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  新潮社のHPにこうあります。

   きっと、また会える。
   あの頃、団地は、未来と過去を繋ぐ道だったから。

   ベストセラー『かたみ歌』に続く感涙ホラー。

  なかなか惹きつけられますよね。
  ということで、
  今日紹介するのは
  朱川湊人さんの『なごり歌』。
  感涙となるかどうかは
  読者しだいでしょうか。
  私は正直そこまでいきませんでしたが
  舞台となった昭和40年代が
  懐かしかったですね。
  どうも最近、
  昭和30年代とか40年代のことが
  懐かしくて仕方がありません。
  そんな年なのかなぁ。
  そんな時代を知らない人も
  ここちよい読書の時間を
  過ごせます。

  じゃあ、読もう。

なごり歌なごり歌
(2013/06/28)
朱川 湊人

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sai.wingpen  ゆうらり、そんな時代でした。                   

 この本の前作『かたみ歌』には、「七年越しの恩返し」といわれる美談がある。
 文庫本になってもあまり売れなかったその作品を、担当した編集者が一生懸命知恵を絞ってベストセラーに仕立ててしまいます。文庫本につけられた帯に「涙腺崩壊」などと銘打ったのもその一環です。
 そんな編集者がいて、読んでくれるたくさんの読者がいる。
 作者冥利につきる作品といえます。

 その続編がこの『なごり歌』です。
 続編といっても物語の舞台も登場人物も違います。前作は「アカシア商店街」という下町の古い商店街。この作品は、埼玉と接する東京郊外のマンモス団地、「虹ケ本団地」。
 「アリの巣」と酷評されることもある団地群です。
 時代は前作と同じ昭和40年代。怪奇現象ともいえる不思議なテイストは前作を踏襲しています。
 前作でも本作でもそうですが、過ぎ去った時代の気分が、平成という時代を生きる読者に、少しばかりゆっくりとした時間を与えてくれます。
 この作品の中で、企業戦士として活躍していたものの部下の死によって「速さ」や「高さ」に興味を失った男性がでてきます。
 彼は仕事をやめ、ひたすらゆっくりと飛行する模型飛行機づくりに熱中しています。
 それぞれがさまざまな悩みをもった団地の空に、彼の作った模型飛行機が「ゆうらり」と飛んでいきます。
 朱川湊人が描きたかったのは、そうゆう「ゆうらり」感だったのではないでしょうか。

 ここには7つの短編が収められています。
 それぞれ主人公は違うのですが、それぞれの作品で脇役として描かれた人物が他の作品で重要な役を演じたりしています。
 「バタークリームと三億円」に出てくるマリアという女性は、「そら色のマリア」という作品でタイトルになるほど重要な役で登場しますし、「そら色のマリア」の主人公は冒頭の作品となる「遠くの友だち」でも不思議な魅力を持った青年として出ています。
 団地というのは広いようで狭い。隣人との交わりがないようで、人恋しい。

 核家族や「鍵っ子」と揶揄された時代。少しずつ失くしていったものを、平成の時代になって、この物語は取り返そうとしているかのようです。
 きっと、まだ空の上を、あの模型飛行機が「ゆうらり」と飛んでいるような気がします。
  
(2013/07/25 投稿)

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