03/26/2014 よるのふくらみ(窪 美澄):書評「「夜の膨らみ」では伝わらない」

今日紹介する『よるのふくらみ』は
窪美澄さんの新しい作品。
窪美澄さんは
もしかしたら今一番直木賞に近い作家かも。
この長編小説でもそうですが
巧さを感じます。
もともとが『ミクマリ』でR-18文学賞大賞を受賞したので
少し官能派だと
見られてるかもしれませんが
最近の作品は
女性ならではの柔らかなものが
多いですね。
私にとって
今期待の作家です。
そういえば
花房観音さんとか桜木紫乃さんとか
うまく官能を描く女性作家さんが
多いですよね。
この分野では
男性作家の方が晩生(おくて)かも。
じゃあ、読もう。
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いい映画は最初のワンシーンからちがうと、よくいわれる。
いい小説も、そのかもしれない。
『ふがいない僕は空を見た』でブレークした窪美澄のこの長編小説もそうだ。
まず、タイトルがいい。「よるのふくらみ」と、ひらがなで表記されることで、作品のもつ雰囲気が伝わってくる。
最初は、「なすすべもない」という章で、ここでもひらがなが使われている。
窪は『ふがいない僕は…』でもそうだが、ひらがなの使い方がうまい。
最初の「なすすべもない」の書き出しもいい。
「生理が毎月来たって排卵しているかどうかわからないんだよ」。
こういう文章は、男ではなかなか書けないかもしれない。
女性だから感じるところも、見る視点もちがう。
窪に女性読者が多くいるのも頷ける。
この作品は、寂れかけた小さな商店街が舞台となっている。そこでともに大きくなった29歳のみひろ。かつて、みひろの母親が男と失踪して商店街の大人だけでなく、子どもにも蔑まれたことのあるみひろだったが、苛められていた彼女を助けたのが、同じ商店街で育った圭祐だった。
その圭祐とみひろが同棲を始めて2年が経つ。しかし、いつの間にか、二人の間にはセックスもなくなって、みひろの心に空洞ができていく。
思わず駆け込んだ先が圭祐の弟で、みひろと同級の裕太のアパート。「お願い。して」。みひろの言葉の、なんと重いことか。
この三人の関係が、6つの章で人称を変え、最初の「なすすべもない」ではみひろ、次の章では裕太、その次は圭祐といったように、つなげられていく。
恋愛からつながる結婚という関係がこの作品では重いテーマになっている。
「婚活」といった言葉が日常語として話される現在、「見知らぬ二人が生活を共にしようと心を決めることは、なんて怖いもの知らずで無鉄砲なことなんだろう」と書く窪の視点はするどい。
みひろたち三人が選んだ結論がどうだったかは作品を読んでもらうしかないが、「なんでも言葉にして伝えないと」「幸せが逃げてしまう」という苦味を、もしかしたら三人が三人ともに味わったのかもしれない。
(2014/03/26 投稿)

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