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05/29/2009    経営者の品格:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介しました『経営者の品格 -今こそ問われるリーダーの人間力』に
  登場する経営者は、
  松下幸之助であり本田宗一郎であり盛田昭夫であり、
  日本の一時代を築いた名将たちです。
  彼らの名前をみて、
  今さら彼らの時代でもないと思われる人もいると思います。
  確かに、彼らが経営をした会社とはいえ、
  この時代にあって迷走しているともみえます。
  だから、つい、もし彼らが今の時代に生きていれば、
  どのような戦略をもって経営にあっただろうと考えることは、
  実現しない空想ゆえに楽しくもあります。
  本書のなかで、堺屋太一さんが書いている文章で、
  ようやく稲盛和夫さんが登場します。
  稲盛和夫さんの著作は今でも多くのファンを魅了していますが、
  その理由も含めて、
  新しいリーダーたちはもっと学習し、
  そして強くならないとダメではないでしょうか。
  
経営者の品格―今こそ問われるリーダーの人間力! (プレジデント・クラシックス)経営者の品格―今こそ問われるリーダーの人間力! (プレジデント・クラシックス)
(2009/01)
城山 三郎三鬼 陽之助

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sai.wingpen  応援者の不在                   矢印 bk1書評ページへ

 第二次大戦後の日本は、いい意味でも悪い意味でも、経済がリードした時代でした。政治も文化も社会も、経済にひっぱられるようにして形成されていったと言っていいと思います。
 そのリーダー格であった経済が百年に一度という不況に陥ると、たちまちその他の機能もどのように打破していいのか見当がつかないというのが現在の、この国の構図です。
 そういう時に、戦後の経済界のリーダーであった経営者を描いたこういう本を読むと、例えば松下幸之助や本田宗一郎や盛田昭夫ならこの時代をどのように舵取りしただろうかと、想像してしまわないわけにはいきません。
 しかし、本当に現代は松下も本田も盛田もいないのでしょうか。どうもそうではなく、むしろ、不在なのは経営者を、時に励まし、時に叱咤し、時にエールをおくった応援者のような気がします。
 本書には2000年前後に雑誌「プレジデント」に掲載された、経営者に関する論考が十篇収められています。それらの作品を描いたのは、城山三郎、三鬼陽之助、上之郷利昭、堺屋太一といった、十人の豪華な執筆者です。
 彼らはけっして本書に登場する経営者の提灯を掲げたわけではありません。
 おそらく経営者たちと談を重ね、行動を見、背景をさぐり、その姿をかきとめたのでしょう。ここには媚もへつらいもありません。
 もちろん、本書の中で名前をあげられながらもその晩節を全うできなかった経営者もいます。執筆者である彼らの見識が甘かったからに他ありません。それでも、その時々によって、本書の執筆者たちはリーダーたちを応援し続けたのです。

 本書の最後に掲載された「著者紹介」をみると、2007年に亡くなった城山三郎をはじめ、十人の執筆者のうちすでに六人までが鬼籍にはいっています。今は亡き「品格」のある経営者とともに、彼らもまたよき時代を終えています。
 城山三郎は本書の中で、自身が魅力を感じる経営者の条件として、「いつでもあるべき姿を求めていること」「つねに生き生きしていること」「卑しくないこと」(27頁・「品格」ある経営者とは!)と記しています。これは、応援者たる城山三郎の魅力でもあったことを思えば、同時に応援者の条件でもあるのです。
 新しい経営者、新しいリーダーを発掘し、世に知らしめすことも、応援者の役目です。
 そこにこの不況を乗り切る新しい芽が生まれるような気がします。
  
(2009/05/29 投稿)

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