02/12/2014 日本人へ 危機からの脱出篇 (塩野 七生):書評「あの時を振り返る」

毎月11日に
東日本大震災関係の本の書評を
書き続けているのには
理由があります。
被災地への支援を自分なりにできることということで
関連書の本を紹介すること。
もうひとつは
あの時のことを忘れないために。
人間ですから
忘れてしまうのは仕方がないと思います。
けれど、すっかり無いものにしてしまうのは
やはりいけないと思うのです。
そのためにも
思い出す仕掛けをもたないといけない。
それが11日の書評なのです。
今日紹介する
塩野七生さんの『日本人へ 危機からの脱出篇』は
「文藝春秋」に連載ものを
まとめたものですが、
ちょうど東日本大震災があった時期のものです。
あの時に
多くの日本人が考えたことは
何だったかを思い出す
ひとつの手だてにも
なると思います。
じゃあ、読もう。
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総合誌「文藝春秋」の巻頭随筆で好評連載の、塩野七生の「日本人へ」の、2010年5月から2013年10月までに発表された作品をまとめたものである。
副題に「危機から脱出篇」とあるように、2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故という未曾有の危機がこの期間に発生している。
さらには国民の大いなる期待を受けて自民党から政権を奪った民主党だが、そのあまりに稚拙な政治力で未熟な面ばかりが露呈した政治の世界でも、自民党の復活と安倍総理の再登場による景気上昇があった期間でもある。
つまり、この三年間は、この国の歴史にあっても、重要な時間であったといえる。
その時、塩野七生は何を見、何を語ったのか。
それはイタリアという遠い外国の地から見えてくる、日本の姿ともいえる。
東日本大震災の際に書いた文章につけられたタイトルは。「今こそ意地を見せるとき」とある。
その中で塩野はこうな文章を書いている。「人間は、不幸なときこそ真価が問われるのだし、予期していなかった事態にどう対処するかに、その人の気概が表われるのだ」と。
あの時この国のリーダーは何を発言し、どう行動し、そして何をしてこなかったか。塩野のいう「気概」があったのかどうか。
あれから3年が経とうという今、それはもっと検証されていいような気がする。
この国の首相がやたらと代わる現象については、この連載があった3年間で何人の首相がいたのか数えるのも億劫になる、「中心軸を欠いてしまった組織は機能不全におち入る」と明解だ。
この本をよく読むと、これだけでなくリーダーとは何かという問題について、塩野はたくさんのメッセージを残している。
例えば、カエサルの言葉として「地位が上がり権威や権力を持てば持つほど、その人には自由が制限される」というのが紹介されているが、これなどは多くの経営者が身をもって自覚してもらいたいことだ。
あるいは、「考えのちがう人や疑っている人を説得してこそ、説得も「力」になる」などは、リーダーにも必要なスキルといえる。
危機の3年間から、果たして私たちは脱出できたのであろうか。
その答えは、まだ出ていない。
(2014/02/12 投稿)

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