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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日吉田修一さんの『さよなら渓谷』という
  小説を紹介しましたが
  今日は性犯罪報道の意味を問う
  硬質なノンフィクション、
  『性犯罪報道』を紹介します。
  読売新聞大阪本社社会部が新聞の連載企画として
  発表したものに加筆されています。
  書評の中にも何度も書きましたが
  吉田修一さんの作品は小説です。
  レイプ事件の加害者と被害者が一緒に
  暮らすということはないでしょう。
  それほど性犯罪の被害者の心理的な負担は大きいと
  いえます。
  女性だけでなく
  男性にも読んでもらいたい一冊です。
  書評のタイトルは
  性犯罪の被害者の女性の言葉から
  引用しましたが、
  その重さをわかってもらえたらと
  思います。

  じゃあ、読もう。

性犯罪報道 (中公文庫)性犯罪報道 (中公文庫)
(2013/06/22)
読売新聞大阪本社社会部

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sai.wingpen  「私の心はあの日、殺されました。」                   

 吉田修一の『さよなら渓谷』は、レイプ事件の加害者と被害者が事件から何年ものち同棲するというショッキングな設定の問題作である。
 もちろんそれは興味本位に書かれてものではないし、物語の核にあるのは「許し」とは何かを問うたものである。
 実際にはレイプ事件の被害者がその加害者と一緒に住むなどということはない。
 吉田の作品でも被害者の女性は仕合せになろうとするたびにレイプされたことが噂になってしまう。そして遂に自身の居場所さえなくしてしまう。
 一方、加害者の男性はこうつぶやく。「あんな事件を起こした俺を、世間は許してくれるんですよ」。
 物語ではこの男性は幸福な結婚の一歩手前までいた。
 そんな二人が偶然にも出会ったことで、物語は加害者と被害者の同棲へと進んでいく。

 くどいようだが、吉田の作品はフィクションである。
 出会った時に被害者の女性から出る言葉、「許して欲しいなら、死んでよ」は物語的にはありえるが、実際に事件に遭われた女性なら、ただ恐怖で言葉さえ出ないだろう。
 自分たちが被害者にも関わらず、息をひそめ生きていっているという現実を忘れてはいけない。
 本書は、「性暴力の深刻な実情を、もっときちんと社会に伝えたい」という、読売新聞大阪本社社会部の企画記事を一冊にまとめたものだ。
 第1章では被害者たちの悲痛な叫びが、第2章では性暴力の背景と加害者の心理や更生が、第3章ではもっとも弱いといわれる子どもに対する深刻な被害が報告されている。
 性犯罪と加害者のその後の処置を海外ではどのように行っているかを第4章で取り上げている。
 そして、最後の第5章で、裁判員裁判となった現在の法廷での性犯罪の捉え方が報告されている。
 本書に書かれたことが現実で、あるいは刑事事件として告発もされていない多くの性犯罪も含めて、被害者の苦悩は深刻だ。
 これは、小説ではない。

 「私の心はあの日、殺されました。時間を戻して、輝いていたはずの私の未来を返してほしい」。
 これは本書で紹介されている被害者女性が裁判所で訴えた言葉だ。
 性犯罪をなくすことと同じように大事なことは、被害者たちへのいたわりと受け入れを私たちが学ぶことだろう。
  
(2013/07/31 投稿)

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