プレゼント 書評こぼれ話

  先日叔母の法事があって
  久しぶりに
  大阪の実家に帰りました。
  両親ともにすでに亡くなりましたから
  実家には
  兄夫婦が暮らしています。
  母は生前よくこんなことを
  云っていました。
  「親が健在のうちに何度でも帰っておいで。
  親がなくなったら、帰りにくくなるのやから」
  って。
  両親が生きているうちは
  実家は私の生まれ育った家でもあったのですが
  兄夫婦の住む家になると
  やはりそう心やすく帰るということは
  できなくなります。
  今頃になって、
  母の言葉を実感できるのです。
  それでも、
  故郷はやっぱりあったかかったなぁ。
  久しぶりに交わした兄との会話、
  叔父さん叔母さんの元気な顔、
  従姉妹たちのかわらない笑顔。
  みんなみんな懐かしく、
  温かい掌に戻った感じでした。
  今日紹介する
  重松清さんの『みんなのうた』も
  そんな作品です。

  じゃあ、読もう。

みんなのうた (角川文庫)みんなのうた (角川文庫)
(2013/08/24)
重松 清

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sai.wingpen  家族と故郷はよく似ている。                   

 家族と故郷はよく似ている。
 あったかくて、懐かしくて、それでいて、少しわずらわしい。
 三度の東大受験に失敗し、故郷に帰らざるをえなくなったレイコさんの、一年間の故郷での暮らしを描いたこの物語の中で、こんな文章がでてくる。
 「なにをやってもうまくいかない時に帰りたくなるのがふるさとだと思うし、それを黙って迎えてくれるのが、ふるさとかもしれない」。
 この「ふるさと」を「家族」に言い換えてみても、すとんと胸に届く。
 これは、そんな物語だ。

 故郷といってもレイコの場合は、ほとんど過疎に近い田舎。何年かぶりに帰ってみると、祖父の達爺、祖母のキミ婆、父親の隆造、母の珠代、弟のタカツグといった森原家の家族だけでなく、田舎には似合わないカラオケボックスが待っていた。
 どうやら弟のタカツグを故郷にひきとめる策として、できたものらしい。
 客といっても珠代のカラオケ仲間がほとんどで、採算がとれているやらどうやら。
 しかも、帰省途中で高校の同級生だったイネちゃんとその息子とバッタリ出会ってしまう。
 17歳で結婚して21歳でどうやら子連れのバツイチらしいイネちゃん。
 レイコにしてもイネちゃんにしても、故郷はけっして近くはない。

 レイコにはまだ自分の将来が見えていない。
 このまま故郷にとどまるべきか、もう一度大学受験に挑戦し上京するか。
 覚悟ができていない、というが、レイコにはしっかりと定まった思いがない。あっちへぐらぐら、こっちへぐらぐら。
 その点、イネちゃんは腰が据わっている分、明るい。
 レイコはそんなイネちゃんに引きずられながらも、故郷のよさに気づいていく。それは、同時に家族のあったかみに気づくことでもある。

 「家族みんなが顔を揃えとる幸せを、忘れたらいけん。あたりまえのことでも、それがほんまは、ものすごく幸せなことなんじゃいうんを」。
 キミ婆のこんな言葉がレイコの胸に突き刺さる。
 レイコだけではない。読者の胸にどんとくる。
 そして、思うのだ。
 家族はいいなぁ。故郷はいいなぁ。と。
  
(2013/10/09 投稿)

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