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プレゼント 書評こぼれ話

  昨夜映画監督新藤兼人さんの訃報を
  ニュースで知りました。
  たまたま新藤兼人監督の最後の作品
  『一枚のハガキ』を観たばかりだったので
  すぐブログに追悼の記事を書きました。
  それで、
  すぐれた著作も多い新藤兼人監督ですから
  書かれた本も探してみました。
  それで見つけたのが
  この『生きているかぎり - 私の履歴書』です。
  これは日本経済新聞の人気コーナーで
  一ヶ月連載されていたものを
  加筆して出版されていたものです。
  その本を一気に読み上げ、
  書評を書きました。
  実は書評の中に
  新藤兼人監督の最愛の人であった久慈孝子さんのことや
  乙羽信子さんとのことなども書きたかったのですが
  これらの女性もすべて
  母につらなる人たちであったと
  母との挿話のみ書きました。
  これから
  各TVでは新藤兼人監督作品を追悼番組として
  放映されるでしょうから
  これを機会に私もまた
  新藤兼人作品をたどってみたいと思います。

  じゃあ、読もう。

生きているかぎり―私の履歴書生きているかぎり―私の履歴書
(2008/05)
新藤 兼人

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sai.wingpen  追悼・新藤兼人 - 「美しき働き者」を愛した一生                   

 5月29日に100歳で亡くなられた映画監督新藤兼人が、2007年5月に日本経済新聞の人気コーナー「私の履歴書」に掲載したものを大幅加筆され単行本化したのが、本書である。
 加筆部分は主に新藤の作品に関することが多く、新藤映画のファンにとってはうれしいだろう。
 もとより、100歳の人生をいくばくかの挿話で語れるはずもない(この連載を執筆した当時すでに新藤は95歳であった)。それでも、新藤の生涯を俯瞰的に読むとすれば、本書は読みやすいし、新藤が映画に込めた思いもよくわかる。
 新藤の人生を知りたい人にはおすすめの一冊である。

 新藤は母親42歳の時の子供だという。その母を称して、新藤は「美しき働き者」と愛を込めて呼ぶ。
 幼い新藤の目に焼き付いているのは、「たった一人で黙々と何万とある稲株を掘り起こし」ている母の姿だ。そんな母に比べれば、自分の「仕事は小さい」とまでいう。
 この時の母の姿が、苦境に追いやられていた独立プロの息を吹き返すきっかけとなったモスクワ国際映画祭でグランプリを受賞した『裸の島』の乙羽信子のそれにつながったのではないだろうか。
 撒けども撒けども土に吸い込まれていく水。そんな枯れた島のいくばくかの土地を開墾する夫婦の姿を描いた『裸の島』は今見ても傑作だ。
 水さえない島で暮らす夫婦にとって、生きるとはなんであったか。
 新藤はこの本の中で、自分のテーマはただひとつ「人間」であったと書いている。人間という「奥深い不可思議な捉えにくいもの」の前提として、黙々と一人働きつづける母なる女性の姿があったにちがいない。

 新藤にはまた『原爆の子』や『一枚のハガキ』といった反戦にかかわるテーマの作品も多い。
 本書の中にも『一枚のハカキ』の中で描かれた軍隊でのおろかな様子が記されている。すなわち、上官のひいたクジによって兵士の生死が左右されたという事実である。
 しかし、新藤は特に反戦を意識していたのではないように思う。いうなれば、国家や社会、あるいは組織に蹂躙される虐げられた者たちの声を描こうとした結果としてあったような気がする。
 それは、どんな苦境であれ生き続けざるをえない人間を描きつづけた映画人生だったといえる。

 それにしても、「生きているかぎり」映画人でありつづけた、新藤兼人の人生は、見事というしかない。
 ご冥福をお祈りする。
  
(2012/05/31 投稿)

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