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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は「向田邦子全集」の2巻め、
  小説二の『あ・うん』。
  実はこの作品は
  このブログで二回目の登場になります。
  以前朝日新聞重松清さんがナビゲーターをしていた
  「百年読書会」での課題本の一冊になりました。
  その時は文字数が限られていたのですが
  今回はきままに書いてみました。
  
   前回のブログはこちらをどうぞ。

  何度読んでも気持ちのいい作品です。
  どこにも読んでいて嫌だなあと
  感じるところがありません。
  こういう作品は何度でも
  読めますね。
  名作たる所以かな。

  じゃあ、読もう。
  

向田邦子全集〈2〉小説2 あ・うん向田邦子全集〈2〉小説2 あ・うん
(2009/05)
向田 邦子

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sai.wingpen  おとなのおとぎ話                   矢印 bk1書評ページへ

 「向田邦子全集・新版」第二巻めは、向田邦子の唯一の長編小説『あ・うん』。
 支那事変前後の昭和前期の東京を舞台にした物語。暗いながらもまだいくばかりの陽光をとどめている時代背景そのままに、小さな製薬会社に勤める会社員水田仙吉とその妻たみ、一人娘さと子、それに仙吉の「寝台戦友」である門倉修造の、不思議な「四人家族」の人間模様を描いた作品である。

 「四人家族」というのは正確ではない。仙吉の家は父親初太郎がいるが、門倉は別の家の人間だ。しかし、さと子の生まれた時から「影になり日向になっていつも門倉」がいた。だから、「四人家族」。
 その訳は、門倉が仙吉の妻たみにぞっこんだからだ。
 仙吉もそのことを感づいている。二人の間に立つたみもわかっている。
 さと子だって、初太郎だって、あるいは門倉の妻君子だってわかっている。
 全編門倉のたみへの想いに満ちた作品である。
 しかし、門倉もたみも一線を越えることはない。
 だから、この物語は恋愛小説にははいらない。もし、何らかの形でくくるとすれば、それはもうおとぎ話としかいいようがない。

 この物語が面白いのはわき役たちの魅力もある。
 仙吉の父初太郎、門倉の妻君子、だけでなく、門倉の二号禮子、初太郎の腹違いの弟作造、さと子の恋人義彦だって、いい。
 みんながそれぞれの役柄を心得て、みごとに演じている。
 主役たちの前面に出ようとするが、気がつけばすぅっと後ろにひかえている感じがいい。誰もが、この物語は仙吉たち四人の物語と心得ている風なのだ。
 これもおとぎ話だからこそ、といっていい。

 二人の友情など成立しないとかたみの気持ちが不十分だとかということは、この物語には通用しない。
 たみを中心にした仙吉と門倉の関係が存在するとは考えられないからこれはおとぎ話であり、この物語に悪人が登場しないからおとぎ話なのだ。
 つまり、時代が暗くなる前の一時の夢を、向田は描いたとしかいいようがない。
 どんな時代であっても、人を幸福にするおとぎ話という夢を。
  
(2012/05/18 投稿)

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