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プレゼント 書評こぼれ話

  新潮文庫の今月の新刊に
  工藤直子さんの『あいたくて』が
  並んでいます。
  挿絵は佐野洋子さん。

新編 あいたくて (新潮文庫)新編 あいたくて (新潮文庫)
(2011/09/28)
工藤 直子

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  以前、工藤直子さんの「あいたくて」という詩のことを
  書評に書いたことがあります。
  村上春樹さんが編纂した『バースデイ・ストーリーズ』という
  作品です。
  蔵出し書評になります。
  この作品で「君」と書いているのは
  私の長女のことです。
  新潮文庫の一冊に
  工藤直子さんの「あいたくて」という詩集を
  見つけた時、
  この書評を書いた時の思いが
  わきあがる感じがしました。

  じゃあ、読もう。

バースデイ・ストーリーズバースデイ・ストーリーズ
(2002/12/07)
レイモンド・カーヴァー、ポール・セロー 他

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sai.wingpen  手紙、あるいはあの日の新聞記事              矢印 bk1書評ページへ

 「ことづけ」伝えて。これは2002年1月14日の、朝日新聞の社説のタイトルです。
 君はこの日成人式を迎えたのですよね。社説は詩人の工藤直子さんの「あいたくて」を引用しながら、この日成人を迎えた若者たちに、そう君も含めて、こう書いていました。
 「大人と子どもの境が定かではなくなってきました。もはや20歳を強くは意識しない若者たちが大半でしょう。でもあなたたちにも、大人であることを嫌でも自覚せざるを得ない時が訪れます」。

 そして、工藤さんの詩が続きます。
 「それでも 手のなかに/みえないことづけを/にぎりしめているような気がするから/それを手わたさなくちゃ/だから/あいたくて」
 この詩の後に記者はこう締めくくっています。
 「ことづけを放っておいては生まれてきません。心豊かなことづけを、やがてだれかに手渡すことができると良いですね」

 この書評は僕にとって、誰かに伝えたい「ことづけ」みたいなものかもしれません。
 2002年に最後に読んだ本、つまり村上春樹さんが訳した10篇の短編小説と村上さんの書き下ろしの短編1篇が収められたこの「バースデイ・ストーリーズ」という本がとても素晴らしかったことで、なんだかこの一年をとても幸福な気分で終えることができました。
 君の成人式に始まって、病室で迎えた僕の誕生日や君の妹の初めての下宿生活や、結構大変な一年だったけれど、それでもこんな素敵な本に出会えるのだから、まずまずの年だったと思っています。

 村上春樹さんの書き下ろし小説「バースデイ・ガール」は20歳の誕生日を迎えた女の子の不思議な物語です。村上さんは「顔をしかめることなく、どちらかといえば肩の力を抜いて楽しんで書いたもの」と云っていますが、とてもいいお話です。ちょうど贈り物にかけられた赤いリボンがゆっくりとほどけていくような、そんな短編小説です。
 それ以外にもラッセル・バンクスという人の「ムーア人」もよかった。人それぞれに誕生日の思い出がちがうように11篇の小説は趣きが違います。君自身のお気に入りをぜひ見つけてください。

 「だれかに あいたくて/なにかに あいたくて生まれてきた−そんな気がするのだけれど」。
 工藤直子さんの詩「あいたくて」の冒頭の一節です。
 これも、まるで誕生日の詩みたいではないですか。
  
(2003/1/01 投稿)

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