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プレゼント 書評こぼれ話

  会社を辞めて9ケ月になります。
  夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬になり、
  そして春の日差しがさす頃になって、
  ようやくむくむくと「また仕事がしたい」と
  思うようになりました。
  ところが、本書にもあるように、
  中高年の再就職はかなり厳しいのが現実です。
  まして、このような不況ともなれば、なおさらです。
  もし、辞める前に本書を読んでいたら、
  辞めるのを躊躇ったかといえば、おそらくそれでも
  辞めたと思います。
  ただ自分の中では「潔い」と思ったことも、
  世間ではなかなかうまく受けとめてもらえないのも
  事実です。
  あるいは「キャリア」があっても、
  それがどれだけ次の会社に合致するかもわかりません。
  会社にはしがみつくことが大事です。
  しかし、それは居座ることではありません。
  きちんと仕事をすることでしがみつくのです。
  仕事もしないでしがみつくのは、
  その人の人間性の問題だと思います。
  
それでも会社を辞めますか? 実録・40歳からの仕事選び直し (アスキー新書)それでも会社を辞めますか? 実録・40歳からの仕事選び直し (アスキー新書)
(2009/02/11)
多田 文明

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sai.wingpen  備えあれば                     矢印 bk1書評ページへ

 私の経験からいって、中高年(40歳以上)の人は、会社の倒産という不幸な場合以外は、何がなんでも今の仕事を辞めてはいけません。転職で新しいキャリアが生まれることは稀だし、年齢の壁は厚い。今以上のことは望めないと覚悟すべきなのです。
 それでも、「今の仕事がどうにも合わない」という人もいるでしょう。精神的に追い詰められているかもしれません。そういう人こそ、「明るい明日」ばかりではないことを知るべきだし、本書に書かれている「厳しい現実」を凝視した方がいい。そのうえで、辞めることを決断しても遅くはありません。
 本書には著者(40代前半)の転職体験記だけでなく、複数の中高年の転職のあれこれが収められています。
 もちろん、その中には独立で「明るい明日」を実現した事例もないわけではありません。
 でも、それはほんの一握りなのです。(もちろん、あなたがそのほんの一握りにならないとは限りませんが)
 本書の中に、中高年で就職活動をしている人の生活がうかがえる文章があります。
 少し長くなりますが、重要なので、引用しておきます。
 「結局、面接にすらたどり着けず、家で悶々と過ごすことになる。やることといえば、午前中からお昼過ぎまでハローワークへ行き、仕事をインターネットで探す。午後からは家に帰ってきて書類選考に落ちて戻ってきた履歴書から写真だけを切り取り、また別の履歴書に張り替え再びポストに投函する作業である。誰とも会話をすることもなく、じっと仕事探しの作業だけをしながら毎日を送る。時に自分が何のために生きているのかわからなくなってしまうことがあった」(34頁)
 大げさな創作ではありません。私もこれに近いし、私のまわりにもこのような生活を過ごしている人をたくさん知っています。自分はそういうことにならないと思っていても、現実はそう甘くはありません。

 ただ会社を辞めたいと思っている人に、本書のような「現実」を示しても、辞めるのをとめることはできないというのも一方ではあります。
 転職という「厳しい明日」よりも辞めるという「明るい現実」の方が優先するからです。
 それでも、「厳しい明日」を知っておくにこしたことはありません。
 そして、会社の雲行きがどうもあやしいと感じている人も、こっそり読んでみてはいかがでしょうか。 備えあればなんとか、といいますもの。
  
(2009/03/18 投稿)

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