03/27/2014 火の鳥 (10) (角川文庫)(手塚 治虫):書評「シリーズ最長にして最後の作品」

手塚治虫さんの「火の鳥」シリーズを
角川文庫版でずっと読み継いでいるのですが
いよいよ、
シリーズ最後の作品となった
「太陽編」の登場です。
この作品は角川文庫版で
10巻と11巻、それに12巻に分かれています。
つまりは大長編なのです。
今日から3日間、
その長編作品を取り上げます。
まず、今日は
10巻めの「太陽編(上)」です。
私の手元には
手塚治虫さんを特集した雑誌や
展覧会でのカタログなどがありますから
そういったものを駆使して
書きました。
漫画の書評は
結構難しいですね。
さらに、この作品のように
分冊のものだと
どのように書くべきか
頭を悩ませました。
じゃあ、読もう。
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手塚治虫は『ぼくのマンガ人生』という著作の中で、「火の鳥」についてこう書いている。
「マンガでできるかどうかわからないけれど、生命というものを追求してみようということで描きだしたものです」。
「マンガでできるかどうか」という言葉に裏に、だからこそ描きたいのだという手塚の強い意思がうかがえる。
そして、この「火の鳥」は他の作品以上に手塚のライフワークとして高い評価と人気を集めた作品となった。
初めて「火の鳥」を描いたのは、1954年の「漫画少年」という雑誌だった。
そして、この角川文庫版で10巻11巻12巻と3巻にわたって収められている、シリーズでも最も長く、最後の作品である「太陽編」は、1986年から1988年にかけて「野性時代」に連載された。
手塚が亡くなったのは昭和から平成にあらたまった1989年2月9日であるから、まさに手塚の漫画人生とともに「火の鳥」はあったといえる。
この「太陽編」は複雑な構造でできあがっている。
発表誌が「野性時代」ということもあったのであろう、大人を意識した内容ともいえる。
大人とか子どもという区切りは、漫画文化にとって重要な側面を持っている。
手塚治虫は後期さまざまな大人向けの作品を描いている。その中には高い評価を得た『アドルフに告ぐ』といったような作品もある。
けれど、手塚治虫は子ども漫画の手塚であったと思う。そこに手塚治虫という漫画家の苦悩があったのではないだろうか。
それは、この「火の鳥」でも同じだ。
初期の「聡明編」や「未来編」の平易さはある面漫画の魅力を十分に伝えきっている。
ところが、この「太陽編」は複雑な構造になったばかりに、手塚が伝えたかったものがわかりにくい。
舞台は日本に仏教が伝わってきた頃の6世紀の頃。
百済国の若者ハリマが唐群に捕えられ、狼の顔を自身の顔に被せられるところから始まる。
狼の顔をした若者は倭の国に渡り、そこで仏教に追いやられていく原始の神々の苦境を知ることになる。
ハリマを助ける狗族の娘マリモ。時折、ハリマの意識に入り込む現代風の若者の姿。
物語は、始まったばかりだ。「太陽編(中)」へ続く。
(2014/03/27 投稿)

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