02/26/2012 さよなら ようちえん(さこ ももみ):書評「ここから始まる」

もう少ししたら、
卒業式シーズンです。
今日紹介するのは、
幼稚園の卒園式を描いた
さこももみさんの『さよなら ようちえん』。
さこももみさんは
1961年生まれの絵本作家です。
さこももみさんは
自身の卒園式のことを覚えています。
えらいな。
私なんか、たぶん、ぼーつとしていたのでしょう、
何にも覚えていません。
さこももみさんは先生の言葉を
覚えていました。
「みんなは初めての小学校に行くだけで、
十分がんばっているんだから」
これって、
幼稚園児だけでなく
この春卒業する大学生にも
使えそうですね。
じゃあ、読もう。
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幼稚園の先生は森本先生だったと思う。クラスは花組。
あの頃から、50年以上も経てば、覚えているのはそんなことぐらい。
あ、そうだ。幼稚園の噴水には落ちたことがあったっけ。あれは夢だろうか。
友だちの名前は誰も覚えていない。一体どんな行事があっただろう。
卒園式は当時もあったはずなのに、ちっとも覚えていない。
娘の幼稚園時代は少し覚えている。
運動会、クリスマスパーティー、卒園式。さすがに娘の友達の名前は覚えていないが、時々はお迎えをしたことはある。
幼稚園はまるで絵本みたいだ。
自分の時代、子供たちの時代、それぞれに出合うものとして、幼稚園は絵本と同じだ。
孫が生まれて、その子が幼稚園に通い出したら、また出合うのかもしれない。そんなことも絵本に似ている。
絵本は人生で三度出合う。
この絵本の「ななこちゃん」はこばとようちえんのたんぽぽぐみ。年長のクラスだ。そこにはたくさんの友だちがいる。
どろだんご名人のゆうきくん。泳ぎの苦手なみゆきちゃん。お調子者のきすけくん。物知りなこのみちゃん。双子のかずやくんとかずまくん。
ななこちゃんが気になるのは、秋に越してきたひろきくん。いつもひとりでいる。
そんなある日、雪の朝、ひろきくんは青いスモックに雪を受けとめて、「ゆきって ひとつひとつ かたちが ちがう」って言った。
雪の結晶は形がすべて違う。
ななこちゃんの友だちがみんな違うように。
それが「個性」だということを、ななこちゃんが知るようになるのは、おそらくもっとずっと先だ。
そして、卒園式。
ななこちゃんも、ななこちゃんの友だちもみんなお別れ。小学生という新しい春へむかって、お別れだ。
ななこちゃんは、50年後にも幼稚園のことを覚えているだろうか。
ひろきくんの雪の結晶の話を覚えているだろうか。
ここから始まる。
(2012/02/26 投稿)

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