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プレゼント 書評こぼれ話

  以前から桜木紫乃さんの
  『ラブレス』はいいよって噂では
  聞いていました。
  直木賞受賞前の作品ですが
  さてどれくらいいいのかと
  新潮文庫の新刊になって
  読みました。
  これがまたすごい。
  それぐらいいい長編小説です。
  後半になるにしたがって
  どんどん良くなってくる。
  実は2014年の正月三が日は
  この『ラブレス』の読書真っ最中だったのです。
  それにしても
  桜木紫乃さんって
  すごい作家ですよね。
  今年もしっかりマークしなくては。
  あわせて
  これまでの桜木紫乃さんの作品も
  読んでみなくては。
  今頃何いってるのという
  冷たい視線覚悟で。

  じゃあ、読もう。

ラブレス (新潮文庫)ラブレス (新潮文庫)
(2013/11/28)
桜木 紫乃

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sai.wingpen  この作品で直木賞がとれなかったのが不思議なくらい                   

 第146回直木賞候補作。(2012年)
 そのあと、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞した桜木紫乃にとってはそれはもうどうでもいいことかもしれない。
 この作品は直木賞こそ受賞しなかったものの、島清恋愛文学賞などいくつかの賞を受賞している。
 しかし、北海道の貧しい開拓地に生まれ、幼くして男性に犯され、この地を訪れた旅芸人一座に身を投じ、流転の人生を生きた女性の一生を見事に描いたこの力作長編が何故直木賞を受賞しなかったのか、不思議な気がする。
 ちなみにこの回の受賞作が葉室麟の『蜩ノ記』だったとはいえ、桜木のこの作品は十分に直木賞の力量をもっていたと思えるほど、骨格の太い作品に仕上げっている。

 この時の「選評」で宮部みゆき委員が「どうして受賞に届かなかったのか、振り返って考えてみると不思議で仕方ありません」と書いているように、それと同じような選評を他の委員も書いていて、「完全にやられ」てしまう巧さが随所にある。
 なんといってもこれだけの長編を読ませる力は並大抵ではない。
 物語は百合江という女性を核にしながらも、その母ハギの貧しくけっして幸福とはいえない一生も、自分の誕生日と同じ日に亡くなったという姉の綾子の人生を謎解きのように感じる百合江の娘理恵につながる女三代の人生は「みな同じように脱皮を繰り返し、螺旋階段を上るように生きて」いったものだ。
 百合江の妹の里実は家の貧しさ暗さを力ずくではがすようにして美容師の資格をとり、世間的にいえば裕福な生活を得ているものも、夫が別の女に生ませた小夜子を育てざるをえない運命をもひきずっている。
 百合江と里実の一生はまるで左右対称のように違う。どちらが幸福でどちらが不幸など、誰もいえはしない。

 死の床にある百合江に「ユッコちゃん、だいすきよ」と囁く男など里実にはいない。だから、その姿を見て、里実は「床にへたり込んだ」ともいえる。
 しかし、それはあまりにもきれいごとすぎるとも思う自分もいる。
 できるなら、生きている間にそう囁いて抱きしめてあげるべきだ。
 いや、そんなことすら気にすべきではない。これは百合江の人生だ。
 読者は少なくともこの長い小説で百合江の悲しみも喜びも、愛の苦しみもともにしてきたのだから。
 この作品で直木賞は受賞しなかったが、まぎれもなく桜木紫乃の代表作になりうる作品だ。
  
(2014/01/10 投稿)

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