02/08/2012 なぜ泣くの(小手鞠 るい):書評「それも恋」

今週はまるで恋の週間のように
恋のさまざまな形を描いた
作品が続きます。
今日は、
小手鞠るいさんの『なぜ泣くの』。
昨日の山田詠美さんの『ジェントルマン』が
男と男の愛の世界なら
今日は女と女の愛の世界。
いやあ、
恋とはかくも複雑なもの。
物語の森で
恋を訪ね歩いている三日間になりました。
でも、
物語から恋をとったら
どれだけ空疎か。
恋があるから
物語が生まれ、育ってきたのでは
ないでしょうか。
じゃあ、読もう。
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恋に生きる女たちを描いた7つの連作集。
女たちの、彼女たちが息る場所の、彼女たちが愛する男たちの、それは巧妙に張られた蜘蛛の糸。からめとられるのは、読者。身動きできずに死んでいくのか、蜘蛛に同化していくのか。
それも恋。
特に後半の3つの作品に描かれる世界は、男性読者にとって未知の世界。女と女の愛の世界。そこに男たちは立ち入ることはできない。
いや、男と女の愛の世界であっても、男は女の喜びの、あるいは悲しみの、一体どのくらいを理解しているといえるだろう。
「聖なる鏡」という作品に「男の人はいとも簡単に騙されます」という、男性にとってはドキッとするような文章がはめ込まれている。続き、「だって、彼らは自分の欲望には忠実だけど、相手の感じていることには、ほとんど無関心だから」とある。
男たちよ。
女たちはその行為の最中にどれほど豊かな「物語」を紡いでいるか知っているか。「百人の女の人がいたら、そこには百通りの物語」がある。
男たちは、自分たちがその「物語」の主人公に、けっしてなれていないことを自覚すべきかもしれない。
「物語」はそもそも女たちが好むもの。
縦の糸、横の糸。編まれていくものを女たちは宿命のようにして受け入れてきた。男たちは倒し、倒される世界を縦横に駆け回る。
かつての流行り唄ではないが、男と女の間には暗く、深い川が横たわっているのだ。
男たちはこの連作集から女という不可思議な存在を学ぶだろう。女たちはこの連作集から理解の拍手を送るだろう。
物語は読み手によって光景を変える。
いや、作り手によって変わることを、女たちが一番よく知っている。
(2012/02/08 投稿)

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