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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は昨日につづき、漫画関連の本の書評です。
  しかも、手塚治虫さんが主人公。
  福元一義さんの『手塚先生、締め切り過ぎてます!』。
  いろんな漫画関連の本を読むと、
  手塚治虫さんの原稿をもらうのに、たくさんの編集者が
  困ったようですね。
  そもそも手塚さんは作品の量がはんぱではないですからね。
  描く作業には時間的制約がありますが、
  それ以上にどんどん描きたいことが出てくるのでしょうね。
  やっぱり「神様」です。
  今NHKBSで毎週金曜夜10:00から『週刊手塚治虫』という番組が
  放映されています。
  毎週昔のアニメなどが楽しめて、欠かさず楽しんでいます。
  本当に興味のつきない「神様」です。

  みぎ手塚治虫さんの関連記事はこちら  ・「私の好きな作家たち 第五回手塚治虫」
                           ・「手塚治虫展」に行ってきました

手塚先生、締め切り過ぎてます! (集英社新書 490H)手塚先生、締め切り過ぎてます! (集英社新書 490H)
(2009/04/17)
福元 一義

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sai.wingpen  逆立ちをする神様                矢印 bk1書評ページへ

 手塚治虫さんは、誰もが認める、「漫画の神様」です。
 「神様」ですから一体どのような暮らしぶりであったのか、どのように創作をされていたのか、気になるのも仕方のないことで、おかげで数多くの「手塚伝説」が生まれていますし、こうして死後二十年経っても、まだそのお姿を描いた新刊が出てきます。
 本書は、手塚治虫公式ファンクラブの会報誌に連載されていた「アシスタントの日記帳」を加筆修正したものですが、連載時のタイトルが示す通り、著者の福元一義さんは長い期間、手塚さんの創作のサポートをされていました。
 つまり、本書は「神様」の側近による、「神様」手塚治虫さんの軌跡です。
 今年は「神様」手塚治虫さんの生誕八十年、没後二十年にあたります。
 それで、最近NHKで手塚さん関連の番組が再放送されていました。
 その中に、昭和61年(1986年)に放映された『手塚治虫・創作の秘密』という、ドキュメンタリー番組があって、日頃誰も立ち入ることのできなかった「神様」の様子がカメラに収められています。
 締め切りに追い立てられる「神様」、アイデアに悩み逆立ちする「神様」など、今見ても奇跡のような映像が続きます。車の中や飛行機の中で原稿を描く「神様」と、原稿を求める「編集者」たちのそれは闘いでした。
 本書の題名となった「手塚先生、締め切り過ぎてます!」と絶叫した「編集者」は多かったのではないでしょうか。

 福元さんのこの本はそういう手塚治虫さんの「創作の秘密」を現場からよく描いた作品です。
 例えば、本書では「神様」が使われたペンや紙などの話、コマ割や色指定の話など、あの映像にはない「創作の秘密」が描かれています。手塚さんは時に漫画の主人公を足のつま先から描き始めたことがあるそうで、こんな話を聞いてしまうと、余計に「神格化」してしまいそうです。
 漫画家をめざそうという人にはそれだけで平伏してしまいそうなエピソードかもしれません。

 「仕事をさせてくれ・・・」と、「神様」手塚治虫さんは死の床でまだなおペンをとろうとされたそうです。 「神様」手塚治虫さんにはまだまだきっと描きたい、たくさんのことがあったにちがいありません。
 でも、「神様」は世界を創るものであったかもしれませんが、やがて多くの人たちにその世界を委ねられるものでもあります。そして、そのように「神様」につづく、なんと多くの漫画家たちがこの世界を豊かに表現してくれたでしょう。
 「神様」手塚治虫さんの素敵な笑顔(本書184頁写真)がそれを立証しています。
 それとも、その笑顔は「締め切り」から開放された笑顔なのでしょうか。
  
(2009/05/28 投稿)

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