02/27/2014 火の鳥 (9) (角川文庫)(手塚 治虫):書評「彼らが犯した罪」

今日は手塚治虫さんの
「火の鳥」シリーズの
第9巻めの『宇宙・生命編』を
紹介します。
書評にも書きましたが
「宇宙編」は1969年に
「COM」で発表されたもので
手塚治虫さんの
並々ならない熱意を感じます。
それは「COM」という雑誌の
新しい取り組みの
ひとつの形だったのだと
思います。
手塚治虫さんにとって
「COM」という雑誌は
重要な意味をもっていたのでしょう。
「生命編」には
ジュネという少女が描かれていますが
どうも手塚治虫さんの描く
少女のイメージとは
違います。
もしかして、誰か違う人の手による
作画かもしれませんね。
どうかな。
じゃあ、読もう。
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「角川文庫版」の「火の鳥」9巻めは、「宇宙編」と「生命編」の2編が収められている。
ともに、未来の話である。
「宇宙編」は1969年に雑誌「COM」に連載されたもの。「生命編」はそれから11年後の1980年に雑誌「マンガ少年」に発表されている。
作品の出来としては「宇宙編」の方がいい。
1969年当時、手塚治虫の頭の中にはマグマのような捉えどころのない、けれど熱い命の課題が、ぐつぐつと煮えたぎっていたのではないだろうか。
「宇宙編」は、2577年オリオン座の付近にいる宇宙船から始める。
宇宙船には5人の乗組員がいたが、惑星との衝突で冷凍冬眠から目覚めた4人は当番であった牧村の無惨にも変わり果てた姿を目にする。牧村は何者かに殺されたのか。
脱出カプセルで別々に宇宙船をあとにする4人。交流は電波のみ。このあたりの大胆なコマ割りが、手塚のこの漫画に対する熱意を感じる。
手塚は「火の鳥」シリーズでさまざまな技法を実験している。
「火の鳥」の素晴らしさはそんなところにある。
やがて、判明していく牧村の真実。
生き残った猿田(「火の鳥」シリーズで重要な役どころとなるキャラクター)と女性乗組員ナナ。
二人の前に現れるのは、鳥の姿をした宇宙人。これが「火の鳥」の正体なのか。
もう一編の「生命編」は、2155年の地球が舞台。
クローン人間狩りで視聴率をあげようとするTVプロデューサーの青居。しかし、その原種となってしまった青居は、自身のクローン人間とともに人間狩りの対象となってしまう。
懸命に生きようとする青居と彼と出会い行動をともにすることになる少女ジュネ。
そして、ジュネが知ることになる青居が犯したまちがい。
「宇宙編」の牧村も「生命編」の青居も、いのちを蔑にした報いとして、牧村は永遠に死なない苦悩を、青居は死ぬまでハンターから狙われる恐怖を味わいことになる。
ふたつの作品はまったくちがうものだが、根幹にはいのちの尊さがある。
そして、それは「火の鳥」全体の大きなテーマだ。
(2014/02/27 投稿)

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