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プレゼント 書評こぼれ話

  夏にはいると
  食が細くなりますが
  私の故郷大阪では
  おいしいものがたくさんあります。
  なんといっても
  水ナス
  これは岸和田の名産品として
  だんじりとともに最近では全国区となった
  食材です。
  東京で買えば
  結構いい値段します。
  昔はごく当たり前のようにして
  食べていたんですが。
  それともう一品。
  鱧(はも)の湯引き
  これは父親の大好物でした。
  梅肉につけて食べたら絶品。
  これも東京ではあまり
  見かけません。
  大阪は食道楽といわれるだけあって
  おいしい料理がありますよね。
  今日の百年文庫
  そんな料理のおいしさを小説にした
  「」という巻を紹介します。

  じゃあ、読もう。

(049)膳 (百年文庫)(049)膳 (百年文庫)
(2010/10/13)
矢田津世子、藤沢桓夫 他

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sai.wingpen  おいしい短編                   

 食を表現するのは難しい。
 美食家の誉れの高い開高健や丸谷才一であっても、食や美味を文字として表すことに豊穣すぎる言葉を用いたほどだ。
 物語にしても、食欲をそそるほどに表現するのは容易ではない。池波正太郎や平岩弓枝はおいしさを表現できる作家として世評は高い。彼らの技まで達するのは至難だ。
 百年文庫49巻めは「膳」というタイトルのあるとおり、食を巧みに表現した、矢田津世子の「茶粥の記」「万年青」、藤沢恒夫の「茶人」、上司小剣の「鱧の皮」の、短編4篇が収録されている。
 藤沢と上司の作品がいずれも大阪が舞台になっているのは、さすがくいだおれの町大阪といえる。

 坂口安吾の恋人と噂のあった矢田は第3回芥川賞候補にもなったことがある。惜しむらくは37歳の若さで亡くなったことだ。
 ここに収録されている「茶粥の記」と「万年青」は亡くなる数年前に書かれた作品だ。
 「茶粥の記」は食べ物の話などを雑誌に寄稿していた夫が亡くなり、義母とともに故郷に戻ろうとする妻の姿を描いた短編である。
 想像力で食べたこともない料理をさもおいしそうに話す夫の、生前の姿を思い浮かべる妻。死後夫が書いた最後の短文が見つかり、そこに「鰹のたたき」のことが出ている。それに「嘘ばっかり」と詰る妻であるが、不思議と「つばが出てきて仕方がなかった」。
 矢田の文章の巧さだろう、確かに夫の語る料理のうまそうなこと。
 矢田のもうひとつの作品「万年青」は、念のために書いておくと<おもと>と読む。

 藤沢恒夫は大阪に生まれ、その地を離れることのなかった生粋の大阪人である。
 かつては司馬遼太郎や田辺聖子が藤沢のもとに集まって「大阪文壇」の潮流を築いたという。
 この「茶人」は大阪人の気性をよくとらえた短編である。
 まるで上方落語に登場するような吝嗇(この作品では「しぶちん」とルビがふられている)家のご隠居の、茶会にまつわる話。
 上司小剣という作家はまったく知らなかったが、「鱧の皮」という短編はあの織田作之助の『夫婦善哉』が描かれた法善寺横丁が舞台となっている。
 上司のこの作品の方が織田の作品よりも早い。
 ちなみに、「鱧」は<はも>と読む。
 夏場の鱧の美味しさは関西ならではの風物詩といっていい。
  
(2014/07/09 投稿)

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