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プレゼント 書評こぼれ話

  お待たせしました。
  もちろん、誰かが待っていたとしてですが。
  村上春樹さんの話題作
  『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を
  紹介します。
  さまざまな評価がすでにでているようですが
  私は高評価をつけたいと
  思います。
  今まで世評の高い村上春樹作品に比べ
  薄っぺらい感じがしないわけではありませんが
  いつもいつも濃厚なコーヒーを味わうよりは
  たまにはアメリカンコーヒーであっても
  ちっとも構わないと
  思います。
  薄めのコーヒーもおいしいですよ。
  案外こういう作品から
  村上春樹文学にはいるのも
  いいかもしれませんね。
  それにしても、
  村上春樹さんはうまいですね。
  やっぱり、好きだな。
  
  じゃあ、読もう。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
(2013/04/12)
村上 春樹

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sai.wingpen  たやすく門は開いたとしても                   

 自分とは一体何なのかということは、あるいは自分はどのようにして自分になったかという問いかけでもある。
 それは文学の大きなテーマとしてたくさんの作品で描かれてきた。
 村上春樹の新しい長編小説、けれど村上の作品では比較的短い長編小説だが、でも、そのことは重要なテーマとなっている。
 主人公の多崎つくるは大学生の時にそれまで仲のよかった四人の仲間から突然「追放」される。「追放」には理由などない。一方的に追われるだけだ。もちろん、「追放」された者にとって、理由は必要だ。
 何故、自分は「追放」されたのか。
 つくるは、理由がないゆえに、死の岸のそばまで苦しむことになる。
 あれから、16年という月日が流れ、ようやくつくるは「追放」された理由をたどる旅に出る。

 多分人生は一本の道ではない。
 無数の道があり、その時々で右の道、左の曲がり角を選択してきて、いま、ここ、に在る。自分で選択したこともあるが、せざるをえなかったこともある。
 つくるのように「追放」された者は、別の道を歩くしかない。 
 誰にだってある。あの時、彼女が恋を受けとめてくれていたら、家族すら変わったかもしれない、あんていうこと。
 そんな無数の道。そして、この世界にはもしかしたら別の世界を生きる別の自分が存在するかもしれない。例えば、仲間に「追放」されずにいる多崎つくる。
 あるいは、理由のない「追放」ではなく、別の多崎つくるには「追放」されてしかるべき理由があったかもしれない。
 時に、世界が微妙に歪むことを、誰が否定できるだろう。

 可能性としてゼロではないかもしれないが、もちろん現実はちがう。
 「記憶を隠すことはできても、歴史を変えることはできない」。つくるが女友達沙羅、この物語ではつくると沙羅の恋愛も主要なテーマである、から教えられた言葉だ。
 だから、つくるは変わってしまった理由を訪ねて歩くしかない。

 村上の作品としてはとても読みやすい。
 いつもであれば、いくつもの事柄が捩れとなって大きな幹を作っているが、この作品ではほとんど捩れはない。新たな謎かけはない。
 それでも、別の世界の存在を問いかける、それは今の世界を濃厚に形づくるものだが、この作品の意味は大きい。
 もしかしたら、別の世界ではまだ、村上春樹はジャズ喫茶のオーナーをしていないとは誰も言いきれないではないか。  
  
(2013/05/20 投稿)

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