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プレゼント 書評こぼれ話

  最近花房観音さんの
  官能小説を意識的に読んでいる。
  今日紹介する
  『萌えいづる』も花房観音さんの作品。
  R-15かな。
  ただ、この本は
  実業之日本社文庫の一冊なんですが
  裏表紙にあるミニ解説文では

    古都を舞台に抒情豊かに描く、
    感動の官能小説。

  とあって、
  「感動」という言葉と
  「官能」という言葉の
  絶妙なバランスに
  こちらも感動しています。
  花房観音さんの魅力は
  情愛場面も
  うまいこと。
  これからも
  しっかり読んでいきます。

  じゃあ、読もう。

萌えいづる (実業之日本社文庫)萌えいづる (実業之日本社文庫)
(2013/08/06)
花房 観音

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sai.wingpen  男たちが知らない世界                   

 官能小説だからといって、情愛場面だけがあるのではない。
 むしろ、その場面にいたる物語の組み立て、キャラクターの創造が重要になってくる。
 一時の快楽に読み捨てられるのか、再読に耐えうるのか。
 2010年に『花祀り』で第一回団鬼六賞を受賞した花房観音は官能小説としては王道ではないかもしれない、再読に耐えうる官能小説をめざして歩み続けている作家の一人である。

 この連作集でも、得意とする京都を舞台に、さらには「平家物語」に登場する女性をめぐるさまざまな愛憎劇を契機として作品を紡いでいく手腕は、今までの官能小説家にはなかったものだといえる。
 また京都が舞台か、と思われる読者もいようが、京都にはまだまだ官能が秘されているらしい。
 ここには5つの物語がある。
 結婚前に交際していた相手との性が忘れられない人妻を描いた「そこびえ」。司法試験に何度も落ちながら甘えてくる足フェチの男をあきらめきれない女を描く「滝口入道」。
 「想夫恋」は夫とのセックスレスを当然のように思っていた妻に突然迫られる離婚宣告、そんな彼女が求めた何年かぶりの夫婦の性愛を描いて、切なくもある、
 今は亡きかつて愛した男性をうばった女性と過ごす女性同士の密やかな時間を描いた表題作「萌えいづる」は、亡くなった男との性愛の様子をたどるそれは、官能の果てなきものをよく書き切った作品だ。
 そして、最終話「忘れな草」では、幼き子を亡くしたせいで夫と離婚をしたもののいまだ性の関係を続ける女性が訪ねる、かつて平清盛の娘徳子が出家したと伝えられる長楽寺におかれた「忘れな草」というノートに綴られた、女たちの悲しみ、怨み、嘆きの数々が、これらの物語を束ねるようにして置かれている。

 官能とは身も心もここにない心持をさすのであろうか。
 表題作「萌えいづる」に漂う死の感覚は、女性だけが感知しえる世界なのかもしれない。
 もしかすると、男はその世界を知らないがゆえに、官能の世界をのぞきこんでいるのではないだろうか。
  
(2014/02/25 投稿)

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