03/28/2014 火の鳥 (11) (角川文庫)(手塚 治虫):書評「「太陽編」に描かれる二つの世界」

今日は、昨日のつづき。
手塚治虫さんの「火の鳥」
角川文庫版の
11巻めにあたる「太陽編(中)」を
紹介します。
この作品が
角川書店の「野性時代」という雑誌に
掲載されていたのは
昨日の書評にも書きましたが、
私は知りませんでした。
「野性時代」が創刊されたのは
1974年で
B5判の大きな雑誌でした。
当時角川書店は
映画とかのタイアップ企画が大成功して
何かと話題のある雑誌だった印象が
あります。
私が19歳の頃です。
この雑誌はその後紆余曲折があって
今は「小説野性時代」として
残っているようです。
今日は、まったく余談でしたね。
明日は「太陽編(下)」を
紹介します。
じゃあ、読もう。
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角川文庫版で10巻めにあたる「太陽編(上)」の書評の中で、「この「太陽編」は複雑な構造でできあがっている」と書いた。
そして、狼の顔をつけられた若者ハリマの意識の中に「入り込む現代風の若者の姿」とも書いた。
「火の鳥」シリーズで最も長い作品となった「太陽編」の舞台は、日本に仏教伝来があった6世紀だけでなく、2001年の未来(この「太陽編」が雑誌「野性時代」に連載されたのが1986年だから、それほど遠い未来ではない)もまたそうだ。
さらには、角川文庫版の3巻めに収録されている「異形編」とつながる描写もあったりする。
ここでは、「太陽編」のもうひとつの舞台である2001年の未来? の物語について書いておく。
不思議なのは、1986年当時の手塚が2001年というまもなく訪れる未来を、火の鳥を崇拝する宗教に支配され、それを良しとしない人々を地下に追いやるという暗い世界として想像したことだ。
1986年であれば、当時の科学水準がどのようなものかは手塚もわかっていたはずだ。
1951年に「アトム大使」を描いたのとは状況がちがう。
けれど、手塚は2001年の日本の未来を宗教によって二分される世界として描いた。
これは推測だが、手塚は時代設定を誤ったのではないか。
先を急ごう。
そんな2001年、地下の組織「影」から一人の少年スグルが地上の「光」一族がご神体と崇める「火の鳥」の正体をあばこうと地上に向かう。
「火の鳥」は1999年に惑星探査船の搭乗員であった大友が宇宙で遭遇し、捕獲したのだという。
しかし、スグルが手にしたのは「火の鳥」の模型だった。
「火の鳥」は本当に存在するのか。
不老不死は本当にあるのか。
「光」の手に落ちたスグルに待ち受けていたのは、洗脳という仕置き。しかも、そこでは狼の面を被せられる。
スグルの意識に入り込んでくる、狼の顔をした若者ハリマ。
6世紀のハリマの世界で、仏教と狗族をはじめとした産土神との闘いが繰り広げられていた。
物語の、さらに「太陽編(下)」と続く。
(2014/03/28 投稿)

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