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プレゼント 書評こぼれ話

  東日本大震災はたくさんの悲しみを
  私たちにもたらせましたが、
  その一方で多くの文学作品も
  生み出しました。
  ただ、まだそれらは生まれたばかり。
  完成度という点では
  まだまだこれからでしょう。
  今日紹介する
  長谷川集平さんの『およぐひと』は
  絵本ですが、
  きわめて重要、
  かつ、重い作品だと
  思います。
  完成度も高い。
  もちろん、
  書評のタイトルにもしましたが
  これは「中間報告」です。
  長谷川集平さんが
  今後どんな作品を描くか
  楽しみです。

  じゃあ、読もう。

およぐひと およぐひと
(2013/04/19)
長谷川 集平

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sai.wingpen  絵本作家の「中間報告」                   

 作者らしき背の高い男性。彼が出会った「そのひとは ながれにさからって およいでいた」。
 大きなうねりに、車も家も流れている光景。どこかでみた光景。
 男性は土手を駆けながら「そのひと」に「どうして そんなことを しているのですか」と大声でたずねた。
 「そのひと」はうちに早く帰りたいのだといって、やがて見えなくなった。
 そんな話で始まる、絵本。

 奥付をみる。
 「2013年4月20日 発行」とある。
 やはりそうだ。これは、東日本大震災のあと描かれたものだ。
 詩人が詩を詠み、作家が物語を書くように、絵本作家もあの日とそれにつづく日々を描くしかない。
 絵本作家の心が、ここにはある。

 家に戻ってきた、作者らしき背の高い男性。「あそこで なにが あったの?」と、娘に聞かれる。
 「ぼくがみたのは・・・・といって、言葉をつまらせる。
 絵本作家は、胸の奥にあるものを、言葉にならなかったものを、作品に託したのだ。
 濁流に逆らって「およぐひと」を、小さな子を抱いて「逃げるのです」といった母親を、描くしかなかったのだ。
 きっともっとたくさんのことを絵本作家は目にしただろう。
 それを子どもたちに伝えるには、そして震災から2年という歳月で伝えるには、まだ言葉が生まれないことを、絵本作家は知っている。

 作者らしき背の高い男性は娘を抱きしめながらこういう。
 「まだ ことばに できそうにない。でも、なるべくはやく はなして あげるよ」。
 この絵本にあるのは、絵本作家の正しい心だ。
 そして、東日本大震災に対する私たちの心の「中間報告」だ。
 子どもたちに話す言葉がどんなものになるのかわからないが、おとなたちは自信をもって「あの日」に向き合わないと。

 流れに逆らって泳いでいた「そのひと」は、まだ着くべき家が見つからずに、泳ぎ続けているかもしれない。
  
(2013/08/25 投稿)

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