
ポプラ社の「百年文庫」を
読み続けていますが
もう少しで半分くらいになるでしょうが、
今まで読んだ巻の中でも
白眉ともいえるのが
31巻めの「灯」。
ここに収められた作者の名前を書くと
わかってもらえるのでは
ないでしょうか。
夏目漱石。
ラフカディオ・ハーン。
正岡子規。
まさに日本文学の礎を築いた3人です。
国語の授業だけでなく
歴史の授業にも出てくる
3人ですが
さすがに文章もうまい。
そのうまさを堪能してもらいたいと
思います。
読書の秋ですよ、
こういう作品に触れたら
いい秋になりますよ。
じゃあ、読もう。
![]() | (031)灯 (百年文庫) (2010/10/13) 夏目漱石、ラフカディオ・ハーン 他 商品詳細を見る |

各巻、名作であったり有名でないが個性のあったりする短編小説3編を収録する「百年文庫」。
その31巻めは、豪華だ。
収録されているのは、夏目漱石、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲である)、それに正岡子規の作品である。
巻につけられたタイトルが「灯」。
この三人はさしずめ日本の近代文学の「灯」であったといえる。
短編であるから、漱石は「琴のそら音」、ハーンが「きみ子」、子規は「熊手と提灯」他の作品、なじみがないかもしれないが、いずれもいい作品が収録されている。
この巻の3人には関連がある。解説も収録順ではなく、その関係で書かれている。
まず、ハーンである。小泉八雲の日本名も有名で、彼の書いた怪談は今も愛読者が多い。
ここに収録されている「きみ子」は芸者として生きた女性の凛とした姿を描いた好編だ。わざわざ訳者の名前がはいっているから、ハーンはこの作品を英語で書いたのだろう。
それでいて、日本人の美しい姿が見事に描かれていることに、ハーンの日本への愛情を感じる。
ハーンが東京帝国大学の職を解任されたあと、その後任を勤めたのが夏目漱石である。
漱石のこの「琴のそら音」は初期の作品ながら、そして中期以降の重厚さはないが、軽妙で微笑ましい短編になっている。
結婚を控えた男が許婚の風邪の容態に右往左往する姿が描かれている。『坊っちゃん』の主人公を彷彿させるものがある。
この時期の漱石は、書けることの喜びに嬉々としていたのではないか。
そして、正岡子規である。子規と漱石は友人であり、漱石にとって子規は俳句の先生でもあった。
子規と漱石がいたから、日本語は格段に進歩したといえる。
もし、あの時代にこの二人がいなかったら、日本文学の様相はもっとちがったものになったはず。
この巻では、「飯待つ間」「病」「熊手と提灯」「ラムプの影」という、いずれも短いエッセイが収められている。
中でも「病」はこのあと生涯子規を苦しめた肺結核を発症した頃の様子を描いているが、子規自身動揺があったはずだが、そんな自身を突き放して描く姿は早すぎる晩年に彼が描き続けた『墨汁一滴』などにつながっている。
この巻こそ「百年文庫」の「灯」ではないだろうか。
(2014/10/04 投稿)

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