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プレゼント 書評こぼれ話

  勝間和代さんの『会社に人生を預けるな』という本は、
  とてもうまい書名をつけたものだと感心しています。
  同じ光文社新書で『お金を銀行に預けるな』という作品があるとはいえ、
  雇用情勢が悪化しているこの時期に、
  『会社に人生を預けるな』はうますぎます。
  これなら絶対売れますね。
  『週刊読書人』という新聞があって、
  その4月3日号で、この『会社に人生を預けるな』の特集をしていて、
  勝間和代さんのインタビュー記事が掲載されています。
  その中で、書名について勝間さんはこんなことを話しています。

   本当は「リスク管理入門」みたいな題名が一番近いと思いますね。
   ただ、そんなタイトルにすると、何のことかよくわかりませんし、
   誰も読みたいとは思わないでしょうから。(笑


  そのとおりですね。この書名を見ただけで、
  しかも「勝間本」ということで、
  若い人が飛びつきそうですよね。
   
  
会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)
(2009/03/17)
勝間和代

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sai.wingpen  勝間本・リテラシー              矢印 bk1書評ページへ

 本書は「リスク」について「終身雇用制」という大きなキーワードを核に縷縷論じられているのだが、副題にある「リスク・リテラシー」の後ろ半分の、「リテラシー」という言葉にも「リスク」に劣らない重要な意味がある。
 もともと「リテラシー」(Literacy)というのは、「読み書き能力」という意味だが、他の言葉と組み合わさって「使いこなす能力」というふうに解釈される言葉である。例えば「メディアリテラシー」などはインターネットが普及して、しばしば耳にするようになった言葉だ。
 ちなみに「メディアリテラシー」とは「メディアが発信する大量の情報に対して、その真偽を見抜き、正しい情報を活用する能力」ということになろうか。ここでいう能力とは、この言葉の意味する文脈をみればわかるとおり、情報の受け手である側に求められる能力である。このことはきちんとおさえておく必要がある。
 本書では「呼吸をするようにリスクを計量し、判断する習慣をつけること」(126頁)が「リスク・リテラシー」である、と勝間氏は書いている。「呼吸をするように」という修飾語がいい。それほどに重要で、自然と身につけておかなければならない能力ということだろう。
 では、先の文脈にそえば、「リスク」、すなわち「なんらかの損失の可能性」にさらされている受け手は誰であろうか。例えば、「食品の安全性」についていえば、危険のある食品を口にする「リスク」は消費者側にあるし、それを提供してしまいかねない「リスク」は供給側にある。
 つまり、ここでは提供者である側にも「リスク・リテラシー」が必要であることがわかる。

 そして、この「リテラシー」は「勝間本」を読むにあたっても忘れてはいけない。特に若い人たちにむけて書くのだが、勝間和代氏の本が正しいかどうかは、自身がよく考えた上で判断してもらいたい。
 本書で勝間氏は「終身雇用制」について否定しているが、それを丸抱えするのではなく、自身が勝間氏の提案をどう評価するかということである。(ちなみに私自身は「終身雇用制」を、「成長期」を過ぎた経済活動において、企業側で持ちこたえられない制度だと考えているが、働く側からすれば全否定できない制度だと思っている)
 このように「勝間本」にも「リテラシー」が必要だし、勝間氏がさまざまな著作で書いているのは、実は「リテラシー」をどのように磨くかということでもあることを見落としてはいけないだろう。
  
(2009/05/08 投稿)
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