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 書名にある「世傳」とは「代々にわたって伝えていく」という意味で、
 高田郁さんの人気シリーズにぴったりの言葉です。
 「貫流篇」は、その『あきない世傳 金と銀』の第四巻めになります。
 「貫流」とはあまり聞きなれない言葉ですが、
 漢字そのままの「貫らぬいて流れるさま」と辞書に出ています。
 シリーズ三巻が終わったばかりで、あまりにも急転すぎる展開に
 それでも商いを極めたいという主人公幸の思いそのものでしょうか。
 ネタバレありの、ご用心、ご用心。

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 学者の娘として生まれた幸(さち)ですが、幼くして父と兄を亡くし、
 大坂の呉服商「五鈴屋」の女衆として奉公にでます。
 「五鈴屋」は、二代目徳兵衛の嫁であった富久(ふく)がお家さんで、
 三人の孫が店にいました。
 長男が四代目徳兵衛を継いでいますが、これが女好きのダメな男で
 名家からもらった嫁にも逃げられ、その後添えになったのが幸です。
 この四代目が遊び呆けて亡くなったあと、次男であった惣次が後を継ぎます。
 商売熱心だった五代目徳兵衛(惣次)は幸の才能を見込んで、
 彼女を嫁として迎えます。
 これで、幸の日々も安泰と思えましたが、惣次は幸の才能に嫉妬してしまいます。
 ここまでが、これまでのお話。

 惣次の出奔から、この四巻は始まります。
 主をなくした「五鈴屋」はどうなるのか。
 末の孫智蔵がいますが、彼は商売が苦手。本好きが高じて家を出ています。
 ですが、「五鈴屋」のために六代目徳兵衛となる決心をします。
 そして、なんと幸を嫁に迎えるのです。
 幸は「五鈴屋」の三人の孫の嫁になるのですから、びっくりする展開です。
 ですが、幸は商いの才をいかんなく発揮していくことになります。
 「貫く」のも、大変。幸のこれからにも目が離せません。

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プレゼント 書評こぼれ話

  先日第170回芥川賞・直木賞の発表がありました。
  芥川賞九段理江さんの『東京都同情塔』が、
  直木賞河﨑秋子さんの『ともぐい』と万城目学さんの『八月の御所グラウンド』が
  同時受賞でした。
  万城目学さんは6回めのノミネートでの受賞。
  やっぱりうれしいでしょうね。
  異質なのは、河崎秋子さん。
  「元羊飼い」という経歴が目をひきました。
  その河崎さん、こんなことも言っています。
  「自分の書いたもので他人の脳みそをぶん殴ってやりたい
  うん、いいですね、この強烈さ。
  受賞作ではないですが、
  河崎秋子さんの短編集『土に贖う』を
  今日は紹介します。
  これはもう絶品。
  いうことなしの<推し>です。

  じゃあ、読もう。

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sai.wingpen  河崎秋子さんは絶対の<推し>                   

 『ともぐい』で第170回直木賞を受賞した河崎秋子さんは、新人らしからぬ様々な賞を受賞した経歴を持つ、恐るべき逸材といえる。
 主な賞と作品でいえば、2014年に『颶風の王』(ぐふうのおう)』に三浦綾子文学賞、2019年に『肉弾』で第21回大藪春彦賞受賞、そして、この『土に贖う』で第39回新田次郎賞を受賞。そして、『ともぐい』で直木賞。
 これまで書いてきた作品がいずれも高い評価を得てきた証であろう。

 それに河崎さんの経歴がなんともいい。
 「元羊飼い」。
 小説家であっても、ほかにどんな職業を持っていても不思議ではない。しかし、「元羊飼い」はいい。北海道の大地と獣の臭いがするようである。
 それは7つの短編を集めた短編集であるこの『土に贖う』にも通じているといえる。
 ちなみに「贖う」には「罪ほろぼしをする」という意味がある。

 この短編集に収められた7つの短編は、いずれも北海道ならではの作品である。
 「蛹の家」は初期の養蚕農家の苦悩、「頸、冷える」はミンク飼育が生み出した悲劇、「翠に蔓延る」は北見のハッカ盛衰、「南北海鳥異聞」は羽毛採りの男の悲哀、「うまねむる」はかつて馬との生活が日常であった日々、「土に贖う」と「温む骨」は粘土に人生をかけた人達の記録、と描かれている世界は様々だが、彼らの手は生活の色を成している。
 どの作品もいいが、一番は「うまねむる」か、それとも「翠に蔓延る」か。
 少なくとも、河崎秋子さんは絶対の「推し」である。
  
(2024/01/30 投稿)

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 今年は暖冬だからでしょうか、
 少し冷え込んだり北風が強く吹くと寒く感じます。
 近くの公園では水仙の花が咲き始めました。

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 水仙は春の花のイメージがありますが、
 季語としては冬。

    一茎の水仙の花相背く        大橋 越央子

 でも、やはり春の気配を感じる花でもあります。

 先週ジャガイモの「浴光催芽」のことを書きましたが、
 写真のように芽が出てきました。

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 よく出ているのはメークインの方。
 やはり品種によって芽が出やすかったりするのかも。
 2月中旬には植え付けできそうです。

 畑の作業も収穫もほとんどないのですが、
 昨日の日曜日畑に行って、
 ミニニンジンの間引きをしました。

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 間引いたニンジンの小さいこと、ちいさいこと。
 それでも、小さくてもニンジンの色と形をしているから
 感心します。

 こちらはソラマメ

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 この時期ですから、まあこれぐらいがいいでしょう。

 畑では霜柱が出たのか、土が荒れています。
 でも、こうして自然の力で土も再生されていくので
 これも必要。
 今週の日曜日、2月4日は立春
 春はもうすぐです。

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 アメリカの絵本作家マーク・ティーグさんが描いた『キングコングのいとこ』は、
 なんといってもその発想が素晴らしい。
 あのキングコングにいとこがいたなんて。
 しかも、そのいとこ、ジュニアというのだけど、
 キングコングみたいに大きくはないし、ママと猫のバーニスと暮らす、
 いたって普通の猿なんだ。
 あこがれはなんといっても、キングコング。
 だから、キングコングのように大きくなるように、日夜トレーニング。
 でも、ちっとも変わらない。

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 キングコングというのは、アメリカが生んだ大スター。
 初めて映画化されたのが1933年。それから、いくつもの作品に出演。
 日本の大スター、ゴジラとも闘ったことがあります。
 そんな有名なキングコングに
 小さないとこを登場させたことがこの絵本の面白さ。
 そして、そんな小さないとこでも、
 ママが「あなたはとても勇敢だった」とほめてくれるようなことが起こるのだから
 この絵本を読んだ子供たちへの励ましにもなるのではないでしょうか。

 まるで白黒映画を観ているような
 そんな素敵な配色も心地いい、絵本でした。

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 先日第96回米国アカデミー賞の各部門のノミネート作品が発表されて
 山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」(2023年)が視覚効果賞
 日本映画で初めてノミネートされました。
 さすが、日本が誇る大スターですね。
 受賞の際にはぜひアメリカの大スターであるキングコングから
 オスカーを授与されたらいいなぁ。
 そのキングコングの話。
 日本のゴジラ同様、今でもキングコングは人気者で
 ウィキペディアには「アメリカ文化の古典的かつ象徴的なキャラクター」と
 説明されるほど。
 今日はその最初となった1933年制作の「キングコング」の話です。

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 映画「キングコング」は1933年のアメリカ映画。
 驚くのは、なんといってもこの映画の制作年度。
 1933年というのは昭和でいえば8年。
 そろそろ戦争のきな臭い匂いが出る頃です。
 そんな時代にアメリカでは今でも目を見張る
 特撮映画を製作していたのですから驚きです。
 しかも、この作品のキングコングの純愛ぶりはどうでしょう。

 ある日突然目の前に現れた金髪の美女(フェイ・レイという女優が演じています)に
 心を奪われてしまいます。
 手の中の彼女の衣服をはぎとったり、
 身体に触れたり、匂いを嗅いだり、
 そんな姿を見ていると、この映画は
 キングコングの恋愛映画かと思いたくなります。

 怪獣の島から都会へと連れてこられ見世物にされてしまいますが、
 それでも彼女恋しさに逃げ出して
 エンパイア・ステート・ビルにのぼっていきます。
 そのてっぺんで飛行機と闘うキングコングの姿は
 あまりにも有名です。
 この時もキングコングは愛しの女性を巻き添えにはしません。
 そういう紳士的なところがアメリカ、
 いえ世界中の人々から愛されるのでしょう。

 今日映画「キングコング」の話をしたのには理由があります。
 実は明日の絵本の紹介とつながっているのです。
 さて、明日はどんな絵本の紹介になるでしょうか。
 お楽しみに。

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 言葉の進化についていけないことがある。
 ファイナンシャルプランナーである品田一世(いっせい)さんのこの本、
 『いつのまにか億り人になれる超マネーハック』のタイトルの中に
 2つも最近になって目にする言葉が含まれている。
 その一つが「ハック」。
 「コツ」とか「ノウハウ」という意味で、
 「ライフハック」という言葉で広がったらしい。
 つまり。この本では資産を増やすための「コツ」とか「ノウハウ」が紹介されている。
 もう一つが「億り人」。
 最近の書店にこの言葉を使ったタイトルの本をしばしば見かけるようになった。
 品田さんはこの本でこの言葉の意味を
 「株式投資などで資産1億円を築いた人」と説明している。
 昔であれば、「億万長者」なんて夢のまた夢のように考えられていたが
 最近ではもしかしたら自分も「億万長者」になれるかもと考える人が多くなったかも。
 それが「億り人」のような造語を生み出したといえる。

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 ただ、この本は単に投資の本ではない。
 もちろん、投資のための章立てもあるが、どちらかといえば
 幸せになるための「ライフハック」の方がメインといっていい。
 だから、「自分の幸せのベースをはっきりさせましょう」とか
 「投資は自分の人生をより良くするための手段であって、目的ではありません」といった
 人生訓のような言葉がたくさん散りばめられている。
 この本は投資成功のために求めるのではなく、
 人生を豊かにするための一冊として読むといい。

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 「投資」とは「広辞苑」によると、
 「利益を得る目的で、事業に資金を投下すること。出資」とある。
 続いて出てくるのが、
 「比喩的に、将来を見込んで金銭を投入すること」とあって、これには例がつく。
 「息子に―する」。
 元「暮しの手帖」の編集長の松浦弥太郎さんといえば、
 丁寧な生き方を推奨するエッセイを多く発表していて、
 金銭的な「投資」とは随分遠いところにいる人というイメージがある。
 そんな松浦さんが2021年に『僕が考える投資について』という本を出しているのが意外で
 手にとってみた。
 やはり、松浦さんの「投資」の場合、「広辞苑」に出てくる「比喩的」に相当していて、
 その対象は「自分自身」であった。
 なので、この本はお金の本というよりは、「自己実現」のための本といえる。

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 「お金とは増やすものではなく、有意義に使うこと」で、
 「まず考えるべきことは、自分はどんな人間になりたいのか」だと、
 松浦さんは書いている。
 つまり、「生き方としての投資があることを伝えたくて」この本を作ったそうで、
 松浦さんと「利益を得る目的」の「投資」とに違和感をもっていた読者は、
 そう書かれているので、ちょっとほっとしているのではないだろうか。

 松浦さんがこの本で書かれている内容は、
 金銭的な増加にたちまち直結することはないかもしれないが、
 じわっと効いてくるかもしれない。
 そういう意味では、この本を読むのも「投資」といえるだろう。

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 砂原浩太朗さんの「神山藩」シリーズ待望の第三弾の書名『霜月記』では
 「霜月」を「そうげつ」とルビがふられているが、
 「しもつき」と読むことの方が多いのではないだろうか。
 旧暦11月の異称で、冬の入り口を指す。
 作中でもこんなセリフが交わされている。
 「ひとの生涯を一年に見立てるなら、そろそろ霜もおりてくる頃合いかと

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 主人公は父の謎の出奔によりそのあとを継ぐ形で町奉行となる、18歳の草壁総次郎。
 そして、もう一人、総次郎の祖父でかつて名奉行として知られた左太夫。
 左太夫はすでに60歳を超え、今は隠居となって知り合いの小料理の離れで暮らしている。
 現代風にいえば、「定年後」の「悠々自適」の暮らしであろうか。
 この二人の視点で、交互に描かれていくが、『霜月記』とあるくらいだから、
 やはり祖父・左太夫の物語と読むのがいいだろう。
 つまり、この作品は藤沢周平さんの『三屋清左衛門残日録』を意識したものかもしれない。

 奉行としての経験の浅い総次郎に、藩の大店の元番頭の男が殺されるという事件が起こる。
 続いて、その妻も殺され、もしかしたらこの事件に出奔した父が関係しているかもしれない。
 総次郎は祖父のたすけを求めつつ、事件の深層に迫っていく。
 事件の謎を解くミステリ仕立てになってはいるが、
 この物語は親子の関係を静かに描いて、読むものの胸をうつ。
 仕事にしか目がいかず、出奔した息子と会話した記憶すらない、祖父。
 その孫もまた父の姿がおぼろだ。

 「霜月」はこれから冬に入ろうという頃合いだが、
 物語の結末は凍てついた親子の関係が解けていく様が描かれていて、
 早春のようでもある。

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プレゼント 書評こぼれ話

  ついにこの時がやってきました。
  読み続けてきたアガサ・クリスティー
  名探偵エルキュール・ポアロものの長編小説全33巻読破の瞬間です。
  最後に紹介するのは32作めの『象は忘れない』。
  この作品のあと『カーテン』が刊行されますが、
  書評にも書いたように実際にアガサ・クリスティーが書いた
  最後のポアロものはこちらの方。
  しかも、読み応えもあり。
  いつもの霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』でも
  ★★★★の高評価です。
  それで、33作めの『カーテン』ですが、
  このブログでは2018年11月28日(わー、4年も前だ)に紹介していて、
  今日は特別にその時の書評も載せてしまいましょう。

  じゃあ、読もう。

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sai.wingpen  本当はこれが最後のポアロものの長編小説                   

 ミステリの女王、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵エルキュール・ポアロが活躍する長編小説は全部で33篇ある。
 但し、最後の作品『カーテン』はアガサが亡くなる前年(1975年)に刊行されたが実際の執筆は第二次大戦中であったことから、実質的にポアロの最後の長編小説は1972年に刊行されたこの『象は忘れない』ということになる。
 原題は「Elephants Can Remember」で、その意味について作中にこの「象は忘れない」逸話が描かれている。それは、仕立屋に自分の鼻を縫い針で刺された象がそのことを覚えていて、次にその仕立屋を見かけた時象が水をぶっかけたという話で、どんなに昔のことであっても象のように覚えている人がいるものという意味だ。
 そして、この作品でポアロはまさに十数年前に起こった奇妙な心中事件の謎を解くことになる。

 初期のポアロの作品ではポアロの相棒としてヘイスティングズが登場するが、後期になると推理作家のミセス・オリヴァがしばしば登場する。
 この作品でもきっかけはオリヴァに持ち込まれた事件の真相を知りたいという夫人からの依頼で、オリヴァはポアロを頼ることになる。
 が、オリヴァは実に積極的な人物で、自身多くの「象」を訪ね歩くことになる。
 事件の謎を解くカギは二つある。
 一つは心中事件で夫とともに亡くなったといわれる夫人が所有していた「かつら」。
 もう一つは、夫人には双子の姉がいたこと。しかも、その姉は精神を病んでいたこともあったという。

 なんとなく、かつての心中事件の真相が判明しそうだが、その動機はむしろとても感動的。最後にして、アガサはポアロに素敵な作品を贈ったといえる。
  
(2024/01/23 投稿)

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sai.wingpen  ポアロはどうなってしまうの?                   

 「ポアロ最後の事件」とサブタイトルがついたこの長編推理小説が発表されたのが1975年。それからわずか1年後の1976年1月作者のアガサ・クリスティーは亡くなる。
 死の直前に彼女の代表作であった「ポアロ」シリーズに終止符をうった形だが、実際にこの作品が執筆されたのは亡くなる30年以上前で、本来は彼女の死後発表される予定だったという。
 アガサが『スタイルズ荘の怪事件』でミステリ作家としてデビューしたのが、そしてそれはポアロの初登場でもあるが、1920年のことでそれからわずか20年ほどでその最後の事件を執筆していたことになる。

 それにしても心憎いのは、ポアロの最後の活躍の場所を思い出多き「スタイルズ荘」にしたことだ。
 そこにいるのは「関節炎のためほとんど立居にも不自由」となった老いさらばえたポアロであり、そんな彼が「スタイルズ荘」に招きいれたのは最初の事件以来何度もポアロと行動をともにしてきたヘイスティングズだ。
 今度の事件も難問で、しかもポアロはほとんど動けないとあって、彼の手足となるべくヘイスティングズが呼ばれた訳だが、えー! 彼で大丈夫なの? と多くの読者は思うにちがいない。
 ヘイスティングズの思い込みの強さや勘違いでどれだけ事件をややこしくしてきたか、その一方で彼の行動が事件に解決にもつながっているのだが。

 今回もヘイスティングズの行動や言論にヤキモキすることになる。
 彼はまったく「道化役」ともいえる活躍? をすることになる。しかも、今回は娘の恋のジャマまでするのだから。
 そして、結末。
 なんとも驚くべきその結末に、ヘイスティングズ以上に読者は驚くに違いない。
  
(2018/11/28 投稿)

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 暖冬だといわれるこの冬、
 それでも暦とおりとなるのも不思議。
 20日の土曜日は、二十四節気のひとつ大寒で、
 一年で最も寒くなる時期。

    大寒や星のなまへの店を出て      小林 すみれ

 関東の平野部でも雪の予報が出たりして
 妙に感心して冬の暗い空を見上げてりしています。

 その前日の金曜日は3月並みの気温とかで
 畑にいってもポカポカ陽気。
 でも、気温があがってもあまり作業はすることもなく、
 タマネギの根っこを押さえるとか
 追肥をしておくとかぐらいしかありません。

 タマネギは今の時期なら、
 この程度で冬を越します。

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 豆科の野菜には追肥もしました。
 これはスナップエンドウ

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 この写真よく見ると、違いがあるのわかります。
 左が普通のスナップエンドウ
 右がムラサキ莢のスナップエンドウ
 葉とか茎に少し紫の色が出ているのがわかります。
 苗と苗の間に切れ目がはいっているところが
 今回追肥をしたところ。
 鶏糞肥料を入れました。

 こちらは手前がナバナ
 その後ろ、防虫ネットで覆っているのが茎ブロコッリー

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 そろそろ鳥が葉を食べる頃。
 鳥も餌がなくなってくると畑にもやってきて喰い荒らします。
 なので、防虫ネットというより防鳥ネット。

 ホームセンターの園芸売り場では
 ジャガイモのタネイモが出てきました。
 そっそく購入して、
 芽を出す準備を始めました。

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 日にあてて発芽を促すことを「浴光催芽」といいます。
 今年はメークイン男爵を植え付ける予定。
 2月中旬から3月頃の植え付け予定。
 それまでしっかり芽、出てこい。

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 「天は二物を与えず」とよくいわれます。
 確かにその通りだと思うこともよくありますが、その逆、
 時に天は二物を与えることも目にすることもあって、なんとも羨ましい。
 昨年(2023年)12月30日に73歳で急逝された
 歌手・八代亜紀さんも天から二物を与えられた人でした。
 八代亜紀さんには歌手以外にも「画家」としての顔もあって、
 それは趣味として絵を描く以上の実力を備えたものでした。
 この『みんな、こどもだった』は、そんな八代さんの「抒情画物語」で
 大きなキャンパスで描いた作品ではないですが、
 八代さんはこんな風な絵も描いていたのだと、
 胸をつかれるような一冊でもありました。

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 2000年に刊行されたこの本の巻末で、
 八代亜紀さんの「画家」としての略歴も載っています。
 もちろん、そのあとも展覧会での入選数は増えていっています。
 何よりも、絵筆を握る時、歌手であることから解き放たれる時間があったことでしょう。
 天が与えた二物は、それがあればこそ、もう一方も輝ける、
 そんな効果があったのだと思えます。

 この「抒情画」集は、昭和の家族の一年間の日常を描いたものです。
 そのはじめに八代さんの「この本によせて」という一文が載っています。
 その中の一節。
 「やさしさとは何でしょう。
 慰めること、信じること、叱ること、いたわること。
 つまり、相手のことを想うことです。
 八代さんが若くしてクラブ歌手を目指したのは、
 両親の暮らしを早く楽にしてあげたい、その一心だったといいます。
 あるいは、クラブ歌手時代にクラブで働く女性たちの多くの涙も見てきたといいます。
 八代さんの歌が、絵画が、たくさんの人の心に届いたのは、
 八代さんがもっていた「相手のことを想う」心だったのだと、
 画家八代亜紀さんが描いた「抒情画」を見て、そう感じました。

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 昨日紹介しました
 有吉佐和子さんの『華岡青洲の妻』は1967年に出版されるやいなや
 たちまちベストセラーとなり、
 すぐさまドラマ化や舞台化されていきます。
 本が売れたということもありますが、
 物語が嫁姑対立を描いていて、二人の女性が登場することも
 ドラマ化に拍車がかかったともいえます。
 構図としてはベテラン女優と新人女優の美の共演。
 当然映画界もその話題作を追いかけない訳がなく、
 単行本が出版された同じ年の秋、映画化されています。
 今日は、映画「華岡青洲の妻」の話です。

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 映画「華岡青洲の妻」は1967年10月に公開された
 増村保造監督のモノクロ映画です。
 脚本は新藤兼人さんですから、作品の出来は見ごたえ十分。
 主人公の華岡青洲を市川雷蔵さんが演じていて、
 この作品の演技でこの年のキネマ旬報主演男優賞を受賞しています。
 姑の於継を高峰秀子さん、妻の加恵を若尾文子さんが演じています。

 見どころはやはりこの二人の女優の演技です。
 結婚当初は仲のよかった嫁と姑ですが、
 修行先から青洲が戻ってくると確執が強まります。
 といっても、周りの人には嫁思いの姑、姑思いの嫁と思わせながら
 互いの意地の張り合い、女の心の激情を、
 二人の名女優は巧みに演じていきます。
 注目して欲しいのは、
 二人の「目の演技」。
 目の動きや目のやり場で、その時々の女の気持ちを
 見事に演じていきます。

 もう半世紀以上前の作品で、
 しかもモノクロ映画でありながら、
 原作をこれほどまでにうまくまとめあげたその手腕は、
 最近の映画以上かもしれません。

 あなたなら高峰秀子さん、若尾文子さん、
 どちらに軍配をあげますか。

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 「広辞苑」は言葉の意味だけでなく、人名辞典としても使うことができる。
 有吉佐和子さんの名作『華岡青洲の妻』の主人公でもある「華岡青洲」について、
 「広辞苑」ではこう説明されている。
 「江戸後期の外科医。紀伊の人。古医方を学び、後に漢・蘭医方を折衷し、
 外科学の改善に功があった。麻酔剤を案出し、日本で初の麻酔手術に成功。
 有吉さんの作品では、説明の後半箇所、「麻酔剤を案出」のために青洲の実験に協力した
 母親於継(おつぎ)と妻加恵(かえ)の壮絶なまでの葛藤を描いている。

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 この作品は1966年に発表され、有吉さんはこの作品によって第6回女流文学賞を受賞
 本もベストセラーとなり、映画だけでなくドラマや舞台でも毎年のように上演されていく。
 作品が発表されてから半世紀以上経った今読んでも、面白い。
 その気品と知性の豊かさで評判であった於継は、幼い加恵にとっても憧れだった。
 成人した加恵をある時於継自ら、息子雲平(のちの青洲)の嫁にもらえないかと訪ねてくる。
 憧れの於継とともに暮らせる、その喜びに加恵の心は打ち震える。
 ところが、雲平が修行先から戻ってくると、於継の態度は一変する。
 ここから、姑と嫁との壮絶な戦いが始まる。

 青洲の麻酔剤の実験に自ら名乗り出る姑、嫁も負けじと自分をもと訴える。
 そんな二人の戦いを静かに見ていたものもいる。青洲の妹である。
 結婚もせず年をとった彼女は死病に冒されながらも、最後に言い放つ。
 「嫁にも姑にもならないで、仕合せであった」と。

 姑と嫁の確執は今でも存在する。
 有吉さんの作品は、そのことを俗ではなく、文学として冷静に見つめている。
 まさに昭和の名作だろう。

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 朝日新聞朝刊一面に毎朝掲載されている、哲学者鷲田清一さんによるコラム「折々のことば」で、
 こんな言葉が紹介されていたのは、2013年の秋の終わりだったでしょうか。
 「定年後が退屈になる原因の一つは、「失敗」する機会がないことだ。
 この言葉が意外だったのは、これが外山滋比古さんの『お金の整理学』の一節だったからだ。
 外山さんといえばベストセラー『思考の整理学』をはじめとした著作で、
 「知の巨人」とも称される文学博士で、「お金」とは無縁の人だと思っていた。
 そこで2018年に出た『お金の整理学』を読んでみた。

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 読んで驚いたのは、外山さんが30歳の頃から長い間「株投資」をしてきたことだ。
 だからこそ、「定年後の人は株投資を楽しむのもいい」という言葉も出てくる。
 つまりは、経験者は語る、だ。
 鷲田さんが紹介した「定年後が退屈」云々の言葉は、
 外山さんなりの定年後の人びとへのエールだったのだろう。
 この『お金の整理学』にはこんな言葉も出てくる。
 「定年後の第二の人生は、現役時代の「ふろく」ではない
 「人間らしい生き方をするために、リスクを伴う選択は必要
 それゆえに楽しむ「株投資」を薦めているのだろう。

 といっても、個別銘柄を薦めている訳ではない。
 外山さんが書きたかったことは「一人ひとりが考えること」が大事で、
 「安易なハウツーは、何の意味もない」ということだ。
 つまりは、「思考」なのだ。
 2020年、96歳で亡くなった外山滋比古さん。
 亡くなる2年前に出たとは思えないほど、この本は退屈しない。

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 阪神淡路大震災から3年経ったチェロの大コンサートの様子を描いた、
 絵本作家のいせひでこさんの『1000の風 1000のチェロ』の表紙の折り返しに、
 こんな言葉が書かれています。

   こころはひとつにできる/きもちはかさねあえる

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 阪神淡路大震災が起こったのは、1995年1月17日。
 今年(2024年)、29年めとなるあの日を迎えます。
 そして、この日はあの日被害にあわれた人や町への追悼だけでなく、
 今年はまた新たなな悲しみと私たちは向き合うことになりました。
 2024年元旦に能登半島で起こった大きな地震と津波。
 雪が舞う寒さの厳しいなかを、今も多くの方が避難されています。
 崩れた山、倒れた家、燃え尽きた町、めくれあがった道路、
 そんな悲惨な姿を目にするだけでつらくなります。

 阪神淡路大震災の時もそうでした。
 倒れた高速道路、燃える町、倒壊した多くの建物。
 あれからどれだけの時間が過ぎても、あれらの光景は目に焼き付いています。
 このあとも、私たちは大きな震災を体験してきました。
 東日本大震災、熊本地震、そして今回の能登半島地震。
 そして、そのたびに人々は前を向き続けてきました。
 「あたらしいあした」を信じて、歩き出しました。

 いせさんはこの絵本であの時の大きな悲しみを前面に描くことはしませんでした。
 描いたのは、それでも前を向こうとする人たちであり、
 ともに生きようとする人たちの思いです。
 この絵本は阪神淡路大震災から5年後の2000年に刊行されました。
 そして、私は今回の能登半島地震で被災された人たちに届くように、再読しました。
 気持ちは、きっと、かさねあえます。

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 歌手の八代亜紀さんが2023年12月30日に亡くなったという訃報が届いたのは、
 年が明けて間もない1月9日のことでした。
 まだ73歳、人生もまだたくさんの時間があっただろうし、
 これからも多くの歌で魅了しただろうと思うと、淋しくなります。

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 八代亜紀さんにはたくさんの名曲があります。
 1980年に日本レコード大賞を受賞した「雨の慕情」もそうですが、
 私はなんといっても「舟唄」(1979年)です。
 大げさかもしれませんが、八代亜紀さんの名前は「舟唄」とともに
 人々の記憶に残ったのではないでしょうか。
 八代亜紀さんが2001年に発表した自伝的エッセイ『素顔』の中で
 この2つの歌のことをこう綴っています。
 「圧倒的な大衆性のある「雨の慕情」という一曲と、
 文芸作品とでもいうべきような「舟唄」という二つの記念碑的な歌」と。

 そして、多くの人の記憶にあるのが、
 映画「駅 STATION」で使われた「舟唄」でしょう。
 映画「駅 STATION」は1981年の秋に公開された倉本聰さん脚本の名作で、
 主演は高倉健さん。
 ひとりの男が大晦日の寒い夜、倍賞千恵子さん演じる女がいる小さな飲み屋で
 静かにお酒を呑んでいます。
 そこに八代亜紀さんの「舟唄」がテレビから流れてくるという場面。

   お酒はぬるめの燗がいい/肴(さかな)はあぶったイカでいい

 この映画のことも八代亜紀さんは『素顔』の中に書いていて、
 高倉健さんに「これは『舟唄』の映画でもあるんですよ」といわれたそうです。

 この『素顔』という自伝的エッセイは、
 1950年生まれだった八代亜紀さんが50歳の頃に書いたものだが、
 クラブ歌手になろうと上京したものの売れない時代が続いたことや
 八代亜紀になる前の、本名橋本明代という少女時代のこと、
 流行歌手になってからのスランプなど、
 まさに八代亜紀さんの「素顔」が綴られた、貴重な一冊です。

    思い出だけが 行き過ぎる
    涙がポロリと こぼれたら
    歌い出すのさ 舟唄を

 阿久悠さんの切ない歌詞が八代亜紀さんという歌い手によって
 見事に結晶した名曲を
 今夜も聴きながら、多くの人が涙するのでしょう。

 八代亜紀さん、
 たくさんの名曲を聴かせて頂き、ありがとうございました。

 ご冥福をお祈りします

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 2024年最初の「菜園日記」は、初雪の話から始めましょう。
 先日の土曜日(1月13日)、東京や神奈川といった関東でも初雪が観測されました。
 あれ? 埼玉では降らなかったのかと少し残念でしたが、
 翌日の日曜日の朝、菜園に行くと、
 雪が少し、まるで砂糖をこぼした程度ですが、残っているではありませんか。
 初雪です。

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    命ありて見る初雪の新しや       桶笠 文

 暖冬とはいえ、やはり寒いですし、
 野菜の管理もほとんどありませんから、
 日曜日の朝に菜園にやってくる利用者もあまりいません。

 今栽培している野菜の様子を書いておきます。
 これは五関菜

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 五関菜はさいたま市の伝統野菜で、ナバナの一種。
 葉物野菜として食べることができるくらいになりましたので
 このあと少し収穫しました。
 茹でで頂きましたが、少し苦みがありました。
 それがこの野菜の特長なのか、どうもよくわかりません。

 こちらはホウレンソウシュンギク

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 もう少し大きくなったら、収穫できそう。

 そして、ムラサキ莢のスナップエンドウ

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 これは冬越し野菜ですから、
 まだまだこれから。

 収穫できたのは茎ブロコッリー

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 茎ブロコッリーは冬野菜としては珍しく、
 次から次へと収穫できるので、
 この時期としては重宝する野菜です。

 寒くはありますが、
 少し体を動かすだけで暖まります。
 冬の菜園ならではの、運動効果です。

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 明日1月15日は小正月
 年末年始と多忙だった女性たちが一息つけるということで、女正月ともいいます。
 この日食べるのが、小豆粥

   亡き母の正坐思へり小豆粥       中嶋 鬼谷

 小豆の赤に魔除けの力があるのだとか。
 日本には、こういった節目の日に、その日にちなんだごちそうを頂く、
 とても大事にしたい習慣があります。
 一年のそんなごちそうを絵本にしたのが、
 イラストレーター谷山彩子さんの『ごちそうごよみ』。

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 冒頭に書いたような小豆粥をはじめ、
 正月のおせちからひなまつりのごちそう、春の彼岸、花見弁当、
 ちまき柏餅、初夏の半夏生に頂くタコ料理、月見だんご、冬至のなんきん、
 といったようにたくさんのごちそうが、
 なんともやわらかいタッチの絵で表現されています。
 和のテイスト、フェルトのような絵と呼べばいいでしょうか。

 そうして、順に見ていくと、
 この国の四季がなんとも豊かなものであるかが実感されます。
 例えば、彼岸の時のごちそう、ぼたもちとおはぎの違い。
 春の彼岸はぼたんの花からとって、ぼたもち。
 秋の彼岸は萩の花から、おはぎ。
 といったちょっと友だちに話したくなる豆知識も満載。
 一年中楽しめる、絵本です。

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 歴史小説時代小説と続いたので
 映画も時代劇と続けましょう。
 最近では時代劇作品はあまり制作されなくなりましたが
 かつては時代劇が日本映画を牽引した時代もありました。
 その頃は様式美というか美しい型を見せる作品が多かったのですが
 この作品以降、リアルな殺陣が主流となっていきます。
 そういう意味でも、この作品は画期的な作品だったといえます。
 今日は映画「用心棒」の話です。

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 映画「用心棒」は1961年公開の日本映画です。
 監督はいうまでもなく黒澤明
 黒澤明といえば、日本を代表する名監督で
 代表作は山ほどありますが、
 映画の面白さという点ではこの「用心棒」はずば抜けています。

   徹底的な楽しさだけを追求していく作品

 これは黒澤明自身の言葉です。

 主人公の「桑畑三十郎」という剣の腕がたつ浪人を
 三船敏郎が演じています。
 三船敏郎の魅力はシリアスな演技もできるし、
 この作品のようなちょっととぼけた役も見事に演じれるところでしょう。
 三船はこの作品でヴェネツィア国際映画祭で男優賞を受賞しています。
 ちなみにこの作品のあとの黒澤作品は「椿三十郎」で
 名前つながりとなっています。

 物語は二つのやくざ勢力で二分された宿場町に流れついて主人公が
 その剣の腕前を利用して互いの勢力に「用心棒」として入り込んで
 やくざたちを退けようとする時代活劇。
 この作品はのちにマカロニウエスタンの傑作「荒野の用心棒」として
 リメイクされたのは有名な話。

 三船の敵役で仲代達矢がニヒルな演技を見せていますが
 むしろ少し頭の鈍い役を演じた加東大介の巧さが光っています。
 いい映画はどんなに時代を経ても面白い。
 この「用心棒」はその典型だといえます。

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 書名にある「世傳」とは「代々にわたって伝えていく」という意味で、
 高田郁さんの人気シリーズにぴったりの言葉ではないか。
 「奔流篇」は、その『あきない世傳 金と銀』の第三巻めになります。
 ネタバレもありの、
 「奔流」とは「激しい流れ」をいいますが、
 大坂天満の呉服商「五鈴屋」のご寮さんとなった主人公幸(さち)の日々もまた
 激しい流れに晒されていくことに。

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 こういうシリーズものの話を書くのは難しく、二巻めの結末を書けないでいましたが、
 そうなると三巻めの説明がつかなくなるので、目をつぶってネタバレします。
 四代目徳兵衛の後添いになったものの、その四代目が不慮の事故で亡くなって
 五代目徳兵衛をその弟の惣次が継ぐことになります。
 その際の条件が幸を嫁にすること。
 性格はきついものの利に聡い惣次は、幸にいずれは江戸に店を構える夢を語る男でもあり、
 ようやく幸にも商いの面白さを実感できる予感がしてきます。
 そんな幸の知恵を借りながら、惣次の商売は順調に進んでいきますが、
 子を産むことだけが女の仕事といわんばかりに
 次第のその言動が高飛車になっていくのです。

 それでもそんな夫についていこうとする幸ですが、
 ついに衝突してしまいます。
 自分より上に立つことは許さないと怒る惣次の姿に、
 自分の職場にもいるそのような男の姿と重ねる女性読者は多いはず。
 そういう読者の応援があるから、幸の活躍が楽しみで、次巻に続くのです。

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 日本三景の一つ、安芸の宮島にある厳島神社
 いうまでもなく日本が誇る世界遺産である。
 有名な大鳥居をはじめとして、海上に浮かぶ厳島神社は
 島全体が神の島として崇められているが、
 その島を舞台にしてかつて凄惨な戦いがあったことはあまり知られていないかもしれない。
 武内涼さんが2022年上半期「産経新聞」に連載した『厳島』は
 2023年4月に単行本として刊行され、
 雑誌「本の雑誌」が選んだ2023年度ベスト10で3位に選出されている。

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 物語は、戦国三大奇襲と呼ばれている「厳島の戦い」の話だが、
 三大奇襲といわれてもよくわからないので、念のために書いておく。
 桶狭間の戦い・厳島の戦い・河越城の戦い、をいうそうだ。
 その「厳島の戦い」が何故奇襲と評されるかというと、
 兵力で圧倒的に不利であった毛利元就軍が、当時西国の雄であった陶晴賢の大群を
 厳島に誘い込んで大勝したからである。
 毛利元就の名が戦国武将の名として残っていくのもこの戦いで勝ちを治めたからで、
 この戦いで元就がどのような策を張り巡らせたか興味がつきない。
 さらに彼の逸話で有名な「三本の矢」で例えられる三人の息子、
 毛利隆元、吉川元春、小早川隆景のそれぞれの個性の描き分けも面白い。

 一方、陶晴賢軍にあって知将と知られた弘中隆兼の描き方もいい。
 元就の策に対して隆兼も智恵で迎え撃とうとするが、
 主である陶晴賢とその取り巻き達によって悉く潰されていく。
 戦国時代のありさまではあるが、現代に通じる「失敗の本質」の姿だろう。
 読み応え十分の歴史小説といえる。

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 年4回の季刊で発行される
 AERA臨時増刊の「サザエさん」の2024年最初の巻が出ました。
 『サザエさん2024』で、作者はもちろん長谷川町子さん。
 「サザエさん」と「エプロンおばさん」、全部で188本の漫画が収められています。

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 今回の特集は「商店と百貨店」。
 広告文に「磯野家と一緒に昭和の買い物風景を振り返ります」とあります。
 磯野家の人たちは実に買い物好きで、色々なところで買い物をしています。
 結構多いのが、町中にあった個人商店。
 魚やさん、八百屋さん、薬局、衣料品店、さまざまなところで笑いを生み出しています。
 その一方で、百貨店にもしばしば訪れていますが、
 どこかおしゃれな笑いです。
 昭和の時代、百貨店に行く時には何故かオシャレをして行ったもの。
 だから、よく見ると、サザエさんもおフネさんも百貨店ではいい服着てます。
 波平さんやマスオさんにとっては、百貨店で働く女性はどうも高嶺の花のようでもあって、
 そういうあたりが昭和。

 「立ち読み厳禁!」と題されて、本屋さんをテーマにした漫画を集められています。
 おかしいのは、そこに登場する本屋さんはみな「はたき」を持っていること。
 今時そんな本屋さんを見かけることはありませんが、
 さすがに昭和の時代でもあまりそんな風景は見かけませんでしたが、
 何故か本屋さんの昭和のアイテムは「はたき」のようです。

 買い物風景も随分変わったものです。
 「サザエさん」はまるでタイムマシンみたいに、私たちをあの頃に連れていってくれます。

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 写真家・篠山紀信さんが2024年の年が明けて間もない
 1月4日に83歳で亡くなられました。
 あの独特な髪型とにこやかな笑顔、
 そして素晴らしい写真の数々。
 まさに時代を写し取ってきた写真家といえます。

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 この『篠山紀信 写真力』は
 2012年から2014年にかけて全国で巡回開催された
 「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN」の公式カタログです。
 東京での開催は2012年10月3日から12月24日。
 私も11月はじめに行きました。
 2012年11月12日のこのブログに展覧会の感想を書いています。
 その中の一節。

   私たちがどれだけ篠山紀信さんが撮り続けた人物写真と身近にあったかを
   実感できる写真展です。
   それは時代そのものといっていい。

 展覧会はいくつかのパートにわかれていて
 最後は2011年3月に起こった東日本大震災の被災者の人たちの写真。

   誰もが撮るような写真ですが絶対に私たちには撮れない写真ってすごい。
   そこに写っているのは、 悲しみであり、無念であり、後悔。
   それでいて、明日をじっとみつめている人たち。
   こんな写真を撮る、篠山紀信さんて、やっぱりすごい。

 と、私は書きました。
 このカタログの最後に載っている篠山紀信さんのインタビュー記事の中で
 この被災された人について、篠山紀信さんはこんなことを語っています。

   日常に起こりえない理不尽や不条理を体験している人たちで、
   いわゆる一般人とは全然違う。

 そして、この人たちの写真を撮るにあたって、カメラにすべて任せたといいます。
 篠山紀信さんの写真が、時代とともにあった、それは証(あかし)だと思います。

 このインタビューの最後に、
 篠山紀信さんは自身についてこう語っています。

   子供なんですよ、僕は。純粋無垢で健康な。
   その目さえ持っていれば写真はずっと撮り続けられる。

 篠山紀信さん、
 たくさんの素晴らしい写真をありがとうございました。

 ご冥福をお祈りします

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 今日は成人の日

    成人の日やはるかなる山の照り        蟇目 良雨

 今年は元旦が月曜だったので、
 その一週間後の第二月曜の今日が祝日となりました。
 石川県能登半島での大きな地震からまだ1週間なんですね。
 あの日、一瞬にして大きな悲しみに見舞われた多くの人たちのことを
 新しく成人を迎えた若い人たちには忘れないでもらいたい。
 どんなに苦しい時であっても
 新しい未来の扉を開くのは、あなたたちなのですから。

 毎年正月2日には
 元旦の朝刊に掲載された出版社の広告のことを書いてきて、
 今年は能登半島での震災があったので書きませんでした。
 なので、今日書いてみます。
 今年の広告で目をひいたのが辞書の出版社大修館書店の広告。

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   「品格」とは なんだろう?

 広告では、それに続く文章として

   それは「言葉」に表れます。
 
 と続きます。
 今日成人を迎える若い人たちにも伝わればいい、いい文章です。
 自分たちの疑惑にニンマリとにやける議員たちの品格のなさ。
 言葉が空回りするこの国の政治家たち。
 それに比べ、自ら被災しながらも
 わずか一杯の暖かなお椀に「幸せです」と答える被災者の皆さん。
 「品格」とは、そういう人に寄り添います。

 岩波書店吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』で
 やはり私たちに「問い」を投げかけています。

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 講談社黒柳徹子さん。

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 文藝春秋阿川佐和子さん。

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 今年も女性が活躍する予感がします。

 朝日新聞の元旦朝刊に
 作家の多和田葉子さんのインタビューが載っていて、
 その中で多和田さんはこんなことを語っています。

   どんな未来になったら幸せか。
   表現する言葉の中に喜びがなきゃだめ。
   想像できないなら、その未来を作れる可能性も少ないわけですから。

 成人を迎える若い人たちは、どんな未来を描くのでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  お正月ぐらいゆっくりしたいもの。
  と誰もが思うその最初にあんなにも大きな災害が起きるとは
  誰もが思いもしなかったでしょう。
  さらには2日の夜にはジェット機が炎上する様子もニュースで流れ、
  今年は一体どんな年になるのでしょう。
  でも、それでもやっぱりお正月、
  なので、今年最初の絵本は
  川端誠さんの『落語絵本 井戸の茶わん』にしました。
  関東では今日までが松の内。
  暗いニュースも多いですが、なんとか正月気分の笑顔で過ごしたい。

     浅草によき空のあり松の内       京極 杜藻

  じゃあ、読もう。

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  sai.wingpen  川端誠さんの落語絵本はもう名人芸                   

 絵本というのは、実に不思議です。
 例えるとしたら、ドラえもんのポケットがいいかもしれません。
 何しろ、どんな世界も絵本になるのですから。
 なので、絵本を小さい子供の読むものとしてしまうのはあまりにももったいない。
 できれば、大人の人にも読んでもらいたい。
 絵本作家の川端誠さんのこの作品は「落語絵本」と銘打っているように、落語の世界を絵本にしたもので、川端さんは「落語絵本」の草分けとしてこれまでにも多くの落語を絵本にしてきました。
 2023年10月に出た『井戸の茶わん』は、従来の「落語絵本」は24ページだったのを今回32ページとページ数を増やしたといいます。
 それによって、長い落語噺を絵本作品として表現できたと、川端さんは語っています。

 「井戸の茶わん」という落語は、貧乏暮らしの浪人が手元の仏像を屑やに預けるところから始まる人情噺。
 この仏像を買い取ったのは細川家のつとめるりっぱな武士。
 埃まみれの仏像を磨いていると、なんと中から50両もの小判が出てきます。
 屑やを探し出し、元の持ち主に返そうとしますが、元の持ち主も頑固でなかなか受け取らない。そんなやりとりが、以降、正直な屑やをはさんで何度も繰り返されます。

 この噺について、春風亭柳朝さんは「こういう噺は欲を出さず、あっさり演ること」と語っているが、川端さんの絵もその「あっさり」感がうまくでていて、笑わせてくれます。
 もう名人芸。
  
(2024/01/07 投稿)

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レビュープラス
 「十年をひと昔というならば、この物語は今からふた昔半もまえのことになる。
 これは壺井栄の『二十四の瞳』の有名な書き出し。
 「ひと昔」というのは10年前のことだと、この作品で知りました。
 令和6年ともなると、昭和の時代は今や「昔」といっても差し支えないのかもしれません。
 その昭和の映画の興行では
 お正月には欠かせない作品がありました。
 山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズ。
 この作品はお盆と正月には欠かせなくて、
 特に正月作品は「初笑い」を「男はつらいよ」で迎えるという観客が多くいたと思います。

    初笑い夫の笑ひと合はぬなり       大木 あまり

 そこで今年最初の映画の話は
 「男はつらいよ 私の寅さん」です。

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 映画「男はつらいよ 私の寅さん」は1973年12月封切りの、
 つまりは1974年(昭和49年)のお正月映画。
 ちなみに昭和49年は寅年で、映画の最後で九州阿蘇で商売をしている寅さんは
 この作品のマドンナ岸惠子さんの職業にちなんで絵画を販売しているが
 そばで張り子の寅も売っていたりして、
 お正月気分に華を添えています。

 「私の寅さん」は「男はつらいよ」シリーズ第12作めの作品。
 マドンナ役で出ているのは、先ほども書いた岸惠子さんで
 寅さんの同級生(前田武彦さんが演じています)の妹で
 独身の画家という設定。
 この作品の岸惠子さんがなんといっても綺麗で、
 寅さんが寝込むほど惚れるのもわかります。
 でも、マドンナは寅さんに好意を持っていても恋人とはいかない。
 友達以上恋人未満、といったところ。

 この作品は二部構成のようになっていて
 前半はおいちゃんやさくらたちが明日から九州旅行だという前日に
 寅さんがひょっこり帰ってきてまきおこる騒動が描かれていて、
 大いに笑わせてくれます。
 そして、後半はいつもの寅さん失恋話。

 この作品の観客動員数は241万ということで
 シリーズの中での最多動員を誇っています。
 笑いあり、ほろりありの、
 お正月にぴったりの映画です。

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 今村翔吾さんが『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞したのは2022年。
 それに先立つ2020年にこの『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞している。
 着々と歴史小説作家としての歩みを確かなものにしていた頃の作品といっていい。

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 この作品では、石田三成という戦国武将とは何者だったのかを、
 彼と共に豊臣政権を支えて加藤清正や福島正則、片桐且元といった
 秀吉が柴田勝家と信長の跡目を戦った賤ヶ岳の戦いで功績のあった
 「賤ヶ岳七本槍」の面々を描きつつ、彼らと関わっていく三成の姿を描くことで、
 その人物像に迫っている。

 かつて司馬遼太郎さんは石田三成について、「関ケ原私観」という文章で
 「どうも物事をくっきりふちどらなければ気がすまないという人間らしい」と
 書いたことがある。
 そして、三成には野望性は薄く、あったのは正義感だったのではと
 続けています。

 今村さんのこの長編小説(連作短編集としても読める)での三成も
 決して悪人ではない。
 「賤ヶ岳七本槍」の面々との友情とも呼べる交流は
 司馬さんのいう野望性の薄さとつながっているように思う。
 むしろ、青臭い。青春の尻尾をひきずった人物として描かれている。
 この歴史小説はそんな三成をうまく描いた作品となっているが、
 なによりも読み物として面白い。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日から仕事始めという人も多いでしょう。

    うとうとと炬燵の妻の四日かな       今井 つる女

  この句、季語はなんだかわかりますか。
  答えは「四日」で、新年の季語なんです。
  正月も忙しく働いた妻が夫の仕事始めに合わせて
  久しぶりに炬燵で休んでいる、
  そんな光景でしょうか。
  そうはいっても、なかなか正月気分は抜けません。
  そこで、今日はめでたい本を紹介します。
  佐藤愛子さんの『思い出の屑籠』。
  何がめでたいかというと、
  著者の佐藤愛子さんはなんと100歳になられて
  しかもいい文章を書かれる。
  こんなめでたいことはありません。

  じゃあ、読もう。

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sai.wingpen  100歳の佐藤愛子さん、なんともめでたい                   

 書籍の広告でよく目にするのが、読者からの寸評だ。広告だから、ほとんどその作品がどれだけよかったか、読んで感動したといったものが多い。
 2023年の秋に刊行された、百歳になる作家佐藤愛子さんのエッセイ集『思い出の屑籠』の広告に載った読者からの寸評が、この作品を的確に捉えていた。
 「何が、屑かごですか。宝かごですよ。」
 これを書いた読者が99歳というのにも驚いたが。

 映画評論家の川本三郎さんはかつてこんなことを書いていた。
 「思い出は老いの身の宝物である」と。
 それは、佐藤さんのエッセイを読んでいても感じる。
 このエッセイで綴られているのは、佐藤さんの幼少期から小学校時代まで過ごした甲子園近くの現在の西宮市での思い出である。
 愛子さんの父親は作家佐藤紅緑で、兄は詩人のサトウハチローは有名だが、このエッセイでは愛子さんを溺愛する父親の様子や好きだった兄のこと、そして母やお手伝いさんたちの様子も楽しく描かれている。
 そう、このエッセイに書かれていることは、実に楽しいのだ。
 思い出が宝物なのは、その人にとってのことだが、それがあまりに素晴らしいと読んでいる読者にもそれが伝わってくるのだ。

 そういえば、その広告にこんなものもあった。
 「共感しながら、子供の頃を思い出しながら、涙しながら。」
 この読者は67歳の人でした。
 きっと誰にもある「思い出の宝かご」をひっくり返すお手伝いをされたのですね、佐藤さんのこの本は。
  
(2024/01/04 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  1月になりました。

    一月や日のよくあたる家ばかり       久保田 万太郎

  気がつかれている人もいるかと思いますが、
  最近月のはじめには星新一さんのショートショート本を
  紹介しています。
  今日はその10巻め、
  「重要な任務」というタイトルの『星新一ショートショートセレクション10』を
  紹介します。
  この「ショートショートセレクション」は全部で15巻、
  そのほかに『星新一ちょっと長めのショートショート』が10巻ありますから、
  これを全部読むと、
  来年2025年になります。
  早くも鬼が笑ってますね、きっと。
  ところで、今回の表紙のイラスト、
  竜に乗った男の図で、
  辰年にぴったりの本の選択だったと我ながらびっくりです。

  じゃあ、読もう。

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sai.wingpen  星新一さんは預言者?!                   

  『星新一ショートショートセレクション10』(理論社)。
 表題作である「重要な任務」をはじめとして、15篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
 装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。

 いつもの巻より作品数がいささか少ないのは、ショートショートとはいえ少し長めの作品が入っているからだろう。
 表題作の「重要な任務」が13ページである一方で、「過渡期の混乱」は21ページ、「出口」という作品は22ページある。
 20ページを超えたからといって長くはないはずだが、「ホンを求めて」などはわずか5ページだから、収められた順に読んでいくと、あれ?長いなと感じてしまうのは奇妙だ。
 ただ、やはり長いと(といっても20ページほどだが)読み応えはある。

 今回の巻でなんといっても「過渡期の混乱」がいい。
 これは未来に登場するキャンディー売りロボットをめぐる話。
 このロボットから税金を取るべきかとか傷害事故が起こった時の責任とか、最後にはこのロボットに選挙権を与えるべきかと人間たちは右往左往する。その一方で、ロボットに向けて商売を始める人間も現れる。
 物語のおしまいで、星さんはこう書く。
 「ずるさという、人間だけの持つ天与の能力。これある限り、ロボットなど恐るるにたらずだ。」
 最近何かと話題となる「生成AI」のことを思わず考えてしまう。
 まさかこの作品のように「生成AI」に選挙権を与えるべきかなんてことにはならないだろうが、星新一さんがまるで預言者のように思えてきたりする。
  
(2024/01/03 投稿)

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 この記事を
 令和6年(2024年)1月1日の夜9時に書いています。
 雲ひとつない富士山の初日の出をテレビで見、
 お屠蘇でお祝いをし、おせちを食べながら届いた年賀状を読み、
 呑みすぎてちょっとゴロンと、
 いつもの穏やかな寝正月。
 そろそろ起きて、1月2日のブログを書かないといけないと思っていた16時過ぎ
 けたたましく地震速報の警報が鳴りました。
 石川県能登で起こった震度7の大きな地震。
 それに続く大津波警報。
 テレビの映像はしだいに暗くなる被災地を映していましたが、
 ほとんど被害の詳細はわからないまま。
 正月気分から一気に不安な思いに突き落とされました。
 どうしても思い出されるのは、
 1995年1月の阪神淡路大震災のこと、
 2011年3月の東日本大震災のこと、。
 どうか、たくさんの人が無事であることを祈るしかありません。

 毎年のように元旦の新聞の載っている出版社の広告の話を書こうかどうか迷いましたが、
 やはり今は能登の人たちのことを祈るしかできません。

 どうか被災された人たちが元気でありますように。
 どうか被災された人たちに光が届きますよう。

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