03/19/2009 書評:スローライフ ―緩急自在のすすめ

筑紫哲也さんが岩波新書に書いていたのは知っていましたが、
まったく読む意識がありませんでした。
ちょうどこの本『スローライフ』が出版された頃は、
私は仕事に熱中していたものです。
実はこの本は先日紹介した『それでも会社を辞めますか?』と
対(つい)で読んでみたいと思って手にしました。
そして、思っていた以上に、「生き方」を考えさせてくれました。
働くということ、生活するということ、生きるということ、
それぞれはとても大切なことです。
しかし、流されるだけでは「もったいない」。
自分の意思で素敵に働くこと(決して独立を指すのではありません)、
自分の意思でよりよい生活をすること(お金だけではありません)、
自分の意思で強く生きること(他人ではなく自分の一生です)
が、大切ではないでしょうか。
本当にこんないい本を読み損ねていたのが残念ですが、
逆に考えれば、「無所属の時間」だから読めた一冊と思えば、
それも、また、良しかな。
![]() | スローライフ―緩急自在のすすめ (岩波新書) (2006/04) 筑紫 哲也 商品詳細を見る |


携帯型音楽再生機が普及し始めた頃、交通機関や公共場所での「音もれ」が社会問題になったことがある。それを「カシャカシャ」という擬音で表現したものだ。最近「癒し系」の音楽(特にクラッシック)などを聴いているのだが、それが「カシャカシャ」ではない音楽のテンポであることに気付く。
流行歌など聴かなくなって久しいが、彼らのリズミカルではあるけれど溢れんばかりの音量と速すぎるテンポについていけないのだ。
音楽の世界にモーツァルトが残ってよかった。
この本は昨年(2008年11月)亡くなったジャーナリスト筑紫哲也が2006年に出版した、スピードと効率を追い求める世界に対する「異議申し立て」の書である。
筑紫流にいえば、「多事争論」のひとつということになろうか。
筑紫は自分の論説が正しいとは書いていない。この世界にはたくさんの論理があることを認めないといけないと主張する。
例えば「ファストフード」は時代の欲求により、より早くより廉価に私たちに食を提供してくれる装置だが、そればかりが拡大することに「異議」を申し立てているのだ。
力で抑えようとする側というよりも、力で抑えられようとする側(無意識であれ)に対して「異議」の存在することを知らしめているといえる。
そして、それが「異議」であるのかないのかは、自分が決めることなのだと書く。
副題となった「緩急自在」という言葉について「ゆったりしようが、急ごうが、それを決めるのは自分、それが緩急自在ということではなかろうか。さらに言えば、その自分はその時々、気分次第でどちらにも自在に動いてもよい」(41頁)と記しているように。
だから、この本は「スローライフ」や「食生活」「学習」といった問題だけではなく、自分の「立ち位置」を考える本として読むのがいいだろうし、そういう点で多くのことを学んだ一冊でもある。
最後にどうしても紹介しておきたい文章がある。
それは「「木」を見直す」という章に書かれていたこんな文章だ。
「木は二つの「生」を生きる。樹木として成長する間と、木材として使われる間である。(中略)木は木材となってからも、ゆったりとしたペースで一種の「成長」が始まるのだという」(163頁)。
筑紫哲也という「木」はふたつめの「生」を歩き始めたばかりである。
(2009/03/19 投稿)
筑紫流にいえば、「多事争論」のひとつということになろうか。
筑紫は自分の論説が正しいとは書いていない。この世界にはたくさんの論理があることを認めないといけないと主張する。
例えば「ファストフード」は時代の欲求により、より早くより廉価に私たちに食を提供してくれる装置だが、そればかりが拡大することに「異議」を申し立てているのだ。
力で抑えようとする側というよりも、力で抑えられようとする側(無意識であれ)に対して「異議」の存在することを知らしめているといえる。
そして、それが「異議」であるのかないのかは、自分が決めることなのだと書く。
副題となった「緩急自在」という言葉について「ゆったりしようが、急ごうが、それを決めるのは自分、それが緩急自在ということではなかろうか。さらに言えば、その自分はその時々、気分次第でどちらにも自在に動いてもよい」(41頁)と記しているように。
だから、この本は「スローライフ」や「食生活」「学習」といった問題だけではなく、自分の「立ち位置」を考える本として読むのがいいだろうし、そういう点で多くのことを学んだ一冊でもある。
最後にどうしても紹介しておきたい文章がある。
それは「「木」を見直す」という章に書かれていたこんな文章だ。
「木は二つの「生」を生きる。樹木として成長する間と、木材として使われる間である。(中略)木は木材となってからも、ゆったりとしたペースで一種の「成長」が始まるのだという」(163頁)。
筑紫哲也という「木」はふたつめの「生」を歩き始めたばかりである。
(2009/03/19 投稿)
工作員
このあいだ、平積みに並んでいた文庫本のタイトルに惹かれて衝動買いしました。「自分の仕事をつくる」ちくま文庫。このタイトル、御記載のコメントに通じるものを感じた次第です。最近、佐藤可士和さんのような、デザイナー的に活動する人たちの考え方やもののとらえ方を取り上げる本が多いような気がしますが、「自分の意思で強く生きること」を正面から問うている生き方に見えるからなのかもしれない等と妄想しています。「自分の意思で生きること」。。肝に銘じたいと思います。
素敵な言葉、ありがとうございます。
素敵な言葉、ありがとうございます。
2009/03/19 Thu URL [ Edit ]
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