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 第21回大藪春彦賞受賞作。(2019年)
 ちなみに大藪春彦賞は、『野獣死すべし』や『蘇える金狼』などで知られる
 ハードボイルド作家大藪春彦さん(1996年死去)の功績を讃え、
 優れたハードボイルド小説や冒険小説に与えられる賞で、1999年に始まっている。
 2024年に第170回直木賞を『ともぐい』で受賞した河崎秋子さんにとっては、
 書き下ろし作での受賞である。

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 この『肉弾』を読み終わって思ったのは、
 これは「ファンタジー小説」なのではないかということだった。
 ファンタジーの定義は色々あるが、妖精や魔法使いが活躍するだけでなく、
 超自然的であったり、幻想的であったりということであれば、
 北海道の森林の奥深くで、その生い立ちがイレギュラー過ぎる熊と
 人間世界から捨てられ運命を狂わされた犬たちと、
 「死んでもいいがただ死ぬのは嫌な人間」である青年が繰り広げる
 土と血と獣の臭いに満ちたこの小説こそ、
 ありうることのない超自然のものではないだろうか。

 最初は剛毅な父とひ弱な息子の父子物語のように展開するが、
 北海道の奥地に二人が踏み込んで、
 荒らぶれの熊に父親が殺されていくところから物語は急速に狂暴になるが、
 合間あいまに仕掛けられた犬や熊、あるいは人間そのものの生きてきた歳月の姿が
 その狂暴性を文学として高めているように感じた。

 最後、人間に救出されるのは青年だけだ。
 青年とともに熊と闘った犬たちは森の奥に消え、
 人間たちはそのことに気がつくことはない。

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