07/05/2014 55歳からのハローライフ(村上 龍):再録書評「限りなく憂鬱に近いグレイ」

今、土曜日の夜NHKで
5回連続で村上龍さん原作の
『55歳からのハローライフ』が
放映されています。
今夜の放送が4回めになります。
そこで今日は
『55歳からのハローライフ』の再録書評です。
このドラマは
まず主演陣が豪華なんですよね。
「キャンピングカー」という作品ではリリー・フランキーさんが主演、
奥さん役は戸田恵子さんが演じていました。
「ペットロス」には風吹ジュンさん。
私は風吹ジュンさんが好きです。
上手に年を重ねてきた女性という印象があります。
年を重ねるごとにきれいになっているような気がします。
「結婚相談所」と言う作品は原田美枝子さん。
この人も素敵ですね。
ここまでがすでに放映されています。
今夜は第4回めで
「トラベルヘルパー」。
主演は小林薫さん。
いうまでもなく、朝の連続ドラマ「カーネーション」で
父親役を熱演した名優です。
見ていない人は
今夜からでも。
ぜひ。
じゃあ、読もう。
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この本を本屋さんの店頭で見かけた時、てっきり「55歳からのハローワーク」だと勘違いしてしまった。何しろ村上龍さんには大ヒットした『13歳のハローワーク』という作品があるくらいだ。
ハローワークっていえば、13歳よりは55歳の方が現実的である。だからといって、あまりにも短絡的な勘違いだった。
笑えるが。
この本、ちゃんといいますね、『55歳からのハローライフ』は中高年の男女を主人公にした連作中編集だ。
村上龍さんが『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞を受賞したのが1976年だから、それからおよそ40年近くなる。あの作品で若者の風俗を描いた村上さんだが、こうして中高年の姿を描くようになった、そのことに感慨深いものがある。
当時村上さんがこのような作品を描くなど、誰が想像しただろう。
時代は変わった。
変わったというのが妥当かどうか、少なくとも村上さんの、この国の、橋の下をたくさんの水が流れたことは確かだ。
夫と離婚し新たな相手を探そうとする女性を描いた『結婚相談所』、ホームレスになる不安を持った男がホームレス状態のかつての同級生と出会う『空を飛ぶ夢をもう一度』、早期退職で会社を辞めたもののそれ以降の生活や転職活動に悩む男の姿を描いた『キャンピングカー』、会社をやめ家にいる夫とそりが合わず愛犬に愛情を注ぐ女性の切ない姿の『ペットロス』、中高年の淡い恋を描く『トラベルヘルパー』の、5篇。
そのどれもが現在(いま)の中高年が迎えている危機であり、苦悩ともいえる。
夫がいて、妻がいて、息子や娘たちは独立し始めている。年金の支給時期が延長され、再雇用制度で若い年下のものから指図される。早期退職という誘惑にはまったものの、隠居するにはまだまだ元気だ。
それが現在(いま)の平均的な中高年の姿かもしれない。
その姿を憐れむのでもなく、同情するのでもない。淡々と描きうる作家としての力量は、経済問題にも詳しい村上さんならではこそといえる。
一番身につまされたのが『キャンピングカー』という作品だった。
会社を辞めたあと夫婦でキャンピングカーに乗って日本中を旅したいと夢みていた主人公。しかし、その夢は相棒だったはずの妻から拒否される。夫は長年の暮らしの中で妻にも別箇の人格があることを見失っている。「誰にも自分の時間を持っている」という簡単な事実。
中高年の端くれとして、この作品集は重い。
(2013/01/19 投稿)

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