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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は、入梅
  立春から127日めにあたる日をそのように呼んでいたそうです。
  そろそろ全国的に梅雨入りでしょうか。
  あじさい
  梅雨というのは、梅の実が熟する頃なので
  「梅の雨」と書かれるとか。
  またカビがはえやすい時期でもあるので
  「黴雨(ばいう)」と呼んだりします。
  雨といえば、こんな童謡を思い出します。

    あめあめ ふれふれ かあさんが
    じゃのめで おむかい うれしいな
    ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン


  これは「あめふり」という童謡で、北原白秋さんの作詞。
  今の人に「じゃのめ」といってもわからないでしょうが、
  これは蛇の目傘。
  今回紹介する『ヨンイのビニールがさ』は韓国の絵本なんですが、
  なんとなくこの「あめあめ ふれふれ」を歌っていた、
  子どもの頃を思いだします。
  本好きにとって、雨に閉じ込められ、
  じっと本を読むというのは素敵な時間でもあります。
  そんな時には、絵本なんかも
  いいかもしれませんね。
  
ヨンイのビニールがさ (海外秀作絵本)ヨンイのビニールがさ (海外秀作絵本)
(2006/05/31)
ユン ドンジェ

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sai.wingpen  ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン      矢印 bk1書評ページへ

 この本は、物語を書いた人や絵を描いた人の名前でわかるように、韓国の絵本です。
 まだ暮らしぶりがそれほど豊かではなかった、もちろん今はたいそう豊かになりましたが、1980年の初めに書かれました。
 だから、ビニールがさといっても、どことなくごわごわしていますし、柄の部分も木でできています。おしゃれだとか便利だということでなく、むしろ布製の傘が買えない貧しい人たちが使っていました。
 あるいは、道も舗装がされていません。ですから、雨が降ると、水たまりができ、やがて泥んこになってしまいます。そんな時代のお話です。
 それは韓国という別の国だからではありません。私たちのこの国でも、何十年前はそうでした。そのことを忘れてはいけません。
 主人公の名前はヨンイ。小学生の女の子。見た感じでいえば、二、三年生ぐらいの、かわいい女の子です。
 月曜の朝だというのにあいにくの雨。ヨンイは緑のビニールがさをさして学校にむかいます。そして、途中で雨にぬれている物乞いのおじいさんをみかけます。
 物乞いというのも知らない人がいるかもしれません。人に慈悲を乞うとでもいえばいいのでしょうか。でも、この絵本でも描かれているように、子どもたちにもこづかれたり、からかわれたりしてしまいます。昔なら「勉強しないと、ああいう人になりますよ」と言われてしまいます。
 そんなおじいさんをヨンイはどのようにみていたのか、ビニールがさをさした後ろ姿の彼女しか絵本の中では描かれていません。
 でも、ヨンイの気持ちはよくわかります。どんどん降る雨が、そしてしだいにぬかるんでいく土の色が、ヨンイの、悲しい気持ちをよく表現しています。

 ヨンイはそっと学校を抜け出し、「だれかに みられていないか あたりを よーく みまわしてから」おじいさんに彼女のビニールのかさをさしかけてあげます。そして、濡れながら学校に走ってもどるのです。
 どうして、ヨンイは「だれかに みられていないか」様子をうかがったのでしょう。さりげない文章ですが、ヨンイのやさしさと小さな勇気が伝わってきます。

 学校が終わる頃には雨もあがりました。もうおじいさんはいませんでした。ヨンイのビニールがさがたたまれて、壁にたてかけてありました。
 かさは何にもいいませんが、おじいさんの心がやさしいヨンイに話しかけているようです。「ありがとう」って。
 きっとほかの子どもたちには、そのビニールがさの意味がわからなかったと思います。わかったのはヨンイひとり。それでいいのです。
 雨のやんだ道をかさをひろげて帰る、ヨンイの後ろ姿の、なんと晴れやかなことでしょう。

 豊かになることで忘れてきたことがこの絵本にはあります。
 それがわかるのは私たちおとなでしょうし、それをきちんと伝えていくのも、私たちおとななのです。
  
(2009/06/11 投稿)

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