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プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介するのは、森光子さんの、
  『人生はロングラン―私の履歴書』です。
  森光子さんの舞台『放浪記』2000回公演の達成は、
  最近の明るいNEWSの一つです。
  その時に、森光子さんの「私の履歴書」を読む、というのも
  読書の面白さだと思います。
  あの記念すべき公演で森光子さんが紹介された自身の川柳、
  
    あいつよりうまいはずだがなぜ売れぬ

  は、この本でも書かれています。
  今回の書評タイトル「おかみさん、時間ですよ」は、
  もちろん森光子さんのTVでの人気番組だった『時間ですよ』(久世光彦演出)の、
  台詞からとりました。
  私にとっての森光子さんはあの『時間ですよ』の銭湯のおかみさん。
  その時、すでに森光子さんは50歳だったわけですが、
  とてもそんな年齢には見えなかったですね。
  その時の挿話も、今回紹介した『人生はロングラン―私の履歴書』に
  ちゃんと出てきます。
  
人生はロングラン―私の履歴書人生はロングラン―私の履歴書
(2009/04)
森 光子

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sai.wingpen  おかみさん、時間ですよ           矢印 bk1書評ページへ

 女優の森光子さんのおめでたい話がつづく。
 今年(2009年)の5月9日、自身の89歳の誕生日に主演する『放浪記』の舞台が2000回という前人未踏の公演記録を達成し、さらには女優として初めての「国民栄誉賞」の受賞も先ほど決定した。
 そんな森光子さんが日本経済新聞の人気記事である「私の履歴書」に連載(新聞掲載は2007年12月)した文章に加筆して出版したのが本書である。
 まことに今が読み頃、旬の一冊といえる。
 女性の年齢の話で恐縮だが、TVで拝見する森光子さんは私にとって長く年齢不詳の女優であった。舞台『放浪記』の連続記録が世間の注目を集めるなかで、そのお年を耳にして実にびっくりしたことを覚えている。。その時、私の比較対象となったのは昭和元年生まれの、私の母だった。母よりも数歳も年上の人には見えない、若々しさが森さんにはあった。
 もちろん、舞台でのお化粧が森さんの老いを隠しているにはちがいないだろうが、あの目の輝きはどうだろう。舞台照明の反射のせいばかりとは思えない。森さんの目の輝きは気力にみち、まだ先をみている。
 「いつだって、あしたがあると思って生きてきました。あしたになれば、あしたの風が吹きます。あしたを生きましょう!」(247頁)と、本書の最後に書かれた思いが森さんの目の輝きを生む若さの秘訣なんだと、つくづく思い知らされる。

 「私の履歴書」はもともとが一ヶ月31回の連載であるから31話の挿話が書かれているのだが、生い立ちや家族の話、そして戦争の話が半分以上をしめている。
 大正九年生まれの森さんにとって、やはり先の戦争は自身の青春期と重なるため比重がどうしても大きくなるのであろう。
 森さんはこう書く。「私は陰影の深い、この昭和の激流の中で生きたという思いが強いのです」(5頁)
 女優森光子という花は平成の時代になって大輪の花をつけたといえるが、花として咲くまでの昭和への思いが強いのだろう。まさに本書の第一章のタイトルのとおり「昭和を生きる」である。

 今回多くの話題となっている『放浪記』についての挿話は菊田一夫との「運命の三分間」という奇跡的な出会いも含めて、4話にわたって書かれている。その中には劇中の「でんぐり返し」の挿話もはいっているのだが、その章の中の「長く上演しつづけるということは、すなわち自分との闘いなのです」(208頁)という文章は、『放浪記』の2000回公演の時に語った「表現のもっと豊かな女優になりたい」という言葉とともに、女優森光子を支えた思いであったにちがいない。
 まったくあっぱれな女優魂である。
  
(2009/06/02 投稿)
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