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06/01/2009    あ・うん:書評
プレゼント 書評こぼれ話
 
  今日から6月。 額紫陽花
  別名、水無月
  気候はちょうど梅雨なのに、水が無い月なのは、
  陰暦の別名だからです。
  今でいえば7月頃にあたります。
  まさに梅雨が明けて水も涸れるところからきています。
  写真は、ご近所の「額の花」。
  額紫陽花(がくあじさい)ともいいます。
  雨に打たれても見とれてしまう、好きな花です。
 
  朝日新聞日曜の書評欄「百年読書会」(ナビゲーター重松清)の、
  6月の課題本は向田邦子さんの『あ・うん』。
  これはTVドラマとして1980年にNHKで放映されてもいますが、
  今回はシナリオではなく小説版ということです。
  ちなみに小説の『あ・うん』の発表もやはり1980年。
  向田邦子さんはどちらを先に書いたのでしょうか。
  この作品は1989年に降旗康男監督により映画化もされています。
  主人公の門倉修造役が高倉健さん、水田仙吉役は板東英二さん、
  そして、仙吉の妻たみ役が富司純子さん。
  富司純子さんといえば、もちろん『緋牡丹博徒』のお竜さん。
  いやあ、綺麗でしたよ、お竜さん。
  さらにいえば、寺島しのぶさんは娘さん。
  かなり私は好きですね。
  閑話休題。横みちにそれすぎました。
  向田邦子さんの『あ・うん』です。
  この作品は仙吉と門倉の友情物語でもあるし、
  仙吉の妻たみに寄せる門倉の恋の物語でもあるわけです。
  「百年読書会」にどのような感想が寄せられるのかわかりませんが、
  やはり門倉の秘めた恋についてのものが多いような気がします。
  もしかしたら、向田邦子さんの恋そのものが、
  門倉の恋だったのかもしれませんね。
  越えてはいけない恋。
  そういう辛さみたいなものを、向田邦子さん自身持っておられたのではと
  思います。
  今回も書評句を載せていますが、
  ひらがなの「あ」から「ん」までの文字で物語ができている、
  そういう思いで詠みましたが、
  もちろん題名の『あ・うん』は、
  神社の鳥居に並んだ狛犬「阿(あ)」と「吽(うん」からきています。
  「あ」ははじまりの音、「うん」は最後の音。
  宇宙の深い意味がある言葉のようです。
  ついでに、今回紹介しました文春文庫の表紙は、
  中川一政さんによるもので、そのことを向田さんは、
  本書の「あとがき」に書いています。
  その「あとがき」の最後に向田邦子さんはこう書いています。

    夢は見るものだなと、五十を過ぎた今、思っている。
    叶わぬ夢も多いが、叶う夢もあるのである。

  こう綴った1981年の夏、向田邦子さんは亡くなるのである。
  
あ・うん (文春文庫)あ・うん (文春文庫)
(2003/08)
向田 邦子

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sai.wingpen  堪能しました

 あとうんに はさまれしもの 無邪気かな 

 落語のことを話芸というが、それでいえば向田邦子の作品こそ文芸といっていい。
 軽妙で洒脱、それでいて艶がある。思わずうまいと膝を打つ。
 それはこの作品で造形された人物たちの姿、会話だけでなく、人物たちの間に漂う微妙な関係の隅々まで行き渡っているし、時々の、たとえば「オットセイに寄りかかられたようだ」みたいな喩えの上手さといったら、絶妙である。
 さらにいえば、向田の作品の中の小道具の使い方の巧さはどうだろう。本作は太平洋戦争前の日常を描いているが、冒頭に出てくる風呂の「ブリキの煙突」や「炭火のいけた瀬戸の火鉢」など、小道具で時代を描いた見本ともいえる。
 そういう向田空間があって、二人の男と一人の女の、やじろべえのような関係が鮮やかに読む者の心に深く染み込んでくる。
 堪能という言葉がもっともよく似合う作品である。
 たれか落語の演目にしないだろうか。
  
(2009/06/01 投稿)
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