しつぶされそうになります。

人間のいろいろな感情をそこに映し出すことができる魔法のようなもの。
スピルバーグ監督の伝えたかったことは
そういうことだったのでしょう。

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06/02/2023 深夜特急2 マレー半島・シンガポール(沢木 耕太郎) - 何故、沢木さんは旅に出たのか

マカオでの博打生活に危うさを感じた沢木さんが、
マレー半島からシンガポールへとめぐる旅を描く。
第4章「メナムから」、第5章「娼婦たちと野郎ども」、
そしてシンガポール篇である第6章「海の向こうに」で
構成されている。

香港での「黄金宮殿」という華麗な名前の貧乏宿もそうだが、
沢木さんのこの旅は貧乏旅行ではあるが、
あまりにも危険と背中合わせといっていい。
もしかしたら、命の危険があるかもしれないそんな暮らしぶりに飛び込んでいく姿が
ある意味若さの代名詞のようでもあって、
そのあたりがこの長い旅行記が今でも人気のある所以だろう。

おそらく第6章だろう。
そこには沢木さんがこの旅に出た思いが綴られているからだ。
当時沢木さんはジャーナリストとして自分の場所を固めつつあった。
それでも、26歳の彼はそれを捨てることになる。
「多分、私は回避したかったのだ。(中略)何かが固定してしまうことを恐れたのだ」
沢木さんのように思うことが誰しもある。
しかし、沢木さんのように旅立つことはできない。
だから、『深夜特急』はいつまでも蜃気楼のようにある。
追っても追っても捕まえられない憧れといっていい。
さあ、もっと先を目指そう。

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06/01/2023 深夜特急1 香港・マカオ(沢木 耕太郎) - ふたたび旅にでよう

オンエアされるということで今また話題になっているのが
沢木耕太郎さんの『深夜特急』だ。
最初に「第一便」として刊行されたのは1986年5月で、
沢木さんの26歳のユーラシア大陸をめぐる旅行記は
全3巻としてまとめられた。
その後、新潮文庫に6分冊になって刊行。
それらの総出版部数は600万部にもなるというからすごい。

現在購入しやすいだろう新潮文庫版にそって
もういちど沢木さんと旅に出ようと思う。
もしかしたら最初にこの本を読んだ30歳になったばかりの私に出会えるだろうか。

乗合いバスで旅してみようと思い立ったのは、26歳の時。
沢木さんはこの時すでにルポライターとして
いくつかの仕事をしていたという。
それを捨てて沢木さんが旅に出た、そういうこと自体が
若い読者の感銘を誘うのだろう。

香港での奇妙でそれでいて熱におかされるほどまでの暮らしぶりを描いた「黄金宮殿」、
そしてマカオでの博打にはまりこむ「賽の踊り」が収められている。
なんといっても、「黄金宮殿」が面白いが、まだ旅は始まったばかり。
まずは、前に進んでみようではないか。

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