03/07/2014 井上ひさし「せりふ」集(井上 ひさし):書評「美しい日本語」

今日は井上ひさしさんの
『せりふ集』を紹介します。
井上ひさしさんが亡くなったのは2010年。
もう4年経ちます。
それでもこうして新しい本が
出版されるのですから
すごいですね。
井上ひさしさんといえば
劇作家としても
たくさんの作品を残しています。
この本は
そんな戯曲の中から
これは、という言葉を
集めた本です。
書評の中ではあまり紹介できなかったので
ここで二つばかり
書きとめておきます。
人の心と言葉、これはそうやすやすとは変わりませんよ。 「黙阿弥オペラ」
みんな人間よ 同じ人間 怖がってはだめ 見下してもだめ 「箱根強羅ホテル」
どうですか。
もちろんこれ以外にも
いいせりふがたくさんあって
井上ひさしさんらしいと
思いました。
じゃあ、読もう。
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「科白」と「台詞」の違いはなんだろう、同じ「せりふ」という読みだが。
「科白」の「科」には役者の仕草という意味があるらしく、一方の「台詞」には舞台上でいう言葉ということらしい。
、井上ひさしの戯曲から感銘の深い107の「せりふ」を取り出したこの本は「台詞」集といっていいが、ひらがな表記の方が何かと無難だろう。
そもそも「せりふ」というのは、役者の声質や息遣い、あるいは「せりふ」の端々にはいる動作の音や舞台をどんと蹴りあげる音など、劇の中ではさまざまな表情を見せるものだ。
試しに、この本からお気に入りの「せりふ」を声に出して読んでみるといい。
高音低音、裏返し、しわがれ、きっと感じが違うはずだ。
だからいえる。「せりふ」は生きている。と。
2010年に亡くなった井上ひさしを語る時、小説家井上ひさしよりも劇作家井上ひさしの方が多いくらいだ。
井上ひさしが座付作者となった「こまつ座」を立ち上げたのは、1983年のことだ。
この本は「こまつ座設立30周年」を記念して編まれたものといっていい。巻頭に現在の代表である三女の麻矢さんが「まえがき」を寄せている。
その中で麻矢さんは「一つ一つの作家の言葉の持つ力と芳醇さに魅せられながら、これからもこまつ座は星屑のようなキラキラした、作家の残した言葉を多くの人に届けたい」と、決意を語っている。
この本に収められた107の「せりふ」は、言葉に厳しかった井上ひさしの努力の結晶ともいえる。
おそらく削りに削って「普通の言葉」に仕上げたものが、ここにあります。
井上ひさしは「美しい日本語というのは普通の言葉でいいんです」といっている。きれいな日本語にこだわるあまり、 修飾語が多くなったりまわりくどくなったりすることを、嫌った。
だから、この本の「せりふ」たちは、きわめてわかりやすい日本語だといえる。
この本に収録されている「せりふ」で、頁を繰る手がふとたちどまった「せりふ」を最後に書きとめておく。
「希望ということばを作りだしてしまった以上、たとえ不幸になろうが、希望を持つことがひとのつとめなの。」(『貧乏物語』より)
(2014/03/07 投稿)

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