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06/09/2009    女が読む太宰治:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  太宰治が好きです。
  正確にいえば、好きでした、になるのかもしれませんが。
  以前、「私が好きな作家たち」にも書きましたが、
  若い頃、お決まりのように太宰にハマりました。

           みぎ 「私の好きな作家たち 第六回 太宰治」はこちら

  今回紹介するのは12人の女性による太宰論、
  『女が読む太宰治』です。
  この中で、雨宮処凛(あまみやかりん)さんが、
  自身の高校時代の記憶としてこんなことを書いています。
  高校で太宰ブームが起こった時のことです。
  「休み時間と言えばエロ本とオナニーの話しかしていなかった
  彼ら(男子生徒のこと)が、突然眉間に皺を寄せたかと思うと、苦悩した
  顔で「人生」なんかを語り始める。

  するどい、女子生徒だったんですね、雨宮処凛さんは。
  まあ、私もそういう状況だったと思います。
  太宰の魅力は色々あると思いますが、
  なんといっても「太宰だけが私のことを理解してくれる」みたいな、
  大きな誤解が彼の文学の魅力だと思います。
  それが若者の孤独に合う。
  太宰がもてたのも、そういうところかもしれません。
  母性本能がくすぐられるのでしょうね。

女が読む太宰治 (ちくまプリマー新書)女が読む太宰治 (ちくまプリマー新書)
(2009/05/09)
佐藤江梨子山崎ナオコーラ

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sai.wingpen  「新しい女」に読ませたかった太宰治         矢印 bk1書評ページへ

 今年生誕百年を迎えた「太宰治」が本屋さんにあふれている。
 彼の著作の新装版だけでなく、「○○太宰治」「太宰治△△」といった関連本まで多種多様である。太宰がどうのこうのではなく、出版社、編集者の企画力の力比べの様相だ。
 案外マーケティング事例として、このブームをのぞいてみるのも面白いかもしれない。

 本書は「ちくまプリマー新書」から出版された太宰関連本二冊のうちの一冊(もう一冊は齋藤孝著『若いうちに読みたい太宰治』)である。女性の視点からみた太宰治という点では、たくさんの関連本の中でも食指が動く一冊といっていい。
 本書の執筆者は最新芥川賞作家である津村記久子、芥川賞に落っこちた山崎ナオコーラ、今やロスジェネの旗手雨宮処凛、いつの間にかすっかり年を重ねた中沢けい、映画『斜陽』に出演した佐藤江梨子、大阪弁なのにテヘラン生まれの西加奈子、それに「斜陽の子」太田治子といった具合に、年令経歴ばらばらな12人の女性たちである。
 その中でも面白かったのは山崎ナオコーラの「嘘だから」という文章。
 冒頭から「私は、「太宰治」が好きではない。だから今、困っている」と揮(ふる)っている。しかも、「作家の性別は、作品に関係ないじゃないか」という彼女の持論との葛藤にうじうじしてしまう。さらに今回の芥川賞落選の顛末があったりして、「太宰治論」というには程遠い文章でありながら、もしかしたら山崎ナオコーラは太宰治が好きではなくても、生理的に近い作家かもしれないと思えてくる。

 それにしても、山崎ナオコーラではないが、何故この本は「女が読む」なんだろう。編集者はそこからどのような太宰治が浮かびあがってくると考えたのだろうか。
 作家平安寿子の「わたしは太宰の思うままだ。文章に頭の中をレイプされている」といった表現から、太宰のモテぶりを検証したかったのだろうか。
 しかし、この文章は例外中の例外。女性執筆者だからといってそこに何か特異な性向があるわけではない。
 太宰が数多く描いた女性が主語の作品群を彼女たちは女性の立場で評論しない。男性女性ではなく、どれもが「太宰治」なのだ。それが「太宰治」のすごさかもしれないが。
 太田治子の「男も女もその心に変わりがないことを、太宰はわかっていました。同じようにさびしいし、同じようにわがままなのです」という文章がそのことを如実に物語っている。

 だとしたら、「女が読む」ではなく、執筆者をはるな愛、おすぎとピーコ、椿姫彩菜、IKKO、といった「新しい女」が読む太宰治の方が、企画としては面白かったのではないだろうか。
 まだ間に合うかもしれない。
 
(2009/06/09 投稿)

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