fc2ブログ
プレゼント 書評こぼれ話

  今回の第170回芥川賞受賞作東京都同情塔』を書いた
  九段理江さんの名前を聞いて、
  全然知らない作家だと思っていましたが、
  ふと、あれ? もしかしてこの人の作品を
  読んだことがあることを思い出しました。
  それが『School girl』という作品で
  2022年4月13日にこのブログで紹介していました。
  その時の書評タイトルが「女性を描ける作家」。
  では、今回の受賞作でもそうなのかというと
  確かに主人公は女性建築家ですが
  「女性を描ける」とまでいっていいかどうか、
  それより前面に近未来感の方が強い作品です。
  読後前には生成AIの話題などが先行して
  とっつきにくい感じがしましたが、
  実際にはそうではありませんでした。

  じゃあ、読もう。

  9784103555117_1_2_convert_20240225131449.jpg

sai.wingpen  この小説の読み方                   

 第170回芥川賞受賞作。(2024年)
 なんといっても、この作品の背景設定が秀逸である。
 今ではほとんど記憶にも残っていない2021年に開催された東京オリンピック。その遠い記憶の中に、国立競技場の設計問題で一度は採用されかかったザハ・ハディド案があったことを逆手にとって、この作品では彼女の設計した国立競技場が建っているという設定である。
 もうその時点で、作者九段理江さんの勝利といえるだろう。
 さらに、「東京都同情塔」というタイトルの、韻のいい言葉の、それでいて不気味さは、実はこの塔が「新宿御苑に新しく立つ刑務所」の名称だというのだか、なんともいいしれない緊張感をもたらす近未来小説でもある。

 これらの虚構の建物の間に立つのは、「東京都同情塔」の設計を行った女性建築家であるが、
 彼女がこぼし続ける言葉は、これらの建造物に匹敵するような言葉の氾濫である。
 溢れる続ける言葉の整理のために、彼女が親しくする美青年が必要だったようにも思えるし、この美青年こそ、今回の受賞作で話題となった生成AIの姿にも見える。

 時に難解にも感じるこの作品ですが、芥川賞選考委員の「選評」を読んで、すっきり入ってきたのは川上弘美委員のこんな言葉だった。
 「作者は正解をだしてほしいのではないからです。作者はたぶん、ただ、考えてほしいのです。作者と違う考えでもいいし、いっそのことまったく関係のないことを考えるのでもいい。でも、考えてみて、と」。
 この言葉をたよりにしてこの小説を読むと、随分たすかるはずだ。
  
(2024/02/29 投稿)

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
プレゼント 書評こぼれ話

  雑誌の苦境が伝えられてもう随分たちます。
  最近ではコンビニでも雑誌の販売エリアがとても小さくなっているのが目立ちます。
  そんな中、老舗の新聞社系週刊誌が休刊となって
  大きな話題となったのが2023年6月。
  そうです、「週刊朝日」の休刊です。
  そこで気になったのが、
  東海林さだおさんの人気シリーズ「丸かじり」の食べ物エッセイ。
  あれの初出が「週刊朝日」の「あれも食いたいこれも食いたい」の連載。
  いよいよこれが最後か??
  その最終回が収められた巻が第47巻めとなる
  『カレーライスの丸かじり』。
  さて、本当にこれでおしまい? なのか、
  その答えは書評に書きました。

  じゃあ、読もう。

  9784022519580_1_4_convert_20240223142338.jpg

sai.wingpen  これでおしまい??                   

 日本人は、カレーが大好き。
 朝でもいいし、昼でもいい。夕食だってかまわない。
 いっそのこと、毎食すべてカレーでもいいかな。
 食事で一番困るのが、献立を考えること。
 だから、「あなた、今晩、カレーでもいい?」なんてことになる。
 あるいは、「今晩何にしようかな?」「カレーでいいんじゃない」ということになる。
 それくらい、日本人の生活にカレーは浸透している。

 日本人は東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズも大好き。
 なので、週刊誌の連載が36年も続いたといえる。
 これまで多くの食材を「丸かじり」してきたが、何故か日本人が大好きだったカレーを「丸かじり」してこなかった。
 「丸かじり」シリーズの、もしかしたら(※ここに箇所には説明が入ります。文末参照)最終巻かもしれない47巻め。
 「あなた、最終巻、カレーでもいい?」なんて安易な考えではなく、
 最終巻は「カレーでいいんじゃない」という投げやりでもなく。
 ここはきっぱり日本人に愛された「丸かじり」ゆえの、「カレー」でいこうとなったのではないかと勝手に推測しているところです。

 で、「丸かじり」シリーズが連載されていた週刊朝日が2023年6月をもって休刊となったことで、世の中の「丸かじり」ファンは愕然としたわけです。
 この巻には最終回となるエッセイも収められていて、その中で東海林さだおさんは、
 「書きたいことはまだまだいっぱいあった。あれも書きたかった。これも書きたかった。」と書いていて、余計に「丸かじり」ファンの涙をさそったわけですが、なんと朝日新聞の毎週土曜日別刷「be」で隔週ではありますが、「あれも食いたいこれも食いたい」の連載がスタートしたのです。
 なので、あと何年か待ったら、また「丸かじり」と出会えます。
 これを慶事といわずに、なんといいましょう。
  
(2024/02/28 投稿)

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
 今年(2024年)に入って、株価の上昇の勢いがとまりません。
 そして、ついに先週木曜日(2月22日)、日経平均株価が1989年12月末につけた
 最高値を更新しました。
 実に34年ぶりのことです。
 「失われた10年」がいつの間にか「失われた30年」といわれた中、
 もしかしたら34年前に最高値を知った人たちにとっては、
 その値を越えるのは夢のようなニュースかもしれません。
 でも、そんなことを知らない、まさに今現役世代にとっては
 時間はかかったものの決してたどり着けない値ではなかったような気がします。

  9784835646466_1_14_convert_20240113145611.jpg

 タレントの厚切りジェイソンさんが書いたこの『ジェイソン流お金の増やし方』は、
 2021年11月に出版され、
 2022年のベストセラー本の上位になるくらいに読まれたマネー本。
 タレントというよく知られら著者が、しかも投資家という顔ももち、
 その説明が難しくないというあたりが多くの読者を引き寄せたのだと思います。
 そして、出版から2年ほど経ちますが、
 もしかしてこの本を読んで投資を始めた人は今回の株価上昇に乗れたかもしれません。
 ジェイソン流でいえば、
 「一番資産を増やすのは「とにかく売らないこと」」なので、
 そのことを実践した人は成功している確率が高いのでは。

 もちろん、マネー本で一番気をつけないといけないのが
 過剰に投資をしないこと。
 なので、ジェイソンさんも最初に書いているのは、
 まず「支出の見直し」。
 そのあたりを理解した上で、マネー本は読む方がいい。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 今年は閏年とはいえ、
 やはり二月が短い月ですから、
 なんだかあっという間に過ぎていく感じがします。

    真直なる幹に雨沁む二月尽        福永 耕二

 24日の土曜日、菜園で初めてとなる
 「パートナー活動」が行われました。
 これは利用者が菜園の草とりや色々な整備をお手伝いする、
 ボランティア活動です。
 菜園には自分たちが借りている(もちろん有料です)区画以外に
 共有で使うエリアとか農機具などをしまっている施設もあったりします。
 共有の箇所といっても
 やはり自分たちの目にはいるところですから
 きれいにするのは大事なこと、
 そして、それ以上に他の利用者とコミュニケーションがとれるのがいい。

 活動日は当初23日の天皇誕生日の祝日を予定していましたが、
 雨でその日は中止、
 そのせいもあって翌日の土曜日に集まったのは8人。
 それにアドバイザーさんたちが加わって
 総勢12人での作業となりました。
 この日は菜園の周辺で増え続けるチガヤ刈。

  20240224_104837_convert_20240225085525.jpg

 チガヤは漢字で書くと千萱。
 イネ科の雑草で、地中で根茎がどんどんひろがっていく
 やっかいな雑草です。
 私たちが利用している区画にも少し影響が出てきていて
 それの駆除のお手伝い。
 といっても、小一時間ほどの作業で
 終わってからは温かい甘酒を飲みながらの談笑。

 私が利用しているこの菜園の開園は
 2015年4月。
 今年で9年めとなります。
 私は開園時からの利用者ですが
 そんな人も何人かいます。
 開園当時はこんな感じ。

  4.12.3

 今見ると、めちゃくちゃ新鮮。
 畑の土も色もいい。

 こちらは最近の栽培の様子。

  20240224_114208_convert_20240225085720.jpg

 うわー、いっぱい栽培してます。
 ミニニンジン、ホウレンソウ、カブ、シュンギク、
 奥にはウスイエンドウ
 畑も小学生でいえば高学年ですから
 元気いっぱいなんでしょう。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 黒柳徹子さんの大ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』に
 小学生のトットちゃんが一歳年上で小児麻痺だった泰明君と
 木に登る有名な挿話があります。
 泰明君は病気ですから、それまで木に登ったことがありません。
 だから、トットちゃんは泰明君に木の上からの風景を見せてあげたいと思うのです。
 そして、ついに木の上に登った二人。
 そこで、トットちゃんは泰明君から初めて「テレビジョン」という言葉を聞きます。
 『窓ぎわのトットちゃん』でも、とても印象に残る場面です。

  9784309293707_1_3_convert_20240221202325.jpg

 この『木にとまりたかった木のはなし』は、
 木のぼりが好きで木にとまってみたいと思っていた女の子だった黒柳徹子さんが
 初めて書いた絵本です。
 1985年のことです。
 その時は岩崎書店から刊行され、2023年に河出書房新社から新装版として出ました。
 絵は武井武雄さんという画家ですが、
 実は黒柳さんが絵の依頼をしてまもなく武井さんは亡くなってしまいます。
 でも、そこからが不思議なのですが、
 黒柳さんのお話にぴったりの絵が武井さんの作品に何枚も残っていたのです。
 黒柳さんのお話はもちろん武井さんの作品で合わせたものでもなく、
 武井さんの絵も黒柳さんのお話に寄せたものでもありません。
 それでいて、
 木にとまりたいと願った木が鳥たちの協力で次から次へと冒険していく様子が
 とてもうまくひとつの作品になっています。

 黒柳さんのお話もいいですが、
 一冊の絵本が生まれる奇跡のようなお話もまた胸をうつ、
 そんな絵本です。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 東京・京橋に「国立映画アーカイブ」という
 日本で唯一の国立映画機関があります。
 「映画を活かす、映画を残す」というミッションのもと
 映画の保存とか上映をしている施設です。
 今、そこの企画展として開催されているのが
 「和田誠 映画の仕事」展です。

  20240209_144900_convert_20240223094107.jpg

 和田誠さんといえばイラストレーターとして多くの業績をあげてこられましたが、
 映画に関してもたくさんの著作やイラスト、
 さらには映画監督としても何作かメガホンをとっています。
 和田誠さんは「評論家」としてでなく、
 一映画ファンとして映画に向き合ってこられた人です。
 和田誠さんが活躍されたたくさんのジャンルから
 映画の仕事だけを取り出したこの展覧会、
 和田誠さんファン、さらには映画ファンにはとてもうれしい企画です。
 先日(2月9日)その展覧会に行ってきました。
 しかもシニアの人は無料で見ることができるというおまけつき。
 3月24日までですから、この機会を逃さないように。
 この展覧会のポスターに使われているのが
 映画「巴里のアメリカ人」。
 ということで、今日は映画「巴里のアメリカ人」の話です。

  4548967235531_convert_20240221202349.jpg

 映画「巴里のアメリカ人」は1951年公開のアメリカ映画。
 第24回アカデミー賞では作品賞をはじめとして6部門で受賞した名作です。
 監督はヴィンセント・ミネリ
 女優ライザ・ミネリのお父さんです。
 音楽はアメリカが生んだ作曲家ジョージ・ガーシュウィン
 主人公の貧乏な絵描きのアメリカ人青年をジーン・ケリーが、
 彼が恋する女性をレスリー・キャロンが演じています。
 映画のジャンルでいえば、ミュージカルということになるのですが、
 むしろダンス映画といいたくなります。
 特にラストのシンフォニー「巴里のアメリカ人」にのせて踊るダンスシーンの見事なこと、
 気がついたら魅入っている自分がいました。

 また。アメリカ青年の友人の売れないピアニスト役を
 オスカー・レヴァントという人が演じているのですが、
 この人のピアノのうまいことといったら。
 和田誠さんの『お楽しみはこれからだ PART3』の中に
 彼が実際にガーシュウィンの親友だったと書かれています。

 この名作、今ではアマゾンプライムでも視聴できます。
 機会があれば、ぜひ。
 ダンスの魅力。音楽の楽しさを堪能できる、ゴキゲンな作品です。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 第21回大藪春彦賞受賞作。(2019年)
 ちなみに大藪春彦賞は、『野獣死すべし』や『蘇える金狼』などで知られる
 ハードボイルド作家大藪春彦さん(1996年死去)の功績を讃え、
 優れたハードボイルド小説や冒険小説に与えられる賞で、1999年に始まっている。
 2024年に第170回直木賞を『ともぐい』で受賞した河崎秋子さんにとっては、
 書き下ろし作での受賞である。

  9784041096758_convert_20240221202037.jpg

 この『肉弾』を読み終わって思ったのは、
 これは「ファンタジー小説」なのではないかということだった。
 ファンタジーの定義は色々あるが、妖精や魔法使いが活躍するだけでなく、
 超自然的であったり、幻想的であったりということであれば、
 北海道の森林の奥深くで、その生い立ちがイレギュラー過ぎる熊と
 人間世界から捨てられ運命を狂わされた犬たちと、
 「死んでもいいがただ死ぬのは嫌な人間」である青年が繰り広げる
 土と血と獣の臭いに満ちたこの小説こそ、
 ありうることのない超自然のものではないだろうか。

 最初は剛毅な父とひ弱な息子の父子物語のように展開するが、
 北海道の奥地に二人が踏み込んで、
 荒らぶれの熊に父親が殺されていくところから物語は急速に狂暴になるが、
 合間あいまに仕掛けられた犬や熊、あるいは人間そのものの生きてきた歳月の姿が
 その狂暴性を文学として高めているように感じた。

 最後、人間に救出されるのは青年だけだ。
 青年とともに熊と闘った犬たちは森の奥に消え、
 人間たちはそのことに気がつくことはない。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 「犬が人を噛んでもニュースにはならないが、
 人が犬を噛んだらニュースになる」とよく言われる。
 そこからすれば、親族間の殺人事件がニュースになるのは、
 普通親族間の間には愛情という絆があって、そこには殺人などが入る余地はないと
 多くの人が考えるからかもしれない。
 しかし、ノンフィクション作家の石井光太さんが2021年に刊行した
 この『近親殺人』によれば、
 日本の殺人事件の半数が家族を主とした親族間で起こっているという。
 その傾向は変わらず、最近も幼い子供を殺した夫婦や両親を殺害した15歳の少年など
 「近親殺人」は止まらない。

  9784101325415_1_2_convert_20240219165604.jpg

 だが、私たちは起こってしまった事実はわかるが、
 その背景をどこまで知り得ているだろうか。
 この作品で石井さんが追跡した7つの殺人事件、
 「まじ消えてほしいわ」と母親を「介護放棄」によって死に至らしめた事件、
 「ひきこもり」の息子を殺した父親、
 貧しくて老いた母とともに心中しようとして自分だけ生き残った男、
 精神疾患を患った姉から追い詰められてついにはその姉を殺害してしまう妹たち、
 老老介護の果てに夫を手にかけてしまう老いた妻、
 幼い息子を虐待し窓から転落死させる母、
 そして、派手な生活が止まらず幼い子供を殺してしまう女。

 どれもが悲惨であるし、どれもが殺された側にも殺した側にも病巣があったように見える。
 当然殺人事件として殺した側は裁かれるのだが、
 本当に彼らだけに罪があったといえるのだろうか。
 「人が犬を噛む」、もしかしたらそんなことも不思議なことではないかもしれない。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
プレゼント 書評こぼれ話

  今日はアガサ・クリスティーの『予告殺人』という作品を紹介しますが、
  これはミス・マープルもの。
  アガサ・クリスティーといえば、エルキュール・ポアロと
  このミス・マープルが双璧の主人公で、
  ポアロが活躍する長編小説はすでに完全制覇しましたが、
  ミス・マープルものの長編小説もこの作品を含めて
  あと2作となっています。
  もっとも作品数でいえば、ポアロは33作品、
  ミス・マープルは12作品と少ないのですが。
  いつもの霜月蒼さんの『アガサ・クリスティー完全攻略』では
  この作品の評価は低く、★★なのですが、
  私はとても面白くて、★★★★はつけたいところ。
  あなたなら、どちらでしょうか。

  じゃあ、読もう。

  9784151310386_convert_20240218163435.jpg

sai.wingpen  人殺しも、とても人間的なんですね                   

 アガサ・クリスティーが1950年に発表した「ミス・マープル」ものの長編小説で、この作品がアガサ・クリスティーの50作めとなるそうだ。
 しかも、1890年生まれの彼女にとって、60歳の節目の年齢でもある。
 そして、アガサお気に入りのジェーン・マープルの作品と、色々な要素が重なり、面白い作品となった。
 原題は「A Marder Is Announced」で、「殺人は予告される」という意味。
 邦題はこれを『予告殺人』としているが、原題のままでもよかったように思う。

 ある日、新聞の片隅に「殺人をお知らせします」という告知文が掲載される。
 それによれば、小さな村に住む一人の老嬢の家で殺人があるようで、村に住み住民たちもどんな面白い出し物があるのか興味をそそられて、その時刻に老嬢の家に集まってくる。
 ところが、なんと本当に老嬢は拳銃に狙われ、撃ったと思われる男が逆に死んでしまう。
 そののち、老嬢には近々大金となる遺産が入ってくることが判明し、そのために命が狙われていることがわかってくる。
 老嬢のまわりにいる怪しい人物たち。
 そこにやって来たのが、ミス・マープル。

 実はこの作品に呼応する作品があって、それはポアロものの『象は忘れない』。
 この『予告殺人』の最後で脚本家の青年が書く芝居のタイトルが「象は忘れる」となっていたり、この事件の真相と『象は忘れない』の真相が似ていたりする。

 「人殺しも、とても人間的なんですね」。
 作品に書かれたこの言葉が、もしかしたらアガサ・クリスティー作品の魅力を集約しているような気がする。
  
(2024/02/21 投稿)

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
 書名にある「世傳」とは「代々にわたって伝えていく」という意味で、
 高田郁さんの人気シリーズにぴったりの言葉です。
 「本流篇」は、その『あきない世傳 金と銀』の第六巻めになります。
 この長い物語は、幼くして大坂の呉服商「五鈴屋」の女衆として奉公にでた
 幸(さち)という女性が主人公ですが、
 物語の端々に商いの教えが散りばめられていて、それもまた魅力といえます。
 この巻では、どんな知恵を授かるか、
 ネタバレありの、ご用心、ご用心。

  9784758442336_convert_20240217090113.jpg

 幸の三人めの連れ合いである六代目徳兵衛(智蔵)が倒れたところまでが
 前巻の五巻のおわりでした。
 その続きである六巻のはじまりでは、もう智蔵が死んでしまうのですから
 びっくりというしかありません。
 何なのこの展開は、と唖然とします。
 そうなると、「五鈴屋」の跡目はどうなるのか、
 大坂の地にある「女名前禁止」の掟の隙間を抜って、幸がついに
 七代目徳兵衛と相成るのが、この巻。
 つまりは、ここから本当の幸の商いが始まるのです。
 なので、「本流」。
 そして、念願だった江戸出店も果たして、幸は女衆のひとりお竹を連れて
 江戸へと向かいます。
 そんな幸に元番頭の治兵衛が授けた知恵が「蟻の眼、鶚(みさご)の眼」。
 鶚は空駆ける鳥の名。
 これは将来を俯瞰することと足許を見定める、その両方が大事という教えです。
 そして、江戸での店の購入の際に教えられたのは、
 「買うての幸い、売っての幸い」。
 さあ、満を持して、江戸での開店を迎えます。

 この先、幸にどんな労苦と幸せが待っているのか、
 次巻以降が楽しみ。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 今日は二十四節気のひとつ、雨水
 農耕の準備が始まる頃といわれています。
 4月並みの暖かさが続くと、
 花の季節の見頃は早くなるのではと
 近所で咲く花を見ては思っています。
 これは、近くにある紅梅。

  20240217_134803_convert_20240218081521.jpg

 そのはるか天上に春の月がうっすらを見えます。
 なんとも春らしい光景です。

    紅梅や枝々は空奪ひあひ      鷹羽 狩行

 2月17日の土曜日、ジャガイモの植え付けをしました。
 ジャガイモの種イモはあまり大きくなくても大丈夫なので
 大きなものは半分に切ってしまいます。
 その時気をつけないといけないのが、切り口。
 そこから腐敗することがあるので、
 草木灰とかでまぶすのが普通のやり方。

  20240216_155640_convert_20240218081442.jpg

 今回草木灰がなかったので事前に乾かす方法をとったのですが、
 なんだか切り口は黒くなるし、
 干しシイタケみたいにしわしわになるし、
 本当にこれで大丈夫かと心配になりますが、
 とりあえず植え付けて芽が出るか試してみることにしました。

 ジャガイモは溝を掘ってそこに種イモを置きます。
 その間あいだに置き肥をします。

  20240217_142206_convert_20240218081603.jpg

 そのあとに土を被せて、あとは芽が出るのを待ちます。
 今年は暖冬で
 地温も高いかもしれないので、芽が出るのも早いかも。

 なにしろこの時期で
 ソラマメに花がついたくらい。

  20240217_151203_convert_20240218081703.jpg

 なので、野菜のとう立ちには気をつけないといけません。

 こちらはさいたまの地元野菜のひとつ、五関菜

  20240217_143037_convert_20240218081952.jpg

 ナバナの一種ですから
 これからもっと大きくなるのではないかしらん。
 花だけでなく、
 冬越し野菜の収穫も早くなるかもしれません。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 カタリン・カリコ博士が、研究仲間のワイスマン博士とともに
 2023年度のノーベル生理学・医学賞を受賞したニュースは、
 世界中で多くの喝采を得ました。
 もし、二人の研究成果がなければ、私たち人類はいまだに新型コロナウイルスに
 怯える日々を過ごしていたかもしれません。

  9784867060476_convert_20240118202838.jpg

 『カタリン・カリコの物語 ぜったいにあきらめないmRNAワクチンの科学者』は、
 アメリカのデビー・ダディという女性が
 初めて手掛けた伝記絵本です。
 もちろん、描かれているのは、コロナワクチンに多大な功績があった
 「mRNA」(メッセンジャーRNA)の研究を長年行ってきた
 カタリン・カリコ博士の物語です。
 簡単に博士の履歴を書いておくと(この絵本の巻末にももちろん載っています)、
 博士は1955年にハンガリーで生まれます。
 その後、30歳の時にアメリカに渡りますが、決して順調な生活ではありませんでした。
 それでも「mRNA」の研究をやめることはなく、
 次第にその成果が認められるようになっていきます。
 そして、2020年世界中に新型コロナが感染拡大し、ついに博士たちの研究成果が
 コロナワクチンとして実を結ぶことになります。

 科学の専門用語なども出てきて、取っつきにくいかもしれませんが、
 子供たちが絶対にあきらめないというカリコ博士の思いを感じ取るには
 この伝記絵本は有効かもしれません。
 この絵本を読んで、将来第二第三のカタリン・カリコ博士が誕生すれば
 どんなにいいでしょう。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 この前の日曜日、『わたしにまかせて!』という
 数学者のキャサリン・ジョンソンさんを描いた伝記絵本を紹介しました。
 その際につけたタイトルが
 「映画「ドリーム」もまた観たくなります」でした。
 映画は公開されたあと観ていて、
 今回あらためて観直したのですが、
 やっぱりいい映画でした。
 今日は映画「ドリーム」の話です。

  4988142373717_convert_20240216155134.jpg

 映画「ドリーム」は2017年に公開されたアメリカ映画。
 この映画の主人公は数学者のキャサリン・ジョンソンさんですが、
 彼女だけでなく、彼女とともに黒人の、また女性の地位向上のために
 ともに活躍する2人の仲間の姿も描かれています。
 この映画の原題は「Hidden Figures」で、「隠された人たち」という意味です。
 数々の人種差別で仕事上の評価を受けなかったり、
 表舞台での活躍が認められなかったりということを含めているのでしょうが、
 それを「ドリーム」という日本語タイトルにした感覚は
 情に重きをおく、日本人特有の感性かもしれません。

 キャサリン・ジョンソンさんの実際の功績として
 アポロ13号の危機の際に彼女が活躍したことは有名ですが、
 この映画で描かれているのは
 それ以前のマーキュリー計画まで。
 色々な差別を受けながら誰もが彼女の才能に拍手を送るまでを
 映画は見事に表現しています。
 彼女の才能を見つけ、評価していく上司の役で
 ケヴィン・コスナーが好演。
 この人が演じると、とってもいい人に見えるから不思議です。

 この映画が公開された時には
 まだキャサリン・ジョンソンさんは存命で
 (彼女は2020年101歳で亡くなっています)
 この映画の感想を聞かれて
 「よく出来た映画でした。主演3人は私たちを見事に演じきっていると思います」と
 答えたといいます。

 いい映画は何度観てもいい。
 これはそんな映画のひとつです。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 今年(2024年)に入って、日経平均株価はバブル期に記録した高値を更新する勢いだ。
 そんな中、下着メーカー、ワコールの業績がよくない。
 低収益店舗の撤退や早期退職の募集などが噂されている。
 業績不振の要因はいくつもあるだろうが、女性の嗜好の変化もそのひとつだろう。
 ノンフィクション作家北康利氏によるワコール創業者の塚本幸一の評伝、
 『ブラジャーで天下をとった男』にあるように、
 ワコールが強みとしていた「ブラジャー」そのものが
 ユニクロのブラトップとかに押されているのも大きな要因だろう。
 そんな厳しい経営環境のなか、この本が2023年6月に上梓されたのは、
 ある意味ワコールへの応援ともいっていい。

  9784833425025_1_5_convert_20240214201841.jpg

 確かに創業以来、ワコールは順調に拡大していった。
 しかし、この本にあるように、実際には倒産の危機に何度も直面している。
 そのたびに創業者である塚本幸一や彼を助けるブレーンが
 必死の思いでその危機を脱してきたのも事実だ。
 1970年代に起こったウーマンリブの運動が活発になった時もそうだ。
 世界中で「ノーブラ運動」が巻き起こって、ワコールは苦境に立たされる。
 その際には塚本は自身丸坊主になって陣頭指揮したという。

 塚本幸一のこの評伝を読むと、
 彼が第二次世界大戦中の悲惨なインパール作戦の数少ない生存者で、
 そのことが彼の生きざまに強く影響していたことがわかる。
 そして、ワコールが成長していく過程には
 何人もの優秀な女性従業員がいたことも見逃せない。
 不振にあえぐ今こそ、この本に描かれた創業者と先人たちの思いに立ち返り、
 ワコールが元気になることを期待している。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 『ともぐい』で第170回直木賞を受賞した河崎秋子さんの、
 実質的なデビュー作ともいえるこの『颶風(ぐふう)の王』は、
 2014年に三浦綾子文学賞を受賞した作品である。
 「三浦綾子文学賞」は北海道の作家である三浦綾子の代表作『氷点』の
 連載開始50周年を記念して、この年限りの賞として募集された作品から選考されたもの。
 まさになんともいえない作品と作家の誕生を生み出したことになる。
 この作品では馬が巧みに描かれているからだろう、
 馬事文化の発展に功績のある個人などに与えられる「JRA賞馬事文化賞」も受賞している。
 余談だが、この「JRA賞馬事文化賞」の第1回受賞(1987年)は、
 宮本輝の『優駿』だったそうだ。

  9784041029619_convert_20240204144357.jpg

 タイトルにある「颶風(ぐふう)」はあまり聞かない言葉だが、
 「広辞苑」にちゃんと載っていて、「強烈な風」とある。
 この作品は物語の筋立て、構成の仕方の巧さがさすがだが、
 やはり新人作家としての粗さは否めない。
 その粗さをこのタイトルの妙が埋めきっているように思うほど、
 いいタイトルだ。

 この作品は飼い馬とともに雪崩に閉じこめらた懐妊中の女性が
 その肉を食べることで命を繋いだおかげで生まれた男の話と
 その男がまだ開拓途上の北海道に渡り馬を育てることで生計を立てる数年後、
 彼とその孫にあたる娘が馬とともに生きる姿を描く話、
 さらにその娘が年老いて、かつて馬を捨てざるをえなかった事情を知った孫娘が
 北海道の孤島にその馬の子孫と対峙する、三つの話で出来ている。

 あまりにも重厚な歳月の物語に、
 もしかしたら、私は、この物語のもっと濃い世界を望んでいるのかもしれない。
 そんな日が来ることを夢みている。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 毎年2月上旬に発売される「文藝春秋」3月号は、
 芥川賞の発表号で受賞作の全文掲載で話題となります。
 今回は第170回の芥川賞で、
 九段理江さんの『東京都同情塔』が受賞しました。
 それはいいのですが、
 今号の目次を見て驚いたことがあります。
 驚いた、というより落胆という方があたっているかもしれません。
 それは、この号のどこにも
 2024年の元旦に起こった能登地震の記事がないことです。
 あれだけの大きな災害があって、
 そのことに関して一篇の記事も載らないことの驚き。

  4910077010344_1_2_convert_20240211140101.jpg

 もちろん雑誌の発行には締め切りがあることもわかります。
 しかし、この号でいえば、
 1月2日の夕刻に起こった羽田空港での衝突事故について
 ノンフィクション作家の柳田邦男氏の記事
 「JAL乗務員緊迫の証言」が載っています。
 であれば、何故その前日に起こった大災害のことを
 記事にできなかったのでしょう。

 自民党の裏金問題も大きな政治問題でしょう。
 松本人志についてのさまざまな報道も
 またもや「文春砲」として賑わしているから話題となるでしょう。
 しかし、この号で扱われないといけなかったのは
 間違いなく能登地震ではなかったでしょうか。

 総合雑誌の雄としての「文藝春秋」は
 ある意味では報道する姿勢を明確に持つ立場にあるはずです。
 私は今でもこの号の目次を見ながら、
 どこかに記事の落丁があるのではないかと
 思ったりしています。
 あるいは、記事ひとつ載せられなかった大きなミスがあったのでしょうか。
 とても違和感が残る
 「文藝春秋」三月特別号でした。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 「世界のオザワ」と評された、指揮者の小澤征爾さんが
 2月6日に88歳で亡くなりました。
 クラシック音楽のことを知らない人でも、
 そのお名前や晩年の白髪長髪で指揮する姿は広く知られていると思います。
 訃報のあと11日の日曜日の朝日新聞朝刊2面に
 親交のあった作家村上春樹氏の「小澤征爾さんを失って」という長文の
 寄稿が載っていました。
 著名な人の逝去のあと、親交のあった人が新聞に寄稿することがよくありますが、
 今回のように朝刊2面全部に載るということはとても稀なことで、
 そのことで小澤征爾さんの大きさを改めて知ることになりました。

  9784532169336_convert_20240211140210.jpg

 この『おわらない音楽』は、ちょうど10年前の2014年1月に
 日本経済新聞の人気コラム「私の履歴書」に掲載された
 小澤征爾さん自身による半生記です。
 「私の履歴書」は毎月その執筆者が違いますが、やはり年はじめの1月は
 大物有名人による執筆の場合が多く、
 さすがに小澤征爾さんはビッグネーム扱いだったのだと思います。

 小澤征爾さんのことをほとんど知らないものにとって、
 小澤征爾さんというのは「天才」と思いがちですが、
 この「履歴書」を読むかぎり、決してそんなことはありません。
 連載の最初の回で、こんな文章が書かれています。
 「だいたい指揮者という商売は、自分一人ではどんな音だって出せない。
 演奏家や歌い手がいて初めて音楽が生まれる。宿命的に人の力がいるのだ。
 だからこそ、この「履歴書」は、「どんな人に支えられてきたか」、
 そんな恩人を紹介するものだと綴っているのです。
 そして、確かにここには恩師である斎藤秀雄先生や兄弟子である山本直純さんをはじめ
 たくさんの人が登場します。
 「世界のオザワ」は人の輪で生まれたといえます。

 「履歴書」の最後に、小澤征爾さんが綴った
 「僕はもっともっと深く、音楽を知りたいのだ。」という言葉に
 より切なさを感じます。

 小澤征爾さん、お疲れ様でした。
 そして、ありがとうございました。

 ご冥福をお祈りします

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 先週、月曜の昼過ぎから雪になった関東でも
 火曜の朝には久しぶりに数センチの積雪になりました。
 でも、やはり暖冬で地温が高いのか、
 結構早く溶けてくれたように感じます。
 昨日が建国記念日の祝日で、今日がその振替休日。
 今週の半ばには気温があがって4月上旬の暖かさになるとか。
 今年は桜の開花も早いかもしれません。
 そうはいっても、今は梅の季節。

  20240210_150230_convert_20240210163651.jpg

    青天へ梅のつぼみがかけのぼる      新田 祐久

 そばに近づくと、なんともいえない梅の香り。
 春の匂いです。

 菜園で収穫できるのが茎ブロコッリー

  20240210_142711_convert_20240210163543.jpg

 あまり来園できない区画では
 黄色い花が咲いていたりします。
 なので、早めはやめの収穫がいいです。

 こちらは小カブ

  20240210_154314_convert_20240210163718.jpg

 うまく育ったとみえたのですが、
 抜くと虫に齧られたあとがいくつも。
 写真の左から2つめのカブなんか、
 いくつも齧られていました。
 本当ならまだ寒さであまり活動しないはずも虫たちも
 暖かいのでもう動きだしたのかもしれません。

 こちらはネギ

  20240210_141859_convert_20240210163505.jpg

 そろそろ収穫してもいいかももサイズになってきましたが、
 もう少し大きくなるのを待ちます。

 これはウスイエンドウ

  20240210_144722_convert_20240210163617.jpg

 冬越しの豆科の野菜はいずれもこれくらいまで育ってきました。
 ホームセンターでも豆科の苗が出回ってきましたから
 これからぐんぐん大きくなっていきます。
 「春めいて」、そんな季語にも暖かさを感じる頃になりました。

   春めきてものの果てなる空の色      飯田 蛇笏

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 2017年に公開された映画「ドリーム」を観た人は多いと思います。
 三人の黒人の女性たちが色々な虐げにあいながらも、
 前を向いて生きていく、そんな物語。
 彼女たちが働く職場がNASA(アメリカ航空宇宙局)で、
 終盤アポロ13号の危機と生還に重要な仕事を成し遂げる姿が胸をうつ感動作でした。
 その映画の主人公が数学者のキャサリン・ジョンソンさん。
 この伝記絵本『わたしにまかせて!』の主人公です。

  9784864122443_1_69_convert_20240130202026.jpg

v アメリカの作家ヘレン・ベッカーさんが描いたこの絵本にはこんな副題がついています。
 「アポロ13号をすくった数学者キャサリン・ジョンソン」。
 これで彼女が何を成し遂げた女性かわかりますが、
 どのような生い立ちだったのでしょう。
 子供たちにもわかりやすく、絵本ではうまくまとまって描かれています。
 タイ生まれで小児科医でもあるダウ・プミラクさんの絵が
 伝記映画でありながらとてもかわいい描かれていますから、
 余計に読みやすくなっています。

 ただこの絵本では彼女が黒人ゆえに苦労した話は
 白人しか入れないハイスクールしかなく転居したという話以外は
 あまり描かれていません。
 おそらく彼女自身、そういう差別とか偏見とかよりは
 数学を解く方が大変だったのでしょう。
 この絵本の原題は「COUNTING ON KATHERINE」は、
 「キャサリンを頼りにして」。
 それこそが、彼女のなによりの喜びだったはずです。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 昨年(2023年)10月、74歳で亡くなった谷村新司さんを追悼する形で
 日本映画専門チャンネル
 映画「Alice THE MOVIE 美しき絆」が放映されました。
 谷村新司さんが亡くなって
 楽曲のアルバムをレンタルしたり、
 グループ「アリス」として活動していた頃の楽曲を聴いたりしました。
 あらためて聴いてみて、
 やはり「サライ」とか「群青」とかがいいですね。
 アリス時代であれば、「帰らざる日々」とか「チャンピオン」とか。
 でも、アリス時代の活動が映画になっているのは知りませんでした。
 今日は映画「Alice THE MOVIE 美しき絆」の話です。

  OIP_(10)_convert_20240208202340.jpg

 映画「Alice THE MOVIE 美しき絆」は1979年公開された日本映画です。
 アリスの1979年の夏のコンサートツアーを追ったドキュメンタリーです。
 監督は坪島孝。
 ドキュメンタリーといっても、ちゃんと脚本もあって、
 アリスの3人の、ちょっとユーモラスの演技も楽しめます。

 アリスの3人。
 谷村新司、堀内孝雄、矢沢透
 映画の途中で彼らそれぞれのモノローグが入るのですが、
 この時彼らは30歳を迎えていて、
 今観ると実にしっかりした見識を話していたりします。

 この映画の面白さというと、
 もちろんアリスの楽曲、しかもライブでも歌声を存分に楽しめるということ。
 「冬の稲妻」「君のひとみは10000ボルト」「帰らざる日々」「チャンピオン」・・・
 そして。映画のラストを飾る「美しき絆 ハンド・イン・ハンド」。
 ライブ会場だった横浜球場で繰り返し歌われるこの歌に
 やはり感動してしまいます。

 この映画ではコンサートに来た若者たちの姿と声が映し出されます。
 当時10代か20代であった彼らは今どうしているのでしょう。
 この時から40年以上も経ちます。
 彼らは今どうしているのかと、そんなことを思うことで
 この映画が持っている意味が深くなるように感じました。
 この映画で観客を魅了した谷村新司はもういません。
 この時にコンサートで手拍子をおくっていた若者たちも
 シニア世代になっているでしょう。

 随分遠くまで来てしまったように感じます。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 「最期は本名で迎えたい」と、50年前の連続企業爆破事件で指名手配されていた男が
 名乗り出て、その後まもなく病死したニュースに、
 年明け早々日本中が騒然となった。
 事件を起こした時、男は二十歳。亡くなったのが70歳だから、
 50年間逃げ続けたことになる。
 私よりわずか一歳年上だった男、そんな男には自身の二十歳はどう見えていたのだろうか。
 そんなことを思っていて、久しぶりにページを開いた本がある。
 宮本輝のエッセイ集『二十歳の火影』だ。

  9784062752206_convert_20240204144644.jpg

 宮本輝が『蛍川』で第78回芥川賞を受賞したのが1978年。
 この時宮本は30歳になったばかり。
 その前後に書いたエッセイを集めたのがこの本で、1980年に出版されている。
 幼い頃に見た富山の風景や事業に失敗していく父の姿、
 そんな父の死後残された莫大な借金、それから逃れるようにして送った貧しい生活、
 そんな自身の青春の姿が綴られていて、
 ここには宮本文学の原型があるように思える。
 表題作である「二十歳の火影」には、70歳で亡くなる晩年の父の姿を見つめる
 二十歳の作者の姿が描かれている。
 若い女と暮らす自堕落の父、その部屋にかかっていた赤い長襦袢。
 それらを見たあと、二十歳の作者は「暗い哀しい気分」に浸りつつ、
 「いまにも炸裂しそうな何物かをじっと押し殺してもいた」。

 宮本輝だけではないだろう。
 「最期は本名で迎えたい」と願った男もまた、
 男なりの「二十歳の火影」を思い出すこともあったのではないだろうか。
 それは、男にとって、どんな揺らぎで映ったことだろう。

 今日69歳の誕生日を迎えた私が思い返す二十歳も、うんと遠くなった。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 書名にある「世傳」とは「代々にわたって伝えていく」という意味で、
 高田郁さんの人気シリーズにぴったりの言葉です。
 「転流篇」は、その『あきない世傳 金と銀』の第五巻めになります。
 幼くして大坂の呉服商「五鈴屋」の女衆として奉公にでた
 主人公の幸(さち)。
 その商才を見込まれて、あれよあれよという間に
 三人の兄弟の嫁になっていきます。
 前巻で三男坊の智蔵(のちい六代目徳兵衛を襲名)の嫁となった幸。
 この巻では、どんな商才を見せるのか。
 ネタバレありの、ご用心、ご用心。

  9784758441476_convert_20240130202124.jpg

 前巻、義理ある大店の経営危機の救済に乗り出した幸たち。
 元の「五鈴屋」を本店、買い取った店をその支店として、さらに大きく飛躍します。
 そして、ついに幸は江戸への出店を目標に掲げます。
 そんな時、故郷の村から母親の死が届きます。
 残された妹、結(ゆい)を大坂に連れ帰り、幸の新しい生活が始まります。
 商いでは、帯に目をつけた幸ならでは工夫で裏表で映える帯を考えつき、
 またもや大いにお店は繁盛していきます。

 母は亡くなったものの幸が懐妊にし、物語はこのまま順風満帆で進むかと思いきや、
 悲しいことに月足らずでこの世を生きることはありませんでした。
 この長い物語で、母や赤ちゃんの死が結構あっさりと描かれていて、
 そのことは商いに生きる主人公を描くということの裏返しかもしれません。
 妹の結もそんな姉を「心ない」と恨んだりします。
 それでも、商いは順調ですが…。
 あとは書けない、書けない。
 誰もが、次巻に手を伸ばすことになります。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 この本、タイトルは『18歳までに子どもにみせたい映画100』だが、
 決して「子どもにみせたい」だけではない。
 むしろ、「100歳までにおとなにも子どもにもみせたい」の方が合っている。
 それほどに、この本に紹介されている映画は多彩で、
 思わず次観なくちゃと控えたくなる。
 しかも、タイトルには「100」とあるが、
 紹介された作品に関連した映画が「おまけ」としてタイトル2本ついているから、
 実質的には300本の映画が紹介されていることになる。

  9784048976497_1_2_convert_20240202201242.jpg

 著者の有坂塁さんは移動映画館の館長でもあり、
 自身小さなお子さんがおられるとのこと。
 そんなお子さんを見ていて、
 「次の時代を作っていく人にとって“道標”となるような映画本を作ろう」と決意し、
 できたのがこの本。
 だから、この本を読んで、面白そうだと感じた映画こそ、
 自分の道を示す「道標」にちがいない。

 この本が素敵なのは、有坂さんの解説が読みやすいだけでなく、
 映画のシーンが描き下ろしイラストとして出ていること。
 描いたのは、タイ在住のイラストレーター・Eaowenさん。
 この人のイラストを見ているだけでも、
 映画が観たくなるくらい。
 あなたなら、この本からどんな映画を選びだすでしょう?
 「いやあ、映画って本当に良いもんですね」、って
 映画評論家水野晴郎さんの名セリフは、いまも使える。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 くどうれいんさんが気になりだしたのは、
 『氷柱の声』は第165回芥川賞候補になった時だ。
 そのあと、2023年に出た食のエッセイ『桃を煮るひと』も面白く、
 調べると食べ物についてのエッセイがすでにあるとわかった。
 それが、この『わたしを空腹にしないほうがいい』。
 もともとは俳句ウェブマガジンに連載していた食べ物エッセイかつ
 2016年夏のひとときの自身の心象風景を書き留めた読み物で、
 2017年に私家版として出版物としたもの。
 それが評判となり、2018年に書籍として出ることになった。

  OIP_(8)_convert_20240127090857.jpg

 それぞれの短文のタイトルになっているのは、
 俳句マガジンでの連載ということもあってか、俳句になっている。
 最初の文につけられたタイトルは「芍薬は号泣するやうに散る」。
 学生時代に短歌にのめり込んだその感性が、
 俳句やエッセイ、さらには小説にもつながっているのだろう。

 それになにより「空腹」になると、怒り出したり、悲しくなったりする質だから、
 つまるところ、「わたしを空腹にしないほうがいい」と書くほどだから、
 食べること、料理することが大好きで、
 その愛が詰まったエッセイだといえる。
 「菜箸を握るのが楽しいと思えることは、きっとすこやかに生きていくうえで
 武器になると信じている。
 こんな文章に、料理を愛する人なら大いに共感することだろう。
 くどうれいんさんこそ、くいしんぼうバンザイ!

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 昨日2月4日は立春でしたので、
 手元の「歳時記」も「春の部」に置き換えました。
 春の季語の中に「種芋」もあって、
 「歳時記」にはこう解説されています。
 「早春、温床で発芽させたあとで植え付ける」と。

    種芋のこのあえかなる芽を信じ      山口 青邨

 今日の「わたしの菜園日記」は
 畑仕事もあまりないので、
 ジャガイモの話を2題。
 まずは、クイズから。これらは何の名前でしょう?
 コナヒメ、グウェン、シンシア、ピルカ、さやか、
 アイマサリ、アローワ、トヨシロ
 ヒントをさしあげましょう。
 キタアカリ、インカのめざめ、メークイン、男爵
 もうお分かりですね、これらはジャガイモの品種の名前。
 これほどにたくさんの品種があって、
 NHKテキスト「やさいの時間」2・3月号
 紹介されています。

  4910165010249_1_2_convert_20240202201119.jpg

 特集が「ジャガイモで始める春菜園」ということで
 これらの品種の食べ比べもしています。
 「茹でる」の部門で「おいしさ高評価」は
 インカのめざめ、とかアイユタカとか。
 インカのめざめは「蒸す」部門でも高評価です。
 もちろん、栽培のテキストでもありますから
 「ジャガイモはこんなふうに育つ」という記事も
 しっかり載っています。

 育ちということが絵本にもなっています。
 それが荒井真紀さんの『じゃがいも』。

  06-0578_01_convert_20240130201927.jpg

 荒井真紀さんは写実的な絵で
 これまでにもいくつかの野菜の絵本を描いてきています。
 この『じゃがいも』でも
 土の中でどう大きなイモになっていくのだとか、
 地上で葉や茎がどう大きくなっていくのかが
 丁寧に描かれています。
 まさに丹精込めた絵本といえます。
 それにこの絵本では普段あまり見られない
 ジャガイモの花や小さな実も描かれています。
 これまで実際にジャガイモを育てて、
 花や地上の出た実を見た時は少しうれしくなりました。
 菜園の楽しみは
 収穫の多寡だけでなく、野菜の営みを味わうことでもあります。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 韓国も日本に劣らず野球の人気が高い国です。
 大谷翔平選手が移籍したドジャースの開幕戦が韓国で行われるということで
 話題にもなっています。
 韓国の絵本作家ホ・ジョンユンさんの絵本『おとうさんをかして』でも
 野球の楽しむ家族の姿が描かれています。
 でも、野球をしてくれたおとうさんが死んでしまいます。
 この絵本は、ここから始まります。

  9784265852109_1_2_convert_20240118202725.jpg

 おとうさんが死んだあと、小さな弟は野球をしなくなります。
 おねえちゃんに弟はこう言います。「おとうさんと野球したい」
 おねえちゃんだって、淋しいのです。
 おとうさんに会えないことが嘘であればと、思います。
 おねえちゃんと野球をしよう、と誘っても、弟は嫌だとすねます。
 おねえちゃんは、思いつめて考えます。
 もしかして、もしかして。
 だから、友達の家に行って、こう言うのです。
 「おとうさんを かして」
 おとうさんはもちろん借りることはできませんでしたが、
 かわりにたくさん友達がやってきてくれます。

 とってもシンプルなタッチですが、この切ない物語に、
 チョ・ウォニの絵はとてもあっています。
 野球が好きな、そして家族を大切にするお隣の国の
 素敵な絵本です。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 今日は節分
 明日が立春で、冬と春の今日が境目。
 豆まきをする大きな声も聞かれなくなって久しいですが、
 それでも豆まきの風習は残っているようです。
 年の数だけ豆を食べるのも昔からで、
 さすがに今の自分の年の数まで食べきれません。

   年の豆わが半生のひと握り      長田 蘇木

 今週の木曜(2月1日)、映画雑誌「キネマ旬報」から
 第97回キネマ旬報ベストテンが発表されました。
 日本映画の1位が「せかいのおきく」(阪本順治監督)で、
 外国映画の1位が「TAR(タアー)」(トッド・フィールド監督)。
 主演男優賞役所広司さん、
 主演女優賞趣里さん。
 趣里さんといえば、お父さんは水谷豊さんで
 水谷さんも1976年に「青春の殺人者」(長谷川和彦監督)で主演男優賞を受賞していて
 親子で歴史ある映画賞の主演賞を受賞したことになります。
 今日は外国映画で1位となった映画「TAR(タアー)」の話をしましょう。

  OIP_(9)_convert_20240202085334.jpg

 映画「TAR(タアー)」は2022年公開のアメリカ映画。
 日本での公開が2023年5月になったので、今回のベストテンの対象になりました。
 「タアー」というのは、主演のケイト・ブランシェット演じる主人公の名前。
 この映画、なんといってもケイト・ブランシェットがすごい。
 何しろ、監督で脚本も手掛けたトッド・フィールド
 ケイト・ブランシェットを念頭にして書いた作品だから、
 彼女なしでは成立しなかった作品。

 主人公のリディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、
 ベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命された女性。
 類まれな才能は時に激しく人にあたり、やがて彼女の指導に耐えれなくなる人も。
 次第に彼女は狂気に陥っていく。

 ターは私生活では同性のパートナーと暮らすレズビアンという設定で、
 そうなるとケイト・ブランシェットが主演した名作「キャロル」(2015年)を
 つい思い出します。
 私がケイト・ブランシェットに魅かれた作品が「キャロル」で
 その冷たい風貌と知的なイメージが好きです。
 その意味ではこの「TAR(タアー)」も、彼女にぴったりの作品です。
 評によっては、ミステリー映画のように書かれることもあるようですが、
 私には深い人間を描いた作品に思えました。

 なにより、キネマ旬報ベストテン外国映画1位おめでとうございます。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 「現代詩の長女」とも呼ばれる詩人茨木のり子さんには
 すでに『茨木のり子集 言の葉』という全3冊にまとめられたエッセイ集がある。
 それらの中からと、そこに収められいない、言葉についてのエッセイをまとめたのが
 この『言の葉さやげ』である。

  9784309420714_1_2_convert_20240127091004.jpg

 書名にある「さやげ」は「広辞苑」では「さやぐ」という動詞として出ている。
 意味は「ざわざわと音がする。ざわめく」で、
 この本の「あとがき」でこの言葉を『古事記』のなかの唄、
 「木の葉さやぎぬ 風吹かむとす」から採ったと記されている。
 ただ、茨木さんは長い間「木の葉」を「言の葉」だと思い込んでいたようだ。
 「さやげ」は、その「さやぐ」の命令形ではなく、
 「さやげよ」という願望形のつもりと記していて、
 茨木さんの言葉に対しての祈りのようなものを感じる。

 この本では2つの章に分かれていて、前半の章では「言葉」全般について、
 後半の章では「詩」と谷川俊太郎井伏鱒二金子光晴といった「詩人」についての
 エッセイが収められている。
 前半の章の中に「美しい言葉とは」と題されたエッセイがあって、
 これはどうしても書き留めておきたい、こんな文章が綴られている。
 「政治家の言う「小骨一本抜かない」「衿を正す」などは、なんらの実体も感じさせない点で下の下である。
 言葉は浮いてはならないのだ。
 この文章が書かれたのは1979年。
 だとしたら、政治家というのはいつの時代であっても
 浮いた言葉を使う人たちだと、ただ吐息がでて、「さやぐ」こともない。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
プレゼント 書評こぼれ話

  今日から二月
 
    竹林の月の奥より二月来る      飯田 龍太

  年が明けてすぐ、石川県能登で起こった大きな地震から一か月。
  いまだに多くの人が不自由な避難所生活を送っておられます。
  被災者の皆さんに早く心温まる春が来ることを
  祈らずにはおられません。
  月初めなので、いつものように
  星新一さんのショートショート本を
  紹介しています。
  今日はその11巻め、
  「ピーターパンの島」というタイトルの『星新一ショートショートセレクション11』を
  紹介します。
  書評の最後に少し書いた表題作のことですが、
  話を膨らませたら、とっても面白いSF映画になると思います。
  それほど物語として面白いし、ダーク感がとても効いていて
  読みようによってはとても怖い話です。
  和田誠さんのかわいいイラストにだまされてはいけません。

  じゃあ、読もう。

  65202091_convert_20240127090933.jpg

sai.wingpen  未来人の資格が私たちにあるのだろうか                   

 『星新一ショートショートセレクション11』(理論社)。
 表題作である「ピーターパンの島」をはじめとして、18篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
 装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。

 星新一さんではないが、時々こんなことを考えることがある。
 もし、本当にタイムマシンが実現して、例えば江戸時代にタイムスリップしたとしましょう。江戸時代の人たちは未来から来た人と大歓迎してくれるでしょうが、果たして私は彼らの期待に応えることができるのかと。
 未来には自動車という便利な乗り物があって、と言ったところで自動車が作れるわけでもなく、インターネットで世界中の情報を知ることができると説明してもパソコンもスマホも持っていなければ何もできない。
 傘張りの浪人はまだ傘が張れるが、未来人の当方はそれすら危うい。
 つまり、未来人といっても、単に高度な文明を享受しているに過ぎないのだ。
 この巻には、これとよく似たショートショートが収められている。
 タイトルは「高度な文明」。
 ある時、地球にやってきた宇宙船。そこに乗船していた宇宙人はとても高度な文明を持っているようであったが、しばらくすると乗ってきた宇宙船が壊れてしまう。でも、宇宙人がいれば、すぐに作り直せると思ったが、実は宇宙船自体に文明が設置されていて宇宙人には何ひとつできない。
 この作品の最後に、星さんはこう書く。
 「きみに一本のマッチが作れるか。(中略)文明とは、そういうものなのだろうな」

 表題作の「ピーターパンの島」はダーク・ファンタジーとして面白かった。
  
(2024/02/01 投稿)

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス