03/09/2009 書評詩:希望ヶ丘の人びと

今回紹介する本は、重松清さんが「週刊ポスト」に一年半連載した物語です。
やはり、こういう時っていうのは、作者も読書層をある程度意識するのだと
思います。年齢的には40台、仕事的にはちょうど油ののった時期、
家庭的には子供たちが思春期を迎える難しい頃。
この物語の主人公は数年前に妻をガンでなくした私。中学三年の娘と、
小学五年の息子がいます。
彼らが、亡くなった妻が子供の頃に過ごした街、「希望ヶ丘」に越してくる
ところから物語は始まります。
これは、私の想像ですが、
重松さんは最初この物語を、妻にかかわる人とからめて書こうとしたのでは
ないかと思うんですよね。
もちろん、この物語には妻の同級生や、初恋の人が登場するのですが、
本当はもっとたくさんの人を登場させようとしたのではないか、
そうすることで、亡くなった妻を描きつつ、この三人の家族を描くつもり
だったのではないか。
それが、かなり個性的な人物たちが登場することで、
広がりではなく、深みのある作品になったのではないか。
ところが、重松さんの、これは課題ですが、
どうしてもその深みというのは、家族の問題とか、いつものテーマに
なってしまうんですよね。
それはそれで、重松ファンは期待もしているのですが、
ここまで来ると、ちがう重松さんをいつも期待してしまう。
そういうふうに感じながらも、重松さんの新作を読んでしまうのも、
ファンとして、いささか因果でもありますが。
今回、書評詩にしましたが、読んでいて、ふっと浮かんだのが
「小石の影」というイメージでした。
それで、今回、こんな詩にしました。
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大きな石には影ができるのは当然かもしれない
でも
小石にだって
影はできる
大きな石が目の前にあったら
人が何人も集まって それをうんうんいって運ぶだろう
でも
小石だったら
ぽんと足で蹴りあげて
おしまい
この星は
ずっと昔に燃える火の玉で
それが 何億年もかけて
石の星になった
石は
土になり
水がわき
木々を育て
私たちをつくった
私たちが
みんなちがうように
石たちも みんなちがう
そして
石たちが
みんなちがうように
私たちも みんなちがう
大きな石には影ができるのは当然かもしれない
でも
小石にだって
影はできる
(2009/03/09 投稿)
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