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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は井上ひさしさんの
  『せりふ集』を紹介します。
  井上ひさしさんが亡くなったのは2010年。
  もう4年経ちます。
  それでもこうして新しい本が
  出版されるのですから
  すごいですね。
  井上ひさしさんといえば
  劇作家としても
  たくさんの作品を残しています。
  この本は
  そんな戯曲の中から
  これは、という言葉を
  集めた本です。
  書評の中ではあまり紹介できなかったので
  ここで二つばかり
  書きとめておきます。

   人の心と言葉、これはそうやすやすとは変わりませんよ。  「黙阿弥オペラ」

   みんな人間よ 同じ人間 怖がってはだめ 見下してもだめ 「箱根強羅ホテル」

  どうですか。
  もちろんこれ以外にも
  いいせりふがたくさんあって
  井上ひさしさんらしいと
  思いました。

  じゃあ、読もう。

井上ひさし「せりふ」集井上ひさし「せりふ」集
(2013/11/29)
井上 ひさし

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sai.wingpen  美しい日本語                   

 「科白」と「台詞」の違いはなんだろう、同じ「せりふ」という読みだが。
 「科白」の「科」には役者の仕草という意味があるらしく、一方の「台詞」には舞台上でいう言葉ということらしい。
 、井上ひさしの戯曲から感銘の深い107の「せりふ」を取り出したこの本は「台詞」集といっていいが、ひらがな表記の方が何かと無難だろう。
 そもそも「せりふ」というのは、役者の声質や息遣い、あるいは「せりふ」の端々にはいる動作の音や舞台をどんと蹴りあげる音など、劇の中ではさまざまな表情を見せるものだ。
 試しに、この本からお気に入りの「せりふ」を声に出して読んでみるといい。
 高音低音、裏返し、しわがれ、きっと感じが違うはずだ。
 だからいえる。「せりふ」は生きている。と。

 2010年に亡くなった井上ひさしを語る時、小説家井上ひさしよりも劇作家井上ひさしの方が多いくらいだ。
 井上ひさしが座付作者となった「こまつ座」を立ち上げたのは、1983年のことだ。
 この本は「こまつ座設立30周年」を記念して編まれたものといっていい。巻頭に現在の代表である三女の麻矢さんが「まえがき」を寄せている。
 その中で麻矢さんは「一つ一つの作家の言葉の持つ力と芳醇さに魅せられながら、これからもこまつ座は星屑のようなキラキラした、作家の残した言葉を多くの人に届けたい」と、決意を語っている。

 この本に収められた107の「せりふ」は、言葉に厳しかった井上ひさしの努力の結晶ともいえる。
 おそらく削りに削って「普通の言葉」に仕上げたものが、ここにあります。
 井上ひさしは「美しい日本語というのは普通の言葉でいいんです」といっている。きれいな日本語にこだわるあまり、 修飾語が多くなったりまわりくどくなったりすることを、嫌った。
 だから、この本の「せりふ」たちは、きわめてわかりやすい日本語だといえる。

 この本に収録されている「せりふ」で、頁を繰る手がふとたちどまった「せりふ」を最後に書きとめておく。
 「希望ということばを作りだしてしまった以上、たとえ不幸になろうが、希望を持つことがひとのつとめなの。」(『貧乏物語』より)
  
(2014/03/07 投稿)

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