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プレゼント 書評こぼれ話

  TBSドラマ「半沢直樹」は終わりましたが、
  私の中の池井戸潤ブームは
  続いていて、
  今回は政治の世界を描いた
  エンターテインメント小説
  『民王』(たみおう)を紹介します。
  企業小説ではない、
  こういう小説を読んでも楽しめるのですから
  池井戸潤さんは
  達者な書き手なんだなぁと
  感心します。
  この作品では徹底的に
  遊んでいるというのが
  よくわかります。
  自身、書いていて
  楽しかったのではないかなぁ。
  こういう物語は
  休みの日に一気に読んでしまうのが
  いいですよ。

  じゃあ、読もう。

民王 (文春文庫)民王 (文春文庫)
(2013/06/07)
池井戸 潤

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sai.wingpen  オレが総理で、総理がオレで                   

 『下町ロケット』で第145回直木賞を受賞(2011年)し、今年テレビドラマ化された「半沢直樹」シリーズで人気急上昇した池井戸潤が2010年に発表した、奇想天外、痛快政治エンターテインメント小説である。
 この当時実際この国の政治はどんな状況であったかというと、2009年8月の衆議院選挙で野党であった民主党が第一党に躍進し、政権は自民党から民主党にとってかわった時代。
 国民の大きな期待が、直前まで短命内閣であった自民党から民主党に移っていた頃。
 あの頃の期待はまたたく間に地に堕ち、再び自民党が政権を奪回するのは2012年。
 この作品が書かれた背景には、大きな政治不信が国民の間で根強かったといえる。

 奇想天外というのは思いもよらない奇抜なことだが、何しろこの小説では総理の意識とその大学生の息子の意識が入れ替わるのであるから、かなり過激だ。
 しかも、その理由は、CIAの機密が漏えいし、人の頭脳を容易に入れ替えるというから、誰も信用しない。
 そこはエンターテインメント小説だから、どんな説明にしろ、起こった事実を否定するのは野暮というもの。
 誰がなんといおうと、総理の頭脳は漢字も満足に読めない大学生の頭脳と入れ替わってしまったのだ。

 総理の意識と入れ替わった息子はしかも就職試験真っ最中。
 なにしろこの息子(意識は総理)は漢字も読めないような大学生なのだが、目指すは銀行や製薬会社など一流どころで、採用担当とのやりとりがまた面白い。
 特に銀行での面接は、さすが池井戸潤だけあって、「半沢直樹」ばりの応答劇が見ものである。
 一方総理(意識は息子)の方も大臣や盟友の官房長官にもスキャンダルが勃発し、政権維持もあわやという局面に。

 けれど、最後は、息子の頭脳と入れ替わったことで政治を目指していた頃の熱情を取り戻す総理ということで、この手の作品の終わり方としては常套である。
 それがけっしてそれがつまらなく思えないところに、この作品が持つ面白さがあるといっていい。
 こんな作品を読むと、以前政権を担っていた時と違って自信に満ちている現総理の頭脳も、もしかしたら誰かのものと入れ替わっているのではと考えてしまうのは、失礼だろうか。
  
(2013/10/19 投稿)

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