05/27/2009 サンデーとマガジン:書評

今回紹介しました大野茂さんの『サンデーとマガジン』は、
副題に「創刊と死闘の15年」とあるように、
1959年3月17日に同時創刊された2誌の、
創刊準備からの2誌のエピソードが満載の一冊です。
漫画家大好きな人だけでなく、結構経営的な観点からも
楽しめるのではないでしょうか。
私は『少年サンデー』と『少年マガジン』のどちら派であったかというと、
両紙の間を結構行ったりきたりしています。
私が週刊少年誌に最初に遭遇したのは、
表紙のとれた『少年マガジン』であったのは、
石森章太郎さんの『怪傑ハリマオ』を記憶していますから、
よく覚えています。
小学生の頃は、『少年サンデー』でしたね。
赤塚不二夫さんの『おそ松くん』とか横山光輝さんの『伊賀の影丸』。
中学時代からは『少年マガジン』。
もちろん『巨人の星』『あしたのジョー』『愛と誠』と続く、
梶原一騎世代。
そのあとは、やっぱり『少年ジャンプ』や『少年チャンピオン』に
はまっていきます。
なんだか、時代にともに生きてますね。
今回の書評で紹介しています、
滝田誠一郎さんの『ビッグコミック創刊物語』の書評も書いていますので、
こちらもあわせてどうぞお楽しみ下さい。
![]() | サンデーとマガジン (光文社新書) (2009/04/17) 大野茂 商品詳細を見る |


この五月にNHKで「ザ・ライバル」という特番が放映されました。
再現ドラマとドキュメンタリーを取り合わせたこの番組の冒頭、「ライバルとは、好敵手でもあり、同志でもある」といった字幕が出ます。今年、ともに創刊50周年を迎えた週刊少年誌、『少年サンデー』(小学館)と『少年マガジン』(講談社)を記念して作られた番組ですが、創刊(実際にはその準備期間も含めて)から半世紀にわたり「ライバル」であり続けた二誌への、それは勲章みたいな一文でした。 この番組が本書刊行のきっかけでもあります。
同番組では「製作統括」であった著者の大野茂氏ですが、本書の「はじめに」で氏はこの本のことを「番組取材での知見を出発点としてはいるが、(中略)大幅に独自の調査とインタビューを加えて構成」し、「番組で扱った要素が占める割合は2割程度で、8割方はオンエア外の内容」であり、「単なる番組の活字化という類の書ではない」と自信をのぞかせています。
NHKの特番も面白かったですが、大野氏がいうように本書の方が幅広く、二誌の「死闘の15年」を描いているといえるでしょう。
番組と本書の大きな違いを三つあげておきたいと思います。
まずは漫画家についての秘話の量です。赤塚不二夫のエピソードは番組でもよく拾っていましたが、『8マン』の桑田次郎や『銭ゲバ』のジョージ秋山などは本書の方が詳しく描かれています。
次に漫画と双璧をなした少年週刊誌の特徴、そしてこれは現在の二誌ではほとんどなくなってしまいましたが、である大伴昌司に代表される巻頭グラビアです。これは本書でしっかり描かれています。後発の『少年ジャンプ』(集英社)がもたらした漫画一辺倒の編集方針が先発二誌にも影響させた結果が現在の姿なのでしょうが、WEB時代の新しい情報提示が生まれることを期待したい分野ではあります。
三つめは、『少年マガジン』が『巨人の星』や『あしたのジョー』の人気で部数を驚異的に伸ばしていた頃の記述です。
大野氏も「マーケティングの事例としても読めるように工夫した」とありますが、成長期における経営のあり方や商品、ここでは週刊少年誌ですが、の意義付けの難しさなど、興味ある事例として読むことができます。小学館が『少年サンデー』を少年誌という位置づけのまま、新しい青年誌を模索していく姿は滝田誠一郎氏の『ビッグコミック創刊物語』と併せ読むと面白いでしょう。
これからの新しい50年を『少年サンデー』と『少年マガジン』という「ライバル」がどのように闘っていくかを読者として共に楽しみたいと思います。
(2009/05/27 投稿)
NHKの特番も面白かったですが、大野氏がいうように本書の方が幅広く、二誌の「死闘の15年」を描いているといえるでしょう。
番組と本書の大きな違いを三つあげておきたいと思います。
まずは漫画家についての秘話の量です。赤塚不二夫のエピソードは番組でもよく拾っていましたが、『8マン』の桑田次郎や『銭ゲバ』のジョージ秋山などは本書の方が詳しく描かれています。
次に漫画と双璧をなした少年週刊誌の特徴、そしてこれは現在の二誌ではほとんどなくなってしまいましたが、である大伴昌司に代表される巻頭グラビアです。これは本書でしっかり描かれています。後発の『少年ジャンプ』(集英社)がもたらした漫画一辺倒の編集方針が先発二誌にも影響させた結果が現在の姿なのでしょうが、WEB時代の新しい情報提示が生まれることを期待したい分野ではあります。
三つめは、『少年マガジン』が『巨人の星』や『あしたのジョー』の人気で部数を驚異的に伸ばしていた頃の記述です。
大野氏も「マーケティングの事例としても読めるように工夫した」とありますが、成長期における経営のあり方や商品、ここでは週刊少年誌ですが、の意義付けの難しさなど、興味ある事例として読むことができます。小学館が『少年サンデー』を少年誌という位置づけのまま、新しい青年誌を模索していく姿は滝田誠一郎氏の『ビッグコミック創刊物語』と併せ読むと面白いでしょう。
これからの新しい50年を『少年サンデー』と『少年マガジン』という「ライバル」がどのように闘っていくかを読者として共に楽しみたいと思います。
(2009/05/27 投稿)
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