03/31/2009 涙の理由:書評詩

ここしばらく、個人的に、ちょっときついことがありました。
涙が、ふいに、出てとまらなくなりました。
「なぜ涙を流すのだろう?」
この本『涙の理由』の最初の問いかけは、
私自身の問いでもありました。
悲しいとかつらいとか、そういうことでもない。
よく涙は「浄化」ともいわれますが、
涙を流すことで、心が救われるということはありますが、
そればかりではない。
私は「涙を流す」のは、「心の器」があふれることでは
ないかと思います。
感情の行き場所が涙となってあふれることで、
「心の器」のバランスをとっているのではないか。
そんなことを思っていました。
この『涙の理由』の書評を書くにあたって、
散文で書き始めたのですが、
どうしても書ききることができませんでした。
書かないでおくことも選択としてあるのですが、
どうしても、今、この本のことを書いておきたい、と思いました。
そうして、この書評詩を書きました。
![]() | 涙の理由 (2009/02/07) 重松清茂木健一郎 商品詳細を見る |


この河のはじまりは どうなっているのだろう
ある日 二匹の魚が 不思議に思って 話しました
そうして
二匹で 河の上流に向かって
泳ぎはじめたのです
瀬を越え
急流をのぼり
滝の前では すこうし ためらいましたが
勇気を 出して
大水がでたり
濁流にのまれそうになったり
支流に迷ったり
二匹の魚は
そのたびに
自分たちの旅が 正しいのだろうかと
迷いました
風景が 変わり
光が ほどけ
かわおとは 交響曲を奏でました
河は やがて
一筋の 細い 源流となりました
二匹の魚は 鱗を煌めかせ
水をはね
さらに さらに
のぼりました
ようやくに
二匹の魚は
河の源に たどりつきました
それは 小さな泉でした
この河の たったひとつの 源
この星の あふれる 生命
小さな泉には
ちっぽけな虹が ひとつ
かかっていました
二匹の魚にも
その虹は のびてくるようでも ありました
本書は小説家重松清と脳科学者茂木健一郎が「人はなぜ涙を流すんだろう?」という、素朴だけれど根源的な問題について、三年にわたり、語り合った対談集である。
その答えをここで書くわけにはいかないが、茂木が本書の「おわりに」に書いた「自分にとってはかけがえのない価値」という言葉が印象に残った。
あなた自身があなた自身の「涙の理由」を探すこともまた「かけがえのない価値」になる、そんな一冊といっていいだろう。
(2009/03/31 投稿)
| Home |