03/29/2009 表紙はうたう :書評

今回の『表紙はうたう』は絶品というか、毎夜
隣で寝たいくらいに素敵なのです。
(もっとも固い本ですからそういうわけにもいきませんが)
私は「週刊文春」が和田誠さんの表紙画に切り替えた時の
記憶がうっすら残っています。
当時22歳で、すでに和田誠さんは有名なイラストレーターでしたし、
映画の絵とかたくさん書かれていて、
その頃にはもうファンでしたから。
その和田誠さんが週刊誌の表紙を描くということで、
興味深深でした。
といっても、記憶がずっと残っていたわけではなくて、
この本を開いて、そんな記憶がどこからか
浮かびあがってきた感じです。
この『表紙はうたう』という画集には、
和田さんの素敵な短文も掲載されていて、
そのことも書評で紹介したかったのですが、
できずに残念です。
![]() | 表紙はうたう―和田誠・「週刊文春」のカヴァー・イラストレーション (2008/10) 和田 誠 商品詳細を見る |


豪奢な一冊である。
縦30センチ、横22センチ、幅2センチ。手に持つとずっしりと重い。キッチンスケールで計ると、重さは1330グラム。すごい器に盛られた極上の一品だ。
本書は、和田誠による週刊誌「週刊文春」の表紙画を集めた画集である。
収録されている点数は、1558点。何しろ和田が同誌に表紙画を描き始めた1977年5月12日号から2008年9月25日号までの、31年間すべての作品が収められているのだから、これはもういうことはない。ただひたすら読むしかない。
もちろん、これだけの内容であるから、値段もそれなりにお高い。9,950円也。つい値段の話など書くのは書評子の品格が賤しいからと、お許し願いたい。
この値段であっても、たまには珠玉の贅沢な時間を過ごすのもいい。
三ツ星の高級レストランで食事をしたことを思えば、あちらは所詮雲古となって雲散霧消の世界だが、こちらはいつでも、何度でも王様になれる一品である。
少年漫画週刊誌「少年マガジン」「少年サンデー」が今年創刊50周年を迎えるのは大々的なキャンペーンで知っていたが、「週刊文春」もこの春創刊50周年を迎える。これらの週刊誌が誕生したのはいずれも昭和34年(1959年)で、当時「週刊誌ブーム」と呼ばれていた。同じ年には「週刊現代」「朝日ジャーナル」も創刊されている。
「週刊朝日」や「サンデー毎日」といった新聞社系の週刊誌の創刊はこれよりかなり以前昭和初期まで遡るが、出版社系として「週刊新潮」が昭和31年に創刊されている。
昭和34年に「週刊誌ブーム」が起こった理由として考えられるのは、「皇太子成婚式」がその年の4月に行われたことと関係しているのだろう。女性週刊誌もすでにほぼ出揃っていた。
そして、時代が「岩戸景気」といわれる成長期で、庶民が雑多な情報を欲していたといえる。
和田誠が「週刊文春」の表紙画を描き始めた昭和52年(1977年)頃は、当時の「週刊文春」の編集長であった田中健五によれば「週刊誌全体の部数が落ち気味だったし、女優さんの写真を使った表紙が多くて、どれも似てました」(「本の話」11月号所載)という状況だった。
もちろんそれ以前にも「週刊新潮」の谷内六郎の表紙画があるように、どの誌も女優さんばかりではなかったが、この時の「週刊文春」の変更は斬新であり、似顔絵だけではない和田誠の本来の巧さが目をひいた。
和田は本書の「話は31年前にさかのぼる」という文章の中で、描き始めた頃のテーマを「都会のメルヘン」だったと書いている。それに、それぞれの絵のタイトルとして曲の題名を配して、毎号「表紙はうたう」というおしゃれな短文がつく。
こうして、一冊の画集となって見てみると、そのセンスのよさに圧倒される。
都会という魑魅魍魎の世界にもメルヘンが存在するのである。
もう気分はセレブである。
(2009/03/29 投稿)
「週刊朝日」や「サンデー毎日」といった新聞社系の週刊誌の創刊はこれよりかなり以前昭和初期まで遡るが、出版社系として「週刊新潮」が昭和31年に創刊されている。
昭和34年に「週刊誌ブーム」が起こった理由として考えられるのは、「皇太子成婚式」がその年の4月に行われたことと関係しているのだろう。女性週刊誌もすでにほぼ出揃っていた。
そして、時代が「岩戸景気」といわれる成長期で、庶民が雑多な情報を欲していたといえる。
和田誠が「週刊文春」の表紙画を描き始めた昭和52年(1977年)頃は、当時の「週刊文春」の編集長であった田中健五によれば「週刊誌全体の部数が落ち気味だったし、女優さんの写真を使った表紙が多くて、どれも似てました」(「本の話」11月号所載)という状況だった。
もちろんそれ以前にも「週刊新潮」の谷内六郎の表紙画があるように、どの誌も女優さんばかりではなかったが、この時の「週刊文春」の変更は斬新であり、似顔絵だけではない和田誠の本来の巧さが目をひいた。
和田は本書の「話は31年前にさかのぼる」という文章の中で、描き始めた頃のテーマを「都会のメルヘン」だったと書いている。それに、それぞれの絵のタイトルとして曲の題名を配して、毎号「表紙はうたう」というおしゃれな短文がつく。
こうして、一冊の画集となって見てみると、そのセンスのよさに圧倒される。
都会という魑魅魍魎の世界にもメルヘンが存在するのである。
もう気分はセレブである。
(2009/03/29 投稿)
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