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プレゼント 書評こぼれ話

  東日本大震災から
  今日で11ケ月になります。
  もうそれだけ過ぎたのかという思いと
  どれだけ復興ができたのかという慙愧と
  私たちは何をしてきたのかという反省が
  ないまぜになっています。
  私は何もしてこなかったけれど
  本読み人として
  何冊かの関連本を紹介してきたつもりです。
  そのことで
  忘れつつある悲しみを
  風化させないという思いがありました。
  それは、これからも
  続いていけたら、
  どんなにいいでしょう。
  自分ができることをする。
  それが大事です。
  今日紹介するのは
  瀬戸内寂聴さんと稲盛和夫さんの対談集
  『「利他」』です。
  お二人の思いが、
  そして、私の思いが
  届けばいいな。

  じゃあ、読もう。

「利他」 人は人のために生きる「利他」 人は人のために生きる
(2011/11/28)
瀬戸内 寂聴、稲盛 和夫 他

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sai.wingpen  声を訊く                 矢印 bk1書評ページへ

 忘れるということと風化するということは違います。
 あの東日本大震災からまもなく一年が来ようとしています。
 あの日亡くなった多くの犠牲者のことを思うと、今でも胸が締め付けられる思いです。私以上に被害者を知る人にとってはどんなにつらい一年だったことでしょう。
 信じられない、夢であってほしい。そんな思いは冬が過ぎ、春になり、夏が来て、秋を訪ね、そしてまた冬が来ても消えることのない痛恨の悲しみだと思います。
 しかし、本書の中で稲盛和夫さんが話しているように、「つらい気持ちを忘れることで、人は生きていける」という人間としての不思議さがあります。
 悲しみはいつか薄らいでいくものです。そのことを責めるのではなく、そのことがあるから悲しみを乗り越えられるのです。

 その一方で、いつの間にか私たちはあの日のことを忘れつつあります。
 あれだけの大きな地震や津波を経験したにも関わらず、あるいはいつか襲ってくるかもしれない大地震の予想にも関わらず、どこかに油断が忍び込んでいます。
 またあれだけの恐怖をもたらした原発事故でもそうです。気がつけば、まるで以前の安全神話が舞い降りていないでしょうか。
 あれだけ節電節電といっていた街はいまは煌々と灯りに溢れています。
 あの時の反省はなんだったのでしょうか。
 本書の中で瀬戸内寂聴さんは「震災や原発の災害を、私たちは一年が過ぎようが二年が過ぎようが、決して風化させてはならない」と語っています。
 あの日を前にして、私たちはもう一度あの日の光景を思い出さないといけないのではないでしょうか。

 忘れるということと風化することは違います。

 本書は作家瀬戸内寂聴さんと京セラ最高顧問の稲盛和夫さんが、震災を経験したあとの日本人をめぐってその生き方を指し示した対談集です。
 ともに高齢者となったお二人ですが、そして人生の達人として生きてこられたお二人でもありますが、どれほど真摯にこの国のことを憂い、被災者のことを心配し、希望をもたらす勇気を真剣に考えていることを示してくれる対談となっています。
 この本を読むことで、私たちは忘れていけないことをまた取り戻せるのです。
 忘れないために、風化させないために。

 悲しみを忘れるということと災害を風化することは違うのです。
  
(2012/02/11 投稿)

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