06/23/2014 ポケットに物語を入れて(角田 光代):書評「本と一緒に旅しよう」

先日第151回となる芥川賞・直木賞の候補作の
発表がありました。
芥川賞が5人、直木賞が6人のノミネート。
芥川賞では、戌井昭人さんがノミネート5回目、
直木賞ではノミネート6回目となる黒川博行さんといった
常連? の顔が並んでいます。
さて、どなたが受賞されるか
発表は7月17日です。
新しい作品も楽しみですが
すでに世評の高い作品も楽しい。
今日紹介するのは
直木賞作家でもある角田光代さんの
書評集『ポケットに物語を入れて』。
角田光代さんは
本読みの達人でもあって
この本の中にこんな一節が。
本は開くとき、読んでいるときばかりでなく、選んでいるときからもう、
しあわせをくれるのだ。まるで旅みたい。
こんなことを感じるのが
達人ゆえかな。
じゃあ、読もう。
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文庫本は解説から読む、という人がいるくらい、文庫本についている「解説」は面白い。
私も東海林さだおさんの食のエッセイ「丸かじり」シリーズの文庫本(文春文庫)では、次々と替わる解説者の文章の技を楽しみにしている一人だ。(この本の著者角田光代さんも『ホットドックの丸かじり』という文庫本に解説を書いていて、この本に収録されている)
しかし、所詮「解説」は「解説」であって、作品こそが大事なのはいうまでもない。
作品を読まずして、「解説」を読むな、といいたい。
けれど、その「解説」だけが切りだされれば、「解説」そのものの、あるいは「解説」を書いた人の、物事に対する見方や表現方法などが手にとるようにわかる。
書評家でもあった丸谷才一氏は、書評は読ませる文章であるべきだと論じていたが、まったく同感である。
よい「解説」は読ませるだけの力量を持っているといえる。
直木賞作家角田光代さんのこの本はこれまで角田さんが文庫本の「解説」や週刊誌での書評欄に書き綴ってきたのものをまとめたものだ。
まえがきにあたる文章(「あなたのポケットの、あなただけの物語」)の中で、角田さんは文庫本の「解説」はその作品の答えのように思っていたが、忌野清志郎の『忌野旅日記』の「解説」を頼まれた時、答えではないのではないかと気づいたとある。
もし「解説」がその作品の答えであったとしても、自分はそうでないものを書けばいいのではないかと。
この時書いた「解説」もこの本に収録されているが、確かにここには作品から自由になった角田さんがいるし、けれども「作品」にしっかりつながっている角田さんもいる。
それと同じことが、東海林さだおさんの『ホットドックの丸かじり』の「解説」にもいえる。
どちらかといえば、小説以外の作品の「解説」を書く時の、角田さんの自由度は高い。
文学作品ともなれば、やはり正統な「解説」になっている。それはそれで角田さんの小説世界ともつながっているし、角田さんの文学世界の秘密を解く鍵にもなっているが、けっして面白い訳ではない。
それでもこの本が面白いとすれば、ここに紹介された文章そのものが角田光代さんを形成しているからだといえる。
(2014/06/23 投稿)

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