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プレゼント 書評こぼれ話
  
  今日は「啓蟄」です。
  二十四節気のひとつであることは、今回の書評に書いたとおりです。
  冬のあいだ土の下で眠っていた虫たちが、
  春の気配を感じて地上に出てくる、そんな言葉ですね。
  「啓」というのは「開く」という意味だそうです。

    啓蟄の雲にしたがふ一日かな
  
  俳人加藤楸邨の句です。
  でも、今年はちょっと色合いが違うかもしれませんね。
  地上に出てきた虫たちは、すっかり景気が低迷した世の中を見て
  びっくりしてしまうかもしれません。
  こんなはずじゃあなかった。
  もう一度土の中にもぐりこみたくなるかもしれません。
  それでは困ります。
  やはり、冬の次は、春になる。
  だからこそ、がんばれることも多いと思います。
  虫たちにも頑張ってもらって、春の息吹を共有したいものです。

和の暮らし術一 歳時記のある暮らし (和の暮らし術 1) (和の暮らし術 1)和の暮らし術一 歳時記のある暮らし (和の暮らし術 1) (和の暮らし術 1)
(2008/11/27)
坂東 眞理子

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sai.wingpen  蟄虫戸を啓く                  矢印 bk1書評ページへ

 この本は「歳時記」そのものでもありませんし、「和の暮らし術」そのものでもありません。どちらも寸足らずです。
 それでいて、懐かしいような、手元に置いておきたくなるような、そんな温かい本なのです。
 こんな本がそばにあって、冬から春への変わり目の、ぽかりとした暖かな陽だまりでゆっくり暮らせたらいいでしょうね。
 「四季、二十四節気、七十二候、日本の自然は初春から年の暮れまで、おりおりの美しさをあらわしながら移っていきます」
 この本の「はじめに」を書いた、監修者の坂東眞理子さんの冒頭の文章です。
 「二十四節気」というのは、一年を二十四等分した季節の「句読点」のようなものをいいます。
 有名なところでは「春分」「夏至」「秋分」「冬至」などがそうです。「大寒」とか「立春」などもこれに入ります。せめて暦(こよみ)には入っていてほしい、季節の目安です。
 それにひきかえ、「七十二候」はあまり目にすることがありません。
 「二十四節気」をさらに三等分して大体五日毎に区分された、中国で生まれた季節の言葉です。
 例えば「啓蟄」(けいちつ。これも「二十四節気」のひとつです。今年は三月五日)の「七十二候」というと「蟄虫戸を啓く(すごもりむしとをひらく)」「桃始笑(ももはじめてさく)」「菜虫蝶化(なむしちょうとなる)」といったように(54頁)、季節感にあふれた綺麗な言葉が続きます。
 わずか五日間なのに、季節が移ろう感じが、言葉でこのようにあらわせるのですから、私たちの国(もちろん中国も)の言葉に感嘆します。

 言葉だけではありません。
 私たちの生活には季節感にあふれた風習はたくさんありました。生活の知恵、といってもいいでしょう。暑い夏の夕暮れなど「打ち水」をして縁台で夕涼みをしている場面などはどこでも見られた生活の風景でした。うちわを手にした浴衣美人までは望めませんが、風鈴の音に涼を感じる感性が、つい数十年前まではあったものです。
 より便利なもの、より合理的なものを求めて、そのような暮らしはすっかり影をひそめました。
 せめて、季節の言葉は大事にしたいと思います。

 「あなたのところではもう桃は咲き始めたのでしょうか」
 そんな手紙が届くのも、もうすぐです。
  
(2009/03/05 投稿)

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