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プレゼント 書評こぼれ話

  毎年の2月なら昨日で終わっているはずですが
  今年はうるう年。
  おまけのような一日です。 
  でも、よかったなぁ。
  この日のおかげで
  司馬遼太郎さんの奥さん
  福田みどりさんが書いた
  『司馬さんは夢の中』を
  3冊ともに
  司馬遼太郎さんの菜の花忌のある
  2月に紹介できるのですから。
  特にこの巻では
  司馬遼太郎さんが『梟の城』で直木賞を受賞した当時のことが
  垣間見れるのですから
  うれしくなります。
  あの司馬遼太郎さんが
  当時1LDKのアパートに住んでいたなんて
  信じられます?
  微笑ましいな。
  いかにも司馬遼太郎さんらしいなぁ。
  このシリーズは
  司馬遼太郎さんのファンには
  たまらないものなのでは
  ないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

司馬さんは夢の中 3 (中公文庫)司馬さんは夢の中 3 (中公文庫)
(2012/01/21)
福田 みどり

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sai.wingpen  恋文はなによりも深く              矢印 bk1書評ページへ

 司馬遼太郎さんの『二十一世紀に生きる君たちへ』という、教科書にも載って有名なエッセイがあります。
 その一節、「ただ残念にも、その「未来」という町角には、私はもういない」にずっとこだわりがありました。 この作品が書かれたのは、1989年、司馬さんが66歳の時でした。亡くなる7年前のことです。それなのに、どうして司馬さんは自身が「もういない」などと書いたのか不思議で仕方がありませんでした。
 司馬さんの奥さんである福田みどりさんが書いたこの本を読んで、やっとその謎が解けました。
 みどり夫人はこう書いています。「イツ死ンデモイイ。(中略)ソノ頃ニハ俺ハモウイナイ。etc。そんなことを口走る癖が若い頃からあったけれど…」
 なんだ、そうだったのか。あの文章は司馬さんの口癖だったのか。
 そんなことに気づくのはやはり奥さんでしかありません。

 司馬遼太郎という知の巨人を夫にもったみどり夫人の、この本は、司馬さんを偲ぶ思い出話であり、自身の身辺雑記ですが、3巻めになって、文章がよりこなれてきています。
 その分、思いの丈が十分に伝わってきます。
 なにげなく、もしかしたら作者の巧妙な作為があるかもしれませんがそれ程に文章がこなれてきた証しであるのですが、指し込まれたカタカナ表記の文章に読む側はハッと息をのむ思いがします。
 例えば、「司馬サン、私ニ逢イタイデスカ」という文章。
 前後の文章にこの言葉はつながらないのですが、文章全体にみどり夫人のそんな哀切がにじみでていて、それがカタカナ表記の発露になって書かれています。
 まるで、恋の告白のような。

 みどり夫人は今でも司馬さんを深く、ふかく愛されているのだと思います。
 だから、それが直木賞の受賞の夜の思い出にしろ、小さな露草を愛でる夫の姿にしろ、あるいはまた義姉から聞いた少年時代の姿にしろ、それはどんな小さなことであっても、すべて愛する者へとつながる思い出なのです。愛する人への思いなのです。
 だから、この連続する作品群は、みどり夫人は司馬遼太郎さんに書いた恋文なのです。
  
(2012/02/29 投稿)

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