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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日紹介した
  第150回直木賞受賞作
  姫野カオルコさんの『昭和の犬』につづいて
  今日は
  第150回芥川賞受賞作
  小山田浩子さんの『』を
  紹介します。
  書評にも書きましたが
  この題名、
  私はあまり好きではありません。
  もう少し考えた方がよかったのではと
  思っています。
  内容は満足です。
  文章の巧さが光っています。
  150回という節目ということもあって
  各選考委員の選評にも
  力がはいっていたのは印象的です。
  宮本輝委員は
  「選考にたずさわる多くの人々が真摯に
   作品と向き合って、この数十年間の日本の
   文学を担ってきたことは
   間違いのない事実なのだ

  と、書いています。
  これをきっかけに
  さらなる新しい書き手が
  登場することを
  願っています。

  じゃあ、読もう。

穴
(2014/01/24)
小山田 浩子

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sai.wingpen  正統な芥川賞作家                   

 第150回芥川賞受賞作。(2014年)
 第150回という節目になっただけに、各選考委員の選評も格調のあるものが揃った。
 中でも村上龍委員の「第150回という大きな節目に、そのような正統な意思を持った作家が受賞したことは、芥川賞にとって、幸運なことだった」という言葉が印象に残った。
 村上委員のいう「正統な意思」というのは、作品名であり、作中でも何やら印象的に出てくる「穴」の意味を明らかにしないという意思、それが「現代を描く作家として、正統」ということを指す。
 もし石原慎太郎が選考委員を退任していなければ、この題名を良しとしたかどうか。
 作品の出来とは別に、やはりこの題名はよくない。村上委員のいうような、「正統な意思」を感じるまでには至らない。もっとも、好みといえば好みの世界だが。

 夫の転勤を機に夫の実家の隣の貸家に入居することになった主人公のあさひ。それまで働いていた非正規の職場もやめ、専業主婦の生活が始める。
 食事の最中でも携帯電話を手離さない夫(この夫が一番怖い、と看破した山田詠美委員の視点はさすが)、明るく元気な姑、ほとんど姿を見せない舅、どうやら認知症が進んでいそうな祖義父。
 夫と二人だけの生活からコンビニに行くにもかなりの距離を歩くことになる生活圏で、あさひはあらたな人間関係にもとまどう。
 そして、出合う、不思議な動物と「穴」、夫の兄だと名乗る男。
 あさひが見ているものは、暑い夏の陽炎であろうか。
 それでも、真実だろうか。

 奇妙な非日常が描かれながら、あまりにもあたりまえの日常がしっかりと描かれているから、非連続性は感じない。
 物語に破綻がない。
 川上弘美選考委員は「文章が、よかった。言葉が、大切に使われていた」と強く推しているが、この作品の良さはまさに文章の巧さに尽きる。
 それは、村上龍のいうところの「正統な意思」という言葉にも通じるような気がする。
 芥川賞が一つの文学賞であるだけでなく、その時代時代において意味をもってきたとすれな、そういう文章の正しさがあればこそだったようにも思えるのだ。
 まさに、小山田浩子は「正統な芥川賞作家」といっていい。
  
(2014/02/20 投稿)

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