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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日いわむらかずおさんの
  『14ひきのおつきみ』という絵本を紹介しましたが
  今日は「」というタイトルのついた
  「百年文庫」の一冊を紹介します。
  秋はやっぱりお月さま。
  きれいですよね、秋の月。
  「百年文庫」は日本の作家だけでなく
  外国の作家の作品も紹介していますが、
  三作とも外国作家というのは
  珍しい。
  この中で、
  プラトーノフの『帰還』というのは
  ロシア文学ですが、
  どうしてロシアの人の名前って
  長いのでしょうね。
  あれが太郎さんとか花子さんだったら
  雰囲気はかなり違うでしょうね。
  当然だけど。

  じゃあ、読もう。
  

(033)月 (百年文庫)(033)月 (百年文庫)
(2010/10/13)
ルナアル、リルケ 他

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sai.wingpen  月のひかりに人生の深みを感じる                   

 四季それぞれに月の魅力はあるが、俳句の世界では「月」は秋の季語だ。 春は「春の月」と詠まないといけないし、冬は「冬の月」としなければならない。単独で「月」と詠んで秋をあらわすのは、秋の月の清浄さが月本来の情緒を醸しだしているからだろう。
 「百年文庫」の33巻めのタイトルは「月」。この季節に読んでおきたい一冊である。
 収録されているのは、ルナアルの『フィリップ一家の家風』、リルケの『老人』、プラトーノフの『帰還』の三篇。
 すべて外国文学だが、「月」という日本の花鳥風月の風土との違和感はない。

 ルナアルはフランスの作家。代表作は『にんじん』。にんじんと呼ばれる少年を描いた、これが代表作。
 ここに収められている『フィリップ一家の家風』は、『にんじん』と同様に田舎の田園に生きる素朴の人たちを描く作品である。
 そっと射しこむ月の光のように、彼らは強く主張はしないが、どっこい、生きている感じが美しい。
 次に、プラトーノフの『帰還』であるが、戦争から帰還した男イワノフに待っていたのは、平和な妻と子どものはずが、妻の不貞の疑惑とやたらと大人ぶった息子の姿という、シニカルな作品。
 イワノフは妻を疑い、ようやく戻った家を出ていこうとする。そんな父のあとを追う、息子とまだ幼い娘。戦争がもたらした家族の不幸。
 最後に家族のもとに戻ろうとするイワノフが月の光なのか。それとも、この家族の姿こそが月のかすかな光なのか。

 この巻でもっとも短い作品ながら、もっとも印象深かったのが、リルケの『老人』だった。訳は、森鷗外。
 リルケといえば青春文学の代表作ともいえる『マルテの手記』を書いた作家であり、詩人でもある。
 この物語の主人公は75歳の一人の老人。彼は「昔の悲しかった事や嬉しかった事」などいろんなことを忘れている。ただ、日というものだけはわかっているようだ。だから、毎朝市の公園の、菩提樹の下のベンチに腰掛けるのを日課にしている。
 そのベンチには、彼よりも年上の老人が二人いつも座っている。彼ら三人の老人のふるまいは普通の人からみると滑稽だ。しかし、誰が彼らのことを笑えるだろう。いつか私たちも彼らのように、老いていく。
 ほんの短い作品ながら、生きることの悲哀と尊厳がにじんでくるような佳作だ。
 
 月のひかりに人生の深みを感じる。
  
(2012/11/05 投稿)

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