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  昨日角田光代さんの『曾根崎心中』を
  紹介しましたが、
  今日は山田詠美さんの『ジェントルマン』で
  男と男の恋の世界を
  たどります。
  この作品では同性愛の世界が
  ひとつのテーマになってはいますが、
  もうひとつは
  穏やかな紳士面した男の裏にある
  悪者の姿も活写されています。
  二面性という言い方がありますが
  人間というのは
  誰にも二面性が
  あるいは多面性といってもいいですが
  あるものです。
  そういった多面性が
  恋を複雑にしているのかもしれません。
  そして、
  複雑だから
  恋って面白いのではないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

ジェントルマンジェントルマン
(2011/11/26)
山田 詠美

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sai.wingpen  これも恋                  矢印 bk1書評ページへ

 恋には様々な姿があります。
 男と女、男と男、女と女。あるいは動物への思いも時には恋以上となります。また、最近よくいわれる「年の差婚」のようにひどく年の離れた恋もあったり、近親相姦のようなタブーの恋もあったりします。
 様々な恋だからこそ、古今東西、たくさんの物語が紡がれてきたといえます。それでも、その恋がピタリとはまる物語は生まれてはきません。なぜなら、恋の物語はいつもひとつ、世界でたったひとつだからです。

 山田詠美さんはそのデビュー作『ベッドタイムアイズ』(1985年)からさまざまな愛の物語を描いてきました。それでも、恋の本質は語り尽くせないのは、浜の砂子よりも恋の形が多いからです。
 そんな山田さんですが、この作品では男と男の恋情を描いています。
 通称ユメと呼ばれる主人公のユメは高校時代に優等生で正義感が強く容姿もいい漱太郎という同級生に恋してしまいます。きっかけは漱太郎の裏の姿を見たことです。漱太郎の真の姿を独占できたことでユメは歓喜します。それは強い恋情へと変わっていきます。
 ユメはその後同性愛者となりますが、漱太郎は「ジェントルマン」として家庭をもち、社会的にも認められていきます。しかし、その実態は悪者のままですから、ユメの漱太郎への思いは続いていきます。

 ユメの独白として山田さんはこんな文章を綴っています。
 「(小説の)世界が導いてくれるままに進むと、そこには、もうひとりの自分がいる。そして、これまで語り得ずにいたあらゆる事柄を言語化して、代弁してくれるのだ」と。
 山田さんがこれまで描いてきた恋の世界を読んで、当然同じものではないにしても、そうだその通りだと感じたたくさんの読者がいたはずです。何故なら、そこに描かれた者たちは読者の「代弁者」であったのですから。
そして、この物語のユメや漱太郎もまた、読者の「代弁者」であるのです。

 男を愛するユメは、「ジェントルマン」の表の顔と悪者の裏の顔を持つ漱太郎は、そして二人の妖しげな恋は、もしかすると私たちの心の奥底にある、人間の影の部分かもしれません。
 そのことを誰が否定できるでしょうか。
  
(2012/02/07 投稿)

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