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プレゼント 書評こぼれ話

  今週はまるで恋の週間のように
  恋のさまざまな形を描いた
  作品が続きます。
  今日は、
  小手鞠るいさんの『なぜ泣くの』。
  昨日の山田詠美さんの『ジェントルマン』が
  男と男の愛の世界なら
  今日は女と女の愛の世界。
  いやあ、
  恋とはかくも複雑なもの。
  物語の森で
  恋を訪ね歩いている三日間になりました。
  でも、
  物語から恋をとったら
  どれだけ空疎か。
  恋があるから
  物語が生まれ、育ってきたのでは
  ないでしょうか。

  じゃあ、読もう。
  
なぜ泣くのなぜ泣くの
(2008/07)
小手鞠 るい

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sai.wingpen  それも恋                     矢印 bk1書評ページへ

 恋に生きる女たちを描いた7つの連作集。
 女たちの、彼女たちが息る場所の、彼女たちが愛する男たちの、それは巧妙に張られた蜘蛛の糸。からめとられるのは、読者。身動きできずに死んでいくのか、蜘蛛に同化していくのか。
 それも恋。

 特に後半の3つの作品に描かれる世界は、男性読者にとって未知の世界。女と女の愛の世界。そこに男たちは立ち入ることはできない。
 いや、男と女の愛の世界であっても、男は女の喜びの、あるいは悲しみの、一体どのくらいを理解しているといえるだろう。
 「聖なる鏡」という作品に「男の人はいとも簡単に騙されます」という、男性にとってはドキッとするような文章がはめ込まれている。続き、「だって、彼らは自分の欲望には忠実だけど、相手の感じていることには、ほとんど無関心だから」とある。
 男たちよ。
 女たちはその行為の最中にどれほど豊かな「物語」を紡いでいるか知っているか。「百人の女の人がいたら、そこには百通りの物語」がある。
 男たちは、自分たちがその「物語」の主人公に、けっしてなれていないことを自覚すべきかもしれない。

 「物語」はそもそも女たちが好むもの。
 縦の糸、横の糸。編まれていくものを女たちは宿命のようにして受け入れてきた。男たちは倒し、倒される世界を縦横に駆け回る。
 かつての流行り唄ではないが、男と女の間には暗く、深い川が横たわっているのだ。

 男たちはこの連作集から女という不可思議な存在を学ぶだろう。女たちはこの連作集から理解の拍手を送るだろう。
 物語は読み手によって光景を変える。
 いや、作り手によって変わることを、女たちが一番よく知っている。
  
(2012/02/08 投稿)

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